2000年1月読了
★印は、おすすめ
1/29 ファーブルの夏ものがり マーガレット・J・アンダーソン(くもん出版)
1/29 ひねり屋 ジェリー・スピネッリ (理論社)
1/28 光の帝国 常野物語 恩田陸(集英社)
1/22 てのひらの闇 藤原伊織(文藝春秋)
1/16 落花流水 山本文緒(集英社)
1/14 ハリー・ポッターと賢者の石 J.K.ローリング作 松岡佑子訳(静山社)
1/14 永遠の仔 天童荒太(幻冬舎)
1/13 半パン・デイズ 重松清(講談社)
1/12 newspaper version エイジ 1998 6.29〜8.15 重松清/長谷川集平(朝日新聞社)

 1月29日(土) ファーブルの夏ものがり−“昆虫記”の誕生− 
          
マーガレット・J・アンダーソン作 千葉茂樹・訳(くもん出版)

amazon1998.6月発行・165P・1300円

この作品は、「ファーブル昆虫記」の中のエピソードを、息子である10歳のポー
ルが語り直す…という形に仕上げられている。

柱は、二つ。
まずは、実際どのような研究を通して、ファーブルの「昆虫記」は生まれた
のか…が、わかりやすい言葉で、具体的に書かれている。
そこで明らかになった昆虫が持つ本能や知恵には、虫は苦手な私でも興味深く
読めた。そして、“ひとつの謎に対して、仮説を立て、それを根気強く観察し、
実験して確かめてみる”…そんなファーブルの姿勢には、学ぶところも多い。
うーん、夏休みの自由研究の前に、子どもに差し出したいくらいだ(笑)

もうひとつは、息子が語り手となることによって、ファーブルの父親ぶりや
暮らしぶりなどを描いていくという、伝記のような要素も併せ持っている。
(だからなのか、ちょっと焦点のボケてるところもあるんですけど)
父の手助けをするのが嬉しくてしかたがないポールの、父親を尊敬する気持ち
にあふれてるのも特長だ。

小学校中学年ぐらいから、どうぞ。


 1月29日(土) 「ひねり屋」 ジェリー・スピネッリ
                         千葉茂樹・訳(理論社)


amazon1999.9月発行・275P・1800円 

ある街で、毎年開かれているチャリティーイベント「鳩の日」。
五千羽のハトを一羽ずつ放し、打ち落としたハトの数を競うのだ。
“ひねり屋”とは、打ち損じたハトの首をひねって、とどめを刺す少年たちの
ことで、十歳になった男の子がその役につくことになっている。
その街では、ひねり屋になることは名誉なことだった…。

主人公のパーマー・ラルーは、九歳の誕生日を迎えたばかり。
“スノッツ(鼻くそ野郎)”というニックネームをもらい、今まで相手にされて
いなかった悪ガキたちに認められ、やっと仲間に入れてもらえた。
しかし仲間でいることは、ボスの言うことに従い、幼馴染みの女の子ドロシーの
いじめに加担することでもあった…。

パーマーは、ひねり屋にはなりたくなかった…。
ある日、彼は毎日窓辺にやって来ていた鳩を、部屋の中に入れ飼い始める。
この街で鳩を飼うということは、見つかれば鳩は殺され、仲間はずれになって
しまうことだと秘密にしていた。そして、十歳の誕生日が近づいていた…。

これ、すごい設定だな…と思うんですけど、今でもアメリカのある街で、
実際に行なわれていることらしいです。(イヤなチャリティだよねぇ)
内容は、暗めで重いです。だけどそれをもろともせず、ぐいぐいと読ませる力が
この本にはあります。

しきたりや常識、みんなからはずれたくないと周りのことを気にして、自分の
本当の気持ちを出せない…バーマーのそんな心情に身に覚えがあって、胸が
締めつけられる思いでした。
形は違うけれど、今、子どもたちが内に抱えているのと同じものかもしれない
よね…。(大人たちもね)

そんなパーマーを暖かく見守る両親、秘密を分かち合うドロシーがいて、物語に
安定感があります。根底に安心感があることが、ラストの成長に大きくつながっ
ていると思います。読後、一歩前に踏み出す力をもらったような気がしました。


 1月28日(金) 「光の帝国 常野物語」 恩田陸(集英社)

amazon1997.10月発行・269P・1700円

「常野」と呼ばれるその一族は、それぞれが不思議な能力を持っていた。
驚異的な記憶力、遠目と呼ばれる予知能力、長命、離れた場所で起きていること
を見聞きすることができる遠耳…。

極めて温厚で、礼節を重んじる。権力を持たず、群れず、地に溶け込んで、はる
か昔から、ひそやかに生きる「常野」一族の物語…。


何の先入観もなく読んでいたら、あれっ?短編だった!?
10章から成る短編は、さまざまな手法で、異なった色を見せているのに、全てが
あわさると、それが「常野」というひとつの大きな物語を紡ぎ出しています。
あー、こういう形の短編連作集もありなのねー。

一見バラバラにみえる人たちが、あっー、あれはあの時の!と、どこかで何かが
つながっています。(何度パラパラとページを戻ったことか)

読み終えるのがもったいなくて、作者が作り出した常野の余韻にひきづられて、
読後しばらくボーッとしてしまいました。


特別な力があるが故に傷ついてしまった、子どもたちを集めた分教場で起きた悲
劇「光の帝国」と、最後の章「国道を降りて」が特に好きでした。


 1月22日(土) 「てのひらの闇」 藤原伊織(文藝春秋)

amazon1999.10月発行・379P・1667円

飲料会社宣伝部課長、堀江雅之。
まだ40代半ばだが、リストラの声がかかった時、即座に承諾し、今や退職真近の
状況。

その彼が、昔、自分を拾い上げてくれた石崎会長から、「これをテレビCMに使え
ないだろうか」と、直接託された1本のビデオテープ。しかし、そのテープに仕
組まれた仕掛けに気がついたことを告げると、「感謝する」という言葉を残して
その夜、石崎は自らの命を絶つ。その言葉に対する堀江の思いが、一度は捨てた
世界との対決に駆り立てていく…。


ミステリーではありますが、これは大人の男同士の友情と、大人の男女の愛の物
語でもあります。

とにかくねー、登場してくる人物が、男性も女性も、みんなかっこいいのねー!
「あぁ、“大人”って、こういう人たちのことをいうのね…」って感じ。
主人公の堀江、会長、堀江の友人・役員の柿島、デキル部下・大原女史、
六本木でバーを開いているナミちゃんとマイクの姉弟、初めイヤな上司だった真
田や、別の世界で生きる坂崎や勝沼でさえ、魅力があるのよー。

どう結びついていくんだろうと思うほど、バラバラだった断片が、会長の死後、
少しずつ全体が見えていくようになって、グングンと読めるようになりました。

発端となった、テレビの生CMで、タレントが無意識に発した言い間違い。
それが後々の運命のキーワードにもなっているのね。そのへんも、お楽しみに!

それぞれの、それから…が、読みたくなりました。
シリーズ化すると、いいのになー。


 1月16日(日) 「落花流水」 山本文緒(集英社)

amazon1999.10月発行・252P・1400円

因果はめぐる…そんな言葉を思い出した1冊。

1967年7歳から10年刻みで、語り手を変えながら、1人の女性「手毬」の人生を、
浮き彫りにしていくという連作短編集。その手法、巧いなァと思う。
彼女の人生をのぞき見してる気分も味わえたりして…。
母子間の愛憎も描いてますが、サラリとした印象です。

読みやすいし、おもしろくは読める。でもね、でもね、スパーンと、夫と子ども
を捨ててしまういさぎよさと、冷たさに、ゾッとする。
それがその新しい男性に対しての愛情によるものっていうより、流れ流され身を
任せた故なのか、手毬の母親の律子から受け継いだ血がそうさせるのか、はた
また計算が働いていたのか…。
どれにしても、いまいち共感できずに、終わってしまいました。
(欲望のまま…という律子の方が、まだわかりやすかったかなー。
老いても、なお盛んで、あっけらかんと幸せそうで)

手毬も、母親の律子も、残酷なほど、身勝手な行動を繰り返すのに、
(ここまでやると、作りモン!の印象も残らないわけじゃないけどね)
読んだ後、イヤな感情は残らず。でも、なんだか虚脱感に襲われました〜。


 1月14日(金) 「ハリー・ポッターと賢者の石」 J.K.ローリング作 
                      松岡佑子訳(静山社)

amazon1999.12月発行・462P・1900円

全世界で 800万部のベストセラー”。“2001年夏ワーナーブラザーズが映画化
決定”の帯コピーがついた、今話題の この本。
最近のベストセラーにも名を連
ねているイギリス発のファンタジーです。

ハリー・ポッターは、額に稲妻の形をした傷を持つ男の子。両親を亡くし、意地
悪な叔母一家と一緒に暮らしていたけれど、11歳の時に、魔法学校からの入学許
可証が届いて、初めて、自分が魔法使いだと知る。ホグワーツ魔法学校に入学し
たハリーは、親友のロンとハーマイオニーと共に、ハリーの両親を殺した、邪悪
な魔法使いヴォルデモートとの対決に挑んでいきます。


全体的に、軽〜〜い印象ですが、おもしろく読みました。ページをめくるのも、
もどかしいくらい、ワクワク、ドキドキしながら読めることも、まぁ大事な要素
のひとつなんでしょう。魔法学校…う〜ん、「ゲド戦記 1」から拝借したのか?
なんて思ったりもして。「ゲド」のような深みはない(なんか物語に奥行きが感
じられないんだよ〜)…けど、テンポはいいし、読みやすいよー。(ほめてるん
だか、けなしてるんだか)やられたっーというドンデン返しもあり。

魔法界へとつながる九と四分の三番線、ふくろう便など、ちりばめられた小物が
想像の世界を広げてくれます。

4年生くらいから(特に男の子に読んで欲しいな)


 1月14日(金) 「永遠の仔(上) (下)」 天童荒太(幻冬舎)

〔上巻〕amazon1999.2月発行・422P・1800円
〔下巻〕amazon1999.2月発行・493P・1900円

遅れ馳せながら読みました、「永遠の仔」。
読むのつらかったー(内容的にね)、でも読んでよかったー、そう思えた1冊で
した。重くてつらくて…でも読み終わると、それが全部ふっと飛んでいくの!

上下巻・二段組と結構なボリュームですけど、そんなことは全然感じさせない!
ダレることなく、グいぐいと一気に読めますよ、ホント、ホント。
(誰だよぉー、長すぎるからと、直木賞落としたのはー)
現在と、交錯する17年前の渦に、引きずりこまれていくって感じでした。

児童虐待がテーマ。
全て大人の都合−子どもは、あんたたちの道具じゃないッ!と言いたくなる親。
「生きていていんだよ、だって何も悪いことしてないじゃない」そう声をかけて
あげたくなる子どもたち。しかも子どもたちは、「自分が悪いから。自分のせい
なんだ」と追い詰め、誰にも言えずに、傷を広げていくのね…。

嫌悪感と怒りをもって(特に優希の父母には鳥肌が立つくらい)、読み進みまし
た。幼児虐待のニュースが多く伝えられる昨今、同じような気持ちで過ごして
いる子どもたちも少なくないのではないだろうかと思うと、やり切れない気持ち
になりました。後々まで、どんなに傷と影を残すかというところも、読みどころ
です。

同じような題材を扱ったと思われる東野圭吾さんの「白夜行」の方向性より、
こちらの方が好きでした。

讃岐うどん…の場面では、ボロボロ泣いちゃいましたね。


 1月13日(木) 半パン・デイズ」 重松清(講談社)

amazon1999.11月発行・360P・1700円

時代は、アポロ11号が月面に着陸した年。
お父さんの病気がきっかけで、東京から、お父さんの故郷の、遠い海辺の小さ
な町に引っ越してきたヒロシ。
彼の小学校入学から卒業までの、6年間の日々を描いた連作短編集。
“半パン”とは、ヒロシたちが履く、半ズボンのことね(笑)
小学校を卒業する頃には、男の子たちは「半パン」も卒業していきます…。


突然同居することになった親戚のおばあちゃん、障害を持っている同級生、
ライパル兼親友と一緒に好きになった女の子…
1話(1年)ごとに、いろんな人
たちと出会い、いろんな経験を積むことによって、前に進み、またちょっと後退
しつつ、たくましく成長していく様子が、伸びやかに描かれていきます。

安易な、昔は良かった…の懐古主義に陥らないところが、よかったな。
言葉の違いなど、環境の違いに戸惑い、友達関係に悩み、子ども子どもで今まで
わからなかった親戚など、大人の関係も、少しずつ見えてくる…。
どれも、時は流れても、いつの時代でも共通するものでしょ。

ヒロシも、彼をとりまく人たちも、みんなとってもいいのねー。
何度か、うるうると涙ぐんでしまいました。

読み終わった後、ほんわか暖かく、少年・少女の頃を思い出して、ちょっぴり切
なくなる…そんな1冊です。


 1月12日(水) 「newspaper version エイジ 1998 6.29〜8.15
                
重松清/長谷川集平 (朝日新聞社)


amazon1999.11月発行・93P・1200円

以前読んだ、単行本版「エイジ」の1/5くらいの薄さ。
朝日新聞に1ヶ月半連載された、そのままの形の新聞連載版「エイジ」です。
新聞というものをかなり意識したこの本は、紙はザラ紙、見開き1ページが1回分
で、全て長谷川集平さんの挿絵つき。

「エイジ」の持つ雰囲気やイメージを壊すことなく、一緒にその世界を作ってい
ると言っても過言じゃない、長谷川集平さんの絵は、見る価値あり!です。

先に単行本版を読んでいると、どうしても比べがちになるのですが、これはこれ
で完結完成されたものなので、やっぱり別モノと考えるのが、妥当でしょうか。

短期連載ということと、通り魔事件にのみ焦点を置いているので、よりストレー
トで、かけ抜けていくスピード感が感じられます。
(バスケ部のことなどは、一切出てこないよー)
最初の方は、1回1回においての起承転結をかなり意識して書いてるなという印象
がありますね。

単行本版「エイジ」、新聞連載版「エイジ」読み比べてみるのも、おもしろいか
もしれません。


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