■住宅業界を変えるのはベンチャー軍団かも!? (1)


 ベンチャー・ビジネス(冒険的な事業)というとIT関係の起業のことだと考えている人がいる。
  そうではない。
  豊田喜一郎氏や本田宗一郎氏が始めた自動車事業はベンチャーそのものであった。井深大氏が興したテープレコーダーやウォークマン事業も、中西功氏のスーパー事業も、鈴木敏文氏のコンビニ事業も、安藤百福のインスタントラーメン事業も、井上大佑氏のカラオケ事業も、全てベンチャーであった。

 ベンチャーというのは新しい事業に対する挑戦であり、技術革新(イノベーション)に鬼になってトライする者のこと。

 戦後、日本の注文住宅産業にも4つのベンチャー・チャンスがあった。つまり大きなイノベーションのうねりがあった。

 第1のイノベーションは月販革新。
 戦後、日本の預貯金をはじめとしたあらゆる資金は基幹産業に傾斜的に注入された。産業優先で、庶民の住宅建築に回す金はなかった。
  家を建てる時は親兄弟、親戚から借金するしかなかった。
  その時、毎月貯金をして頭金が1/3になれば残りを融資してくれる月販住宅システムが生まれ、殖産、電建、太平住宅などがあっという間に1万戸企業になった。
  生産システムは従来の古い工務店に依存したままであったが、月賦販売が革新的だった。

  第2のイノベーションはプレハブ革新。
  プレハブの効果、つまり工場生産化によるコストダウンの成果は住宅公団などの中層のプレキャスト版でしか立証されなかった。戸建ての住宅では工場生産化のイノベーション効果はほとんどなかった。
 ただ、提携ローンが付き、モデルハウスとセールスマンが誕生し、住宅を商品化したところに意味があった。
  右肩上がりの時代はこの提携ローンがサラリーマンに歓迎された。プレハブが伸びたのは工場生産化ではなく提携ローンに秘密が…。そしてこれまた1万戸企業が数社誕生。

 第3のイノベーションはデザインとインテリア革新。
 日本にオープンな形でツーバィフォーが導入された。ツーバィフォーを取り上げることは当初間違いなくベンチャーであった。北米で磨き上げられたオープンシステムのもつプランの自由さとデザイン性があっという間に拡がり、同時に女性のインテリアコーデネィターを活用した内装革新は瞬時に三井ホームを1万戸企業にのし上げるとともに、あと数社の誕生が予想された。
 しかしその時、プレハブ企業は多品種少量生産化に成功し、自らの体質を変えることによってデザイン化・インテリア革新の波に乗ることが出来た。そのために三井ホーム以外のツーバィフォー企業は大きくなることが出来なかった。

 第4のイノベーションは現在進行形の省エネ・健康革新。
 次世代省エネ基準の制定や換気設備の義務化、化学物質の規制などによって、この数年間で日本の住宅環境は根本的に変化した。
 しかし、この第4のイノベーションによって現在のところ目立った企業群の台頭はみられていない。
 セキスイハイムがゼロエネルギーで一時のもたつきから脱皮したのが目立つ程度で、スウェーデンハウスや、フランチャイズ・チェーンのFPの家、あるいはボランタリー・チェーンのスーパーウォールにしても一頃の勢いが感じられない。
 第4のイノベーションは、京都議定書に背を向けたまま、このまま萎んでしまうのか……。

  実は、1ヶ月前までは、私も悲観していた。
  R-2000住宅運動は尻つぼみになり、北海道で始まったQ-1運動もはかばかしくない。
  カラ元気がいいのは安物のタマホームとパワービルダーと呼ばれるスプロール化による醜い都市を造り続ける飯田産業グループの分譲屋さんのみ。

  イノベーターが出現しない。
  元気のある冒険野郎が出てこない。

 私は業界人が萎縮しているだけだと考えていた。
  しかし、この考えは間違っていたようだ。

  先の総選挙は、想像以上の大変革をもたらした。
  今までの自民党はそれぞれの業界の代弁者にすぎなかった。
  いわゆる族議員が威張って、肩で風を切って国会内外を歩いていた。
 つまり自民党は医師会、歯科医師会、ゼネコン、農林水産業、遺族会、自動車業界、郵便局など業界の方ばかり見ていてサラリーマンなど国民の方を見ていなかった。無党派層に対して賛同を呼ぶアプローチは何一つやろうとしなかった。ところが小泉首相は憎い守旧派の族議員に刺客を送った。「自民党を潰す」と叫んだ小泉首相は、こうした守旧派と呼ばれる族議員を血祭りに上げた。

  国民はこの動きに喝采を浴びせた。
  国民は、現状を打破するためには「改革」が必要であるということを身体で感じていた。官公労に頭が上がらない民主党では改革が出来ないということも知っていた。

  つまり、既得権の上にあぐらをかいている者が、日本の改革を遅らせている。
  賢い日本人は、守旧派と呼ばれている全ての族議員に天誅を加えた。
  これが、先の選挙の真相だと思う。
  変人の小泉首相だからこそ出来た快挙で、来年首相が交代すれば、またぞろ守旧派の族議員と官僚が息を吹き返してくるだろう。そして、既得権を振りかざして利益誘導型の政治活動を復活させるであろう。そしたら、国民は再び自民党を見限るまでのこと。

  私のような者が政治談議をしても始まらない。
  私が言いたいのは、住宅業界のほとんどの業界人が自分の既得権を守ろうとする守旧派になってしまっているということ。

 かつての第1次イノベーターだった月販各社は、既得権を失って姿を消した。

 第2次イノベーターだったプレハブ各社は、既得権を維持するがために相当隙間面積を5センチに固守したり、京都議定書のサボタージュに励んでいる。
 大手プレハブメーカーは一部を除いて完全に守旧派であり、役所と族議員を巻き込んでアンチ消費者運動を展開している。
 日本のプレハブ企業こそ国民の敵として糾弾すべき時にきていると言ってもよかろう。

  では、ツーバィフォーや木軸構造の地場ビルダーはどうか。
  よく見ると、ほとんどのビルダーの意識が守旧派になっている。ちっぽけな既得権を守ろうと汲々としている。

  今までの商圏、お得意先、仕入れ先、下職……
  そういったものをひたすらに守ろうとしている。

 自分が取り上げたフランチャイズのシステムが、永遠に優れたものだと言ってみたり、構造駆体の中を空気を流して木材を収縮させる馬鹿げた工法を特許のように言い張ったり……。

 これらは、消費者から見ればいずれも守旧派である。
 地場の族議員である。

  つまり、既存のビルダーに過大な期待をしてはいけないということ。彼等のほとんどは冒険者の魂をなくしている。ベンチャー失格者である。

  既存の意識の淀んだ守旧派ビルダー以外に、第4次のイノベーターを求めなければならない。