■「植物は気づいている」という大変気になる本 (上)


 住宅を業にしていると、植物に関する知識が求められます。 まず、木造住宅だと構造材となる木材の種類を覚えねばなりません。
 針葉樹T類としてあかまつ、くろまつ、からまつ、ひば、ひのき、つが、米まつ、米ひ。
 U類としてすぎ、もみ、えぞまつ、とどまつ、米すぎ、米つが、スプルースを暗記させられました。
 しかし、立木をみても松とひばと杉ははっきり見分けられるが、ひのきと杉がなかなか見分けられない。まして製材品となると、ダグラスファーとへムファーは見た目では分かりません。クギを打って堅さでやっと分かる程度で、もっぱらスタンプがたより。

  これが造作材となってくると、種類も増えてなかなかマスター出来ない。
 オーク、メープル、パイン、ツガ、アッシュ、エコバーチ、ナラ、タモ、シナ、セン、チェリー、チーク、オクメ、etc。
 まして高級床柱材となると頭が痛くなってきます。

  このほか、プランづくりを手伝っているとインテリアの一貫として家具とか観葉植物の選定相談まで受けます。
 それだけではない。エクステリアとしてある程度庭木や芝のことも知っておかねばなりません。
 したがって、原色樹木図鑑とか観葉植物図鑑というのも住宅屋にとって必携品となってきました。

  もっとも最近では、インテリアはインテリアコーデネィターに、エクステリアは外構屋に一任する例が多くなって、やたらと覚える必要はなくなりましたが、それでも基礎的なことは知っておかねばなりません。

  今から10年前に、テレビでサボテンが人間の言葉に反応するとか足し算が出来るということで観葉植物が話題になったことがあります。テレビは見なかったけど、お客に言われて「植物とお話をする法」という本を買ってきました。
  読んでみたら、アメリカのバクスターという人が何の気なしに観葉植物で実験をしたら人間と同じような反応が起こり、これが世界的に話題になったと書いてありました。しかし、著者の橋本健さんの肩書きが日本超科学会会長とあったので信用する気が起こらず、そのまま読み捨てにしました。

  ところが今年の夏、日本教文社からクリーブ・バクスター著「植物は気づいている」(穂積由里子訳)が出版され、改めて読んでみて感動させられました。

  バクスター氏は高校時代に催眠術をマスターし、大学から海軍に志願、冷戦時のCIA(中央諜報機関)時代に催眠術を用いて尋問を行うポリグラフシステムを開発したという異色の経歴の持ち主。
 
 そのバクスター氏がニューヨークのポリグラフ研究所で夜中にコーヒーを淹れて休憩していた。その部屋にビルの一階にある園芸店で、一鉢2ドルで買った観葉植物のドラセナが置かれていた。
 ご存知の方も多いと思うが、ドラセナというのは幸福の木の仲間で、長い幹と長い葉を持っています。
 その鉢植えに水をやっていた時「この水が根から吸い上げられて葉まで上昇する速度を測定出来ないか」という考えがふと頭をよぎりました。
 そこで実験を行ったのがそもそもの始まり。

  実は、これと同じような疑問を私は何時も持っています。
 世界で一番高い木はカリフォルニアのレッドウッド国立公園のジャイアント・レッドウッドだと言われています。セコイア系で高さがなんと112メートル。
 40階建てビルに近い高さです。
 40階建てのビルの場合は揚水機で水を屋上のタンクに揚げています。

  ところで、このレッドウッドをはじめとして多くの木はどうして根から水を吸い上げ葉まで水をポンプアップしているのでしょうか?
 毛細管現象だと、せいぜい地上1メートルまでしか揚水することが出来ないと言われています。
 それを112メートルまで揚げるのです。
 水柱は10メートルで1気圧。ということは11.2気圧。
100uでも1トン以上という計算。

  一体、112メートルのレッドウッドには毎日どれだけの量の水が、どれだけの速度で揚水されているのでしょうか?
 ポンプアップしている動力は一体何か?

  木は水をポンプアップしているのではなく、葉から水が蒸散することにより生じた真空で、上へと吸い上げているのだそうです。
 とすれば、これは容易なことではありません。
 ストローのことを考えてみましょう。
 小さな穴が開いていたらジュースもアイスコーヒーも吸い上げることが出来ません。
 112メートルもの太くて長いストロー。空気が漏れることはないのでしょうか。

  J・ブロス著「植物の魔術」(八坂書店刊)によると、木の幹には二重の流れがあるそうです。
 一つは地中から水と無機塩を汲み上げて葉へ運ぶ上昇樹液の流れと、もう一つは葉で光合成されたものを根まで運ぶ下降樹液の流れ。

  そして、器官が機能するためには乾燥を避けるために器官全体が閉じていなければならなりません。なにしろ大気にさらされているのですから。そのため茎や葉の表面は水や空気を透さない薄い皮膜で保護されています。しかし、表皮は光合成に不可欠な二酸化炭素と呼吸に必要な酸素を透さなければなりません。
 というわけで、表皮には空気を取り入れるために開き、蒸発を防ぐために閉じる微少の穴……すなわち気孔がついているというのです。

  そして、木の赤身と呼ばれる中心部は、死んで硬くなったミイラ化した組織にすぎないのだそうです。生命が失われた後にタンニンと樹皮が蓄積されて濃い色合いになっているのだそうです。したがって、幹の中央がひび割れ空洞になっても樹木は死なない。白太(辺材)で生きているのです。

  しかし、キツツキが穴を開けた時、揚水が止まるということはないのでしょうか?

  上昇樹液が通っているのはこの白太の部分で、下降樹液は師部と言われる一番外側の部分だそうです。
 樹皮を剥ぐと緑がかった樹液でベトついた薄い膜が発見出来ます。これが師部。

  師管は葉の光合成から生じた生成物を根へ運ぶ下降液の運搬を担っています。 したがいまして、生きているこの層をキツツキが穴を開けたり、鹿が齧ったりすると栄養のある糖質が奪われるために根が被害をうけるのだそうです。成長し、地中を突き進んでゆく能力が失われる。

  バクスターの実験から話が逸れました。
 しかし、バクスターのおかげでいろいろな本を漁り、私の疑問のいくつかが解けました。

  それにしても112メートルの巨木は日に何トンの水を葉から蒸散しているのでしょうか?