半導体レーザーを使った(分光用)基準光源の考察

(16/Oct/2005)

レーザーポインターが分光器の基準光源に使えるかどうかを調べてみました。結論は、温度ドリフトが大きく温度を一定に保つ環境が作れれば使える事がわかりました。半導体レーザーモジュールの温度ドリフトは1Å/℃程度はありそうです。従いまして1Å以下の測定を行いたい場合は±0.1℃の設定が出来るチャンバーが必要になります。自作は難しいかも知れません。今後の課題となりました。

使用したレーザーポインターは東心製のTLP-3200で、2000円〜3000円で購入出来ます。インターネットで検索して注文しました。説明書に記載されている波長は650nm〜655nmとなっています。使用温度範囲は25±5℃と書かれています。私は660nm±40nmの分光をしておりますので、このポインターの波長は丁度よいものでした。

先に分光器のドリフトですが、格納箱に入っている分光器を出してカメラ三脚に取付固定したのちメカ的に落ち着くまで(測定波長に)ドリフトがあります。CCDケーブルの自重による物も考えられる。メカ的な物と思われますので、まったくドリフトが無い時もあります。
10分程度経てばドリフトは無くなります。念のため、20分は待つようにしています。この状態で σ = 0.124Åの測定が出来ます。要は波長測定のバラツキは(おおよそ)この程度です。

次にLEDを基準光源とした場合です。私は分光器を(メンテナンス目的などで)分解した際にはLEDを基準光源にして大まかなキャリブレーションをしています。これは、たくさんの(波長の異なった)LEDを測定します。(この場合はのLED波長は仕様書の値を信じて行っています) ただ、LEDを精密測定の基準光源に用いるには問題があります。それは、波長のドリフトと波形がブロードな点です。

この波形は660nm±40nmの分光器で赤LEDを分光した結果です。非常にFWHMが大きくピークの測定には誤差が出ます。また、赤LEDは(なぜか?)二峰の波形となります。幾つかの赤LEDを測定しましたが、赤だけは二つのピークがありました。これも基準に使うには嫌に感じています。

LEDの発光波長は流れる電流量によって波長のドリフトが発生していました。

この回路で電源電圧を可変させて二峰のボトムを測定しました。

波長ドリフトは0〜2Åでした。電源電圧が10Vの時に安定していました。ただし、この実験では温度のパラメータがありません。温度ドリフトの見極めも必要です。

次はレーザーの分光波形です。

こちらは、非常にシャープなもので基準光源として十分に使える形状でした。下は、太陽光とレーザー光を同時に分光器に照射して分光したものです。

室内で撮影したため、窓ガラスの特性や室内照明の影響が加算されてしまいましたが、こんな感じで目的星の分光を行いたくて、この実験をしました。

さて本題はレーザー光の波長変化です。今回は周囲温度とレーザーの発光時間をパラメータにして波長の変化を見てみました。

測定間隔は21秒です。その間に発光時間を1秒と12秒、周囲温度を25℃と30℃に変えてみました。

30℃環境では、どんどん赤化が進んでいました。しかし、サチレーションして、どこかの波長に収まる傾向にみえます。25℃は青化していましたが、こちらも、どこかの波長に収まる傾向にみえます。レーザーの発光時間は影響が無さそうです。

そこで、温度一定の条件で、少し長い時間の変化を測定しました。

45分間程度の様子を見ました。この時間で安定しない場合は、実際の現場では使えそうにないと判断しました。結果は、ドリフト量は少ないものの、波長は安定する事はありませんでした。

実験を行って得た感覚では、この半導体レーザーモジュールの場合、25℃を少し超えた温度で発光する波長が一定となる可能性があると感じました。

自由に温度が設定出来るチャンバーが手に入れば、基準光源として使える可能性があるかも知れません。


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