2006.01.09 森 毅 『異説 数学者列伝』
高校時代に抱いた数学への苦手意識をそれなりに克服し、共通一次くらいなら満点を取れるようになり、二次試験で数学があっても怯まないようになったのは予備校時代であった(私は、満点=perfect=ノーミスというのは何事においても苦手である。すべての科目にわたって8〜9割押さえる方が得意というタイプかも知れない)。克服することができた要因はいくつかあるのだが、1冊の本を読んだことが大きかった。森毅著『数学受験術指南』という中公新書である。それは受験の正統派テクニックが満載してあるような本ではもちろんなく、数学者森毅の若い頃の生活を振り返った面白おかしいエッセイなのである。京大で数学の教授を張っている人でさえ、受験数学には苦労したりアヤシイ対応をしたりしているんだなぁというのを読んで、数学というものに随分と気楽に取り組めるようになったのである。
その後実は森毅の著作を多読した、ということはなく、新聞や雑誌で書いているときはつい読んでしまうことも多いが、熱心な読者というわけではない。けれども、日本の教育界に投げかける著者の発言を読むと、親近感を抱く。
本書『異説 数学者列伝』もまた面白読み物である。面白読み物ではあるが、著者の知性が世俗に堕さずほんのりとした良質さを醸し出してしまうところがさすが。数多いる数学者(本書で取り上げているのは30人+4人)が、人間としてどのように「生活したか」ということを描き、どのような性格の人物だったのかということが浮き彫りにされている。数学上の業績は別にして、厭味な人物、可哀相な人物、愛すべき人物、いろいろである。生い立ち的には、幼い頃両親を亡くしたり、両親と別れて暮らさなければならなかった人が多いのが興味を惹く。それにしても、10代で正十七角形の作図法に至った(私もこの神童神話に憧れ、無謀にも試みたことがある)というガウス、彼は嫌になるほどキレる人だったのね。