母乳の分泌に影響するおくすり

 母乳分泌にかかわるホルモン
妊娠中には、乳腺にかかわるすべてのホルモン(下垂体から分泌されるプロラクチン、卵巣や胎児、胎盤系から分泌されるエストロゲンとプロゲステロン、胎盤性ラクトゲン)は妊娠初期から末期にかけて増加します。出産後は、エストロゲン、プロゲステロン、胎盤性ラクトゲンは胎盤がでてしまうことで、急激に血液中から少なくなります。一方、下垂体からのプロラクチンの分泌も徐々に低下し、3〜4ヶ月後には妊娠していないときの値に戻ります。
 泌乳ホルモンといわれるプロラクチンは、妊娠中に増加しますが、、妊娠中には母乳は分泌されません。これは、大量に存在するエストロゲンと、プロゲステロンが乳腺のレベルでプロラクチンが作用するのを抑えているためです。出産後は、乳腺レベルでの抑制がとれ、プロラクチンの作用で母乳の分泌が始まります。
 通常、出産後2日目ごろより分泌が始まり、約1週間で乳汁の分泌が完成します。


これらからもわかるように、エストロゲン製剤は乳腺に直接作用して、プロラクチンの作用を阻止して乳汁分泌を減少させる働きがあります。また、ピル(経口避妊薬)も、エストロゲンとプロゲステロンの混合剤なので、産褥の早期から服用すると乳汁分泌が減少しますが、とまってしまうことはありません。

産褥初期に、乳汁分泌が開始しても、母乳を出し続けなければ分泌は止まってしまいます。これは、おっぱいを吸わせることで、乳頭に吸啜刺激を加えると、神経刺激が脊髄を経て中枢神経系に伝えられ、反射的に下垂体の前葉からプロラクチン、後葉からオキシトシンが分泌され、それぞれ泌乳と、射乳を起こすからです。30分間おっぱいをあげると、血液中のプロラクチンの値は、おっぱいをあげ終わった時をピークとして、約2時間高くなります。1日6〜7回おっぱいをあげると、プロラクチンはその回数だけピークを作り、次の哺乳に備えて、乳汁の産生を促します。哺乳刺激による、プロラクチンの反応性は、分娩後月数が経るに従って低下してきます、しかし、乳汁の分泌が続行するのは、乳腺のプロラクチンの感受性が高まり、より少ないプロラクチンで、より能率良く乳汁を産生できるようになるためと考えられています。

<プロラクチン分泌に関係あるおくすり>
☆エストロゲン製剤

☆ビタミンB6の高用量(1日400mg以上の経口4〜5日間)
 ビタミンB6はDOPAがドパミンになるのを促進します。ドパミンはプロラクチン放出抑制ホルモンであるので、ビタミンB6の高用量はプロラクチンの放出を抑制し、乳汁分泌を低下させます。

☆ブロモクリプチン(パーロデル)
 ブロモクリプチンは、ドパミン様作用をもっていて、プロラクチンの放出を抑制します。乳汁分泌停止のために使用しているおくすりです。

☆シプロヘプタジン(ペリアクチン)
 シプロヘプタジンは、抗セロトニン作用をもち、乳汁分泌を抑制する可能性があります。脳内セロトニン活性の上昇は、プロラクチンの放出を促進し、乳汁の分泌を促します。抗ヒスタミン作用をもち、くしゃみ、鼻水や皮膚疾患に用いられるので、注意が必要です。

☆抗精神疾患薬
 中枢のドパミンの活性を低下させて、プロラクチンの放出を高め、乳汁分泌を増加させます。しかし、これらのおくすりは、乳汁への移行が多いので、おくすりを服用中は授乳を避け、ミルクに変えた方が良いでしょう。

乳汁分泌に影響するおくすり

乳汁分泌を減少させるおくすり

一般名 商品名
プロモクリプチン パーロデル
メチセルギド
エルゴノピン(エルゴメトリン)マレート メテルギン
ビタミンB6
シプロヘプタジン ペリアクチン
レボドパ ネオドパストン
エストロゲン製剤とその合剤 ホンバン、ペラニン、オパホルモンデポーなど
経口避妊薬 オーソ、トライディオールなど

乳汁分泌を増加させるおくすり

一般名 商品名
抗精神疾患薬
スルピリド ドクマチール、アビリット、ベタマックT
メトクロプラミド プリンペラン、プロメチン、メトクロール
ピモジド オーラップ
フェノチアジン系誘導体
ブチロフェノン類
三環系抗うつ薬
αメチルドパ アルドメット、ポリナール、メプリン
インスリン
TRH
モルフィン
イソニアジド
シメチジン タガメット