■解体時、リフォーム時のアスベストの脅威度


  日経住まいのリフォーム博の緊急セミナー「住まいとリフォームのアスベスト問題」(講師 池田耕一国立保険医療科学院)を聴講してきました。

  講演の内容はアスベストに関する基礎知識と問題点を広く紹介するもので大変によく理解出来ました。しかし特筆すべき内容はありませんでした。

  なにしろ「アスベスト」をアクセスすると14000件もの応答があります。この中でいくつかを探ってみましたが、私が一番系統的理解できたのが東京都環境局の「建築物解体時のアスベスト飛散防止マニュアル」というホームページ。

http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/kaizen/kisei/taiki/asbest/1.htm

 さて、緊急セミナーで面白かったのは一般の消費者および工事関係者との質疑応答。  

  まず問題になったのは、どこへ行ったら相談にのってくれるかということ。窓口はどこか?
  なにしろ、厚生省、環境省、経済産業省など窓口がバラバラだったから問題の対応が遅れたという経緯があります。  

  東京の場合は都環境局のホームページにそれぞれの相談窓口が明記されています。したがって困ったことがあればその窓口に相談するのが一番早いと思います。そして東京都以外の府県でも同様の窓口があると思いますので、何かあったらそこから動いてみるのが早道のよう。

 次に、古い家でアスベストが使われているが、どれほどの危険性があるかという消費者からの質問。
  「古い中古住宅を買おうと思っているが、全アスベスト建材の除去を条件にすべきかどうか?」
  「現在住んでいる家の内装にけいカル板が使われている。これを除去すべきかどうか?」

  そして、これ以上に困っているのが施工者側。

  「古い家を解体しようとすると、近隣からアスベストの危険の有無が問われる。どう対処したらいいか」
  「アスベストの濃度調査を依頼するとかなりの金額がかかるだけでなく、その答えが返ってくるまで2ヶ月も時間がかかる。なんとか簡易な測定法はないか」
  「リフォーム工事の場合、職人の安全のためどこまで配慮すべきか」

 こういった具体的な質問に答えるためには、やはり基本的な知識がなければなりません。でないと、かつてのダイオキシン問題や環境ホルモン問題の時と同様に、過大な被害妄想的危機煽動で追いやられ、本質を見失う怖れがあるからです。  

  池田先生は「石綿は文字通り石の綿だからしなやかで火に強い。耐摩耗性、耐薬品性にも優れている。他の化学物質のように揮発性が問題になることもない。放射線を出すわけでもない。そのまま固定しておれば、これほど安全で有効な資材はない」と言います。

  「ただし、それが浮遊粉塵となると、その繊維が岩綿やグラスウールなどに比べて細く、肺の細胞の中まで入ってきて肺ガンとか悪性中皮腫などの疾患を起こす。したがって、一番問題になるのは鉄骨造の吹き付けによる防火被覆。これはむき出しのままで飛散の怖れが高い」

  「だからといって、すぐに徹底的に撤去するというのもどうか。 私の前任者の古い資料に撤去作業後の濃度を調べたものがある。それによると、その撤去作業が悪かったせいかもしれないが濃度が下がるどころか10ヶ月後逆に上がっている。したがって、撤去は解体時に行うべきで、それ以外の場合は接着剤などで固定し、飛散しない措置をとった方がより安全だと考えられる」

  「一般の住宅に使われているアスベストはボード状の非飛散性。その防火性を活かして屋根、サイデング、軒裏などの外装材として使われてきたほか台所回りや天井の内装用防火材として使われてきている。このほか1985年に製造中止になったが、ビニール床タイルに5〜10%のアスベストが混入され使用されてきた」

  「ボード状のアスベストは、切るとか削るという作業、あるいは割れるということがないかぎり飛散する心配がない。したがって、解体時とかリフォーム時以外はそれほど心配する必要はない。ただし、ビニール床材の場合は掃除などの時に削れて飛散するということが考えられるが、20年前に製造中止になっており、ビルの場合はともかく住宅では緊急の問題となることが少ないであろう」  

  つまり、古い住宅の場合でも建材を傷つけないかぎり神経質になる必要はなく、心配の場合は塗料などで被覆して解体時に除去すればいいということのようです。  

  しかし、阪神大震災で相当量のアスベストが倒壊建築物から飛散し、これが将来大問題を起こすおそれがあるという報道がありました。

  これに対して、池田先生は「具体的なデーターがありません。大震災の時はそれどころではなく、誰一人としてアスベスト粉塵の飛散量調査をやっていません。たしかに部分的には問題のある地域もあるかもしれないが、全体的には問題にするほどのことはないのではないか」といいます。

  私共は普段アスベストの粉塵を全然吸っていないわけではありません。日本やアメリカの環境基準では10本/リットル以下なら問題ないとなっています。
  先に挙げた都の調査だと3つの区の自然空気中に含まれていたアスベストの粉塵量は、1985年頃は1本/リットル、2000年には0.25本/リットル程度。

 仮に平均で0.5本/リットルのアスベスト粉塵を吸引したとします。  0.5本というのは少ないようですが、人間は1時間に20立方メートル以上の空気を吸っています。となると1時間に1万本のアスベストの粉塵を、一日に24万本のアスベストを吸っているという計算になります。

  工場での基準は2000本/リットル。これだと8時間労働でも3.2億本。これだけ吸っても安全だというのが基準値。
  したがって、大震災で一時的に日に4億本のアスベストの粉塵を吸ったとしても、必ずしも肺ガンになることはないということが分かります。

  戦時中の軍艦は火災を防ぐためにそれこそアスベストだらけだったといいます。多くの工場労働者と海軍兵がアスベストの被害を受けたはずです。いや、海軍兵は肺ガンになるはるか以前に撃沈され、若い命を落としました。

  住団連では、解体の際にどれだけのアスベストの粉塵が飛散するかの調査を開始します。
  その調査結果を見ないとはっきりしたことは言えませんが、屋根材や外壁、およびアスベストを含んだ内壁は手壊しで、散水しながら解体すれば、それほど大きな被害が近隣に及ばない筈です。

  アスベスト被害者の救援は急がねばなりません。
  しかし住宅では、用心するに越したことはありませんが、必要以上にアスベストの脅威を語るのは考えものです。