寝屋川市民たすけあいの会30周年記念講演会&シンポジウムを6/29(日)に開催いたしました。
(1) 記念講演会「寝屋川市民たすけあいの会の30年の活動から地域福祉、市民活動の原点を考える」
上野谷加代子さん(同志社大学教授、寝屋川市民たすけあいの会前代表)
(2) シンポジウム「多様な市民のたすけあい、暮らしあいをつなぐ ―ともに生きる地域づくりをめざして―」
《コーディネーター》 守本友美さん(皇學館大学教授・寝屋川市民たすけあいの会運営委員)
《シンポジスト》 佐野章二さん(有限会社ビッグイシュー日本代表)
清水明彦さん(西宮市社会福祉協議会・障害者生活支援グループグループ長)
大谷秀之さん(社会福祉法人ならのは理事長)
冨田昌吾さん(寝屋川市民たすけあいの会)
→当日の資料です(PDF)1,2,3。
【当日のレポートです】
寝屋川市民たすけあいの会が活動を始めて三〇年の区切りに、会の活動の意味やめざしてきた「ともに生きる地域づくり」に必要なことをあらためて考える機会として、三〇周年記念講演会&シンポジウムを平成二〇年六月二九日に寝屋川市立総合センター講堂で開催しました。新潟県、愛知県といった遠方からも含めて約一〇〇人の方に参加していただき、なつかしいお顔もたくさん見えました。
[記念講演会]
森川加代代表のあいさつに続き、前代表の上野谷加代子さん(同志社大学教授)に「寝屋川市民たすけあいの会の三〇年の活動から地域福祉、市民活動の原点を考える」と題して講演をしていただきました。
●私にとっての「たすけあいの会」
公的サービスが少なかった当時、地域のニーズに応えて在宅介護をすすめるうえで、当事者とボランティアがお互いに理解を深める学習と支援の組織化が必要でした。寝屋川に住む若手研究者だった私は「実践をふまえた研究をしてはどうか」と大阪ボランティア協会から呼びかけられ、気がついたらつながっていました。会の仲間の力と困っている人たちの「地域で暮らしたい」という思いがエネルギーになり、実践を先生として、創り出す楽しさを実感してきました。
●地域福祉、市民活動(の原点)を考える
地域福祉が主流化されたと言われますが、実践、理論にくらべて政策は遅れており、統合化されていません。それは地域福祉がわかりにくいためでもあるので、社会福祉の目的である「幸せ探し・幸せづくり」を「だれが・だれと・どこで・どのように」つくっていくかにこだわってすることだと説明しています。そしてそれは、地域で生活していくうえで具体・個別に生じる多様なニーズを解決することから始まります。公的なサービスとその間を埋めるボランタリーな支援がなければニーズを支えることはできません。ニーズをていねいにみているのも地域の人です。それらをリンクし、生活の変化に応じて支援する流れを地域のなかでつくっていくのが地域福祉です。たすけあいの会はボランティア活動、有償のサービス、NPOとしての事業などの重層的なネットワーキングを本人中心につくってきたので、困難な課題にも対応できるのです。地域福祉を構成する要素は「福祉課題の解決」とそのための「自治的な政策の展開」、「コミュニティづくり」、「仲間づくり」の4つであり、どれが欠けても地域福祉とは言えません。そのための行動原理・組織原理が「市民参加」と「協働」であり、民と民の協働、公と民の協働をどのように行ってくかが問われています。地域福祉は市民活動ぬきには成立しませんが、行政責任が行政権限、そして専門職の専門性や論理を貫徹しなければ成り立ちません。行政や市場からの圧力が大きくなるなか、常にニーズに耳を傾け、市民社会を大きくしていく活動を担っていくことを、これからのたすけあいの会に期待しています。
[シンポジウム]
続いて、守本友美さん(皇學館大学教授・寝屋川市民たすけあいの会運営委員)のコーディネーションで、「多様な市民のたすけあい、暮らしあいをつなぐ」をテーマにシンポジウムを行いました。シンポジストはホームレス問題の解決にビジネスの手法で挑戦しておられる佐野章二さん(有限会社ビッグイシュー日本代表)、重度障害者の地域自立生活支援を、本人を主人公にしたともに生きる地域づくりの視点ですすめておられる清水明彦さん(西宮市社会福祉協議会障害者生活支援グループ長)、認知症高齢者のグループホームや障害者の作業所を拠点に、地域の人たちとともに幸せに共生できるまちづくりをめざしておられる大谷秀之さん(社会福祉法人ならのは理事長)、寝屋川市民たすけあいの会事務局長の冨田昌吾さんという、まさにたすけあいの会の実践理念である「つなぐ」を具現化したメンバーです。
●ビッグイシューの起業と経営(佐野さん)
地域社会にはホームレスは「招かれざる人たち」だという気持ちがあります。私も同じですが、そこで「何とかならないか」と考えて「救済」、「支援」、「たすけあい」ではなく「ビジネスパートナー」として仕事を提供するビッグイシューを始めました。「若者の活字離れ・路上販売文化の不在・情報はタダ・ホームレスから買わない」という四重苦のなかで一〇〇%失敗すると言われましたが、正面を切って反論することで本気さが伝わりました。新しい市民活動は「言論・思想の戦い」であり、最も強いところを突くことでチャンスが生まれます。
●たいへん障害が重い人たちが拓いてきた地域の暮らし(清水さん)
重症心身障害の人たちと出会い、自分と違う存在の価値に引き込まれて地域での居場所づくりの活動に加わりました。青葉園という拠点施設から、職員がその人の値打ちを引き出す通訳者となって地元の公民館で集いを開き、「何とか地域をよくしていこう」と考える人々と「同じ住民としての関係」が生まれました。気の毒な障害者の世話をするのではなく、市民活動のメンバーとしてお互いに「その人が地域にいないと困る」という関係を紡ぎ、一人ひとりの支援の輪をつくってきました。その意味では「価値」を創り出すビジネスパートナーです。それが福祉の仕事であり、こんなに生産的に面白いことはないと思っています。
●地域にたすけられている「ならのは」の現状(大谷さん)
企業に十五年勤めた後にならのはを立ち上げて九年の福祉の素人です。鍵をかけない出入り自由のグループホームですので、行方不明になった人を地域の人に見つけていただいています。隣にある保育園の子どもが毎日来てくれておとしよりと歌を唄ってくれます。職員の半分は地域の人で、本当に地域の人たちに助けられています。何かしないといけないとは思いますが、職員にも笑顔で過ごしてほしいので、地域に助けていただくようにしています。
●たすけあいの会のあゆみと現在(冨田さん)
たすけあいの会に来て十六年目です。いま出会っている人と十年後、二十年後に出会い直すことが地域で活動を続けていくことの意味ですが、後から参加した者には歴史の重みや引き継いでいくべきことに新たなエッセンスを加えることの辛さを感じます。ボランティアには「助けてあげたい」という動機があるので「たすけられあい」はあまり上手ではありませんが、お互いのしんどさを話しあう関係性のなかで新しい関係ができていきます。それは、現在のたすけあいの会では「当事者の当事者としての活動」として支援し、地域で固有名詞で知り合う関係をどこまで多様化できるかということだと考えており、「たすけあいの会と知り合っていれば地域から排除されることにはならないしくみづくり」が究極の理念だと思っています。
●どのようにして「つながり」をつくってきたか
人は「収入」と「家」だけでなく「頼れる人」がなくなってホームレスになるので、お金を得るだけでは自立できません。自己肯定できるつながりやモチベーションが必要なので、スポーツや文化活動も支援しています(佐野さん)。障害者も大事なのはその人の希望であり、ともに生きていくなかでそれを見いだしていけると実感しています。そのことにみんな薄々気づいているので、本人を主体とした取り組みを展開することは、まちづくりの希望にもつながると思います(清水さん)。職員もならのはを利用していろいろなことを体験してもらうと考えることで、「助ける・助けられる」の関係が瞬時に変わる職場をつくってきました。それが利用者の自立にもつながり、みんな幸せになれると思っています(大谷さん)。他の地域から来た人が多いまちで、たすけあいの会に関わることで地域とつながるしくみをつくてきました。たすけあいの会は地域そのものです。人と人のつながりが薄い地域で新たな出会いをつくるハブになっているだけですが、いろいろな人に関わっていただくことで「地域の縮図」になっていると感じています(冨田さん)。
●個別のニーズからのつながりをどう広げていくか
地域が空洞化して人と人がつながる原理が変わったことの象徴がホームレスです。ビッグイシューは街角にコミュニティをつくることから社会をつくり直すことを意識しており、敗者復活ができる社会をつくりたいと思っています(佐野さん)。ならのはのホールで作業所の人たちが喫茶をしていますが、一角におもちゃを置き、興味を示したお母さん方に「学童保育をしてはどうか」と話しています。そのように地域に助けてもらうしかけを考えています(大谷さん)。新しくできた地域の公民館で活動していると、みんなつながることを求めていることがわかります。障害者が「触媒」になるということを地域に知らせないのは申し訳ないと思います(清水さん)
●「地域」や「つながり」をどう捉えているか
人と人が出会えない現実の社会をどう考えるかについて、地域で活動している人たちにもっと発言や提案をしてほしいと願っています。ビッグイシューも社会をどうするかを考え続けないと持続できない存在だと思っています(佐野さん)。人の値打ちが消えていくような社会、主体と主体の関わりであるたすけあいが二流のサービスのように矮小化されていることに危機感をもっており、価値観を転換できるようきちんと発信をしたいと思っています(清水さん)。利用者も職員も疲れ、痛んでならのはに来られます。復活してもらうには「いかに楽をするか」しかなく、どうすれはみんなに少女パレアナのような笑顔と喜びが出るのかを真剣に考え続けたいと思っています(大谷さん)。福祉が制度化されていくなかで、「サービスを受ける・提供する」という関係がたすけあいの会の活動に馴染み、お互いにつくりあう関係になれるのかということに、疑問を感じ続けています。どうやって出会いをつくっていくか、いつでも迎えてくれる雰囲気をもち続けるかを、みんなで考えていければよいと思っています(冨田さん)。
討論をふまえ、コーディネーターの守本さんが「三〇年を区切りとして、つぎにたすけあいの会が地域のなかでどのような出会いや関係をつくっていくのか、一人ひとりが地域社会の一員としてどのようにつながっていけるのかを考えるきっかけになればよいと思っています」と結び、シンポジウムを終了しました。
最後に、上野谷さんに閉会のあいさつをしていただきました。たすけあいの会の設立に深く関わられた岡本栄一さん(大阪ボランティア協会理事長)にも登壇していただき「希望の持てる話だった」と感想を述べていただいて閉会しました。