9x9=81 February 1999


第48期王将戦第四局

初手から第1図までの指し手

▲7六歩▽8四歩▲6八銀▽3四歩▲6六歩▽6二銀▲5六歩▽5四歩▲4八銀▽4二銀▲5八金右▽3二金▲7八金▽4一玉▲6九玉▽5二金 ▲7七銀▽3三銀▲7九角▽3一角▲3六歩▽4四歩▲6七金右▽7四歩▲3七銀(第1図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉v角v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀v金 ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 角 玉 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:なし

  第1図(▲3七銀まで)

 第四局は第二局・第三局に引き続き矢倉▲3七銀となった。

第1図から第2図までの指し手

▽6四角▲6八角▽4三金右▲7九玉▽3一玉▲8八玉(第2図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v玉v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v歩v歩v角v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 歩 歩|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:なし

  第2図(▲8八玉まで)

 第2図は第二局・第三局にも現れた局面で、第二局とは手順も同じである。矢倉▲3七銀の基本図ともいえる形であり「'98年版 将棋年鑑CD-ROM」(日本将棋連盟)では矢倉百二局中三十九局がこの形である(先手の二十八勝十一敗)。

第2図から第3図までの指し手

▽2二玉▲1六歩▽8五歩▲2六歩(第3図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v角v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:なし

  第3図(▲2六歩まで)

 第二局と第三局では第2図で▽9四歩だったが本局は▽2二玉。これは第2図の局面では一番よく指されている手である。羽生善治「羽生の頭脳 5 最強矢倉・後手急戦と▲3七銀戦法」(日本将棋連盟,平成5年(1993年)1月発行)には第2図で▽2二玉は甘く▽8五歩が主流と書いてあるがその後 事情が変わっている(第二局第5図以下を参照)。

 後手が▽2二玉▽8五歩と指す間に先手が指す手としては次の四つが考えられる。

  1. ▲4六銀▲3七桂 …… 最もよく指されている手。
  2. ▲2六歩▲2五歩 …… 損な手。
  3. ▲1六歩▲1五歩 …… 損な手。
  4. ▲1六歩▲2六歩 …… これもよく指されている手。

 ▲4六銀から▲3七桂は最もよく指されている手で、この場合後手は▽2二玉▽8五歩でなく▽2二玉▽5三銀と指すことが多い。▽2二玉▲4六銀に▽4五歩は後手よくないことは第二局第5図以下に書いた。

 ▲4六銀としない場合は▲1六歩か▲2六歩が有力である。どちらが良いかは今のプロにはわからないようで佐藤康光「康光流現代矢倉 I 先手3七銀戦法」(日本将棋連盟)には「1、2筋どちらの歩を先に突くかは好み」と書いてある(p. 38)。▲1六歩が効いてくる変化なら一応あるのだが、後手にそれを避ける手順があって成立しないのである。

 ▲1六歩が効いてくる変化とは第2図から▽2二玉▲1六歩▽8五歩に▲4六銀として以下▽4五歩▲3七銀▽5三銀▲4八飛▽4四銀右▲4六歩▽同歩▲同角(参考1図)▽同角▲同銀▽4七歩▲3八飛▽4九角▲2八飛▽4八歩成▲同飛▽2七角成▲4五歩▽5三銀▲4七角▽2六馬▲3七銀(参考2図)となる変化である。参考2図では▲1六歩のため▽1五馬と引くことができず、▽2五馬▲2八飛で先手有利となる。

後手の持駒:歩           後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1     9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+   +---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一  |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二  | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三  |v歩 ・ ・v歩v銀v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・v歩v角v歩v銀v歩 ・ ・|四  | ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五  | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 角 歩 ・ 歩|六  | ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩v馬 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 歩 ・|七  | 歩 歩 銀 金 ・ 角 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八  | ・ 玉 金 ・ ・ 飛 ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九  | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+   +---------------------------+
先手の持駒:歩           先手の持駒:歩

  参考1図(▲4六同角まで)     参考2図(▲3七銀まで)

 しかしこの変化は参考1図で▽5五歩とされると先手おもしろくない展開となってしまう。以下▲4五歩▽同銀▲5五角▽4四銀▲4五飛▽5五角▲同飛▽同銀▲同歩(参考3図)▽4九飛▲3八銀▽6九飛成▲6八金引▽5九龍▲4八銀打▽5五龍▲4六角▽5二龍▲8二角成▽同龍(参考4図)。これは後手が良いらしい。このあたりは平成5年(1993年)ごろにはタイトル戦で指されていたくらいで、後手が良いといっても微差である。

後手の持駒:飛 角 歩二      後手の持駒:角二 歩三
 9 8 7 6 5 4 3 2 1     9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+   +---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一  |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二  | ・v龍 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v歩|三  |v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四  | ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・|五  | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六  | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 歩 ・|七  | 歩 歩 銀 ・ ・ ・ 銀 歩 ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八  | ・ 玉 金 金 ・ 銀 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九  | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+   +---------------------------+
先手の持駒:角 銀二 歩      先手の持駒:飛 歩

  参考3図(▲5五同歩まで)     参考4図(▽8二同龍まで)

 と、そんなわけで▲1六歩と▲2六歩はどちらが良いかは今のところわかっていない。しかしその次どう指せば良いかはわかっていて、第3図のように▲1六歩▲2六歩と並べて突くのが良いということである。これは後手の棒銀と関係がある。

 第3図で後手が▽7三銀から棒銀を目指すと以下▲4六銀▽8四銀▲3七桂▽7五歩▲同歩▽同銀▲7六歩▽8四銀▲3五歩▽同歩▲2五桂▽2四銀(参考5図)となる。これは次に▲3五銀▽同銀▲同角があって先手の攻めのほうが速い。参考5図で▲2七歩・▲1五歩型だとここで▲2六歩と桂を支える手が必要となり、以下▽3六歩▲3八飛▽7三桂と後手の攻めが間に合ってくる。また▲2五歩・▲1七歩型だと▲2五桂と跳ねることができない。

後手の持駒:歩二
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v角v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v歩|三
| ・v銀 ・ ・v歩v歩 ・v銀 ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・v歩 桂 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし

  参考5図(▽2四銀まで)

第3図から第4図までの指し手

▽7三銀▲4六銀▽7五歩▲同歩▽4五歩▲3七銀▽7五角(第4図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v銀v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩v角 ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:歩

  第4図(▽7五角まで)

 第3図で有力な指し手は

  1. ▽9四歩 …… 最も指されている手。
  2. ▽5三銀 …… 防戦の構え。
  3. ▽7五歩 …… 攻めの手。
  4. ▽7三銀 …… 攻めの手。

の四つである。現在最もよく指されているのは▽9四歩で、「'98年版 将棋年鑑CD-ROM」で第3図を検索すると九局中六局が▽9四歩である。▽9四歩は棒銀を効果的にし(▽9五銀に▲9六歩と銀を追うと▽8四銀と引いてからすぐ端攻めがある)▽9三桂を作りつつ先手の様子を見ており、先手が▲1五歩や▲2五歩ならそこで▽7三銀・▽7五歩・▽5三銀から選択あるいは▽9五歩とさらに待つことを考える。手が広くプロ好みの一着である。

 本譜の▽7三銀は▽9四歩に劣ると考えられているのか、「'98年版 将棋年鑑CD-ROM」(第3図は九局)にも「ザ・プロ将棋 '98 矢倉の闘い編」(富士通,こちらも第3図は九局)にも一局も出てこない。しかし平成9年(1997年)4月発行の「康光流現代矢倉 I」には難解な変化として解説されており(p. 38〜の先手<2六歩-1六歩>型 (1))、▽7三銀が良くないという結論が出たわけではなさそうである。

 ▽7三銀とされると棒銀が速いので先手は▲4六銀と対抗する。これに対し▽8四銀は前述の参考5図となって先手の攻めのほうが速いので、後手は▽4五歩のような手を考えることになる。しかし▲4六銀にすぐ▽4五歩は、▲6五歩とされても難解であるが、▽4五歩に▲3七銀▽8四銀▲2五歩▽7五歩▲同歩▽同銀▲7六歩▽8四銀▲4六歩(参考6図)とされても後手は攻め勝てない、らしい。この形は▽9五銀と出ても▲9六歩と追い返されてしまうため後手は棒銀をうまく捌くのが難しい。

 本譜の▽7三銀▲4六銀▽7五歩▲同歩▽4五歩に▲6五歩は以下▽7五角▲5七銀▽7四銀▲6六銀右▽8四角▲5九角▽7三桂▲3七角▽8一飛(参考7図)となって難解ながら後手に主導権を握られて先手不満。

後手の持駒:歩           後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1     9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+   +---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一  |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二  | ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三  |v歩 ・v桂v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・v銀 ・v角v歩 ・v歩 ・ ・|四  | ・v角v銀 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五  | ・v歩 ・ 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六  | ・ ・ ・ 銀 歩 ・ 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七  | 歩 歩 銀 金 ・ 歩 角 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八  | ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九  | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+   +---------------------------+
先手の持駒:なし          先手の持駒:歩

  参考6図(▲4六歩まで)      参考7図(▽8一飛まで)

 少し戻って▽7三銀▲4六銀▽7五歩▲同歩に▽同角(参考8図)は、以下▲5五歩▽同歩▲5八飛▽6四銀▲5五銀▽同銀▲同飛▽6四角▲5一飛成▽1九角成▲4六角▽同馬▲同歩▽6二銀▲6一龍▽9四角▲7二歩▽8六歩▲4一銀(参考9図)といった展開で先手が良くなる。この変化は昭和60年(1985年)前後に盛んに指されたもので、▲5五歩に▽4五歩の変化や後手が▽8六歩を入れるタイミング等、膨大な変化が含まれている。第4図のように▽7五歩▲同歩▽4五歩とするのは昭和61年(1986年)に児玉六段が指したのが最初ということである。このあたりは既に絶版ながら桐谷広人「新・これが矢倉だ 【4六銀】」(毎日コミュニケーションズ)が詳しい。

 第3図から第4図に至る数手の間に、プロ将棋十数年分の研究と実戦が詰め込まれているのである。

後手の持駒:歩           後手の持駒:香 歩二
 9 8 7 6 5 4 3 2 1    9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+   +---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一  |v香v桂 ・ 龍 ・ 銀 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二  | ・v飛 歩v銀 ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v銀v歩 ・v金v銀v歩v歩|三  |v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四  |v角 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩v角 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五  | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 銀 歩 歩 歩|六  | ・v歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七  | 歩 歩 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八  | ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九  | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 ・|九
+---------------------------+   +---------------------------+
先手の持駒:歩           先手の持駒:角 歩

  参考8図(▽7五同角まで)     参考9図(▲4一銀打まで)

第4図から第5図までの指し手

▲7六歩▽6四角▲2五歩▽6二銀(第5図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・v角v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:なし

  第5図(▽6二銀まで)

 ▲7六歩は加藤一二三九段が初めて指した手らしい(たぶん平成3年(1991年))。角の引き場所に応じて次を考えようという手だがプロには指しにくい一手で、それまでは▲4六歩や▲3五歩といった手が指されていた。しかし▲4六歩は▽同歩▲同銀に▽4五歩と銀を追われ、以下▲3七銀▽7四銀▲4八飛に▽6四歩▲4五飛▽6五歩(参考10図)となって後手の攻めのほうが速く、▲3五歩も▽同歩▲同角▽4四銀▲6八角▽6四角▲1八飛▽7四銀(参考11図)で後手が良い。

後手の持駒:歩           後手の持駒:歩二
 9 8 7 6 5 4 3 2 1     9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+   +---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一  |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二  | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v金v銀v歩v歩|三  |v歩 ・ ・v歩 ・v金 ・v歩v歩|三
| ・ ・v銀 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四  | ・ ・v銀v角v歩v銀 ・ ・ ・|四
| ・v歩v角v歩 ・ 飛 ・ ・ ・|五  | ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 歩|六  | ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七  | 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ ・ ・|八  | ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ ・ 飛|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九  | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+   +---------------------------+
先手の持駒:歩三          先手の持駒:歩二

  参考10図(▽6五歩まで)      参考11図(▽7四銀まで)

 ▲7六歩に角の引き場所は6四・5三・4二・8四の四ヶ所。▽4二角と▽8四角は甘く、▲3五歩で先手が良い。▽6四角と▽5三角について「羽生の頭脳 5」には▽5三角が優るように書いてあるが、その後その「羽生の頭脳 5」にも書いてある、▽5三角に▲2五歩や▲1七桂の変化が先手良さそうだということになったようで(▲2五歩▽7四銀▲4六歩▽同歩▲同角▽6四歩▲2六銀▽4五歩▲3七角▽7三桂▲1七桂や▲1七桂▽7四銀▲2五桂▽2四銀▲5五歩▽同歩▲4六歩等)、現在は▽6四角が主変化となっている。

 ▲2五歩には▽7四銀が自然な感じだが、以下▲4六歩▽同歩▲同角と角交換を迫られ、▲7一角の狙いで先手が良くなる。▲2五歩には▽6二銀が手損ながら有力な手でこれは平成4年(1992年)に指され始めたものと思われる。この▽6二銀の変化は平成5年(1993年)1月発行の「羽生の頭脳 5」には載っていない。

第5図から第6図までの指し手

▲4六歩▽同歩▲同角▽同角▲同銀▽4五歩▲3七銀▽5三銀(第6図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v銀v金v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:角 歩

  第6図(▽5三銀まで)

 ▲4六歩▽同歩には▲同銀もあって難解である。▲同角と取ると第6図までは一本道。▽4五歩に▲同銀は▽4四歩、▲5七銀は▽6九角で先手困る。

第6図から第7図までの指し手

▲7五歩▽5五歩▲同歩▽4四銀右▲5四歩▽同金▲6一角(第7図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:角 歩二
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ 角 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v金v銀v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:歩二

  第7図(▲6一角まで)

 ▲7五歩は次に▲7四歩として▲7三歩成▽同桂▲7四歩と攻める狙い。▽5五歩▲同歩▽4四銀はそこで▲7四歩なら▽4七角と守りに打つ手を作ったもので、▲5四歩は▽同金と取らせて▽4七角に▲5六歩と角道を遮断する手を作ったものである。

 このあたりの展開は平成4年(1992年)から平成5年(1993年)にかけてよく指され、タイトル戦では平成5年2月の第42期王将戦第三局、▲谷川浩司王将−▽村山聖六段戦がこれであった。谷川−村山戦では▽5四同金まで同様に進み、そこで▲7四歩▽6四金▲2四歩▽同歩▲2五歩▽同歩▲1七桂となった。

 第7図の▲6一角は、新手かどうかはわからないが森下八段は初めて指した手だそうである。第7図で先手からは▲2四歩▽同歩▲2五歩▽同歩の継ぎ歩から▲2四歩や▲1七桂の攻めがある。後手からは、▲7四歩▽6四金の交換があれば▽7六歩▲同銀▽7五歩の攻めがあるのだが第7図ではそれがない。そこで後手は▽5二歩と打って守ることになる。

第7図から第8図までの指し手

▽5二歩▲7四歩▽6四金▲5八飛▽4三角▲5四歩(第8図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ 角 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v歩 ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v角v銀v歩v歩|三
| ・ ・ 歩v金 歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ 飛 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:歩

  第8図(▲5四歩まで)

 ▽4三角と角を打たされたところでは羽生王将は作戦負けを感じていたそうである。しかし▲5四歩が緩手で、ここは▲5九飛として▽6九銀の筋を消しておくべきだったらしい。

第8図から第9図までの指し手

▽7四金▲7二歩 ▽7六歩▲同銀▽7五歩▲6五銀▽同金▲同歩▽6九銀▲5九飛▽7八銀成▲同玉▽5一金(第9図)

後手:羽生善治王将
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ 角v金 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 歩 ・v歩 ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v角v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ 歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・v歩v歩 歩 ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 ・ ・ 銀 ・ ・|七
| ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 飛 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:森下卓八段
先手の持駒:金 銀 歩

  第9図(▽5一金まで)

 ▽7六歩から▽6九銀の反撃が厳しく、第9図のように角を取られて一気に先手劣勢となってしまった。かといって▽7六歩に▲6八銀と引くのは……アレ? どうなんだ? というわけであとは雑誌の解説を待つ。


第24期棋王戦第一局

初手から第1図までの指し手

▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽8四歩▲2五歩▽8五歩▲7八金▽3二金▲2四歩▽同歩▲同飛▽8六歩▲同歩▽同飛(第1図)

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:歩二
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v飛 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:歩二

  第1図(▽8六同飛まで)

 第一局は羽生棋王の先手となった。羽生棋王は先手では居飛車が多く、佐藤名人は先手でも後手でも居飛車なので相居飛車戦が予想される。▲7六歩▽3四歩で矢倉と角換わりはほぼなくなり、▲2六歩▽8四歩で横歩取りか相掛かりということになった。▲7八金に▽3二金でなく▽8六歩と速攻を掛ける手はあるが、プロの将棋では見掛けない。

 ▲2四歩▽同歩▲同飛のときに後手が▽2三歩と打つと▲3四飛で「横歩取らせ」と呼ばれる戦型になり、以下▽8八角成▲同銀▽2五角(参考1図)と進む。参考1図からは▲3二飛成と▲3六飛があるがどちらも後手にとって自信のない展開となる。このため現在のプロの実戦では▽2三歩と打つことはほとんどなく、▽8六歩として第1図に進むことになる。参考1図の変化が気になる人は羽生善治「羽生の頭脳 9 激戦! 横歩取り」(日本将棋連盟)を見るとよい。なお蛇足ながら参考1図の▽2五角で▽4五角とこちらに打つと▲3五飛▽2七角成▲1五角▽4一玉▲3六歩とされて次に▲2八歩で馬が死ぬ。また▽2三歩に先手が▲3四飛とせず▲2六飛と引けば普通の相掛かりかひねり飛車になる。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 歩二

  参考1図(▽2五角まで)

 第1図で先手が▲2六飛と引けば相掛かりかひねり飛車になるが、プロの実戦ではほとんど▲3四飛と横歩を取る。なぜ横歩を取るかは「羽生の頭脳 9」に書いてあって一言で言えば相掛かりやひねり飛車にするなら初手▲2六歩のほうが手が広いからである。つまり初手▲7六歩とした時点で相掛かりやひねり飛車は候補から外れているのである。

第1図から第2図までの指し手

▲3四飛▽3三桂(第2図)

後手:佐藤康光名人
後手の持駒:歩二
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・v銀 ・v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v飛 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手:羽生善治棋王
先手の持駒:歩三

  第2図(▽3三桂まで)

 羽生棋王は横歩を取り、佐藤名人は▽3三桂を選択した。沢田多喜男「続 横歩取りは生きている −上巻−」(将棋天国社)によるとこの▽3三桂戦法は、昭和39年(1964年)に下平幸男七段が創始し、その後しばらく指されなかったが昭和56年(1981年)に北村昌男八段が復活させた戦法だということである。現在は脇謙二七段が得意としておりプロ棋戦全体では毎年十数局から二十数局指されている。

 ▽3三桂では▽3三角とするいわゆる空中戦法が最もよく指されており、他には▽8八角成▲同銀▽7六飛(単に▽7六飛は▲2二角成で後手困る)とする相横歩取りが指されている。「'98年版 将棋年鑑CD-ROM」(日本将棋連盟)で検索すると第2図の一手前の局面は二十八局あって内訳は▽3三角が二十局,▽3三桂が七局,▽8八角成が一局、「ザ・プロ将棋 '98 振り飛車と相居飛車編」「ザ・プロ将棋 第四巻 相居飛車の闘い編」(富士通)の一括検索では百二十三局中▽3三角が八十八局,▽3三桂が二十二局,▽8八角成が十三局であった。要するに三分の二強が▽3三角で残りがだいたい▽3三桂である。

 その▽3三桂戦法の内訳を見てみると「'98年版 将棋年鑑CD-ROM」は七局中四局が脇七段で二勝二敗、「ザ・プロ将棋 '98 振り飛車と相居飛車編」は二十二局中十一局が脇七段で四勝七敗であった。佐藤名人の▽3三桂は検出されなかったが一局だけ▲佐藤康光八段−▽脇謙二七段戦(平成8年(1996年)5月13日の王座戦)というのがあってこれは佐藤八段が作戦勝ちのあと逆転負けを喫している。羽生棋王の▽3三桂は先手番でも後手番でも検出されなかった。

「ザ・プロ将棋 '98 振り飛車と相居飛車編」には横歩取り▽3三桂戦法の年度別成績が載っているので下表にまとめておく。対局数が少ないうえ特定の棋士(脇七段)の対局が三分の一ほどを占めているのでこの数字から▽3三桂戦法がどうということは言えないが、参考までに。

  対局数 先手勝ち 後手勝ち ▽3三桂勝率
平成6年度(1994年度) 28 10 18 0.643
平成7年度(1995年度) 16 10 6 0.375
平成8年度(1996年度) 15 9 6 0.400
平成9年度(1997年度) 24 17 7 0.292
83 46 37 0.446
脇七段の▽3三桂 27 12 15 0.556

 ▽3三桂のところで▽8八角成▲同銀▽2八歩▲同銀▽4五角(参考2図)とする「▽4五角戦法」は現在では後手不利とされている。参考2図の変化が気になる人は羽生善治「羽生の頭脳 10 最新の横歩取り戦法」(日本将棋連盟)を参照。


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