■ヒートアイランド現象。エアコンの排熱量 (中)


  ヒートアイランド対策大綱が、昨年政府関係府省連絡会議で作成されています。
  今更という気がしないでもありませんが、簡単にヒートアイランド現象のおさらいを。

  まず、20世紀の100年間に地球全体の気温が0.6℃上昇しました。ところが日本の6大都市では平均2.5℃以上の上昇。中でも東京の上昇は3.0℃にも及んでいます。

 このため、(1) 気温が30℃を越える日と時間の増加 (2) 熱帯夜の増加 (3) 光化学オキシダント生成の助長 (4) 局地的集中豪雨の発生、といった厳しい現象が生じてきています。
  その結果として熱中症による死者の増大や睡眠不足からくるストレスの増加、さらには災害の増加ということが起こってきています。

  この原因は、(1) なんと言っても人工排熱の増加 (2) 建物や道路舗装面の増加により蓄熱量の増大、にあります。

  早稲田の尾島先生の試算によると、1972年から1999年までの27年間における東京23区の人工排熱の変化は以下のようになっています。(TJ/日) 

  人間    90  →   93
  工場    828  →  610
  自動車   315  →  431
  建物    330  →  970

  これを見れば一目のように、工場は減少しています。そして、自動車の排熱はたしかに37%増大していますが、最大の犯人は建物にあるということが分かります。
  なんと3倍にも。

  オフイスでは、コンピューターの増加で温度管理がうるさくなり、冷房運転時間が増加しています。ビル街を歩いているとて室外機の排熱で気持が悪くなるほど。
  そして、住宅ではヒートアイランドの熱帯夜から逃れるために終夜エアコン運転が常態化してきており、この排熱がさらにヒートアイランド現象を促進するという悪循環に陥っています。
  人工排熱の低減対策として大綱では各種の対策を打ち出しています。

  その中で、住宅に対する対策としては「新築住宅に占める次世代省エネ基準住宅の比率が1999年には5%にすぎなかったのを2008年には50%にする」というものです。
  たったこれだけ。
  ここにも、京都議定書に対する国土交通省の、腰の引けた姿勢がそのまま反映されています。

  それでは、エアコンの室外機の排熱というのはどの程度のものなのでしょうか。

  メーカーの技術屋さんに聞きますと、排熱量は「冷やした熱量+冷媒を稼働さすコンプレッサーの熱量」ということになるのだそうです。
  例えば、2.8KWのエアコンがあったとします。
  最近エアコンのCOPは4というように、非常に良くなってきています。10年前のエアコンに比べて性能が倍以上。したがって、古いものを使っているより、新しく買い換えた方が数年で償却出来てはるかに省エネになると言われています。

  そんなわけで、COP4ということは2.8KWを稼働させるのに1/4の0.7KWでいいということ。
  つまり、2.8KW+0.7KW=3.5KW
  ということになります。

  もちろん、終夜運転といってもエアコンは24時間フル稼働しているわけではありません。間欠運転をしていますから、2.8KWの室外機の排熱量が常に3.5KWということではありません。
  大体、その半分以下と考えたらいいのではないかということです。

  さて、日本の家庭にはどれくらいのエアコンがあるのでしょうか。
  昨年のエアコンの販売台数は700万台と言われています。
  このほかに室外機一台で2室以上冷房するパッケージエアコンが75万台。計約800万台が昨年も今年も販売されると見込まれています。

  ということは、10年以上たった古いものも含めて、8000万台以上のエアコンが毎年稼働していると考えていいのではないでしょうか。

  もちろん、風通しのよい田舎ではエアコンの稼働率はそれほどではないと思います。実際に使うのは年に10日ぐらいという家庭も多いはず。それにしても、8000万台ということであれば、
  その排熱の総量はかなりのもの。
  残念ながらメーカーの技術屋さんはその総量を推定してはくれませんでした。

  皆さん。気付いていますか ?
  想像以上にエアコンの室外機が多いということを。
  総合住宅展示場へ行って、美しい住宅の裏へ回って見て下さい。
  人が入ってきやすいようにと、瀟洒なモデルハウスでは真夏でも玄関のドアを開け放しにしています。玄関を閉めているのは5%もありません。そのせいもありますが、室外機が最低で5台、多いモデルハウスだと7、8台は置いてあります。
  その放熱量を計算してみたことがありますか?  

  太陽光発電で「電気代がタダ」の家が増えています。
  これは別に珍しいものではありません。15年前に他社に先がけて太陽光発電を採用し、堂々と売り出しました。東京電力が主宰する三鷹の総合展示場で「電気代がタダの家」という大きな垂れ幕を下げたら、「東電の展示場で、電気代がタダという看板はいかがなものか…」とクレームがつきましたが…。

  太陽光発電で、購買する電気代を限りなくゼロに近づけるということは、お施主の理解さえ得られれば難しい仕事ではありません。屋根に5KW以上のモジュールが搭載されていると大変な省エネ住宅だという気がします。
  しかし、一旦裏へ回るとエアコンの室外機が5台も6台もあり、がっかりさせられます。

  支払う電気代は少なくても、こうした家は決して省エネ住宅ではないということです。排熱が多くて、熱帯夜の増加に協力している住宅にすぎません。

  つまり、東京の熱帯夜の解消に少しでも貢献する住宅というのは「エアコンの室外機が少ない住宅」ということにほかなりません。

  出来たら一台。
  それに挑戦することこそ、ビルダーの生き甲斐であり、やり甲斐ではないでしょうか。

  そして、モデルハウスへ入る前にそっと裏へ回って、室外機が何台あるかを調べてみることこそ、賢い消費者がやらねばならない仕事ではないでしょうか。