■「オール電化住宅讃歌」に一抹の物足りなさ


 暮れから正月にかけて住宅・建築関係の本を7冊拾い読みしました。

・前川国男・賊軍の将 宮内嘉久 晶文社1800+税
・日本の現代住宅1985-2005  ギャラリー・間
  TOTO出版3800+税
・大人家族の家づくり 杉本薫 
インデックスコミュニケーション2500+税
・きもちのいい家 手塚貴晴・手塚由比 
清流出版1500+税
・環境に優しいオール電化住宅 加藤憲一郎
ダイヤモンド1500+税
・家だけなら造りたくない 唐橋一男
ハウジングエージェンシー1200+税
・「間取り」で楽しむ住宅読本 内田青蔵
光文社新書740+税

 一番期待していたのが「前川国男」。
 著者は前川国男の作品集を編集しているだけに期待していたのですが、内容はダラダラとしていてアクセントがありません。著者が悪いのかそれとも建築家そのものの存在に劇的な要素が少ないせいなのかは分かりませんが、人物像が鮮明に浮かんでこない。ただ年表をたどっているだけという感じ。正直言ってがっかりさせられました。

 500ページにもおよぶTOTO出版の「日本の現代住宅」。
 建築雑誌を飾った作品を集めたものだが、これは立派につまらない。建築家というのはどうしてこれほどまでに子供や大人の情緒を破壊することが好きなのだろうか。柔らかみも暖かさもなく、自分を主張しまくって、生活者の姿と匂いを消すことに専念している。3990円を返してくれと言いたくなります。

 「きもちのいい家」は建築家が施主を訪ねての対談が面白いが、それにしても紹介されているのは5年間でたった9棟。建築家というのはこの程度の経験しかないのですね。そして見晴らしは気持ちいいかもしれないが、断熱とか遮熱はどうなっているのか。室内空気環境とか温湿度のバリアフリーについて何も触れていないのが気にかかります。

 これらに対して「大人の家族の家づくり」は、施主の顔と生活が伺い知れてうれしくなってきます。住宅というのは、主役はどこまでも生活者なのです。生活者の感動と安らぎの息づかいが伝わってこないものを礼賛している建築雑誌はどこか狂っていると思うのは間違っているのでしょうか。

 こういった次第で、今年も住宅関係の書籍コーナーには面白い本がありません。

 ただ、友人の加藤憲一郎著の「環境に優しいオール電化住宅」だけが、少し印象に残りました。
 それにしても肩書きが「住宅問題評論家」とあるのには笑いました。たしかに、かつてはこういう肩書きが通用していました。ということは住宅が社会問題としてとらえられていたという証拠。

 自動車問題評論家とか家電問題評論家、半導体問題評論家などという存在にお目にかかったことがありません。ただ、エネルギー問題評論家というような表現は聞いたことがあるような気がしますが…。

 さて、住宅問題評論家が論ずるオール電化住宅の問題とは何か。

 氏はマンションなどを主に取材していたこともあって「1975年頃からデラックスマンションにオール電化が登場してきた。そして1980年頃になるとファミリータイプのマンションにもオール電化を採用するところが増えてきた」と書いています。

 つまり、オール電化というのは昨日今日始まったものではなく、今から30年前からとくに高層マンションから普及を見せ始めていたということです。この理由は何よりも防火という点にあります。

 東京電力の調べによると、東電のエリア内のオール電化の普及は次の通り。
  1975年   2棟  387戸
  1979年   81棟  7859戸
  1982年  368棟 22347戸
  1986年  1127棟 44217戸

 ただ、この時のオール電化の概念は「建物内では熱源として電気しか使わない」ということであって、システムとしては旧世代のもの。

 具体的にはIHクッキングヒーターではなく、シーズヒーターのクッキングヒーター。給湯はヒートポンプ方式のエコキュートではなく深夜電力利用のみの給湯・貯湯方式。
 
  ところが、当時の深夜電力利用の貯湯器のサイズは大きく占有置き場が1m2を占めるほど。当時のマンションの価格は1m2当たり52〜53万円はしていたので、貯湯器を置くことによりそれだけコストアップとなった。このため、ガスメーカーによるTESシステムの巻き返しでオール電化は鈍化を見せるようになりました。

 それが高気密高断熱住宅の普及。京都議定書の締結。エコキュートの開発などによりオール電化全盛時代を迎えようとしているわけです。

 その中でも、ポイントはエコキュートの普及にあると住宅問題評論家は言います。
 なぜなら、関東地域では家庭用エネルギーの最大が照明・家電製品であり、次が給湯だからというのです。
 引用しているのは「家庭用エネルギー統計年表 2002年版」(関東)です。

  照明・家電製品他    41%
  給湯用         36%
  暖房用         22%
  冷房用          1%

 つまり温暖地の関東では照明やテレビ、パソコンなどに使われるエネルギーが最大で、これは節減出来ない。そして、暖冷房はたったの23%しか占めていない。ケチケチ使っている暖冷房費をこれ以上減らすわけにはゆかない。となれば、一番てっとり早いのは給湯費を節減させることだ。それにはエコキュートの普及が一番。

 これは、何も住宅問題評論家だけが指摘していることではなく、国土交通省が言っていることです。
 東京以西では暖冷房費が問題ではない。問題は給湯費の節減だと…。

 性能の悪い住宅に住んでいる人は、部分冷暖房で、間欠冷暖房で我慢しています。うっかり気を緩めると限りなく冷暖房費がかかる。
 実際、北海道の家や東北の家に比べて、東京の家の冬は寒くて夏は暑い。熱帯夜で寝不足になり、ストレスが溜まる。だけど我慢している。その我慢の結果として冷暖房費が相対的に低く見えるだけのこと。

 これは、全館24時間暖冷房しても電気代があまりかからないという住宅を供給していない住宅メーカーに最大の責任があります。その責任を問わないということは、これから30年も50年も東京以西の消費者に我慢を強要してゆくということにほかなりません。

 オール電化ということは、全館24時間快適温湿度空間を維持するということでなければ意味がありません。理想は24時間冷暖房運転しなくても快適であることですが、24時間冷暖房運転をしても光熱費は今のケチケチ運転よりも安くするというのが住宅に携わっている企業の責任。
 その、肝心の論点が抜けています。

 それともう一つ抜けているのがクッキングヒーターの電磁波の問題。
 あの船瀬俊介氏が、ガス業界の支援を得たのかどうかは定かではありませんが「やっぱり危ないIH調理器」(三五館刊)を刊行しています。これを読むと多くの人が不安を覚え、正式な反論を用意して欲しいと心から望んでいます。私の周辺のビルダーの多くが、オール電化には賛同しながらも電磁波の問題では若干の迷いがあります。

 たしかに、各電力会社のホームページなどを見ると、心配ないように感じます。しかし、高圧送電線の下で生活していて電磁波過敏症になった人の苦しみをつぶさに見て、締め付けられるような胸の痛みを覚えてきたのも事実。

 オール電化の良い面だけを強調されると逆に不安を覚えます。電磁波に関しては、北里大学をはじめとした諸先生、厚生省、電気、ガス関係者、消費者を含めた第三者機関でその安全性と注意点、問題点を明確にして欲しいと思います。

 「住宅問題評論家」が、その「問題」を避けて通ったという点が納得出来ません。