| 2000年2月読了 | |||
| 2/26 | 俺はどしゃぶり 須藤靖貴(新潮社) | ||
| 2/18 | 第4の神話 篠田節子(角川書店) | ||
| 2/16 | 半眼訥訥 高村薫(文藝春秋) | ||
| 2/14 | 六番目の小夜子 恩田陸(新潮社)★ | ||
| 2/14 | わたし三昧 落合恵子(徳間書店) | ||
| 2/10 | ガラスの麒麟 加納朋子(講談社)★ | ||
| 2/7 | おばあさんになるなんて 神沢利子(晶文社) | ||
| 2/7 | 月の砂漠をさばさばと 北村薫(新潮社) | ||
| 2/4 | りかさん 梨木香歩(偕成社) | ||
| 2/2 | 時計坂の家 高楼方子(リブリオ出版)★ | ||
| 2月26日(土) 「俺はどしゃぶり」 須藤靖貴(新潮社) 第五回小説新潮長篇新人賞、受賞作品。 “「本の雑誌」が選ぶ1999年度ベスト10”、第9位。 「俺」こと吾郎は、大酒飲みで、フラれっぱなしの巨漢。 脱サラして教師になった母校の私立進学校に、 アメリカン・フットボール同好会を設立。 そこに集まってきたのは、およそ運動とは縁がなかった体重100キロ隊の3人、 秀才など、さまざまな個性を持った生徒たち。 アメフトのことなど、右も左もわからない…ところから始まった、 弱小チームの奮闘記! 昔懐かし、青春ドラマを見てるようでした。 悪くはないんだけど、私の場合は、軽快に読めた…とは言い難かった…。 まず、アメリカン・フットボールに馴染みがなかったことが、きつかったなぁ。 (せめてラグビーなら…と思ったけれど、それじゃあ、この話は成り立たない しねぇ) アメフトの専門用語の解説は、掲載されているんだけど、試合の状況など、 かなり苦心して、つっかかり、つっかり読んでしまい、おもしろさが、 半減してしまいました。 それと、展開が遅いのよぉー。だから、リズムも悪くなる。 でも、アメフト部の生徒や部長の山懸先生など、それぞれのキャラクターの 作り方は、巧かった。 かえって、同時収録されている、吾郎の大学時代を描いた、 「俺はキャプテン」「NG 胸を張れ」の方が、よかったな。 ところで、この本の中で飲まれた全酒量は、いったいどれくらいなのでしょう? と言いたくなるほど、とにかくすんごい飲みっぷりでした。ゲップ。 |
| 2月18日(金) 「第4の神話」 篠田節子(角川書店) バブルの時代を華やかに駆け抜け、42歳の若さで亡くなった女流作家。 芸大出身の美貌の人妻、ブランドに囲まれた優雅な生活、良妻賢母の評判を 持ちながら、次々とベストセラーを量産していった、夏木柚香。 しかし、彼女は自らの作品を「5年で忘れ去られる」と評価していた。 彼女の五回忌に合わせて、フェアが組まれ、評伝記事の執筆を依頼されたのは フリー・ライターの小山田万智子、39歳。 地道な仕事を重ねながらも、自著に、自分の名前を冠せないゴーストライター。 最近では、年齢と共に仕事がなくなりつつあり、不安定な状況。 万智子が取材した、担当編集者、娘、大学の同級生…と、たくさんの人たちが 語る夏木柚香。 華やかな仮面の裏に隠された、女として、妻として、母としての多くの悩み。 そんな苦悩を抱えつつ、次々と作品を発表していった華やかな作家像。 それが、また共感を得るはずだった。 しかし証言を集めれば集めるほど、前の証言は覆され、柚香の素顔は不鮮明に なっていく…。 有名で華やかな存在であればあるほど、その人の裏側を知りたいという欲求。 そんな大なり小なりある人間のイヤラしさが、満たされていったりして。 読みながら、万智子と同じ視点で、同じ疑問、同じひっかかりにぶち当たりま す。仮面が一枚一枚とはがされ、次第に、浮かびあがってくる柚香の心のあり よう。つくづく、幸せってなんだろうと、考え込んでしまいました。私には、 柚香の孤独は理解できたけど、彼女の価値観は理解できないなぁ。 バブル作家と陰口を叩かれていた作家が本当にやりたかったこととは?? 後半、その点が弱く、尻すぼまりの印象も、否めませんでした。 全てのものを手にした短い一生と、地道ながら細く長く輝くことのない人生。 自分と対極にある柚香に、反感を持ちながらも、次第に共通したものを感じ、 万智子自身の人生にも方向性が見えていく…。その過程が好きでした。 失礼ながら、どうしても、作中の「夏木柚香」に、何年か前に亡くなった女流 作家2人の“イメージ”を重ねて読んでしまった私です。 (ところどころで、この頃、よくマスコミに登場するK姉妹とか…ね) |
| 2月16日(水) 「半眼訥訥」 高村薫(文藝春秋) やはり“エッセイ”という軽い響きの言葉では括られない…著者初の雑文集。 高村薫さんの作品同様、骨っぽい力強さのある文章です。 今の時代、大人も子どももみな忙しいけれども、個々の欲望を追求するあまりの 忙しさという側面はないだろうか。仕事も勉強も趣味も遊びも、全部を満足させ るには、一日は短過ぎる。何を優先し、何を我慢するかを大人が心に決めさえす れば… ものを考えなくなった日本人への警鐘。日本語の乱れと想像力の欠如。 そして、社会全体の精神の張りのなさ…。 それがそのまま、「自分はどうなんだ」と突きつけられている気がしました。 さらに、新聞やニュースを見ていて、わかった気になっているだけで、言葉だけ がなんと上滑りしていることか、と痛感させられました。 わかったつもりになっていても、本当は何もわかっちゃいない、何も考えていな いという自分の現実。 この雑文集も、上っ面だけなめて、読んだ気になっているだけかもしれないとい う思い。深く理解する力のない自分にじくちたる思いを抱えてしまうのでした。 特に、第二章の「子どもたち」については、そこらの教育論より、ずっと論理的 で納得できます。折りにふれて再読したい…。 また音楽への想い、小説の周辺など、彼女の素顔が垣間見れるところも、 高村薫ファンには、嬉しいところです。 |
| 2月14日(月) 「六番目の小夜子」 恩田陸(新潮社) とある地方の進学校で、代々、生徒たちの間で、密やかに受け継がれてきた「サ ヨコ」伝説。今年は、“六番目のサヨコ”の年だという。その年の四月、転校し てきた美少女の名は、津村沙世子。彼女が転校してきてから、不可解なことが起 こり始めます…。今年の「サヨコ」は、いったい誰なのか?そして、津村沙世子 の正体は?? はじめから、ぞぞぞっとくる怖さ。否応なしに、高まってくる緊張感。それでい ながら、大学受験を前にし、不安定ながらも、高校生活最後の華やいだ雰囲気を 持つ高校三年生の日常を、丁寧に描き出しています。これがきちんと書かれてい るから、よりよく読めるんだよなぁ。高校三年生の時期、そんな思いで過ごして いたなと共感できるところもあり、懐かしく感じました。 全体を通して見ると、津村沙世子の心理がいまいちよくわからないところもあっ て、ん??と思うところもあるのですが、最後まで飽きることなく、一気に読め ました。それにしても「何かが起きるんじゃないだろうか」という予感が、こん なに怖いなんて〜。特に学校祭の場面では、ゾクゾクしながら楽しませてもらい ました。 この本を読みながら思い出していたのは、昔 NHKで夕方に放送されていた眉村卓 さんや、光瀬龍さん原作の少年少女向けのSFドラマ。小学生だったので、だいぶ 忘れちゃったけど、「なぞの転校生」とか「未来からの挑戦」とかあったよね? (楽しみに見ていたシリーズだったんですけど、自分の不確かな記憶に自信がな い…) |
| 2月14日(月)「わたし三昧…眠れない夜のために」落合恵子(徳間書店) 雑多な印象を持ったエッセイ集。 「生命の感受性」「自分にごほうび」「わたしを好きになるために」と、私の本 棚には、落合さんのエッセイが3冊並んでいるけれど、「わたし三昧」は、この 3冊と同じことの繰り返しのような気がして、新鮮味が感じられなかったです。 また、この本に限っていうと、どこか肩に力が入っている印象が拭い切れず、 しっくりこなかったですね。 第ニ章の「女の居場所」は、作家など著名人(女性)の個人史を、毎月1人ずつ 取上げてる、雑誌「月刊クーヨン」連載中の「HERSTORY」をまとめたもの。 個人的には、中途半端にエッセイ集の中に組み込まないで、これはこれのみで 本にした方が、よかったのでは…と、勝手なことを思いました。 (それじゃあ、本は売れないのかなぁ…) 特に若い年代には、名前は知ってるけど、顔は浮かばない…今は亡き著名人 というのも多いし、写真(ビジュアル)から訴えてくるものも大きいので、 雑誌掲載そのままの形の方が、よかったと思うのは、私ばかりでしょうか…。 |
| 2月11日(金) 「ガラスの麒麟」 加納朋子(講談社) 女子高生・安藤麻衣子の殺人事件をきっかけとして起こる、さまざまな出来事が 最後には、大きなひとつの環となる、連作短編集。 こういうパターン、お得意なんだろうなー、加納朋子さん。 殺された安藤麻衣子自身の姿は、冒頭3ページしか出てきません。 しかし、6つのストーリーの謎を解いていくうちに、また彼女の遺した童話から 彼女の人物像が、しだいにうかびあがってくるのです。 17歳。自分でも、こういう時期を通ってきたはずなのに、この時期の脆さ、危う さが心に染み入ります。謎解きを養護の先生がするのも、良かったな。 透明感のある繊細な文章は健在。 「ガラスの麒麟」は、それに少し苦味が加わった感じ。せつなさが残りました。 ただ正直に言うと、読み終わった時、「あー、おもしろかった、でも、これを 読んでしまったら、わたし的には、加納朋子さんは、もういいかな」と、 思ってしまいました。 加納朋子さんの作品を読んだことによって、自分が、どういうタイプの小説が 好きなのかということが、明確になったような気がしました。 |
| 2月7日(月) 「おばあさんになるなんて」 神沢利子(晶文社) 「くまの子ウーフ」「ちびっこカムのぼうけん」などを、生み出してきた、 児童文学作家・神沢利子さんの半生の聞き書き集。 ご自分の歩いてきた道を、ありのままに、正直に話されている姿に好感を持ちま した。 現在76歳だという神沢さん。昨年の11月、絵本・児童文学研究センターの行事で 小樽にいらしていた神沢さんは、ステージ上からでしたが、そこから伝わってき た品格といい、たたずまいといい、こんな風に、年齢を重ねていけたらいいなと 思わずにはいられませんでした。 闘病、貧困、ご主人の裏切りなど、若い頃、大変ご苦労されたようですが、 書くことで浄化されるのか、内なる子どもとの対話を続けているせいなのか、 お若い時の写真も、現在も、ホントにお綺麗〜で、若々しい〜。 しかし、物語が生まれて出てくる背景には、そういう厳しい現実とのパランスを 無意識にとろうとする心の働きもあったのでは…と、読み取れました。 樺太で育ったという神沢さんの創作の源は、北方にあるようです。 それにしても、創作のしんどさ、壮絶さ。 華奢でおっとりと静かなイメージを持っていましたが、 心の中の熱さ、芯の強さに触れたような気がしました。 今だ、創作の意欲を失わず、キャンドル、花、ハーブ、染物など、 ご主人が遺されたものを楽しみ、キラキラとかわいらしい魅力もある神沢さん。 素敵ですよー。 |
| 2月7日(月) 「月の砂漠をさばさばと」 北村薫(新潮社) 作家のお母さんと、小学校3年生のさきちゃんの、ほのぼのと、ユーモアあふれ る日常を描いた、12の物語…。 優しい北村さんの文章と、ふんわりしたおーなり由子の絵が、まさしくぴったり と合っていて、とーってもいい雰囲気♪どちらが欠けても成り立たなかったと 言ってもいいでしょう。読後、あったかい気持ちが広がりました。 でたらめ歌の「さばのみそ煮」、ゴミ収集の人にも一筆書いておくような優しさ をもつ、植物に詳しいおばあさん「ヘビノボラスのおばあさん」、お母さんとム ナカタくんが交わす交換日記「連絡帳」が、特に好きでした。 友達のような親子関係だけど、さりげなく主張も盛り込まれています。 設定が、作家のお母さんとはいえ、こんな風に、すらすらとお話が作れる お母さんいいなぁー。 わが身と照らし合わせて、大いに反省することもありでした。ハイハイ。 |
| 2月4日(金) 「りかさん」 梨木香歩(偕成社) ようこが欲しかったのは、リカちゃん人形。しかし、おばあちゃんから送られて きたのは、真っ黒の髪の市松人形、「りかさん」でした…。 さまざまな人形たちが語る、込められた思い、過去の記憶の物語。 その人形たちと、ようこ、おばあちゃんの麻子さんをつないでくれるのは、不思 議な人形「りかさん」。 あんまり強すぎる思いは、その人の形からはみ出しちゃって、そばにいる 気持ちの薄い人の形に移ることがある。それが人形。 気持ちは、あまり激しいと、濁っていく。いいお人形は、吸い取り紙の ように感情の濁りの部分だけを吸いとっていく。これは、技術のいることだ。 …。だけど、このりかさんは、今までそりゃ正しく大事に扱われてきたから、 とても、気だてがいい。 愛でる心、大事に慈しむ心…それが、この本の底に流れているテーマ。 この本の持っている雰囲気、たたずまい、そんなものも含めて、好きな1冊とな りました。後から、じわじわと心に響きます。 以前読んだ「からくり からくさ」の蓉子の、少女時代の物語。 ようこちゃんは、ここにいたんだね…と、久しぶりの友達にあったような、懐か しい気持ちになりました。 少女時代から育まれてきた、大事にする心、丁寧な落ち着いた暮らし、人形の りかさんや麻子さんと積み重ねてきたの時間が、あんな風に素敵な女性を育て てきたんだな…と、納得。 そろそろ、我が家でも、お雛様を出す季節となりました。我が家の人形は、どん なことをささやいてるんだろう…と、人形を見るたびに、気になったりして。 (でも、ちょっと怖いね〜) お雛祭りを前に、今が読み時です! |
| 2月2日(水) 「時計坂の家」 高楼方子(リブリオ出版) いとこのマリカからの手紙がきっかけで、12歳の夏休みを汀館の祖父の家で、 過ごすことになったフー子。 祖父の家の二階の踊り場には、さらに数段の階段が設けられていて、そこには、 以前使われていたようなのに、今は、打ちつけてある扉。 そして、窓枠にかかっている錆びた懐中時計。 フー子がその前に立ってみると、閉じられていたはずの時計の蓋が開き、時を 刻んだと思ったら、それは、花に変わり、扉の向こうには、別の世界…緑の園が 広がっていました。 祖父から、その扉は昔、物干し台に通じていて、フー子の母がまだ小さい頃、 祖母がそこから、落ちて死んだのだという話を聞きます。 やがて、その園へと足を踏み出したフー子は、祖母もこの園に来ていたのでは ないかと、思いはじめるようになってきます。 マリカのいとこの映介と共に、その時計を作ったのは、チェルヌイシェフという ロシア人だということを突きとめ、彼の謎、園の謎、そして祖母の失踪の謎を、 追いかけはじめることになります…。 読み始めて2〜3ページで、母の故郷で、小さい頃よく行った函館の景色が蘇って きました。(後から、著書の紹介で、高楼方子さんが、函館生まれだと、確認。 うーん、やっぱり函館だー) はじめこそ、時計の刻む音に導かれて開かれる別世界の扉。そして、その前に 広がる庭園…。それって、フリッパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」に 似てないかい??と思っていましたが、だんだんとミステリーの様子も呈して くる、高楼さんの緻密に作り上げられた世界に、引きずりこまれていきました。 園の迷路で、読んでる私までが、酔ってしまいそうな感覚に陥ったりして。 子どもとの距離を上手にとる大人の姿が魅力的。 また、映介とフー子の関係も清々しく描かれていました。 ファンタジーが好きなあなたに、どうぞ…。 |