■フランチャイズやボランタリーが果たした役割 (4)


 今、大きな書店にはベンチャーに関する本が30冊以上並んでいる。

 ベンチャーは流行のようだが、実質は創業よりも廃業の数の方が多い。世の中そんなに甘くない。このため、会社を辞めてはいけないとか、ベンチャーをやってはならないという本も多く出版されてきている。

 森永卓郎氏の「辞めるな!キケン!!」(ニッポン放送刊)とか渡辺仁氏の「起業バカ」(光文社)などがそれ。

 会社を辞める理由は (1) 仕事にやり甲斐がない (2) 給料が安かった (3) 人間関係がうまくゆかなかった (4) 自分に対する会社の評価に不満があった (5) 自由な時間が欲しかった……が主なもの。

 そして、辞めたはいいけど、前よりもやり甲斐のある仕事で、給料が高くて、上司がすばらしくて、自分を高く評価してくれるところなどはない。そして往々にして仕事がなく、ただ自由な時間だけが増えたということになる。

 起業というのは大変難しい。100人がトライして、成功するのは1人か2人という世界だと考えるべき。
 昔の工務店は、独立さえすればうまい汁は味わえなくても食いっぱぐれることはなかった。今は下請けか手間請けで、身分も仕事の保証もない。

 そして、仕事の保証が得られるのではないかとの期待からフランチャイズ・チェーンやボランタリー・チェーンに加入した工務店のなんと多いこと。

 住宅のフランチャイズ・チェーンを語ろうとするとトステムを抜きにしては語れない。
 代表的で有名なのがアイフルホーム。
 全国を140ぐらいにの地域に区切ってそれぞれのエリアの独占的な販売権を工務店が買うというのがフランチャイズの基本なスタイル。
 営業力と企画力のない工務店は、保証料と使用料を払ってチェーンに加入した。そして、宣伝のやり方、完成現場見学会などの手法を学び、主に価格面で地場他社との差別化を図った。

 いくつかの成功例が出てきたら、申し込みが殺到してきた。しかしエリアの数が限られているのでいくら希望されても加入させることが出来ない。
 その申込む工務店の多さを把握して独立したのが現フランチャイズ・チェーン協会の会長であるユニバーサルホームの加藤社長。単なる二番煎じにすぎない。

 ユニバーサルが独立したという教訓から、トステムはいくつものフランチャイズ・チェーンを立ち上げている。
ブライトホーム、ワンダーホーム、GLホーム、ゴーイングホーム。
 つまり5つあれば、最低700社の工務店を囲い込める。
 元トステム社員のベンチャーが展開するフランチャイズ・チェーンの乱立が目立ってきた。これから身を守るにはそれしかなかった。

 住宅のフランチャイズシステムの源流は2つある。
 1つはアイフルホームに代表される低価格路線。
 もう1つは公庫のパッシブソーラー融資という利権におんぶしたOMソーラー、ソーラーサーキット、エァーサイクルなどの中断熱住宅がそれ。

 ツーバィフォーメーカーの多くがパッシブソーラーの認定を得た。そして、私の友人も他人の褌で相撲をとろうとフランチャイザー、つまり加盟店の募集を行った。しかし、商売として成功したのはOM、ソーラー、エァーサイクルなどにかぎられていた。

 その次に登場したのがFPの家に代表される高気密高断熱住宅のフランチャイズとセルコホームに代表される輸入住宅。
 ともかく、10年ぐらい前には猫も杓子もフランチャイズを目指していた。私の知っている共産党系の工務店主が私を訪ねてきて「今フランチャイズが商売になる。在来の高気密住宅をやりたいから手を貸してほしい。内容はなんでもいい。カッコさえついておればカネになる」とのたまった有様。

 そして、その次は自然素材のフランチャイズとか、無垢の家のフランチャイズなどというものも登場してきた。いずれも欲の皮を突っ張らせた商売人の策動。そのほとんどが成功を見せていない。高い保証金と毎月の支払いに見合うだけのメリットが加盟店にない。ノウハウのないものは消される。

 そういった中で、成功例をみせてきているのが剛金物工法による木軸工法。
 代表例としてアキュラホームと新昭和のクレバリーホームがあげられる。新昭和は昔からのツーバィフォー仲間であり、省エネ性能には問題があるが、構造や営業ノウハウの面ではきちんとやっている。

 こうしたフランチャイズシステムを運営する側はベンチャーそのものであった。
 しかし、加盟店にとってどれだけのメリットあったのだろうか。
 私の知っている範囲では近代ホームをはじめとして数社の工務店は継続的に仕事がとれるようになってフランチャイズに加盟したことを感謝している。

 「起業バカ」ではフランチャイズに加入して独立できるというのはとんでもない間違いだと書いている。
 しかし、日本には小売り、外食、サービス(この中に住宅、リフォーム、ビルメンテ、輸入住宅などのチェーンが含まれている)を中心に約1100にのぼるフランチャイズが存在している。このうち協会に加入しているのは280社にすぎないが、フランチャイズは日本の1つの企業形態として存在が確立していると考えてよい。

 そして、加盟店がフランチャイジーから独立することがベンチャーだと言えるのだと思う。つまり、1、2年付き合っているうちにフランチャイジーの手の内が分かってしまう。セブンイレブンのように日々進歩し、イノベーションを続けているわけではない。

 退歩しているフランチャイズから脱会して、独創的な方法で自力展開を図ることこそが1つのベンチャーである。いつまでもおんぶにだっこでぶら下がっていてはいけない。勇気を持つべきであろう。

 もう1つの形態であるボランタリー・チェーン。
 住宅業界における代表的なものがこれまたトステムのスーパーウォール。

 これは、指定されたエリアを持っているわけではない。独占的な販売権もない。30万円払って2日間の勉強をすれば、誰でもシステムを使うことが出来る。必要なツールが全てついて研修費込みで30万円だから安い。

 私は、スーパーウォールが果たした役割は非常に大きかったと思う。というのは、全国で約2万人の工務店がトステムの研修を受けている。そこで、なぜ結露するのか、K値とは何か、Q値の重要性、C値持つ大きな意味を勉強した。これが、全国の工務店の技術レベルと意識を底上げした。
 不勉強なパッシブグループよりも真面目で、真剣な工務店群が生まれてきたのである。

 そして、ここでも勉強を重ねた工務店の離脱が起こってくる。スーパーウォールシステムに劇的なイノベーションが見られないからだ。

 この離脱も、1つのベンチャーなのだと思う。