プレハブ住宅が狙っていたものは何か…。 端的に言うなれば、それは大工(大九)さんではなくて大六さんの技能レベルで、それなりに見栄えのいいものが出来ること、にあった。 たしかに高度成長時代は労働力の枯渇化が深刻であった。そして、現場の職人さんの高年齢化が進んできている。このままでは大工さんをはじめとして専門職になり手がない。ますます工場生産化、乾式工法の比率を高めてゆかなければならない。 これが、大儀名分。 ところが、各社のやっていることはというと、決して手離れのいいことをやっているわけではない。 たしかに、クレーンを使っての建て方は早い。といっても別段に驚くほどのことはない。木軸組だって、ツーバィフォーだって、クレーン車を持ち込めば2、3日で建て方は終わる。 工場で加工しようが、現場で加工しようが、クレーン車を入れての建て方時間はどの工法でもほとんど差がない。 そして、建て方が終わってから、やたらもたもたしている…。 ローコスト住宅だったらある程度の企画品で我慢してくれる。こちらで用意した範囲内の仕様で押し切ることが出来る。 ところが、最近のプレハブ住宅の単価は地場工務店に比べて20%は高い。間違いなく高額物件。高いカネを払うのだから当然のこととして出来合いのプランや仕様では満足してくれない。 体裁のよい言葉で言えば多品種少量生産。それにオプションをも増えてくる。 極論すれば「何でもあり」の世界になってきている。このため、建て方の後の工期が現場工法と変わらないほどかかる。 一昨年、知多市に完成したトヨタホームのユニットの58坪の2世帯住宅を訪ねて、腰が抜けるほどびっくりした。 外観はシンセ・レゾンと呼ばれる平凡な切妻タイプ。これだと簡単に出来ただろうと中に入ったらとんでもない仕上げが待ちかまえていた。 ご一家は親夫婦と若夫婦、それに2人の弟とブルドック犬4匹の大家族。 犬との同居を前提に考えられているので玄関床も上がり框も大理石。そして、床が滑らず掃除も容易にということで南海プライの特殊な床材。そして、壁は腰の部分に見切縁がつけてあって、下部は犬のおしっこがかかっても簡単に掃除が出来る特殊な壁紙が張ってある。 それだけではない。中廊下を明るくしたいというのでLDKの2枚のドアはガラスドアで、このほかに天井から床までの縦長の特注はめ殺し窓が2ヶ所に付いている。 さらに家族が多いので洗面のボールは特注で2つついており、下部をドアで隠している。洗濯機も見えないように扉で隠し、浴室には特別大きな浴槽が収まっている。 これがプレハブの極限のユニット住宅だとは、どうしても信じられない。 さらにフリープラン対応のエスパシオと呼ばれる鉄骨軸組になると、もっとけたたましくなってくる。八王子の新居を訪ねてみたら外観にアールがついている。ルーフバルコニーに上がる階段には無垢材で現しになっている。呆然…。 一級建築士の設計プランナーは「当社の場合は骨組みと外壁は変えられませんが、プランとか仕様は原則として自由。とくに内部仕様に関しては顧客の要望を最大限取り入れるようにしています。床を無垢のフロアーにすることも石貼りにすることも自由です。1割程度ですが珪藻土にしたいという要望にも応えています。ホーム東京の場合は1級建築士が展示場に常駐していて、最初からお客の要望に応えられる体勢を作っています」 よく言えば顧客志向型。 悪く言えば駆体だけプレハブであとは現場放任のお任せ型。 クレーンを使っての建て方は、大六さんで済ますことが出来る。つまり構造に関しては目的どおり大六さんで可能になった。 ところが、床は無垢のフロアーにしてくれとか、階段を無垢の現しにしてくれとなると、大六さんでは手に負えない。 大工さんの再登場とならざるを得ない。 |