このページは、 33 雄国沼 ・ 34 田代山湿原 ・ 35 燧ケ岳 ・ 36 浅草岳 を掲載しています。
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| 上 磐梯高原の秘沼・雄国沼・・ 下 ワタスゲ |
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33 雄 国 沼 おぐにぬま (磐梯朝日国立公園) ・・・福島県
磐梯山の大噴火によってできた高原・磐梯高原は、いくつもの美しい湖をたたえている。
そのうちで最も景観に優れているのが、この雄国沼であろう・・。 裏磐梯三湖とは少し離れていて観光客にも忘れられた存在なのがいいのか、この沼一帯は静けさが漂っている。 また、この沼の周辺は湿原となっていて、ニッコウキスゲ・ヒオウギアヤメの群落地となっている。
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| コバイケイソウ | 上 ヒオウギアヤメ 下 木々の間からの雄国沼はより一層神秘的だ・・ |
行 程 表 駐車場・トイレ・山小屋情報
磐梯町市街より車 (0:35)→猫魔八方台 (0:30)→猫魔ヶ岳 (1:10)→雄国沼 沼の周囲に散策路あり・所要約1時間
雄国沼 (1:50)→猫魔八方台より車 (0:35)→磐梯町市街
磐梯山支峰の猫魔ヶ岳 1404メートル の火口湖といわれているこの《雄国沼》は、盛夏になるとニッコウキスゲが沼の周囲をオレンジに染め上げる磐梯高原きっての秘沼である。 また、この沼を訪れるバスの便がない為に訪れる人も少なく、静寂なる雰囲気で沼の景観を楽しむことができる“穴場”だ。 それでは、この磐梯高原で私が最もお薦めする穴場を御紹介しよう。
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| 左 山ツツジ・・ 右 コバイケイソウが沼を見護る・・ |
行程表では、猫魔ヶ岳 1404メートル を経て『雄国沼』へたどり着くように組んでいるが、天候が思わしくなく手っ取り早く車で沼のみを探訪することになってしまった事をお許し頂きたい・・。 この『雄国沼』へは、《喜多方市》を南北に行く県道69号線から東の山の方へ約14km入った所にある。 『雄国沼』の標高1000mまで上がらねばならないので、アプローチ道は延々と急坂のグネグネ道となる。 舗装はされているとはいえ道幅の細い山道なので、対向車には十分気をつけて頂きたい。
これを坂が途切れるまでつめていくと、《金沢峠》という駐車スペースにたどり着く。
ここが、『雄国沼』の散策路の入口だ。 湿原の雰囲気は断然に朝である。
いい風景を求める為にも、ここは前日に《金沢峠》までアプローチして頂くことをお薦めしたい。
天気が良ければ、標高1000mの《金沢峠》から、会津盆地の夜景が望まれることだろう。
さて、翌朝は日の出と伴に行動しよう。 沼の湿原内は木道が敷設され、ゆっくり歩いても2時間もあれば全て探勝できるだろう。 私の訪れた時は残念ながらまだ花期には早く、ヒオウギアヤメ・コバイケイソウ・ヤマツツジ・ワタスゲなどがポツリポツリと咲いているだけだった。
だが、7月中旬の時期に訪れると、沼の周りの湿原はニッコウキスゲのオレンジ色で染められる・・とのことである。
私も機会があれば、『雄国沼』の最高のシーンを目にしたい・・と強く思う次第である。
その時は天候のいい日を選んで、是非ともこの沼の発祥に関りのある猫魔ヶ岳を踏むルートからアプローチしたい・・と思う。
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| だだっ広い湿原に朽ちた木道が延びる・・ |
34 田 代 山 湿 原 たしろやましつげん ・・・福島県
田代山 1971メートル の頂上に広がる田代山湿原は、素晴らしき景観を抱いているにもかかわらず、あまり知られていない。 それは、すぐそばに国民的な観光地・尾瀬があるからであろう・・。 しかし景観は、始めに述べた通りなかなかのもの・・。
特に、この山上湿原に咲くミズバショウの群落と、会津駒ケ岳の眺めは素晴らしい。
賑わいを避け、静かに心ゆくまで湿原散策を楽しむのなら、この湿原はお薦めである。
だが、この美しき山上湿原も、スキー場などの開発の波にさらされている。
果たして、この美しい自然とスキー場との、どちらが後世に恵みをもたらすのであろうか・・。
いつまでも護って、後世に伝えたいものである。
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| 駐車場・トイレ・山小屋情報 | 一瞬の晴れ間を狙って・・ | 雲の切れ間から会津駒ケ岳が姿を魅せる・・ |
行 程 表
会津高原駅より車 (1:20)→猿倉登山口 (1:40)→田代山湿原・弘法沼 (0:10)→田代山避難小屋
(1:00)→帝釈山 (0:50)→田代山避難小屋 (1:30)→猿倉登山口より車 (1:20)→会津高原駅
このコースは、最寄の会津高原駅よりの交通の便がないので、アプローチはマイカー利用としよう。
登山口の《猿倉》へは、『湯ノ花温泉』より砂利道の林道(もう舗装されているかも・・)を12km進入せねばならない。
林道の運転は神経を使うので、前日は明るい内に登山口まで入っておくのがいいだろう。
さて、林道を約30分程で《猿倉》の登山口に着く。 《猿倉登山口》は少しは利用者があるようで、広い駐車場とトイレとが設置されている。
駐車場裏の細い小道から、山へ分け入っていく・・。 ヤマアジサイの咲く小道を登っていくと沢滝が現れて、そのすぐ脇を登っていく。 しぶきが掛かりそうな位のそばを通るので、道を踏み外すと沢にはまってびしょ濡れとなるので注意しよう・・。 しばらく歩くと、沢が左へそれて右側の山肌に取り付くようになる。
ここからジグザグの急登となり、樹林帯を抜け出るまでこの急登は続く。
急登の始まりはブナ林に囲まれた薄暗い中を通るが、これがダケカンバやツガ林に変わって光が差し込んでくるようになると、樹林帯を抜け出て急登が終わる・・といった感じである。 樹林帯を抜け出ると、小さな湿原が視界に入ってくる。
ここは《小田代》と呼ばれていて、規模は小さいがトキソウやリュウキンカなどの珍しい花が咲いている“ちょっと気になる”湿原だ。
この湿原の端で道は2つに分かれているが、右手に折れる道は廃道で、正規のルートは直進して再び樹林帯に入り込んでいく・・。 湿原の続きでぬかるみ状となった道を20分登りつめると、木道が敷かれた広い台地上に出る。
待ちに待った《田代山湿原》の入口だ。
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| イソツツジ | 手付かずの湿原風景・・ スキーなどという下らぬことの為に消すというのか・・ |
帝釈山からの眺め・・ |
前方に会津駒ケ岳 2133メートル の優雅な姿を見ながら、池塘が散りばめられた静かな湿原を散策しよう。
やがて、《弘法沼》という大きな池塘が現れて、道が左右に分かれる分岐に着く。
ここは、背後に会津駒ケ岳が美しくそびえ立ち、『田代山湿原』の標柱も写真を撮るのに絶好の向きに立っているので、是非ともここで“アリバイ写真”を撮っていこう。 ひと通りの“山の儀式”を終えたなら、この分岐を左手に進んでいこう。
なお、右手に進むと、『木賊(とくさ)温泉』へ下る下山路である。 進路を左手に取り緩やかに下っていくと、やがて木道が途切れて《田代山避難小屋》が見えてくる。 高床式のかなり立派な避難小屋で、中は簡易カーペット敷で十分寝泊りできる造りだ・・。 またこの小屋は、弘法大師ゆかりの由緒正しい小屋ということらしく、大師堂が小屋の脇にあり弘法大師を祀っている・・。 登山口からここまでは、2時間もあればたどり着けるだろう・・。
ここで折り返すのはちょっと早すぎるので、この山系の主峰・帝釈山まで足を延ばしてみよう。
帝釈山へは避難小屋の裏手から、鞍部に向けて樹林帯を約150m程下る。 鞍部からは、大岩が転がる斜面を200m登り返すといい・・。 登りつめて樹林帯を抜け出すと、帝釈山 2060メートル の頂上だ。
頂上には、上が平らな大岩があるので、この上に立って周囲の景色を楽しもう。
日光連山の眺めを満喫したなら往路を戻るが、田代山〜帝釈山の間は台風による倒木などで荒廃していて、歩き良い道とはいえないので慎重に歩いていこう。 無事下山したなら、『湯ノ花温泉』の古風な共同風呂で汗を落としてから帰ろう。
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| 美しき燧ケ岳のシルエット・・ |
35 燧 ケ 岳 ひうちがたけ (日光国定公園) ・・・福島県
東北最高峰の燧ケ岳 2356メートル は、いつも尾瀬ヶ原の大湿原を見下ろすようにそびえ立っている。
この山も、尾瀬と同様に花の宝庫で、山頂湿原を飾る花々は、頂からの眺望とともにこの山の魅力を大いに引き立てている。
・・『尾瀬』を楽しむためには、是非ともこの山をコースに組み込みたいものだ。
モデルコースとしては、尾瀬沼〜燧ケ岳〜尾瀬ヶ原の縦走がお薦めである。
このコースは、尾瀬沼のニッコウキスゲの群落を見て、燧ケ岳で花と尾瀬の全景・・、そして東北や日光の山なみを眺めて、下ってからは尾瀬ヶ原の大湿原を散策・・と、3つの『尾瀬』の魅力を味わうことができるのである。
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| 美しい田代を見ながら登る燧ケ岳への絶好の登山コースだ・・ |
行 程 表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 会津高原駅より車 (1:40)→尾瀬・御池 (1:40)→熊沢田代 (1:45)→燧ケ岳・柴安ー
(2:40)→下田代十字路
《2日目》 下田代十字路 (0:30)→元湯山荘 (0:50)→三条ノ滝 (0:40)→燧裏林道分岐
(1:40)→上田代 (0:30)→尾瀬・御池より車 (1:40)→会津高原駅
《1日目》 尾瀬・御池口より燧ケ岳へ
今回の行程では、東北最高峰の燧ケ岳に登って、《尾瀬ヶ原》を探勝してみよう。
燧ケ岳には5本の登頂ルートがあるが、《尾瀬・御池口》より登っていくのが体力的に最も楽であろう。
但し、《尾瀬沼》は、一日余分に取らないと訪れることはできないが・・。
朝早くの登山開始は、登山の鉄則だ・・。 楽で登山者の多いこの山でも、この鉄則には従おう・・。
従って、《尾瀬・御池》には、前日にアプローチしておくべきであろう。
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| 熊沢田代より望む燧ケ岳・・ 2つの池塘がいいアクセントになっている・・ |
燧ケ岳山頂より望む尾瀬ヶ原全景・・ | コオニユリ |
さて、空がピンク色に染まったなら出発しよう。 尾瀬・御池の駐車場奥にある登山口からしばらく砂利道を歩くと、《三条ノ滝》と燧ケ岳の分岐に出る。 『燧ケ岳へ・・』の指示に従って、この分岐を左に入っていく。
なお、直進方向に延びる《三条ノ滝》への道は、帰りに歩いてくる道である。 道はぬかるみの混じった岩コロの道で、上部から泥水がチョロチョロと流れ落ちて登り辛い。 たぶん、この上の湿地帯より流れ落ちているのであろう。
ここは、靴底に水がしみ込むのを覚悟でひたすら登っていこう。
約50分の登りで樹林帯を抜け出て、見晴らしの良い湿原に出る。 ここは《広沢田代》という湿原で、小規模ながらも多くの池塘をめぐらし、ニッコウキスゲ・イワイチョウ・キンコウカなどの花が咲いていて小気味良い・・。
周囲の眺めも、日光連山の山なみが朝日に輝き美しいシルエットを魅せている。
この素晴らしい眺めの中、ザックを下ろして写真を撮るのも乙である。
但し、湿原の中は木道が敷設されているので、踏み外したりせぬように心掛けたい。
ひと休みしたなら、再び頂上を目指して登っていこう。 木道が尽きると《広沢田代》を抜け出して、再び樹林帯の泥混じりの登り坂となる。 靴に水がしみ込んで歩きにくいが、この上に広がる素晴らしき眺めを味わう為の試練として、ひたすら辛抱して登っていこう。 この樹林帯のぬかるみ道も、約50分で抜け出ることができるだろう。
この樹林帯を抜け出ると、またもや素晴らしい湿原に出る。 もちろん、眺めもすごぶる良くなる。
ここは《熊沢田代》と呼ばれる湿原で、先程の《広沢田代》よりも起伏があり、湿原全体を見渡すのに都合がいい。
そして、この《熊沢田代》の“売り”は、何といっても前にそびえ立つ燧ケ岳の眺めであろう。
この湿原のシンボルである2つの大きな池塘をアクセントに、すらりと美しい三角錐の容姿でそびえ立つ燧ケ岳・・、そして起伏に富んだこの湿原の地形がカメラアングルに花を添えてくれる。 また、池塘の周りをワタスゲ・キンコウカ・ミズギボシなどの湿性植物が咲いていて、雰囲気も上々だ。 この素晴らしき眺めを味わいながら進んでいこう。
道は《熊沢田代》のシンボル・2つの大きな池塘まで、その起伏に富んだ地形に沿って緩やかに下っていく。
この2つの大きな池塘から先は、燧ケ岳に向かって一直線に急登していく。 《熊沢田代》から、右に大きくカーブを描いて燧ケ岳の尾根筋に取り付く。 樹林帯を急登で抜け出して、燧ケ岳の北東に延びる沢筋の中を登っていく。
この沢筋には遅くまで雪渓が残っていて、たぶん雪渓の急登となろう。 雪渓を乗り越えても粘土質の岩礫帯の急坂が続き、ややキツイ“最後の試練”を乗り越えると、360°絶景の眺めの待つ燧ケ岳・爼ー(まないたぐら) 2346メートル の山頂だ。
| 燧ケ岳頂上からの眺望・・ | |
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| 上 平ヶ岳と越後三山・・ 下 会津駒ケ岳・・ |
上 尾瀬沼と日光連山・・ 下 燧ケ岳山頂にて・・ |
先程の通り《尾瀬ヶ原》や《尾瀬沼》・・、そして平ヶ岳・至仏山・男体山・奥白根山・磐梯山など、名峰目白押しの360°の絶景が広がるのである。 なお、この爼ーは三角点があり、地図上では燧ケ岳の山頂となっている。
この素晴らしい景色の中でひと息着いたなら、最高峰の柴安ーにいってみよう。
爼ーから一度下って登り返すこと15分で、燧ケ岳の最高点・柴安ー 2356メートル に登り着く。
最高峰の柴安ーも、爼ーに負けず劣らずの素晴らしい眺めが広がる。 そして、《尾瀬ヶ原》と至仏山・平ヶ岳がより一層広がって見える。 平ヶ岳は山裾の急峻さに比べ、丘のように丸くなだらかな山頂部分を持つ特徴ある山で、山好きならばきっと“あの山に登ってみたい・・”という望みを抱くことだろう・・。
なお、この平ヶ岳に関しては、当巻『東日本編』の《補-7》でコースガイドをしようと思うので、そちらを参照して頂きたい。 最高峰からの素晴らしき眺めを満喫したなら、眼下に広がる《尾瀬ヶ原》に向けて下っていこう。
山頂からは、ガレにガレた岩礫帯を下っていく。 燧ケ岳自体が岩礫の積み重ねでできているようなものなので、このようなガレ道は当然といえば当然だろう。 浮石が多いので、岩を踏み外しての転倒や落石に注意しながら下っていこう。
しばらく下っていくと、樹林帯に突入して《尾瀬ヶ原》は見えなくなる。 ここからは、鬱蒼とした樹林帯の中を延々と下っていく。 下りの苦手な人ならば、音を上げたくなる程のダダ下りだ。 約2時間下って、ツガやブナなどの樹林の間から《尾瀬ヶ原》のライトグリーンの草原が見え隠れするようになると、ゴールの《尾瀬ヶ原・下田代十字》は近い。
だが、《尾瀬ヶ原》が見え隠れし始めてからも、30分は歩かねばならない。 長い下りの後に。この30分はかなり応えるのである。 やがて、木道となって《尾瀬沼》との分岐を分けて、《尾瀬ヶ原》の東端にあたる《下田代十字》に出る。
《下田代十字》は《山ノ鼻》と並ぶ《尾瀬ヶ原》の中心地で、別館も含めて十数件の民宿(もはや“山荘”とは呼べないのでは・・)が建ち並んでいる。 自然保護を声高々に叫ぶにしては、それと逆行する眺めである。
今日は、ここで泊るとしよう。
なお、ここはキャンプ指定地があるので、キャンプを張るのもいいだろう。
雑踏とした“民宿街”を避けて、フィールド野中で一夜を明かすのも乙である。
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| 至仏山と朝もやかかる尾瀬ヶ原・・ | キンコウカ | モウセンゴケ |
《2日目》 三条ノ滝を経て尾瀬・御池へ
朝、少し早く起きて、まだ人の歩かぬうちに《尾瀬ヶ原》に出てみよう。 本来、《尾瀬ヶ原》が抱く、静寂な雰囲気を味わうことができるだろう。 なお、今日の行程は43項目の《尾瀬ヶ原》との重複を避ける為、あえて《三条ノ滝》経由で下山するが、ここまで来たなら是非、《尾瀬ヶ原》や至仏山には行ってみたいものである。
なお、至仏山については、『43 尾瀬ヶ原』の項で《尾瀬ヶ原》を交えてコース解説したい・・と思うので、その項を参照頂きたい。
さて、朝の早いうちに出発しよう・・。 あと2時間もすると、《尾瀬ヶ原》も雑踏と化するからである。
《下田代十字》から《尾瀬元湯》までの間、少しではあるが《尾瀬ヶ原》の朝の静寂とした雰囲気を味わおう・・。
朝日を浴びて黄金色に輝く草原・・、その奥にそびえる至仏山・・、夜露を浴びて輝くモウセンゴケやキンコウカの花々・・など、“尾瀬”を心ゆくまで満喫できるひとときである。
ゆっくり歩いても、30分もあれば元湯山荘の建つ《尾瀬元湯》に着く。 いつもは“早く到着したい・・”と思うのだが、今日ばかりは早く着くのが口惜しい気さえする。 この《尾瀬元湯》で《尾瀬ヶ原》は終わり、道は湿原内に敷設されている木道から、滑りやすい濡れた露岩の急下降となる。 所々、ハシゴや鎖場のある露岩帯を下っていくと、只見川の早瀬が下方に寄り添ってくる。 只見川に沿って一番急な鎖場とハシゴを下っていくと、大きな岩崖の上に立つ。
ここから見下ろす只見川は、大きな一枚岩の岩盤を滑滝となって流れている。 これが《平滑ノ滝》である。
この岩崖の上はこの滝の展望台となっているのだが、岩崖のせり立っている角度が悪く、また周囲の樹木が邪魔をしてあまりいいアングルで見ることができない・・。 そして、樹林帯の陰で薄暗いので、写真撮影にも不向きだ。
私もカメラを構えてはみたが、どうも“今いち”のようである。 《平滑ノ滝》からは展望台の岩崖より右手に折れて、再び濡れた露岩帯を急下降していく・・。 約30分、樹林帯の中の薄暗い露岩帯を下っていくと、《三条ノ滝》への分岐に出る。
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| 勇壮な瀑布・三条ノ滝・・ | 上 ミズギボシ 下 上田代より望む平ヶ岳と越後三山・・ |
名瀑・《三条ノ滝》へは、ここから10分下るといい・・。 但し、《三条ノ滝》の展望台へは、3つの鎖付きの急なハシゴがあるので慎重にいこう。 展望台からは、《三条ノ滝》を正面きって眺めることができる。
只見川を流れる全ての水・・、すなわち、あの広大な《尾瀬ヶ原》より流れ出る全ての水を集めてイッキに瀑布を落とす様は迫力満点だ。 日本でも有数の名瀑を心ゆくまで眺めたなら、分岐へ戻ろう。
分岐まではかなりの急な登りとなるので、重い荷物は分岐にデポしておいた方がいいだろう。
分岐からは、《兎田代》に向かっての150mの急登だ。 これを登りつめると、《兎田代》の湿原に出る。
ここは、乾いて荒れ果てた湿原跡といった感じで、あまり見るべきものもないので先を急ぐことにしよう。
この湿原跡の少し上で《渋沢温泉》から《小沢平》に抜ける道を分け、更に5分程進むと、《尾瀬ヶ原》への短絡道の『段吉新道』を分けて『裏燧林道』へ入っていく。
『裏燧林道』の前半はブナの樹林帯の中でのアップダウンで、やや退屈な道である。
また、コースのほとんどに木道が敷設され、ワイルド味にも欠ける。 《尾瀬ヶ原》の探勝路と違って、こういう道は早く抜け出たい・・と思うのだが、こういう道に限ってなかなか思い通りに早く抜け出せないものである。
しかし、これを抜け出せば、待ちに待った素晴らしい景色が広がるのである。
《西田代》・《横田代》・《上田代》と続く、見晴らしのいい湿性の草原地帯である。
これらの“田代”は、乾燥化が進みすぎて“湿原”としてはあてはまらないが、ライトグリーンに輝く草原としてみれば情緒ある風景である。 また西側には、平ヶ岳が魅力ある容姿を魅せてそびえ立っている。
平ヶ岳はこれら“田代”のどこからでも眺めることができるが、最も眺めがいいのは《上田代》付近であろう・・。
やっぱり『尾瀬』は凄い・・。 最後の最後まで魅せてくれるのだから・・。 《上田代》から約20分で、登りの時に分けた分岐に戻り着く。 ここから駐車場へは、砂利道を約5分である。 無事下山したなら、《尾瀬・御池》より15km先にある《桧枝岐温泉》で汗を洗い流そう。 ひと風呂浴びると、今回の山旅の思い出が次々と思い浮かんでくることだろう。
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36 浅 草 岳 あさくさたけ (越後三山只見国定公園) ・・・福島県・新潟県
只見川上流の福島・新潟県境一帯は『奥只見』と呼ばれ、近年までは交通不便な“陸の孤島”として、訪れる人も少ない“秘境”であった。 だが、上越新幹線の完成以来、“秘境”ブームも手伝って、にわかに注目を浴びている地域となってきた。 この辺りの景観はどこも優れているが、中でも田子倉湖から望む浅草岳 1586メートル の姿が素晴らしいのである。
また、この山は登山を志す山としても魅力いっぱいだ。 山頂付近の池塘を散りばめた湿原やその周りを咲き乱れるお花畑の群落、そして眼下に望む蒼紺の田子倉湖・・、守門岳 1537メートル ・鬼ヶ面山 1465メートル ・越後三山など、眺望においても東北の名峰にひけを取らない。 また、訪れる人がほとんどいないこの山の北側には秘めたる大湿原・沼ノ平があり、ベールにつつまれた神秘的な情景を魅せている・・。
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| 駐車場・トイレ・山小屋情報 | 上 浅草岳のそびえる“奥只見”は 名にしおう豪雪地帯だ・・ 下 湖見峠より見る奥只見湖 |
行 程 表
JR小出駅より鉄道利用 (1:20)→JR田子倉駅 (2:00)→剣ヶ峰 (1:30)→浅草岳 (0:25)→浅草岳避難小屋 (1:20)→沼ノ平
(1:40)→入叶津登山口 (0:40)→叶津集落 (1:00)→JR会津蒲生駅より鉄道利用 (2:35)→会津若松駅
浅草岳のそびえ立つ『奥只見』一帯は、“秘境”ブームで脚光を浴びつつあるとはいえ、地域的には“陸の孤島”の感が否めない所である。 従って、交通機関は至って不便で、たとえ新幹線を使ったとしても、その日の内に浅草岳に登るのは不可能だ。 それは、JR只見線の運行本数が1日4本と極端に少なく、とても使えたものではないからである。
鉄道利用で浅草岳へ登るなら、小出駅5:36発の始発列車(’03現在)に乗るしか手はない。
これを逃すと、次の列車は昼過ぎまでないのである。 また、この5:36発の始発列車には本線からの接続列車がないので、前日までに小出までアプローチしておかねばならない。
そして、下山からの帰りの列車にも神経を使わねばならない。 なぜなら、会津蒲生駅からの会津若松方面の最終列車は、17:57と極端に早いのである。 これらのことから考えても、ここは登山口と下山口が異なる事を承知で、マイカー利用の方がベターかも知れない・・。 車なら、前日に田子倉湖前の登山口までアプローチをしてそのまま車中泊することで、早朝に登り始めることができるからだ。
また、田子倉駅からの山頂ピストンも可能だ・・。 この場合、6時間少々で山頂を踏んで田子倉駅に戻ってくることができる。 だが、この山に登るのなら、是非とも神秘の湿原・《沼ノ平》へ足を運びたいものだ。
『日本百景』及び【名峰百選】にこの浅草岳を選んだ理由は、山頂からの素晴らしい眺めは元よりであるが、それ以上に神秘的なベールに包まれた《沼ノ平》の大湿原を抱いている山として、とても神秘的に感じたからである。
それでは、浅草岳と神秘の湿原・《沼ノ平》をめぐってみよう。
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| 浅草岳稜線より望む鬼ヶ面山・・ | 空を駆け抜ける雲と奥只見湖・・ | この日の雲の情景はまた格別であった・・ |
小出からJR只見線の始発を使って、浅草岳と《沼ノ平》をめぐって指定された時間に会津蒲生駅にたどり着くのは、かなり難しいかもしれない。 だが、登山口の前夜泊は、田子倉駅が無人駅で、しかも辺りに人家が全くないので車利用以外は難しい。 鉄道利用で前日宿泊をするなら、《田子倉登山口》に建っている《田子倉湖休憩舎》(現在は無人小屋)に寝袋持参で泊まり込むしか手はないだろう。 また、前日に浅草岳に登って、《浅草岳避難小屋》に宿泊する・・というプランもいいかもしれない。
アプローチが困難ゆえに登山方法を長々と連ねたが、とにかく浅草岳に登ってみよう。
《田子倉登山口》に入っていくと、しばらくは高低差のない平坦な道が続く。
《幽ノ沢》を渡り少し登ると、頂上に至るまでの最後の水場・《大久保沢》を跨ぐ。
水筒に、水をしっかりと確保して登ろう。 ここからは一転して、キツい急登となる。
標高差950m・4kmの道程である。
ジグザグ急登で樹林帯を乗り越えると、眼下に《田子倉湖》が見渡せる稜線の上に飛び出る。
稜線の上に出てから、しばらく岩場伝いに登っていくと、《剣ヶ峰》というピークの上に立てるだろう。
この《剣ヶ峰》は素晴らしい展望台で、優雅な浅草岳の姿とは対照的に荒々しい稜線を魅せる鬼ヶ面山 1465メートル の大岩壁と、豊富な残雪を魅せる“雪国”越後の山なみが印象的だ。
もちろん、《田子倉湖》も湖面を蒼く輝かせている・・。 《剣ヶ峰》を過ぎると、再びジグザグの急登となる。
《剣ヶ峰》から見えた、あの優雅な山裾からは想像できないような急登に汗を搾られる。
やがて、『あと1.4km』の標識を過ぎ、3〜4回ジグザグ登りをこなすと、《湖見峠》に出る。
ここは、《田子倉湖》と《奥只見湖》を一番よく望める所・・とのことである。 ここまでくれば、あとひと息だ・・。
やがて道は草原へと変わり、広潤な気分満点で浅草岳 1586メートル の頂上に登り着く。
頂上からの眺めは、“素晴らしい”というような月並みな言葉では語れない。 地平線より次々とやってくる湧き立つ雲・・、越後三山や荒沢岳の山なみ・・、蒼く輝く《田子倉湖》や《奥只見湖》・・、残雪眩しい鬼ヶ面山の大岩壁・・、浅草岳の頂上から続く大草原がそよ風にたなびき・・、言葉を越えた『感動』がそこにはあったのだ。
“私の選んだ峰には『感動』がある・・”。 私の選んだ【名峰百選】に間違いはなかった・・。
そのことをとても嬉しく感じる・・。登って『感動』を見出せない山を《歴史深い》というだけで『名山』と称するようなことは“愚かしい”という持論を、改めて強く感じた登頂体験である。 頂上で感動を思いっきり味わったなら、頂上から続く大草原を伝って神秘の湿原・《沼ノ平》をめぐってみよう。
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| 浅草岳直下の大草原・・ | “神秘の沼”・沼ノ平 ・・コウホネ浮かぶ曲沼 | 上 浅草岳避難小屋 下 沼ノ平へ・・ |
絶景を見ながら池塘が点在する大草原を約30分下ると、《小三本沢》の源頭に立つ《浅草岳避難小屋》前に出る。
この小屋は登山地図等からは黙殺されているが、どうしてどうして、とても立派でしっかりした無人小屋である。
小屋からは沢に沿ってコバイケイソウなどのお花畑が続くが、やがて潅木帯に入り緩やかに下っていく。
1時間半ほど潅木帯を下ると、《沼ノ平》経由と《沼ノ平》を避けて平石山の尾根道を直接下るルートとの分岐に出る。
平石山経由だと1時間近く短縮できるが、ここは念願の《沼ノ平》に向かうべく、左へ進路を取る。
この分岐から《沼ノ平》までは予想外の急下降で、時には尻をつけねば下れぬ所もあった。
標高差にして300m近く下ると、清水を豊富に流す沢を徒渉する。 この沢は避難小屋前で見た優しい小沢・《小三本沢》である・・。 澄んだ清らかな水・・、そして豊富な水は遙かな自然を創造する。
そう、この清らかな水によって、《沼ノ平》の大湿原は創造されたのだ・・。
《沼ノ平》・・。 コウホネなどの水生植物が咲き乱れる沼ノ周りに、枯れた樹木が一重、二重と重なり、近寄りがたい神秘的な雰囲気をかもし出している。 また、あまり人が近寄らないのか、道は完全なぬかるみとなって足をからませて行く手を遮る。 自然がその力の全てを出して、この神秘の沼を護っているのかもしれない・・。
この他、涼風吹く“風穴”や湧泉の沼などを見ながら、沢を寄せ集めて“河川”となった《叶津川》を徒渉して(ちなみに、この山域は桟道などの整備は全くない。 全て岩を伝っての徒渉だ・・)、平石山の山裾を斜めに登っていくと、平石山経由の道と合流する。 合流地点から約40分・・、枯れ草の盛る道を下っていくと、国道289号線の果て・・にある登山口に出る。
この国道ルートは、古来より越後へ抜ける“八十里越”の道で、雪深い越後と奥会津を結ぶ短絡道であった。
実際の長さの10倍の名をつけられたことに、この峠道を越えることの困難さが語られている・・と言えよう。
全くの無人地帯の登山口より、最寄り駅の会津蒲生駅までは6.7km・・。 舗装はされているが、とにかく長い。
それに、JR只見線の列車は1日4本しかない。 あがいても無駄だ。 ゆっくり歩こう・・。
遅くとも、上下の最終列車列車には乗れるだろう(’03現在、JR只見線・会津蒲生駅の最終列車時刻は、会津若松行 17:57、小出行 19:34 である)。
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