| 日本の住宅に携わる者にとって、まして木造住宅専業のビルダーにとっては、日本の木材を活用したいという熱い考えを持っています。 しかし、今までの日本の林業は未乾燥の柱材を採ることしか考えてきていません。乾燥したり、集成材に加工したり、さらにはより工業化の進んだTJIとかOSBに加工するという考えが皆無でした。 つまり、日本の林業はひたすらに四方無節の「刺身」を採ることだけを考えてきたのです。干物に加工するとか、練り物や缶詰、あるいは冷凍保存するという努力をサボってきました。 昔のように1年も2年もかけて天然乾燥させるということは出来ません。未乾燥の丸太で組んだログハウスのドア開口部は1年で6センチも縮むと言われています。 住宅の気密性能が求められるようになってきて乾燥材ですらその精度が問題になってきています。狂いの少ない集成材への移行は消費者からみても、ビルダーからみても必然と考えられます。 北米の林産業は総合資源産業。 もちろん丸太の中心部から柱や梁の構造材を採ります。節の少ない外周部の刺身どころからは造作材をとります。そして、乾燥して曲がった材や端材をチップにして紙を作ったり、チップの方向性を交互に変えてOSBボードに加工したり、さらに繊維状にまでほぐしてして繊維ボードを作ります。 それだけではなく、化学薬品なども林産業の一貫として製造しています。 日本の林業が、膨大な資源大国のカナダやアメリカに対して価格的に対抗出来にくいという事情はよく分かります。私どもビルダーが日本の木材を使用したいと考えても、北米材に比べあまりにも価格差があるため、使えきれなかったというのは紛れもない事実。 しかし、よく考えてみると、北欧諸国の林業は決して北米に負けていません。寒冷地の北欧の木材が伐採適齢期を迎えるまでに100年以上かかると言われています。成長は日本の半分程度です。それなのに、木材の工業化は日本よりもはるかに進んでいます。 TJIの連続加工工場もあればOSBの工場も、あるいはチップ工場も、最近ではバイオマス電力発電所も立派に採算をとって操業しています。 日本で一番木材の工業化の進んでいる北海道。 しかし、ここには北米のような総合林産業が存在していません。いまだにOSB工場がない。 道材を活用した2X4材を開発した関木材は、資源の安定的な手当と安定した供給先が得られず、未だに苦戦を強いられています。 道材でTJIを最初に開発した久保木工にしても、北欧のような高度な連続加工工場を持っているわけではなく、手工業の域を脱していません。したがって価格も高く、需要を開発出来ずにいます。鶏と卵の関係が…。 何故、日本に高度な木材加工業が存在しないのか。 誰もが、林業に関する何冊かの本を読み、新聞報道や学術発表を読んだと思います。 しかし、どれも日本の林業の実態を表面的な数字の羅列で述べているだけ。やたらと木材のエコロジーさを喧伝し、日本の山林の危篤状態を囃したてているに過ぎません。具体的な解決策を提言しているものは皆無に近く、納得させられるものは見当たりません。 日本の林業は、農林水産省の庇護のもとに、農林水産物として扱われてきました。米や野菜、あるいは魚介類と同じ次元で考えられてきたのです。 林野庁そのものが、日本最大の山林地主であるために、日本の林業政策は山林地主対策でしかなかったと言えるのではないでしょうか。 そして、如何にして売れる木材を植林し、丸太のままで高く売りつけるか。山林地主のエゴに迎合し、補助金をばらまいてきました。 今から20数年前、木材が高騰し、山林地主はいずれも一財産を築きました。甘い汁をたっぷり吸ったわけです。そして、山は放っておいても、ある時期がくれば投機的に値上がりし、格別な利益をもたらしてくれる。かけがえのない私有財産で、絶対に手放してはならないと誰もが信じてきました。 私は、林業に関しては全くのド素人。立派な口がきけるほどの知識はありません。しかし、次のことだけは断言できるのではないでしょうか。 林業も他の産業と同様に国際的な競争力が問われてきています。付加価値をつけなければ国際競争に負けるというあまりにも当然なことが山林地主には理解されてこなかった。官業の林野庁そのものが親方日の丸でのほほん。 つまり、日本の林業を活かすには「木材加工業の育成と強化こそが急務である」という肝心の命題を忘却してきました。 林野庁という保身で固まった役人組織。その上に、地主であるという最大の保守根性が日本の山林を破壊してきた。郵政省以上に猛反省してもらわねばならないのが林野庁。 林野庁は、現在の日本の山林が荒廃している原因は、全て外材のせいにしています。そして、日本の国土を守り、CO2を吸引してくれる資源として山林を見直し、新しい補助金の対象にしようとしています。つまり、日本の山林を守るという大儀名分で山林地主に税金をばらまこうとしているように見えます。(誰もこのことに触れていないので、個人的憶測にすぎないかもしれません…) これは、どこまでも私見。 「山林地主がその私有権を主張する以上は、山林を綺麗に維持管理する義務がある」 山林は私有地ではあるが、どこまでも日本の国土。その国土を私有している以上は、保全の義務を負う。イギリスやイタリアのリッチマンが古い住宅を私有した場合、その外観の保全に責任が持たされ、大変な維持管理費用がかかるように…。 風倒木をそのままにしたり、間伐を行わなかったり、竹林の浸入を防がなかった場合は、つまりメンテナンス能力が喪失した場合は、国土に対して大変な迷惑をかけることになる。このため、本来は自発的に私有権をNPO法人などに差し出すようにすべきではなかろうか。 私有権の没収ということになると、憲法問題としておおごとになる。 となれば、住宅地の借地権と同様に安い地代で50年間に亘って山林借地権をNPO法人などに寄与する制度を新しく作る。 NPO法人は、自然を愛する都市の住人やリタイアした人に無料に近い値段でその山林の使用と管理を委託する。 委託を受けた者は、杉や檜の針葉樹を一定の間隔に間引きしなければならない。そして、間引きした木材は自由に処分してよい。同じことで、竹林も徹底的に間引きして、むやみな繁殖を防ぐ。そして、間引きした竹林と生えてくる竹の子や山菜は自由に処分出来る。 そして、山が間引きされると下草が生えてくるし広葉樹も育ってこよう。果樹を植えることも許される。生えた下草を噛む牛や黒豚を放し飼いにしてもいい。 また、50年の期限があるから、小さな小屋を建て、野菜を自給することも許される。 つまり、自発的なただの労働力……自然回帰という健康運動と生命を育てるという都会人の汗の楽しみで日本の里山を蘇生させてゆく。 と同時に、林野庁の全予算を投入して、地場に集成材と人乾の2X4材、TJI材の加工工場を育成してゆく…… これは、実現性のない夢物語だろうか?? |