■住宅における燃料電池時代はかなり先になる?!


  愛・地球博の開催に併行して、トヨタホームの近未来派夢住宅「PAPI」が、万博会場に近いリニモで2つ目の芸大通駅から徒歩7分の場所で公開展示されています。申し込み制で、ネットで申し込みが出来ます。

 ご案内のように、この夢住宅はユビキタスネットワークで著名な東大の坂村健先生が指導されたもの。トヨタグループだけでなく家電などのメーカーも共同参加して造られたハイテク技術をてんこ盛りした延べ200坪の住宅。

 ということになると、好奇心が旺盛というより物見高いおっちょこちょいは、何をさておいても駆けつけねばということになりました。

 さて、てんこ盛りされているハイテクをここで一つ一つ紹介しようという考えは毛ほどもありません。見て感動する人もあれば、がっかりする人もあるでしょう。見せ物はデザインなどのソフトではなく、どこまでもハードのハイテク。どちらかというと「男」向けの内容。訪ねた女性の方ががっかりされても責任を負えません。

 この夢住宅で、私は強いショックを受けました。

 それは、トヨタがホンダとともに世界に先がけて燃料電池自動車を市販していることと関係があります。当然のことながら住宅用の燃料電池でもトヨタの研究は先行しており、PAPIには間違いなくそれが装置されています。

 男なら誰でも、このことだけで心を弾ませます。

 ガソリンエンジンと電動モーターという2つの原動機を搭載したプリウスが発売されたのは8年前。
 満タンが50リットル。それで郊外だと1000キロは走行すると言われています。燃費は今までの1/3。ハリウッドスター達がステータスとしてもてはやしているわけです。
 「地球に優しくカッコいい」と。

 ガソリン車の場合はエネルギーの16パーセントしか使用していないそうです。これに対してプリウスはガソリンを主エネルギー源として使いながらその走行で捨てられていたエネルギーを電気エネルギーとして回収してバッテリーに充電。可能な限り その電気エネルギーで走る車。
 このため、新しいプリウスではガソリンエネルギーの37パーセントも活用しているとのこと。

 これが燃料電池車になるとガソリン効率がなんと50パーセントにも及ぶというのです。これを近未来のドリームカーと言わずして、何を夢と言うべきでしょうか!!

 という3段論法で「夢住宅を語るならば、当然のこととして住宅用の燃料電池を語ることになるはず」とおっちょこちょいは考えていました。

 たまたまPAPIを案内してもらったのが副館長の鈴木氏。
 同氏とは6年前、日加高気密住宅R&Dワークショップでカナダのプリンスエドワード島へ同道しました。温熱のことも熟知している一級建築士でPAPIの開発に最初から携わってきたエリート。
 したがって、何はさておいても「燃料電池はどこにありますか」と聞きました。
 ところがです。
 設置されていた燃料電池の能力はたったの1KW。

 この住宅には、なんと17KWもの従来型の太陽光発電が屋上に、そしてファサードの壁には植物の光合成の原理とナノテクノを融合した有機材料による新しい太陽光発電も装置されています。

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 あのプリウスやFCHVを世界に先がけて開発したトヨタですから、太陽光発電が1で燃料電池が17というなら大いに納得出来ます。
 ところが、燃料電池がたったの1KW。

 「燃料電池は発電能力よりも発熱能力が大きい。発する熱を最大限利用しようとすると1KWが現時点ではリミットです」と鈴木氏。
 大阪ガスと東京ガスで聞いた話と変わりません。

 つまり、家庭用燃料電池は発電機ではなく発熱機であって、発電はいまのところ副産物に過ぎないのです。熱を使う用途が多くないと、2KWとか3KWの発電装置を装置するわけにはゆかないのです。
 このため、トヨタホームの200坪のモデルハウスにして燃料電池はたったの1KW。太陽電池が17KWということにならざるを得なかったのです。

 これは、容易ならざることです。
 農家が冬期にビニールハウスを大々的にやるとか、温泉街で鉱泉を沸かすなどの場合は燃料電池が有効でしょう。
 しかし、普通の家庭では燃料発電装置を設置しても、使うお湯の量が限られていますからそれほどメリットがないということになります。

 給湯が主目的ということになると、今注目を集めているエコキュートとどちらの方が有利かという競争になります。
 つまり、電力業界とガス業界との戦いということになってきます。雌雄を決する一大決戦が始まろうとしているのです。いや、すでに始まっているのです。

 もちろん、寒冷地と東京以西とでは条件が異なってきます。そして、東京以西ではエコキュートとIHヒーターでの「オール電化」の波に乗っている電力の方が、現時点では情勢がやや有利の様子。

 浅学の私は、住宅用エネルギーの脱化石燃料の雄として燃料電池を盲信し、熱い期待を寄せてきました。
水素が世の中を変えると考えていました。
 しかし、それほど甘い夢物語ではなさそうです。実用化には、さらなる技術開発と長い時間が必要なようです。
 
 となれば、ドイツのように2050年までに全エネルギーの50パーセントを再生可能なエネルギーに置き換えるという発想の転換と努力、あるいは平方メートル当たり2〜3リッターしか燃費がかからない住宅を造ってゆくという基本的で、地道な努力を積み重ねてゆくしかありません。

 京都議定書の実施のためには、住宅部門は何もしなくていいという国土交通省のへっぴり腰を、消費者と地場ビルダーが糾弾してゆく必要があるのです。

 PAPIは、そのことを教えてくれていました。