MeadeLPIのS/N比

(2004/11/21 日本変光星研究会 会誌「変光星 No.236」より)

ミードのLPIを買ってみました。まだ、2・3回しか使っていないのですが、速報レベルで記事にして紹介してみます。LPIはCMOSイメージセンサーを使ったWebカメラを天体用カメラにしたものです。CCDデバイスではありません。アメリカンサイズのアイピースが使える望遠鏡では、そのまま接眼部に差し込むだけで使えるようになります。コンピュータが必要です。コンピュータにはUSBがなければなりません。USB1.1でも大丈夫です。他にはソフトウエアをCD−ROMからインストールしますのでCD−ROMが読める環境が必要です。OSはWindows98とWindows2000で試してみましたが、どちらもインストール出来ました。一度しか試していませんが、WindowsXPではLPIのデバイスドライバが組み込まれる際にOSが文句を言ってきて成功しませんでした。ちゃんとやれば大丈夫だと思います。このカメラは月・惑星用です。変光星の観測に使えるのか?を調べています。価格が2万円と安く、実際に使えるならば日変研でも光電測光を行う人が増えるかもしれません(最近、ミードからCCDを使った冷却しないCCDカメラが現地価格3万円で発売されました。まだ、日本発売はされていないようです。日本では6万円程度でしょうか?変光星観測には、この方がよいはずです)。LPIを5月に購入しました。4月のピッツバーグ出張時に「変光星に使えるか?」と思い、帰国後、直ぐに買いました。しかし、インストールが上手く行きませんでした。その後、日本・スペインを行ったり来たりして弄る時間が、ぜんぜんありませんでした。3台のコンピュータにインストールしました。1台はディスクトップ、2台はノートです。ディスクトップだけ上手く行きます。帰国の合間にミードジャパン問い合わせをしました。ノートで発生しているエラーの内容を伝えて、ディスクトップでは動くのですが、このような事例はありますか?と問い合わせました。ミードさんからは製品を送って欲しいとの事でした。ディスクトップでは動いているので製品の不良では無いと伝えたのですが、結局、身銭をきってミードに送り返した所、次の出張から帰って来るとミードから製品が戻っていて「良品です」との事でした。それから、断続的な出張を重ねつつ、やっとの思いで動くようになりました。結論は同梱のUSBケーブルの不具合でした。ディスクトップでは他のUSBケーブルを指したままにしてあり、そのケーブルを使っていました。ミードの検査ではカメラだけを調べたようです。同時にケーブルも調べてほしかった!。この調査に掛かった時間を返して欲しいと思っています。他にインストールのコツがあります。98も2000もWindowsUpdateを行ってください。そこでは、DirectXとdotNetを入れるようにして下さい。その後、説明書に従ってAutoStarSuiteのインストールをするのですが、絶対に再起動は行わないで下さい(要注意です!)全てのソフトウエアインストールが終わっても再起動しないで下さい。ここで、LPIを接続して下さい。MeadeLPIのドライバが組み込まれたら、直ぐにAutoStarを起動させてLPIを選択して下さい。Liveモードでカメラからの「絵」が出ればOKです。その状態ですとカメラにレンズをつけていないでしょうから、カメラを明るい方や暗い方に向けてみて「絵」が変化するか?を確認してください。Windows98の場合は途中でOSのCD−ROMが必要になる場合があります。CD−ROMが二つあれば、予め装着しておくとよいです。このカメラはカラーです。うまく行けば三色測光が出来るようになります。CMOSセンサーは何を使っているのか?わかりません。サイズは3.6mm×4.9mmでVGA(640×480ドット)です。USBチップはSonixのSN9C102です。カラーのFitsについてよくわかりませんでしたが、このシステムではカラーを選択しFits形式にすると、RGB3つのFitsファイルが作成されます。Fits3P形式にすると(Fitsヘッダーが)NAXIS=2からNAXIS=3に変わります。そして、NAXIS3=3というヘッダーが追加されます。ファイルサイズが3倍になり、RGBの順にデータが書かれます。ただ、モノクロで撮影した方がS/N比が(見た目)よさそうです(当たり前の話でしょうか?)。Fitsとは天体画像を保存するファイル形式です。ファイルはヘッダー部とデータ部にわかれています。とんでもない事がありました!ヘッダーに撮影時刻が入っていません。このカメラは最大16秒の露出が出来ます。変光星観測に使うならば、常に16秒露出になるでしょうから、(現状では)ファイルのタイムスタンプから8秒引いた時刻を露出中央時刻にするしかないです。この辺は、じきにユーザーやサードパーティーが撮像ソフトを作成するかも知れません。自作するにはチップのメーカーと型名が知りたいところです。それではS/N比の話ですが、視野角を知るために、最初に月を撮影しました。対象が明るい場合は気になりませんが、星野を撮影すると(殆んど)星が写っていないことに気がつきます。というか、ノイズが多くて星がわかりにくい事に(簡単に)気がつきます。これは冷却CCDで天体観測をしている人は、すぐに察しがついたでしょうが、熱雑音の影響です。S/N比とはSが信号、Nがノイズで、この比のことです。単位はdB(デシベル)を用います。半導体には熱雑音があります。この雑音の恩恵を受けて発振回路などが動作しますので、逆にいうと普段は熱雑音様様なのかも知れません(冗談ですが)。テレビを良好な状態で受信しているとき、S/N比は46dB程度です。今回の撮影にはセレストロンのC8(20cmF10)にミードの0.33倍レデューサをつけました。これでF4位でした。画像にケラレや周辺減光が無いので、もっと明るく出来そうです。これは試してみようと思っています。S/N比を改善するには撮影された画像から熱雑音を除去するのですが、これはダークフレームを撮影して引き算するだけです。ただ、チップ温度が周囲温度と同じなので環境で時々刻々と変化してしまいます。従いました同じ条件でダークフレークを得ることができません。そのため、てきとうなダークフレームとなってしまうのですが、それでも、この作業をするのとしないのでは、ぜんぜん、S/N比が異なります。私は天体撮影が終わってからLPIに付属のキャップをつけて、天体と同じように16露出で画像を撮影しました。ダークフレームの除去にはステライメージVer2やFitsPhotVer4.22で試しました。私のホームページにFitsPhotoというフリーソフトがあります。それです。ただですよ。

上は「やぎ座δ」の画像です。白い横線が引てありますが、このY軸上の強度をダークフレームの除去前と除去後で比較してみます。下のグラフは白線(Y軸)の強度を示したものです。グラフの左側は画像の左側です。縦軸は明るさを示しています。上のグラフはダークフレーム除去前で、下は除去後です。縦軸は上下のグラフが比較しやすいような値に変換してあります。カウント値ではないのでご注意ください。

S/N比を、ざっと計算するとダーク除去前が約3dB、ダーク除去後が約25dBでした。0dBでノイズと信号が同じ大きさということです。ダークフレームが除去されていないグラフではノイズに星が埋もれてしまいそうです。それに比べてダークフレーム除去後のグラフは明らかに信号がノイズよりも大きくなっています。このように、ちょっとダークフレームを除去してあげればS/N比が改善され、測光に使えるかも知れない!と思うようになります。S/N比改善の手法に「コンポジット法」があります。こちらも試してみると良いと思っています。LPIの撮像ソフトは撮影スタートボタンを押すと、ずーっと撮影が続きます。その間、どんどん画像をファイルにしてゆきます。小さなハードディスクでは、気おつけないと大変な事になります!ちょーご注意を。コンポジットしながら撮影をするモードもありますが、試していません。この場合、ダークフレームも同じように作成しなければなりません。このように全て連続撮影になりますがLiveモードから切り替わった瞬間から処理が継続されるようで、最初の1枚だけは指定した露出がされないようです。1枚目は削除して下さい。

上は撮影した星像から等級毎にS/N比を算出してグラフにしたものです。2等から11等位までの星を使いましたが、S/N測定のS/Nが悪くてきれいなグラフが出来ませんでした。もっと沢山の撮影をして質の良い画像を選択すれば綺麗なカーブになると思います。特になるべく同じ色の星を選択的に選ぶとか、特に高度が、まちまちな状態で撮影しましたので、そういう影響もあるかも知れません。実は熱雑音のノイズを除去してもSKYのノイズが残ります。これが観測には大きく影響します。このカーブの幅自体はSKYの影響が最も多いはずです。 下の画像はM2です。

今回のシステムで撮影しました。16秒露出です。12等までは十分に確認出来ます。M2から左下に二つ並んだ星は11.5等の星です。まだまだ、画像がノイズっぽいですが、コンポジットでもしないと、ここまででしょうか。課題は、観測面では、デバイスの感度が低いので望遠鏡を出来るだけ明るいシステムにする。天体の高度が高い状態で撮影する。の、2点かと思います。処理に関してはコンポジットを試してみる事や3色測光の可能性を調べるなど、たくさんありそうです。 それにしても、2万円で光電測光が(まともに)出来るようになるとアマチュアの変光星観測も様変わりすると思います。


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