友情 武者小路実篤

 (C)新潮社 1947
[内容]
脚本家野島と新進(新しくすすみ出ること。また、ある分野で新しく出てきて認められた人)作家の大宮は厚い友情で結ばれている。野島は大宮のいとこの友人杉子を熱愛し、大宮に助けを願うが、かねてから大宮に惹かれていた杉子は野島の愛を拒否し、パリへ去った大宮に愛の手紙を送る。野島は失恋の苦しみに耐え、仕事の上で大宮と決闘しようと誓う。
凛乎(りりしくて勇ましいさま。鋭く威厳のあるさま。凜然)とした清冽(清らかに澄んで冷たいさま)な調子の中に、青春期における友情と恋愛の相剋(互いに相手に剋とうとして争うこと。また、その片方が相手に剋つこと)を描いた武者小路文学の代表作である。

[感想]  2002
友情。単純なように思えて、これほど奥の深い言葉はないと思う。試しに口に出して、そっと呟いてみてほしい。おそらく頭の中に親友の顔が浮かび、心の中は思い出で溢れてくるだろう。
私は男子校に通っていたため恋愛に疎かった。そのため女の子と話す機会どころか、会う機会すらままならなかったのである。しかしその分、毎日行動を共にしていた友達との絆は計り知れないほど強くなったし、親友という宝物にも巡り会うことができた。
「友情」は主人公野島と大宮における友情と、杉子を巡る恋愛の相剋を描き、青春のあらゆる問題をこのテーマを中心にして、戯曲的な葛藤の上に展開している。
恋愛によって強く生きる大宮と、失恋をし、むしろ逆境こそ生命の光栄だという高い誇りで生きようとする野島。厚い友情で結ばれている二人は、仕事の上で勝負しようと決意する。杉子は大宮のものとなってしまったけれど、二人の友情は昇華という形でさらに強くなるのである。作者は恋人を奪った友人大宮のエゴを認め、同時にそれに耐え、打ち克とうとする野島の勇気も認めている。「友情」は白樺派の理想主義的な恋愛と友情を描いた代表作であるばかりでなく、絶えず人間としての成長、発展を念願としている武者小路氏の志向を最もよく示した作品であると言えよう。
内容のすばらしさもあるけれど、私の経験とも交錯して今でも色濃く印象に残っている一冊である。