■国産材復権の条件  乾燥と加工と集約化と (下)


 森林をもう少し科学的に勉強したいと考え、調べてみてびっくりした。
  なんと専門学術書が多いこと。
森林科学、森林環境科学、森林生態学、森林保護学、森林土木学、造林学、森林計画学、etc…。

 その中で目次を読んで面白そうだった木平勇吉編著「森林計画学」(朝倉書店刊4200円)を取り寄せてがっかり。学術用語と通り一遍の論評ばかり。具体的な提案が一つもない。「こんなザマだから外材の比率が80%を越えたのは当然」と納得せざるを得なかった。

 和製ラルフ・ネーダー気取りの船瀬俊介という自称環境問題評論家がいる。
 私も「買ってはいけない」をはじめ数冊読んでいるが、ともかく敵をつくって口汚くののしり、けなす。
  「OOが欲しい」の著者と似て自分だけが正しいとする独善的断定が多い。また資料の使い方に意識的な作為が見られ信用出来ない。

 たとえば「木造革命・木の家づくりから木の街づくりへ」(リヨン社刊)の中の木材と他の建材との強度比較。
 建材としての強度には圧縮、引張り、曲げ、剪断、めり込み等がある。その中の都合の良い引張り強度だけを取り上げて「木材は鉄よりも5.5倍の強度がある」と平気で書く。曲げとか剪断を意識的に外している。こんな眉唾調だから読んでも感動が得られない。もっぱら読み捨てとなる。

 ではあるが「木造革命」の中の4章「集成材は鉄よりコンクリより強固だ」 5章「乾燥で木を生まれ変わらせる技術」 6章「森林再生のための木の活用法」の前半部分はなかなか読ませる。田中淳夫氏の「だれが日本の森…」よりも筆致が冴えている。  

 使う側から見れば、木材は乾燥が命。
 昔から採用されてきた乾燥術は、冬期あるいはお盆明け1ヶ月以内のカミキリ虫の虫害のない時期に伐採し、枝葉を付けたまま山の斜面に放置しておく。これを「葉枯らし」という。
 木は根から地下水を吸い上げ葉から放出する。伐採した木は水を吸い上げないが葉から水分を放出し続け、4ヶ月もすると重量は半分になる。  

 それを製材して1年から2年寝かせて自然乾燥させた。こうして自然乾燥材のケヤキ、ヒノキ、スギで造られた古民家は狂いのない優れものである。とくにケヤキ材は数年以上も自然乾燥させたものが多い。日本が世界に誇れる大貫工法を支えたのはこの自然乾燥術。  

 ところが、最近はこのような自然乾燥をやっているところはほとんどない。とくに乾燥が難しいとされているのがスギ材。
 含水率そのものが高い上に辺材と芯材では含水率が大きく異なる。しかも白線帯という水を透しにくい層があるため、簡単に人工乾燥も出来ない。  

 このため、4ヶ月の葉枯らしと製材後4ヶ月自然乾燥させたスギでも、白太は20%台にすぐなるが芯はなかなか30%台にならない。それを無理な方法で人工乾燥させると、木材の繊維が破壊され、強度のないパサパサの干物になってしまう。  

 つまり、芯持ちの柱材としてスギを使おうとしても自然乾燥は難しい。ということは特殊な方法で人工乾燥させるか、あるいは角材ではなく薄い板に挽き割って人工乾燥させ、集成材に加工して使うしかない。  

 木造革命の中で紹介しているのがエイブル・エンジニアのツー・ヘルスという人乾システム。
  これは製材品を人乾させるのではなく丸太ごと燻煙改良する。柱材を燻すと黒くなる。しかし鰹を燻すと美しいカツオブシになる。しかも150度の高温蒸気で乾燥させる。燃料は重油ではなく廃材。
  この5日の改質と1ヶ月の「風乾」でカラマツもヒノキもケヤキも狂わず、反らず、ヒビ割れもせずになる。
  カラマツの立方メートル当たり原価1万円が5〜6万円に、ヒノキは原価2.5万円が10万円前後になるという。しかもヒノキも可能であれば竹までも改質出来、フローリング材になるという。

  このツー・ヘルスの人乾システムの有効性、信頼性については定かではない。しかし3〜4億円のプラントで理想的な人乾装置が可能というのが真実であれば、一考に値しよう。  

 そして、これからの国産材利用の中心になってこなければならないのが集成材。
  集成材というのは乾燥した上で節や割れが除去されており、強度は無垢材の1.5倍以上あると言われている。ただ、従来のユリア系やメラミン系の樹脂接着剤はホルマリンを放出して健康に良くなかった。
  しかし、最近ではホルマリンの少ないレゾルシノール系やホルマリンがないイソシアネート系の接着剤が採用されてきており、健康上ほとんど問題がなくなってきている。  

 そして、面白いのは豊橋のマルナカウッドの中野会長の提案。
 日本の林業の大失敗の原因は密植にあるという。
 10本のうち9本を間伐して良い材1本を残せばいいということで密植を薦めた。ところが択伐も間伐もやらない。隙間なく林立しているから木は大きくなれないし、間伐しようにも倒したり搬出する場所もない。
 日本の山は満員電車の呻き声を…。  

 中野会長は「間伐材は65cmに切れば!」と提案している。
 4メートルとか5メートルという長物で搬出しようとするから手間と暇がかかり、コスト的にも合わず密植のまま放置されている。
  これを65cmに刻んでしまえば両手で抱えて運べる。軽四輪でも運べ、老人や子供も山に入って手伝うことが出来る。  

 その65cmの丸太を、魚を捌くように出来るだけアラが出ないように挽いて集成加工する。そうすると間伐材でも十分に採算が取れるという。  

 いずれにしろ、国産材ばかりではなく輸入材を含めて集成材の時代になってゆく。日刊木材では年間200万立方メートルの時代に入ったと報じている。
  剛金物工法に加えて門型ラーメン構造もこれから普及してゆく。木軸は間違いなく集成材時代へ。  

 在来木軸は、戦後の物資がなかった時代に考案された羽子板ボルトと筋違いによる耐震性の低い木造住宅の時代は完全に終焉したのである。その細い芯持ち材の育成を前提に考えていた林業は存立の基盤を失った。
 これからは、乾燥した精度と強度の高いランバーが求められている。気密性能が1平方センチ以下を求められた時、ビルダーは好むと好まざると2かかわらず集成材を選択するしかない。  

 そして、戦後日本の山はあまりにも細分化された。零細な山林地主によって割拠され、支配されてきた。このため、間伐も集荷も再生もままならない。材の集積が思うようにならないため日本では乾燥を含めた製材業が「業」として存立出来にくい。日本が欧米、とくに北欧に比べて見劣りするのは「力のある木材加工業者」の少なさにある。  

 環境の時代となり、山林は国家の財産化してきている。
 山を管理する意欲と能力のない地主はNPO法人に「貸林権」を与えて、一定規模で計画的に植林、伐採、製材とバイオマス発電が行ってゆけるようにしてゆかねばならない。  

 郵政改革以上の大改革を日本の山林が切望している。