■2500ガル以上の脅威。科学的な解明を切望!!


 皆さん。この写真、一体何だかわかりますか?



 これは、昨年の新潟中越の直下型地震、その激震地で痛めつけられたホールダン金物の哀れな姿です。
 これは歴史に残る貴重な写真だと思います。

 中央にナットがあります。ナットに小さなものが挟まっています。
 これが、千切れたボルトの残骸。

 直下型の地震でホールダン金物が千切れたと言っても、ほとんどの人は信用してくれませんでした。
 「そんな馬鹿な……」
 しかし、この写真を見ていただくと、私が大法螺吹きでないことだけは信用していただけるでしょう。

 何度も同じことを書きます。
 川口町役場の震度計は震度が7で、ガルが2500を突破していました。ガルは阪神淡路地震の3倍という信じられないものでした。
 そして、町役場周辺の住宅の倒壊率は30%程度でした。
 多雪地域なので最低でも4寸の柱、大きいものだと4.5寸から5寸の柱を使っています。このため、倒壊率そのものは阪神淡路大地震に比べて大きくはありません。

 この川口町役場から半径300メートル以内に、渡部建築が建てたスーパーウォールが2棟あります。
 その2棟ともコンクリート床スラブを持った高基礎で、構造体は無傷でした。亀裂も入っていなければ、水平・垂直ともレーザー測定で問題はありません。
 ただ、直下型の強い突き上げにより引き違いサッシの建具が枠から飛び出して落下したり、面外座屈を起こしたスジカイにより内壁ボードが破損したり、クーラーの室内機が落下するという被害はありました。
 しかし、一般常識から考えて軽微な被害に過ぎず、施主もその丈夫さに満足しています。

 ここだけの範囲を見ると、震度7で2500ガルはたいしたことはない。今までの耐震テクニックで十分に対処出来るという気がします。

 ところが、町役場周辺ではなく、激震地と言われた田麦山、和南津、武道窪へゆくと様相が一変します。
 局地的ですが倒壊率が90%にも及ぶのです。
 日本の地震履歴の中で、90%近い倒壊率というのは例をみません。多雪地域で極太の柱や梁を使ってこの被害ですから、建築関係者はもっと本格的に調査すべきでした。

 しかし、新潟大学の建築科には木構造がありません。このため激震地を調査していますが、とおり一遍の倒壊率とか倒壊原因の報告しかありません。

 木造に関しては、信州大学の五十田研究室と筑波大学の境研究室がかなり調査をしています。しかし、いずれも倒壊率ということにとらわれすぎて、かつてない大きなガルの被害を見落としています。
 7学会共同の「中越地震被害報告会」の発表会に参加して、本当にがっかりしました。つまり「木を見て森を見ていない」というか、2500ガル以上という脅威の実態に誰も迫っていないからです。

 杉山英男先生だったら、この中越地震を正しく捉え、多くの教訓を導き出し、日本の建築学会に警鐘を鳴らしていただけたと思います。いくつかのデーターをお届けしたいと考えていた矢先に、悲報が入りました。

 このままでは、信じられない激震がもたらした貴重な記録と資料は死蔵されたままになります。人類の貴重な財産として後世に何一つ伝わりません。
 こんな馬鹿げたことがあっていいのでしょうか。  川口町の激震地のことが建築界の大きな話題にならなかったのは、田麦山、和南津、武道窪に大手住宅メーカーの住宅が建てられていなかったからだと言えるでしょう。ツーバィフォー住宅でさえ見かけません。
 この地域は、いまだに「セイガイ造り」と呼ばれる民家建築系統の家が主流を占めており、プレハブなどが入り込む余地がほとんどないのです。

 この地域で、渡部建築が数年前より民家建築にもスーパーウォールのパネルシステムを採用しました。そのスーパーウォールが川口町に十数棟建てられ、その全てが倒壊を免れています。しかし、ほとんど同じ仕様でありながら激震地では想像を絶する被害が生じています。

 つまり、もろくて倒壊した住宅をいくら突いても、2500ガルの脅威の実態が分かりません。ところが、満身創痍ながら渡部建築のスーパーウォールは凛々しく踏みとどまってくれていました。そのために、いくつかの発見が出来ました。

 ホールダン金物が千切れたというショック。それは一ヵ所だけの例外的な現象だと考えていました。
 ところが、冬の間に渡部建築ではホールダン金物が千切れた田麦山の家の土台回りのサイデングを外して見たそうです。そしたら、千切れたボルトのほかに2ヵ所でナットが外れたり、写真のように金物が捻れて使いものにならなくなっていたというのです。
 
 このほか和南津の、ほとんど被害がないと思われた住宅のサイデングを外して見たら、これまたホールダン金物の損傷が見つかりました。
 「全部の家のサイデングを外して見たわけではないので確言はできないが、全部の家を徹底的に調べたら、ホールダン金物の被害はもっと発見されるのではなかろうか」と渡部社長は言います。

 私は、これは一ビルダーの責任に帰す問題ではないと思います。本来ですと、国とか住木センターとか、あるいは学会が中心になってその実態を調査すべき問題です。
なぜなら、ホールダン金物を推奨したのは外ならぬ国です。

 そのホールダン金物が、写真のような姿になったのです。
 なぜこうなったのか。
 激震地のガルは2500どころか3000から4000ガルに及んでいたのではないか。

 あるいは、今のホールダン金物自体に問題があるのではないか。その形状や強度に……。

 そして、大手ハウスメーカーもビルダーも、もっともっとこの事実に目を覚ましてもらう必要があります。
 「阪神淡路大震災だと倒壊を免れるが、新潟中越地震の直下型激震地だと倒壊のおそれがあるのかもしれない」と。

 この写真から、新しい動きが出てくることを切望します。