とりさし
(鳥刺し/鶏刺し)
| 鶏肉料理で何が好きかと問われたら、私は真っ先に「刺身」と答える。鶏肉の淡白な旨みを楽しむには、焼き鳥よりもから揚げよりも、やっぱりそのまま生で食するのが最上であると私は信じて疑わない。 もちろん、刺身にする鶏肉には生食に堪えられる鮮度と味の質がなくてはならないから、「地鶏の刺身」などというメニューは専ら鶏料理自慢の居酒屋くらいでしかありつくことができなかった。 私の出身地秋田は世界に誇る比内地鶏を有しているが、あれは専ら鍋に入れたり焼き鳥にしたりするもので、生で食するということは一般家庭では滅多にやらない。以前に私の両親と兄弟が鹿児島に遊びに来た際、鶏料理の美味い店に連れて行ったら、鶏刺しを一生懸命に鉄板で焼き始めたのを覚えている。 |
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| そんな風な環境に生きてきた私であったから、鹿児島に移り住んだ最初の頃、スーパーの精肉コーナーに平然と並べられている「鶏刺し」には非常に大きなカルチャーショックを覚えた。 豚バラ肉や合挽き肉と同じようにして、嘘っぽい木目プリントの発泡スチロールパックにちょこんと収まって、鶏刺しは売られている。しかも安い。ときにはちょうどビールのつまみ一人前程度の量が50円で手に入ってしまうのである。 安いだけでなく、これが実に美味いのだ。卸したニンニクと刺身醤油でやるのが、ひたすらビールと相性が宜しい。鹿児島では始めから終わりまで焼酎で通す酒飲みが大勢を占めるが、こんなに美味い肉料理にビールを合わせないなんて、彼らは余程どうにかしているに違いない。 (写真の盛り付け:嫁) |
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| この切り口のきれいなピンク色を見てほしい。こんなに新鮮で美味そうな生肉がワンコインで買えてしまうのだから、鹿児島は誠に素晴らしい夢の楽園である。 畜産大国鹿児島はとにかく肉が美味い。その味は、県産黒豚や薩摩地鶏を看板に掲げる料理店までわざわざ行かずとも、そこいらの家の食卓でも充分実感していただけると思う。 鹿児島に地鶏料理を食べに来られた際には、その辺のスーパーやデパートの精肉売り場でパックの鶏刺しを仕入れて、ホテルの一室で缶ビールと一緒にお試しされることを強くお奨めしたい。 |