| これは全ての産業に言えること。 常に新しいベンチャーが誕生し、元気に活躍を開始してくれないと、その業界は空気が淀み、窒息死に到る。 元気なベンチャーのない業界は、それこそ既得権の亡者がのさばっている世界。 住宅業界で、今戸数で注目されているのはタマホームと飯田産業グループ。 彼等に素晴らしいイノベーションがあったのなら、強い拍手を送りたい。 しかし、タマホームの1人当たりの生産性を考えると、とてもイノベーターと呼ぶわけにはゆかない。 飯田産業グループも土地価格の低落という時代の背景が生んだ単なる社会現象に過ぎない。早晩色が褪せ、退化をはじめるのではなかろうか。 とすると、次のベンチャーは誰がなるのか。 その資格条件は何か。 現在、その萌芽を見ることが出来るのか。 具体的に、この数年以内に独立し、しっかりと基盤を固めて成長している企業があるのかどうか。 ある。 いずれそうした企業を機会がきたら紹介したいと思う。 しかし、その前に、これからの成功企業の条件を確かめておきたい。 いままでの住宅業界では、成長企業と呼ばれたのは構造、性能、機能、デザインが悪くても、ただひたすらに戸数さえ確保すれば勝ち組とされてきた。 住宅産業研究所に代表されるジャーナリストが馬鹿げた戸数主義を煽っている。 住宅というのは消費財ではない。 国家国民の資産であるといいながら、10年たったら産業廃棄物化するような粗悪品製造業者を称えている。 こういった考えとは完全に決別しなければならない。注文住宅ではいたずらな戸数主義は弊害以外の何ものでもない。 しかし、戸数を追わないと言っても、年間1戸とか3戸しかやらないというのでは産業ではない。そういった個人企業の存在を否定はしない。しかし、年間数戸単位のベンチャーがいくら増加しても世の中を変えてゆくことは出来ない。 生産性を上げ、消費者に対して技能と技術と性能を担保してゆくには一定のエリアでコンスタントな需要が確保し続けなければならない。 ビルダー業として一番大切なことは、一定のエリアでコンスタントな需要を確保出来る能力を持っているかどうか。 コンスタントな需要がないと、大工や下職を計画的にコントロール出来ない。一定の技術と技能レベルを確保し、高い水準で性能を維持することが出来ない。ジャスト・イン・タイムで現場を効率的に管理することが出来ない。 では、コンスタントな需要とは一体何戸なのか。 狭いエリアでは月1棟。年間12棟。 これを全てのビルダーの最低目標としたい。 つまりベンチャーとしてエントリーする以上は、最低この数値目標を達成する具体的なプランがなければならない。それが描けなかったら、ベンチャーを諦めた方がいい。つまり企業としての社長業をやる資格がないと考えてもらいたい。 顧客と社員と下職のために、これは社長として果たさねばならない最低の義務だと考えるべき。しかも、あれもこれもの多角的商品ではなく、これという1つの限定商品で…。 その次のハードルは月2棟。年間24棟。 私は、7人程度のスタッフで、この数値目標が達成出来る元気なビルダーが数多く輩出することこそが、地域と日本のためになると考えている。 高い意欲と強いポリシーがあれば、高い生産性で大手住宅メーカーに対してもいささかもひけをとらない。ものすごく強い企業になれる。 社長が個人的な欲望で自分を見失うことなく、顧客第一主義に徹して誠心誠意尽してゆけば、必ずOB客の支持が得られ、輪が需要を生んでくれる。 OB客の支持が得られないということは、社長の人間性が信用されていないということである。仕事の内容に手抜きと言わないまでも手抜かりがあるということをOB客に見抜かれているということでもある。社長失格者の証左。 さらなる意欲のあるトップには、月3棟、年間36棟を目指して欲しい。 1つのエリアで、コンスタントな需要の妙味が最も発揮されるのがこの年間36棟から48棟の範囲。 36棟の場合の理想的なスタッフ数が11人。48棟の場合のスタッフ数が15人。 これを、どのように配置するかでその会社の性格が定まる。 これからの注文住宅での地場ビルダーの場合、純粋な営業マンは次第に不要になってゆく。営業マンがいる会社は分譲主体の会社のはず。 だからといって、営業活動そのものが不要ということではない。コンスタントな受注こそビルダー業の最大のポイント。そして最強の営業マンが社長であるべき。ベンチャーの場合は徹底的に社長のポリシーと人間性を売るしかない。 自分しか売るものがないのだ。 そのことをどれだけ自覚しているか。自覚して徹底的に自分を売り込んでいるか。 住宅ベンチャーの社長は、何よりも人間が好きでなければ勤まらない。技術に明るく、静かに理路整然と話が出来なければご主人の信用を得ることは絶対に出来ない。信用が得られない者に営業が出来るわけがない。 そしてセンスが良くなくては駄目。 そう。センス。 カッコの良い住宅を構造的に問題なく納めることが出来るノウハウを持っていなくてはならない。いや、それどころか「はっ」とする提案が出来ないと女性の右脳を刺激することは出来ない。 これからの住宅のメインのお客は女性。 その女性のハートを掴めないようではベンチャーのトップとしての資格がない。 IT関係のベンチャーのトップは若い。 アイデアだけで勝負が出来るからだ。斬新なアイデアだったら若さが物を言う。 ところが、住宅の場合は人間が相手。多くの顧客に社長が信用して貰えるかどうかがポイント。そのためにはある程度の経験の裏打ちがないと化けの皮が剥げる。自分の考えを絵やプランにするのではない。それは押し売り設計家の仕事。そうではなく相手の考えている潜在的なプランを引き出して立体的な絵にし、情緒あふれる空間にまとめあげてゆく。 これが注文住宅業。 その作業に精通していない者は注文住宅ベンチャーのトップになってはならない。 したがって、現場、営業、設計、開発、アフターなどの全てを経験した30才後半でないと、これからの注文住宅ベンチャーのトップは勤まらないはずだと私は考える。 単なる営業上がりとか現場上がり、あるいは設計上がりではダメ。 ともかく注文住宅ベンチャー・トップの条件は限りなく厳しい。 (ひとまず終了)
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