テキスト ボックス: 立原道造:

東海道本線で、根府川を通りかかった。昭和十三年十二月十四日

旅はだんだん終りに近い。

根府川、真鶴あたりの明るい海の美しさは今度の旅行で見た最も美しい完全なもののひとつではないか。

殆んど全円を画いてひろがつてゐる水平線は日御碕のながめとまけない。

そして暗さのかはりに明るい紺碧の色がひろがる。

水平に近いあたりは花のやうな紫色を帯びて
けぶつてゐる。

この美しさがしかし僕の眼をとらへて離たず心をとほく奪ふために、欠けてゐるのは何だらう。

--おそらく僕の側に? それともこの風景自らに?

『立原道造全集』第五巻 角川書店・一九五九、「ノートY」より


  根府川駅は上といまもあまり変わらない。修学旅行の女子高生の手書きの詩が
  貼ってある。                         西川 宣夫
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