2000年4月読了
★印は、おすすめ
4/29 ゴースト・ドラム スーザン・プライス(ベネッセ)
4/29 アンパオ ジュマーク・ハイウォーター作(ベネッセ)
4/29 のっぽのサラ パトリシア・マクラクラン(福武書店)
4/28 旧・童話物語 向山貴彦(エトセトラ出版)
4/27 クロスファイア 宮部みゆき(光文社)
4/20 精霊の守り人 上橋菜穂子(偕成社)
4/12 魔法飛行 加納朋子(東京創元社)
4/10 雪のかえりみち はたこうしろう(岩崎書店)
4/10 あざみ姫 ヴィヴィアン・フレンチ(徳間書店)
4/5 ベター・ハーフ 唯川恵(集英社)
4/2 ナイフ 重松清(新潮社)

 4月29日(土) ゴースト・ドラム 《北の魔法の物語》
          
スーザン・プライス・作 金原瑞人・訳(ベネッセ)

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(現在在庫切)1991.5月15日発行・218P・1400円

どこから切っても、100パーセント!?ファンタジー作品。

それは、冷たく暗い冬が一年の半分を占める、北の国の物語…。冷酷非情で理不尽
なギドン皇帝と、さらに悪どい皇帝の妹マーガレッタ。反逆を恐れ、生まれた時か
ら高い塔の丸天井の部屋に閉じ込められたままの皇子・サファ。

そのサファの叫び声を聞きつけたのが、若い女魔法使いのチンギス。彼女は、不思
議な太鼓“ゴースト・ドラム”の言葉を解し、ニワトリの足を持つ家に住む。しか
し、サファの命を狙うマーガレッタや、チンギスの魔法の力に嫉妬する男魔法使い
のクズマに、行く手を阻まれていく…。


薄い本で、さらりと読めるかな?という予想を、大きく裏切っていく、どっしりと
重厚なストーリー。読み応えありです。

児童文学だからと言ってあなどるなかれ。この物語には、不用な甘さは全くなし。
その残酷さ、過酷さに、圧倒されながら、いつしか物語に引きずりこまれていきま
す…。

架空の国の物語には納まり切らず、今を生きる私たちのどこかの国のことを言われ
ているような、そんな辛辣なメッセージも。金色の鎖で、カシの木につながれた物
知りの猫…に語らせるという構成の巧さも○。

1987年イギリス・カーネギー賞受賞作品です。


 4月29日(土) アンパオ−太陽と月と大地の物語」 
           
ジュマーク・ハイウォーター作 フリッツ・ショルダー絵
                            金原瑞人・訳(ベネッセ)


amazon(現在在庫切)1988.6月30日発行・318P・1340円

 
「さあ、はなしてきかそう。どのようにして世界がはじまったか、どのようにしてアンバオという
 子どもが生まれたか、そしてアンパオが、さまざまな生き物のなかで、さまざまな霊の中で、どの
 ような冒険をしたのか」…。

インディアンの若者・アンパオ。顔に傷のある彼は、父のことも母のことも覚えて
いない。アンパオは、ある村でココミケイスという美しい娘と出会い、彼女との結
婚の許しを得るために、太陽のところまで、長い長い旅に出る…。


読後のこの気持ちをうまく言い表す言葉をもたない自分が、なんとも情けなく、歯
がゆい。形容しがたい不思議さ、美しさ、奇妙で残酷で、おどろおどろしくて…。
いろんな感情が、ごちゃまぜになる。

人も動物も月も太陽も、同じレベルとして存在し、生と死と喪失が入り混じってい
る…。


ひとたび本を開くと、その大きな渦の中に引き込まれて、インディアンの強烈な
界観に迷い込み、そして打ちのめされてしまうのだ。


作者のジュマーク・ハイウォーターは、自らインディアンの血をひくという。
巻末
の「最後に語り手から」によると、この作品は、アンパオという主人公のみが作者
の創作で、あとは、インディアンのさまざまな部族の中で、長い間、口伝えで受け
継がれてきた物語をもとに、構築されたものなんだそうだ。

好き嫌いが分かれるかもしれないが、ぜひ一度この不思議な世界に触れて欲しい。

1978年、ニューベリー賞推薦。


 4月29日(土) 「のっぽのサラ」 パトリシア・マクラクラン作 
                  金原瑞人・訳 中村悦子絵(福武書店)

amazon(現在在庫切)1987.10月発行・145P・1200円

弟のケイレブを産んですぐ、ママが亡くなった。
だから、弟はママのことを覚えていない。
パパは、ママが死んで以来、歌わなくなった…。

パパが出した“奥さん求む”の新聞広告を見て、届いた手紙。もし一緒に暮らせそ
うなら結婚しようと、アンナとケイレブとパパが、住んでいる大草原の中の小さな
家に、サラという女性がやってきます。黄色い帽子をかぶった、のっぽで、ぶさい
くなサラが。

四人での暮らしが始まって、アンナとケイレブは、嬉しくて嬉しくてしょうがあり
ません。
でも心配でたまらないことがありました。それは、サラはずっとここにい
てくれるのだろうか…ということです。


ひたすらサラにいて欲しいと願うケイレブとアンナ。サラのなにげないしぐさ
や言
葉に一喜一憂する姿は、本当にいじらしいくらい。

のっぽでぶさいくなサラ…と表現していますが、気負うことなく入ってきて、オー
バーオールを身にまとい修理が得意で、いろんなことに挑戦してみようとする好奇
心旺盛なカッコイイ女性です。

海が好きで海を忘れられないサラが、少しずつこの草原の土地が好きになっていく
過程や父親との距離が少しずつ近くなっていく様子が、自然で好感が持てました。

作者の母親が幼い頃の実話に基づいているものなんだそうです。

ところどころキラリと輝く言葉が、この物語を支えています。読後さわやかで、ほ
のぼのとあったかい気持ちになれる1冊です。'85年
ニューベリー賞受賞作。


 4月28日(金) 「旧・童話物語」 向山貴彦/宮山香里 (エトセトラ出版)

以前読んだ「童話物語」の元になった自費出版バージョン。(…だと思うんですけ
ど、間違ってたら、ごめんなさいです)こちらも題名は「童話物語」なのですが、
この後、幻冬社から出された完成版との区別をするために、「旧・童話物語」とさ
せていただきます。

こういう風に元になった物語を読んだことは、初めてで、すごくおもしろい経験に
なりました。ここを膨らませたのねとか、ここが変わってる!とか、楽しんで読め
ました。

例えば、アロロタフの水門での闘い?の場面は大きく書きかえられたようです。ま
た、イルワルドの扱いというか場面では、幻冬社版「童話物語」の方が彼の持って
いた憎しみがより強く、はっきりと浮き彫りにされていました。どっちもイヤな奴
でしたけどね。また暴力・虐待シーンが苦手な私には、そういう点では「旧・童話
物語」の方がさらりと読めて、テンポがいい気がしました。

もっと大きく変わっているのかしらと思っていたんですが、骨組み・大筋はほとん
ど変わっていません。この「旧・童話物語」の段階で、もう既に完成していたんで
すね。私はどちらも好きです。

そして、もう一度「童話物語」を読んだことで、ストーリーを追いかけて読んだ前
回より、ペチカやフィツからのより強いメッセージを受け取れた気がしました。

“アンティアーロ・アイティラーゼ”…。そうそう30代だって、皆“旅の途中”だ
よねッ!

この本はこざる図書館だよりの白鳥こざるさんからお借りしました。とにかく貴重
な機会をいただいた、こざるさんに感謝です♪

やっぱりこれは、アニメで映像化して欲しいよぉ!作者も映像化を頭に置いて書か
れているような気がしてならないんですけど…と勝手な推測。


 4月27日(木) 「クロスファイア(上・下)」 宮部みゆき(光文社

〔上巻〕amazon1998.10月発行・315P・819円
〔下巻〕amazon1998.10月発行・282P・819円

深夜の廃工場。偶然ある凶悪事件を目撃した青木淳子は犯人の若者二人を処刑と称
して焼殺。彼女は念力放火能力…エネルギーを放射して、対象物を超高温で瞬時に
焼いてしまう超能力…を持っていたのだった。瀕死の被害者から若者たちに連れ去
られた恋人の救出を頼まれた淳子は、逃走した犯人を追う。

一方、警視庁のおばさん刑事・石津ちか子はこの不可解な焼殺事件が、ある未解決
事件に似ていることに気がついた。過去の出来事からこの念力放火能力の存在を信
じる牧原刑事と共に捜査にかかるが、新たな焼殺事件が次々と起こる…。

宮部みゆきさんの超能力モノは好き。淳子の放つ炎の熱にあてられたかのように読
み出すととまらなくなって、文字通り一気読み!スピード感のある展開に目が離せ
ませんでした。

「正義」の名のもとだんだん暴走していく淳子と対照的な、石津ちか子の存在。ご
く普通の感覚の彼女の視点がいつしか読んでる自分の視点と重なって、そんなこと
あるかい!?が、読んでるうちに、もしかしてあるのかもしれないに変わっていく
力を持っているのね。

淳子の行なってきたこの“処刑”が本当に正しいものだったのかは別にして、異質
なものを背負ってきたばかりに、人を避け生きてきた淳子の孤独が痛いほど伝わっ
てきた中、だからこそ、これからつかむはずだった幸せを良かったねって思えたの
に…と、かわいそうでかわいそうで、哀しみが後引きました。

なぜ淳子がこの処刑を行なおうと思ったのか…動機が知りたくて、読み終わってか
ら、「鳩笛草」(光文社文庫)の中の短編集「燔祭」を読みました。「クロスファ
イア」は、「燔祭」の続編になります。これから読む方は是非「燔祭」の方を先に
読むといいと思います。こちらは「クロスファイア」にも登場する多田一樹の視点
から描かれています。


 4月20日(木) 「精霊の守り人」 上橋菜穂子(偕成社)

amazon1996.7月発行・325P・1500円

私がどんなに言葉を並べても、このおもしろさは伝えきれないッ!とにかく損はな
いから読んでみて!と言いたくなる、超おすすめのこの本。ファンタジーです。

100年に一度、あちらの世界ナユグの生き物 <水の守り手>ニュンガ・ロ・イムは
こちらの世界サグの子どもに宿り、卵を産みつける。その宿り主として選ばれ、<
精霊の守り人>としての運命を背負わされたのは新ヨゴ皇国の皇子チャグム11歳。

偶然、チャグムの命を救うことになった女用心棒のバルサは、聖祖トルガイ帝の伝
説を守ろうとする王宮の追っ手から、チャグムの命を守る仕事を引き受けることに
なります。しかし、さらにまたチャグムを追って現われた、ナユグの<卵食い>の
ラルンガの存在が彼らに迫ってくるのです…。


チャグムの守り手として立ち向かうのは、「短槍使いのバルサ」と呼ばれる30歳の
女性。このバルサがとにかくカッコいいんだよー!幼い頃から望みもしない運命に
翻弄され傷ついたバルサの心が、チャグムの用心棒をすることによって、少しずつ
解きほぐれていきます。また、全て守られ、何事も人にやってもらっていた立場で
あった皇子も、「なぜ、おれなのか…」と悩みながら、次第に自分の足で立ってい
く成長物語でもあります。

ハラハラドキドキと手に汗にぎる展開。呪術師のトロガイ、薬草師のタンダなど、
登場人物も魅力的よッ!

故意に作り変えられた歴史は、現代にも通じるところもあるような気がして、考え
させられました。


 4月12日(水) 「魔法飛行」 加納朋子(東京創元社)

amazon1993.7月発行・278P・1600円

デビュー作「ななつのこ」の続編。

女子大生の駒子は、瀬尾さんに後押しされて、彼女の日常を小説風に仕立て上げた
手紙を書き送ります。瀬尾さんはその中に書かれた謎を、返信という形で解いてい
く…。ここまでは、「ななつのこ」と同じですが、今回はその中にもう一つ各篇の
最後に差し込まれている差出人不明の不可解な手紙。これが最後に大きな意味をな
していくのです…。

それぞれの短編をつなぎ合わせると、最後に大きなひとつの環になるという連作短
編集の形をとった長編ミステリー。

巧みにはりめぐされた伏線。挿入された手紙の意味が明らかになった時、やられた
と脱帽。思わず、巧い!と膝をたたきたくなりました。

ただ、「魔法飛行」は作品として評価はするけれど、好きかというと、う〜ん…。
どれを読んでも似たような雰囲気、同じパータンの気がして、加納さんにはいつも
辛口になってしまう私…。


 4月10日(月) 「あざみ姫」 ヴィヴィアン・フレンチ文 
          
エリザベス・ハーバー絵 中川千尋訳(徳間書店)

amazon2000.2月発行・1600円

絵本です。

むかしむかし、時の流れがまだ時計にきざまれなかった頃、あるところに、子ども
が欲しくてたまらない王様とおきさきさまがいました。二人はある日、お城の庭で
愛らしい赤ちゃんを見つけました。王様もおきさきさまもたいそう喜び、決して危
ないことがないように大事に大事に育てます。あんまり大切に思うあまり…。


“姫のために”“よかれと思って”と手出し口出しする方向性がどんどん間違って
いくという非常に現代に通じる課題。思わずわが身を振り返ってみたくなる親の自
己満足(実は子どもって、そういうところ鋭く見抜いてる気がするんですけど)の
結末は…読んでのお楽しみ。淡い色彩、透明感あふれる絵も素敵です。

 「雪のかえりみち」 藤田一枝・作 はたこうしろう絵(岩崎書店)

amazon2000.1月発行・32P・1300円

こちらも絵本。

ぼくが1年生だった冬。3時間目の終わり頃、ふわふわと降ってきた雪が、どんどん
どんどん積もって大雪になりました。よそのお母さんたちは傘や長靴を持って学校
に迎えにきましたが、ぼくのお母さんは仕事で来られません。やまない雪の中、バ
スを待っているとだんだん心細くなってきて…。


雪の季節も終わったけれど…はたこうしろうさんの絵が絶妙!絵本に占める絵の大
切さって、やっぱり大きいよねー。寒さと心細さで震えているぼくに対する見知ら
ぬ大人たちの心づかい。そして、ちゃっかり先にタクシーで帰ってきたお兄ちゃん
のホローとサービスぶりが特に好き。兄弟っていいなーって思わせてくれますよ。


 4月5日(水) 「ベター・ハーフ」 唯川恵(集英社)

amazon2000.1月発行・403P・1700円

どっぷりとバブルの時代に溺れていた二人が結婚した。一流広告代理店勤務、経費
も自由に使え、派手で口が巧い文彦と、人目を引く美人で、いい条件でいい結婚を
することを夢見ていた永遠子。

しかし、式の前に永遠子の控室に現われたいわくありげな女性、永遠子が新婚旅行
先からかける電話。二人の結婚は最悪のスタートを切り、その後も不倫、株の損失
リストラ、ボケ始めた親、流産、お受験…と、二人の間にこれでもかというくらい
次々と問題が降りかかってきます。

バブルの頃から現在まで…。時代時代の出来事をさりげなく絡めて、その頃の空気
を意識させながら、嵐のような二人の結婚生活が展開されていきます…。

前半は、ここまでするなら別れる!ここまでされるなら別れる!と何度思ったこと
か。帰る所がないからと形だけの結婚生活を続ける二人に、帰る所…実家に居場所
がないったって、自分の足で歩いていけばいいでしょー!と憤慨した私〜。

それでも見栄やプライドでだけ繋がっていた夫婦の関係も、時の流れと共に少しず
つ変化を見せていきます。

以前読んだ山本文緒さんの「落花流水」と比べて、あり得るかもしれないという現
実味のある(!?)波乱万丈。そりゃあ、平平凡凡と毎日を過ごしている私にとっ
ては、ここまでいろんなことがあり過ぎると身が持たないけどね。

「どうして別れないの?」「どうして結婚なんかしたの?」そう思いながら読んで
いくと、自分のことしか考えなかった昔の自分自身の姿も見えてきます。また、こ
れが全ての結婚の実態とまでは言わないけれど、「こんなはずじゃなかった」とい
う普段露見しない心の奥底の本音がリアルに暴かれていて、非常に興味深く読みま
した。


 4月2日(日) 「ナイフ」 重松清(新潮社)

amazon1997.11月発行・307P・1700円

「いじめ」をテーマにした五つの短編集。読みながら表題通りまさにナイフを突き
つけられたような感じ。辛くて痛くて、ボロボロ泣けました。だけど読み終わった
後、暗さもイヤな感じもちっとも残らないの。逆に明るい希望さえ感じさせてくれ
るのです。

いじめられる側の心理状態・プライド、いじめられている子を持つ親たちの思いや
反応…今の私だとどちらの気持ちにもうなずけるリアリティさがあって、より心を
痛くし、無力感にさいなまれました…。

重松さんは、子どもの視点に降りてきても、大人の側から描いても巧いという印象
を持ちました。お父さんたちに是非読んで欲しい…という印象を持った本でした。


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