■高気密地場ビルダーにとって今年こそ画期的な年に!


 あけましておめでとうございます。
 よく「今年こそ…」と言います。
 しかし「こそ…」などというお化けが出たためしがありません。それなのに「今年こそ高気密地場ビルダーにとって画期的な年に!」というのは、ハッタリ以外の何ものでも…。

 しかし、世の中は確実に変化しています。
 昨年出現したハイムのシェダンが、R-2000住宅認定制度の瓦解でチンタラしていた数年来の沈滞ムードを一掃してくれました。
 北海道を中心にQ-1運動(熱損失係数を1W以下にする運動)が起こりました。
 この運動は、まだタネ火にすぎません。
 燎原を焼く炎にはほど遠いものがあります。
 しかし、大地の枯れ草の上に放たれたのは事実。

 そして、年末にはスウェーデンのハンス・エーク氏の無暖房住宅の講演会が日本の数ヶ所で開催され、今春からはスウェーデン詣でが始まろうとしています。
 いきなり無暖房までゆくのはどうかという気もしますが、仙台では無暖房のモデルハウスが完成間近になっており、長野では今年6月完成を目指して無暖房の介護施設の建設が計画されています。

 これは投下資金対回収、つまり資金効率の問題。
 投下した資金を何年で償却するかの話。

 今までのように15年間の償却とします。無暖房化するために300万円余分にかかるとすると、毎年20万円電気代やガス代が安くならないと見合いません。年間7〜8万円の省エネ効果では持ち出しに…。

 しかし、これからの住宅の耐用年数を80年とします。
 となると、80年後にも十分に通用する性能と機能を備えていなければなりません。

 21世紀後半の省エネ基準は、誰が考えても次世代基準のままではないはず。

 20年前から首都圏でR-2000住宅を建ててきました。当時の最新の技術の粋を集めて…。しかし、いまになってみればありふれた高気密住宅の1つにすぎません。その1.5倍の性能の住宅がどんどん提供されています。20年間でこの有様。やはり50年、80年先を読まねばなりません。

 21世紀の後半の省エネ基準はQ-1どころか限りなく無暖房に近いものになっているはず。基準変更のために途中でリフォームするとしたら、とても300万円では上がりません。最低1000万円は必要でしょう。

 そして、300万円を80年で償却すると考えてみましょう。
 年間3.75万円の省エネ効果で十分。
 80年ではなく、60年で償却するとしても年間5万円の省エネ効果があればお釣がきます。


 もちろん金利のことも考えねばならないので、年間7〜8万円の省エネ効果が必要です。しかし金利を上回るメリットがあります。それは健康性であり、快適性。

 健康性、快適性までも含めて考えると、Q-1住宅は20年で償却出来、無暖房住宅は30年で償却出来ると言っても過言でないはず。

 つまり、イニシアルコストに金をかけるか、毎月のランニングコストとしてダラダラと払ってゆくかの違い。トータルで考えると、絶対にイニシアルコストの方が有利。資金に余裕のある人には自信を持って80年住宅を提案すべき。

 口では80年とか100年住宅と簡単に言えます。しかし、実際に80年の使用に耐える住宅を造ることは容易な話ではありません。耐震性の構造強度や駆体の耐火性、断熱性、気密性などの基本性能は現在の技術体系で十分に担保が可能。

 しかし、屋根材、外壁材、サッシ、トイなどの外回りの耐久性を80年間担保することが出来るのか。現に某トップメーカーの最高級の屋根材が10年間で取り替えざるを得ないという事実があります。高断熱引き違いサッシの気密性と耐久性は一体何年なのか。取り替える時はどうしたらいいか。
 サイデングはどうか。雨樋はどうか。

 もちろん、内装仕上げ材はプロに頼むか自分自身でやるかは別にしても貼り替え、塗り替えが必要です。
 一番問題になるのは配線と配管。80年後の生活に耐えられるのか。簡単に取り替えられるのか。
 さらに厄介なのはダクト工事。現在はなくても平気だが、80年後どころか20年後には不可欠となっていないだろうか。 さらに、80年も100年も街並みの景観として耐えられるだけのデザイン性があるか。内部空間の情緒豊かな広がりや機能性、収納性などを含めた広い意味での耐久性があるかどうかが問われます。

 今までの、工期短縮を謳った馬鹿げた家造りの時代は完全に終わりました。最低80年の社会的寿命、80年後も快適生活が可能な実質的長寿住宅のスロー・ハウジングの時代へ。

 昨年暮れの26日の日経新聞紙上に、コラムニストの西岡氏がシュンペーターの面白い言葉を紹介しています。
 「私は2種類の人間を信用しない。1つは簡単な答を与えると公言する経済学者。もう1つは安く家を建築すると公言する建築家…」  

 早くて安い消費財的家造りはプレハブメーカー、分譲屋のパワービルダー、焼き畑農業のタマホームに任せましょう。彼等は頭から80年住宅を造ろうという発想は毛ほども持っていないのだから。シュンペーター以外からも信用されていないのだから…。  

 地場ビルダーは、今まで通り徹底的に性能にこだわってゆきましょう。まず拘らなければならないのは構造駆体の耐震性、耐火性、断熱性、気密性です。当然24時間の顕熱機械換気が欠かせません。これに内部空間に無垢の木の暖かみと木目のゆがみが持つ癒し機能を加味して…。

 ご存じのように、鉄骨造は断熱性能と気密性能に致命的な欠点を持っています。ハイム以外は早急に解決しようとする意欲も手段も持っていません。パワービルダーもタマホームも10年保証住宅にすぎません。そう「10年ポッキリ保証」。

 問題は、その性能の差をどう表現してゆくかです。
 Q-1(キュー・ワン)住宅と言っても消費者は馴染めません。
 無暖房住宅と言っても、ほとんどの人が何のことか理解に苦しむでしょう。

 暖房だけでよいスウェーデンやドイツでは、住宅の年間暖房費は「建築面積m2当たり何リッター必要か」で表現します。
 「タマホームは10リッターで、わが社の住宅は3リッター」という具合に。そして、最近では3リッターどころか2リッター住宅とか1リッター住宅が出現してきています。
 リッター60円とすると120m2の3リッター住宅の年間暖房費は2万1600円、1リッター住宅は7200円ということ。半年以上も暖房が必要な寒冷地でこの価格…。これだと誰にも明解。

 日本では品確法で等級3とか5と言っても意味がわかりません。また、等級5以上の性能を正しく表示し、その性能を認証してくれるシステムがありません。このため、先進的なビルダーの試みが評価されず、京都議定書の達成が困難視されています。トップランナーを支援するシステムが絶対的に必要。

 そして、このシステムは国土交通省とか経済産業省にお任せしておれば出来るというものではありません。意識の高い民間が先行するしかありません。

 2年近く前からこの面で地道な作業が続けられてきています。おそらく、今春には陽の目を見ることになるはず。 それは、地場ビルダーの応援歌でもあるはずです。