9x9=81 October 1998
▲7六歩▽8四歩▲2六歩▽3二金▲7八金▽8五歩▲7七角(第1図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉 ・v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第1図(▲7七角まで)
第1図の▲7七角で角換わりに決定。それまでは横歩取り,相掛かり,ひねり飛車の可能性もあった。谷川竜王得意の先手番角換わりを羽生王座が受けて立ったことで、面白くなった。先の第56期名人戦では佐藤康光八段(当時)は谷川名人(当時)の先手番角換わりを一度も破ることができず、三敗を喫している(第一,三,五局)。羽生王座はどうか?
▽3四歩▲8八銀▽4二銀▲2二角成▽同金(第2図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉 ・ ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀 ・v金 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 第2図(▽2二同金まで)
第1図から角換わりの手順は二通りある。ひとつは本局のように先手から角交換して第2図となる手順で、もうひとつは後手から角交換して▽7七角成▲同銀▽4二銀となる手順である。最近のタイトル戦を見ると下記のようになっていて半々。
▲7七銀▽6二銀▲3八銀▽6四歩(第3図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一 | ・v飛 ・v銀 ・v銀 ・v金 ・|二 |v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ 銀 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 第3図(▽6四歩まで)
第3図の▽6四歩は少し早いように見える。先手が棒銀に来た場合は▽7四歩から▽7三銀の形で受けるほうがよいからである。しかしこの場合は2二の金が端を守っているため先手は棒銀には行きにくい。これが▽2二金型の利点である……というようなことが島朗八段の著書に書いてある(島朗「新版 角換わり腰掛け銀研究」毎日コミュニケーションズ,p. 402〜)。「ザ・プロ将棋 第四巻 相居飛車の闘い編」(富士通)で調べてみると平成8年(1996年)には▽2二金型はほとんど見られない。ここ二年くらいで変わってきているようである。
▲4六歩▽6三銀▲4七銀▽3二金(第4図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v銀v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 銀 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 第4図(▽3二金まで)
後手は▲4七銀を見て▽3二金と戻す。これで角換わり腰掛け銀模様になった。この戦型は先後同型で進むと先手が先攻して良くなるとされており、後手の対策が注目される。最近のタイトル戦では▽6五歩型(第39期王位戦第二局,第56期名人戦第三局)や▽6三金型(第69期棋聖戦第一局,第56期名人戦第五局)が指されている。
▲1六歩▽1四歩▲6八玉▽5四銀▲5八金▽4一玉▲3六歩▽3一玉▲3七桂▽4四歩(第5図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・v玉v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩v銀v歩v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七 | ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 第5図(▽4四歩まで)
羽生王座はなかなか態度を明らかにしない。▽6一金が動いていないのと▲4七銀がここに留まっているのがちょっと変わった感じ。同一局面あるいは類似局面がこれまでにあったかどうかは私の半手動検索システム(^^;ではわからなかった。▽6一金型の狙いも私にはわからない。
▲1七香▽3三銀▲1八飛▽2四銀▲4五歩(第6図)
後手:羽生善治王座 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・v玉v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩v銀v歩v歩v銀v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 歩 歩|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 銀 桂 ・ 香|七 | ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ ・ 飛|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 第6図(▲4五歩まで)
第5図の▽4四歩は失着で、▲1七香がそれを咎めた手である。先手の端狙いに対する▽3三銀から▽2四銀はごく普通の受けだが、▲4五歩の仕掛けが成立してしまった。▽同歩なら▲4四角。羽生王座は▽4三銀と受けたが▲5五角で先手優勢となった。▽4四歩では▽5二金と上がっておかなねばならなかったらしい。
第6図で▽5五銀▲5六歩▽同銀▲同銀▽2九角は▲4八飛▽5六角成▲4七金(参考1図)で先手が良いそうな(「将棋世界」12月号 p. 53)。参考1図からは▽5五馬▲4六金▽5四馬▲4四歩と押していくんだろうか。第6図で▽4三金とむりやり受けるとどうなるのだろう? ▲4四歩▽同金▲4五歩と押さえられてダメかな? その後▽4三金に▲4六角▽6二飛▲6六銀とか。
後手の持駒:銀 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・v玉v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩 ・v歩v歩v銀v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・v馬 ・ 歩 歩 歩|六 | 歩 歩 銀 歩 ・ 金 桂 ・ 香|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 飛 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 銀 参考1図(▲4七金まで)
この将棋は早い段階で羽生王座に失着が出たため序盤研究という意味ではあまり参考にならない。勝負はこのあと大逆転で羽生王座の勝ちとなった。
▲7六歩▽3四歩▲2六歩▽4四歩▲4八銀▽4二飛▲6八玉▽7二銀▲7八玉▽9四歩▲5六歩▽3二銀▲7七角(第1図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・ ・v飛v銀v角 ・|二 | ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三 |v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|六 | 歩 歩 角 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 玉 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第1図(▲7七角まで)
藤井七段といえば四間飛車藤井システム。谷川竜王が受けて立って期待通りの展開となった。第1図の▲7七角で先手の作戦は穴熊模様にほぼ決定。急戦や左美濃なら、端を受け、角は上がらず▲5八金右と進めるのが普通である。
▽4三銀▲5八金右▽6四歩▲6六歩▽7四歩▲6七金▽7三桂▲2五歩▽3三角▲5七銀(第2図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二 | ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 金 銀 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第2図(▲5七銀まで)
▽4三銀はこう指さないと▲2五歩▽3三角▲6八角で飛先が受からなくなる。第2図の先手の構えは最近よく見られる指し方で、先の第46期王座戦第三局(9月30日)でも先手の羽生王座が後手谷川竜王の四間飛車藤井システムにこの形で対抗している。
▽9五歩▲5五歩(第3図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二 | ・v歩v桂 ・v歩v銀v角v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 金 銀 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第3図(▲5五歩まで)
▲5五歩は新手のようだ。▽4五歩の形で▽6五歩の仕掛けに▲5五歩なら過去に例がある。「将棋世界」12月号にはこの▲5五歩は指し過ぎではないかという米長永世棋聖と杉本五段の感想がある。
▽4五歩▲5六銀▽4四銀▲8八玉(第4図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二 | ・v歩v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・v銀v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 玉 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第4図(▲8八玉まで)
▲8八玉で▲5八飛は▽2二飛や▽3五銀でたぶん後手が良くなるだろう。主導権が完全に後手のものになってしまう。第4図で▽5五銀は▲同銀▽同角に▲2四歩があり、居玉の後手はまだ踏み込めない。▽4六歩▲同歩▽5五銀でも▲同銀▽同角に▲2四歩が間に合いそうだ。後手としては▽8五桂や▽9六歩,▽6五歩も絡めて攻めを組み立てたい。
▽5二金左▲7八金▽6二玉(第5図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀v玉v金v飛 ・ ・ ・|二 | ・v歩v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・v銀v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 金 ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:なし 第5図(▽6二玉まで)
後手は玉を囲いに掛かり、先手は▲7八金と締まった。この▲7八金は封じ手で、予想された手である。ここから穴熊に囲うのが最近よく見られる指し方。
▲6八角▽2二飛▲4六歩▽同歩▲同角▽4五歩▲6八角▽7一玉(第6図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二 | ・v歩v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・v銀v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 金 ・ ・ 歩 ・ 歩|七 | ・ 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:歩 第6図(▽7一玉まで)
第5図から▲9八香かと思ったら▲6八角だった。これは▽8五桂の当たりを事前に避けながら次の▲2四歩や▲4六歩を見た手である。▽7一玉と換わって損なように思うのだが、谷川竜王はこうして後手に攻めさせる方針だったようだ。
▲8六歩▽8四歩▲9八香(第7図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二 | ・ ・v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三 | ・v歩v歩v歩 ・v銀v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ 歩 歩 歩 銀 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ ・ 金 ・ ・ 歩 ・ 歩|七 | 香 玉 金 角 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | ・ 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:歩 第7図(▲9八香まで)
▲8六歩▽8四歩の交換も、▽8五歩▲同歩の入ったほうが▲8四歩の突き出しがあって反撃が厳しくなると見たものと思われる。
▽8五歩▲同歩▽6五歩▲同歩▽5五銀▲同銀▽同角▲7七角▽同角成▲同金寄(第8図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:角 銀 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二 | ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 |v歩 歩 ・ 歩 ・v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|七 | 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | ・ 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 銀 歩三 第8図(▲7七同金寄まで)
第8図は後手の攻めが成功しているのかと思ったら、「将棋世界」12月号にはこの攻めは無理筋だろうと書いてあった。えっ、そうなの……?
▽3三角▲5五歩▽同角▲6六銀▽4四角▲8四歩(第9図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:銀 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二 | ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩v歩|三 | ・ 歩v歩 ・ ・v角v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ ・ 歩 ・v歩 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 銀 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|七 | 香 玉 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | ・ 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 歩二 第9図(▲8四歩まで)
第8図で桂を跳ねると▲5五角があるので▽3三角だが▲5五歩が手筋の受け。角を追ってから▲5五歩と打つ前に▲8四歩と突き出すのがプロっぽい手である。第9図で▽8五桂は▲6七金▽8六歩▲8三歩成▽同銀▲7三角▽7二金▲6四角成と手厚く受けて先手が良いと思う。
▽8六歩▲5五歩▽8七銀▲同金上▽同歩成▲同玉▽8五金▲7五歩▽8六歩▲7八玉▽8四金▲7四歩▽同金▲7五歩▽8四金▲7六銀(第10図)
後手:藤井猛七段 後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・v金 ・ ・v飛 ・|二 | ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩v歩|三 | ・v金 ・ ・ ・v角v歩 ・ ・|四 |v歩 ・ 歩 歩 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | ・v歩 銀 銀 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|七 | 香 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | ・ 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:谷川浩司竜王 先手の持駒:角 歩二 第10図(▲7六銀まで)
「将棋世界」12月号によると第10図の▲7六銀が緩手で先手は形成を損ねたらしい。▲7六銀では▲8五歩▽同桂▲8六金として次の▲7六銀を見せて後手に無理攻めを強いるのが良かったとのこと。この後は藤井七段が渋い指し回しで押し切った。
この将棋は第3図▲5五歩の是非を問う一局となった。▲5五歩とすると▽4五歩▽4四銀で後手はいつでも仕掛けられる形となる。しかし第7図以降の攻めが無理攻めとなると、後手は仕掛けの権利は持っているものの有効な攻めは無いということになるかもしれない。▲5五歩として後手の急戦を封じつつ穴熊を見せて無理攻めを強いるこの作戦は有効なのか? てなわけで、この形が今後のプロの対局に現れるかどうか注目。
▲7六歩▽3四歩▲6六歩▽4二銀(第1図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀 ・v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第1図(▽4二銀まで)
数日前(10/23)の王座戦第五局は先手谷川竜王の藤井システムに後手羽生王座の居飛車穴熊模様だった。本局では谷川竜王は後手番。藤井システム対策は……と思っていたら▽4二銀! これじゃ藤井七段が飛車を振っても相振り飛車か▽5三銀左急戦や▽4四歩▽4三銀型の居飛車にしかならないよ〜。
▲6八銀▽5四歩▲6七銀▽5三銀▲7七角▽3二飛(第2図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v銀v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 銀 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第2図(▽3二飛まで)
藤井七段はすぐには飛車を振らず様子見。第2図の▽3二飛でようやく後手の作戦が明らかになった。相振り飛車においてこの▽5三銀型三間飛車は有力な作戦らしく、杉本昌隆五段の杉本昌隆「相振り革命」(毎日コミュニケーションズ)でも小林健二八段の「[定跡] 相振り飛車」(日本将棋連盟)でも一節を割いて取り扱っている。
▲8八飛▽8二銀▲8六歩▽7四歩(第3図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・v銀 ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩 ・v歩v銀v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 角 銀 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第3図(▽7四歩まで)
▽7四歩は大きな一手である。これで後手は矢倉を目指せるようになった。これを阻止するために▲8六歩で▲7五歩とする手はあったかもしれない。▲7五歩に▽6四銀は▲7六銀▽3一角▲6五歩、▲7五歩に▽7四歩▲同歩▽7二飛は▲7八飛▽7四飛▲9五角。
第3図となると▲6五歩には▽7七角成▲同桂▽4五角があるため先手は▽6四歩も許すことになる。
▲8五歩▽7三銀▲5八金左▽3五歩▲4六歩▽6四歩(第4図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v銀 ・v銀v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・|四 | ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 角 銀 歩 ・ 歩 歩 歩|七 | ・ 飛 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第4図(▽6四歩まで)
▲5八金左▽3五歩としたところで▲6五歩とすると、前述の▽4五角はないが今度は▽7七角成▲同桂▽3六歩▲同歩▽5五角がある。
▲4七金▽7二金▲4八玉▽6二玉▲3八銀▽5二金▲3九玉▽6三金左▲8六角(第5図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v玉 ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v銀v金v銀v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・|四 | ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ 角 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六 | 歩 ・ ・ 銀 歩 金 歩 歩 歩|七 | ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 玉 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第5図(▲8六角まで)
結局後手は矢倉に組み、先手は美濃囲いとなった。第5図で▽6五歩は▲6八飛▽6六歩▲同銀▽6五歩▲同銀▽9九角成▲6四歩▽6六香?どうなるのコレ?と思っていたら、11月1日の読売新聞の将棋欄に▽6五歩は▲7七角▽6六歩▲同銀▽6四歩▲8六飛で先手が良いと書いてあった。先手が良いですか。よくわからん。▲8六角のところで先に▲6八飛としたほうが紛れがないと思うのだがどうなんだろう。
▽7一玉▲7七桂▽6二銀左(第6図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v玉 ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v金v銀 ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v銀v金 ・v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・ ・|四 | ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ 角 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|六 | 歩 ・ 桂 銀 歩 金 歩 歩 歩|七 | ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 銀 ・ ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 玉 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第6図(▽6二銀左まで)
この▽6二銀左で後手の作戦負けが決定的になったと思う。これでは受け一方になってしまう。この銀は相手の攻めに応じて自然に引くか、前に出して攻めに使わないといけないと思う。
後手の矢倉に先手が▲8六角から攻めの布陣を敷く作戦は「相振り革命」にも「[定跡] 相振り飛車」にも出てくる。どちらも参考1図のように先手が金無双で、後手に▽3六歩の余地のあるところが本局と異なっている。参考1図の戦型は「矢倉に組まれては先手面白くない」(「相振り革命」),「後手も有望な戦型といえるだろう」(「[定跡] 相振り飛車」)という評価である。
では先手の構えが▲4六歩▲4七金だったらどうか? 「ザ・プロ将棋 第三巻 振り飛車の闘い編」(富士通)で調べたところ、なんと本局とほとんど同じ将棋が見つかった。参考2図は平成7年(1995年)の王座戦。途中まではまったく同じで、その後 後手は左銀を5四に進めた。参考2図以下は▲7五歩▽同歩▲同角に後手が▽4五歩▲同歩▽3六歩▲同金▽1三角▲5八飛▽3三桂と仕掛けて快勝している。
後手:郷田真隆五段 後手の持駒:なし 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・v玉v金 ・ ・ ・v飛v角 ・|二 | ・v玉v金 ・ ・ ・v飛v角 ・|二 | ・v歩v銀v金v銀v歩 ・v歩 ・|三 |v歩v歩v銀v金 ・ ・ ・v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・v歩v歩v銀v歩 ・ ・v歩|四 | ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | 歩 歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|五 | 歩 角 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六 | ・ 角 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|六 | ・ ・ 桂 銀 歩 歩 歩 歩 ・|七 | ・ ・ 桂 銀 歩 金 歩 歩 ・|七 | ・ ・ ・ 飛 金 金 玉 銀 ・|八 | ・ 飛 ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ +---------------------------+ 先手の持駒:なし 先手:山口千嶺七段 先手の持駒:なし 参考1図(▽7二金まで) 参考2図(▽4四歩まで)
本局でも後手は第6図の▽6二銀左のところで▽5五歩として次に▽5四銀▽4四歩と攻めの形を作るのが良かったのではないだろうか。11月1日の読売新聞には第5図で▽5五歩は▲7七桂▽5四銀▲2八玉▽7一玉▲7五歩▽同歩▲同角で後手面白くないと書いてあるが……本譜より面白いような気がするんだけど。
▲9六歩▽1四歩▲1六歩▽8二玉▲2八玉▽3三角▲6八飛▽2四歩▲5六銀▽1三香▲6五歩(第7図)
後手:谷川浩司竜王 後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂 ・|一 | ・v玉v金v銀 ・ ・v飛 ・ ・|二 |v歩v歩v銀v金 ・v歩v角 ・v香|三 | ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|四 | ・ 歩 ・ 歩 ・ ・v歩 ・ ・|五 | 歩 角 歩 ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|六 | ・ ・ 桂 ・ 歩 金 歩 歩 ・|七 | ・ ・ ・ 飛 ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手:藤井猛七段 先手の持駒:なし 第7図(▲6五歩まで)
▲6五歩と仕掛けてこれは先手が良い。このあと谷川竜王に見落としがあって勝負は一方的になった。谷川前竜王・前名人ってのが現実味を帯びてきたぞ……。