国際協力によるAN Camelopardalisの観測

(2009/6/28 連星系横浜研究会)
永井和男、伊藤弘、清田誠一郎(VSOLJ)

集録原稿

2009年1月から4月にかけてBAVのFrank Walterの呼びかけでAN Camの測光観測を行った。 AN Camは周期が20.9986日の食連星である。これは24時間の整数倍にほぼ等しい。 GCVSには食継続時間(D)が35時間、皆既継続時間(d)が「?」と記載されている。

2009年1月2日〜3日にBAVのFranz Agererが食の終了部分を測光観測した(図−1)。 図−1のように主極小の増光部分だけの観測となった。 この観測からF. WalterはO-C=7時間と推定した。
その結果、ヨーロッパでは15年間極小が観測できない事がわかり地球の反対側の日本で観測して欲しいとの要請を受けて共同観測が始まった。 この共同観測の目的は皆既継続時間(d)を求めるものである。

4名が観測を行った。
 Franz Agerer (BAV)
 Gerard Samolyk (Greenfied WI,USA)
 Hiroshi Itoh (Tokyo,JAPAN) 
 Seiichiro Kiyota (Tsukuba,JAPAN)

日本の観測者は東京八王子市の伊藤と筑波の清田の2名である。伊藤は自宅30cm反射望遠鏡にミード社製CCD DSI-IIを用いて観測した。清田はアメリカにあるインターネット望遠鏡で観測を行った。

図−2は4名の観測から得られた光度曲線でGCVSの要素を用いて作成したものである。

図−3は主極小部分を拡大したものである。 観測の結果、食が部分食である事がわかった。 また、GCVSにある35時間の食継続時間は間違いで、実際には13.5時間である事も分かった。

各極小の位相は
 主極小 0.990
 副極小 0.779 であった。

この値を用いて主極小の元期を補正し新しい極小推算式を求めた。
new min = 2426003.255 + 20.9986 x E

一方、解析論文には、Vitesses radiales photoelectriques de binaires a eclipses. III. Elements orbitaux de AN Cam, M.Imbert, Astron. Astrophys. Suppl. Ser.67, 161-167(1987) がある。

これは視線速度観測から連星モデルを求めたもので下記の結果を導いている。

P=20.9986day
K1=60.73kms-1
K2=61.76kms-1
V0=-38.01kms-1
e=0.4651
ω1=194.4
m1=1.4 m2=1.4 solar mass
R1=2.3 R2=1.7 a=45.0 solar radius
T1=5490K T2=6020K G8+G0
i=88.8deg.

連星の特徴は離心率が0.4651もある楕円軌道にある。また、この時の近星点経度は194.4度としている。

副極小部分を拡大し図−5、図−6を作成した。今回の観測値を点線であらわし、実線は論文のモデルから求めた光度曲線である。 図−5は近星点経度が194.4度のものだが観測値と一致していない事が分かる。 そこで、近星点経度を167度とした光度曲線を作成した。図−6の実線がそれである。観測値と一致しており、近星点経度は167度になったものと考えられる。

これを確かめる目的で極小時刻のO-Cを調べた。ここで、分光観測が行われた1986年は周期回数960±25に相当する。

図−7がO-Cである。赤い点を主極小、水色の点を副極小とした。元期付近の主極小観測は全て写真乾板の調査によって得られた物である。960Cycle付近に副極小の観測がある。これらは眼視観測によるものである。1200Cycle付近の主極小観測はROTESのサーベイから得られたO-Cである。最後の副極小観測は今回の観測から得たものだ。

近星点経度が194.4から167に変化した場合は副極小のO-Cが増加する。O-C曲線はわずかだが増加している。しかし、絶対値は小さく期待する値の1/3程度となっている。

図−8はROTESの観測を使って作成した光度曲線である。GCVSの要素を用いて作成した。この時のO-CはBRNOにあり-0.0746となっている。この値で補正しても主極小はPhase=0とはならない。そもそも、観測数が少なく、報告されている極小時刻が正しい事を判断できない。

ここまでで、副極小が眼視観測である事を含めてO-C曲線からディテールを調べる事が難しいと判断した。

1986年当時の近星点経度が194.4度だった事を証明するには有効な手段とは言えないが、視線速度の観測値(点)と、論文にあるモデルからあらたに視線速度曲線を算出し比較した(図−9)。

比較に差異が認められない事と、他に精密な観測が無い事から(現状では)当時の194.4度の近星点経度は正しいものと考えている。

結論を以下に示す。

主極小の継続時間は35時間ではなく約13.5時間である
また、食は部分食である

新しいエレメントを min = 2426003.255 + 20.9986 × E と定める

1986年から13年経て近星点経度は194.4から167に変化したと思われる

ただし、観測数が少なく正確な議論が出来にくい。数年の間をおいて、同様な観測する事で、より正確な値が得られるであろう。


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