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2000年6月読了
★印は、おすすめ
6/29 ぼんくら 宮部みゆき(講談社)
6/25 慟哭 貫井徳郎(創元推理文庫)
6/23 麦酒の家の冒険 西澤保彦(講談社文庫)
6/20 バッテリーV あさのあつこ(教育画劇)
6/20 殺意・鬼哭 乃南アサ(双葉文庫)
6/18 ヤンネ、ぼくの友だち ペーテル・ポール(徳間書店)
6/16 恋は決断力 森まゆみ(講談社)
6/15 ステップファザー・ステップ 宮部みゆき(講談社文庫)
6/14 天使の屍 貫井徳郎(角川文庫)
6/13 京都発 平成の若草ものがたり 清水秩加(北大路書房)
6/12 夢の守り人 上橋菜穂子(偕成社)
6/6 DIVE!! 森絵都(講談社)
6/6 ビフォア・ラン 重松清(幻冬舎文庫)
6/3 彼女が死んだ夜 西澤保彦(角川文庫)

 6月29日(木) 「ぼんくら」 宮部みゆき(講談社)

amazon2000.4月発行・513P・1800円

人情にあふれ、愛すべきキャラクターが、たくさん登場してくるこの作品、好き
だったなぁ。読み終わるのが寂しい…去りがたし…という気持ちにさせられまし
た。

舞台は江戸の下町・鉄瓶長屋。そこで起きた殺人事件を始まりに、長屋から次々
と店子が去っていく。一見、別々の理由で去っていったかに見えた店子たち。し
かし、その裏に隠された陰謀に気がついた同心・井筒平四郎は、甥の弓之助と共
にその謎に迫っていきます…。


小さな事件を五つの短篇で積み重ね、それがひとつの大きな謎として中篇作(と
いうには長いんだけど)に流れ込んでいく。そして最後は書き下ろしのエピロー
グで締めくくるという構成の長篇時代劇ミステリー。

この作品を支えているのは、やっぱりわき役を含めたキャラクターたち。聡明な
美少年・弓之助、人間テープレコーダーのような能力を持つ少年おでこ、おきゃ
んな“みすず”、女郎上がりで軽そうに見えるけど心根のいい“おくめ”、みん
な好き。そして、主人公の平四郎。面倒くさがりやで怠け者だけど一本筋の通っ
た姿勢が最後まで、気持ちいいの!

映像を見ているように、キャラクターが生き生きと動いてました。読んだ後、心
がポッと暖かくなりますよ。


 6月25日(日) 「慟哭」 貫井徳郎(創元推理文庫)

amazon1999.3月発行・418P・720円

この作品は、なんの先入観も持たずに読むのが一番だと思うので、ごちゃごちゃ
書きませんが、とにかく読んで損なし!オススメです。これがデビュー作とは、
恐れ入りましたッ。

連続して起きた幼女誘拐事件。しかし警察の努力も空しく捜査は行き詰まり、捜
査一課長の佐伯は、警察内の不協和音、マスコミや世論の批判の中で苦悩する。
一方、深い虚無を抱え、心に大きな穴をあけてしまった男が、新興宗教に救いを
求めようとしていた…。

物語は、両者を交互に描いていく…という構成になっています。接点はどこに?
リアリティのある人物像、新興宗教の実態、警察内の軋轢や家庭の不和など、ど
こかで起きていそうな現実に、読む手が止まらない…。

そして二つのストーリーが融合した瞬間、うわっ、やられた!と、衝撃!驚愕!
しばし呆然・・・。ひっさびさに興奮した1冊!

読後、大きな大きな悲しみがずっしりと心に響きました。


 6月23日(金) 「麦酒の家の冒険」 西澤保彦(講談社文庫)

amazon2000.6月発行・359P・619円

匠千暁シリーズ第二弾。(ちなみに、このシリーズの最新刊「依存」が6/26に幻
冬舎から出るそうよ!)先日読んだ「彼女が死んだ夜」の続編になります。

タック、タカチ、ボアン先輩、ウサコのキャンパス四人組が、R高原に行った帰
り道、相次ぐトラブルで車を捨て、山の中を歩き続けた末に辿りついた無人の一
軒屋。そこで彼らが目にしたものは、シングルベット1つと、クローゼットの中
に隠された、膨大な量のビールとジョッキーが詰め込まれた冷蔵庫だけ。彼らは
そこにあるビールを失敬しつつ、不可解なこの家の状況を考え始めます…。


四人がひたすらビールを飲みながら、頭脳と会話だけで推理を重ねていくという
展開。さまざまな仮説を立てては崩し、崩しては立てていき…と、これで最後ま
で引っぱっていくんだから、すごい!

ちょっとなかだるみしちゃうところもあるのですが、この四人のキャラクターの
魅力で楽しめました。とにかく飲んでますねー。何本飲んだでしょう…と問題を
出したくなるくらい!あんなに飲むと頭回らなくなりそうなんだけどな(笑)

さぁ、頭を整理して、一緒に考えながら読みましょう〜。読みながら、ビールを
飲みたくなることうけあいです!

なお、文庫の解説は恩田陸さんですよぉー♪


 6月20日(火) 「バッテリーV」 あさのあつこ作 佐藤真紀子絵(教育画劇)

amazon2000.4月発行・255P・1500円

バッテリー」「バッテリーU」に続く、シリーズ三作目。

前作「バッテリーU」から話は続いています。

以前、体育館倉庫で起きた事件のために、部活停止、地区予選も欠場していた新
田東中学野球部。表向きには、ほぼ解決され、やっと活動が再開されることに。

満足に対外試合も出来なかった三年生のために、引退前に強豪横手ニ中との試合
をしたいと申し出る監督。しかし学校から認められなかったために、まずは紅白
戦をして、その実力をアピールすることになり、巧もマウンドに上がることにな
ります…。


ボールを投げることにおいて、天才的な力を持って生まれてきた原田巧、中学1
年。しかし、実力に裏打ちされた自分の球に対する絶対的な自信。自分のために
だけに野球をしていると言い切れる強烈な個性。協調性のない彼の周辺にはどう
してもトラブルが発生していきます。

自分の身体が生み出す最高の球を、キャッチャーの豪に向けて投げる…。それだ
けが、たったひとつ意味のあることだと言ってはばからない巧。今回それと対照
的に描かれているのが、三年生のキャプテン海音寺くん。(彼が非常にいいのよ
ねー♪)海音寺にとっては、このチームが好きでたまらない。チームのためだっ
たら、校長にも立て付くことを厭わない。

野球が好きでたまらないという気持ちは、自分だけじゃないんだと気がついてい
く巧。輪からはみ出るものをつぶそうとするのではなく、全て理解できなくても
同じ野球が好きなものとして、根底ではつながり、認めていこうとする姿勢に好
感が持てました。

今回はシリーズの中で一番、野球部員たちが生き生きキラキラとしていて、掛け
合いも冴えてます。読み始めるととまらなくて、一気読みしてしまいました。

巧と豪の野球も、まだまだ始まったばかり。きっと出るはず!?の「バッテリー
4」にも期待!


 6月20日(火) 「殺意・鬼哭」 乃南アサ(双葉文庫)

amazon2000.5月発行・389P・667円

「殺意」「鬼哭」二篇の中篇集。

二人の間柄は、二十年を越える付き合いだった。真垣徹が中学三年生の時、大学
に入ったばかりの的場直弘が家庭教師としてやってきて以来、人からは兄弟同然
ともみなされていた…。


ミステリーとは言いがたいかな。「殺意」も「鬼哭」も、たったひとりの心情を
つぶさに暴いていくものです。

「殺意」は、加害者・真垣徹からの独白が綴られている。誰もが、信じられない
を連発するような人望も厚く、評判もいい男。それは、事件の三年前「呆れても
のがいえねえよっ!」という捨て台詞を残し、受話器を叩きつけるようにして、
一方的に切れた電話から始まった。的場からかかってきたその電話が、真垣の中
に芽生えさせた殺意は、その日以来三年間もかけて冷静に育て上げられていく。
逮捕後、誰もがこの殺人の動機を探ろうとするのだか、真垣は一切語ろうとしな
かった…。

「鬼哭」は、真垣が殺した被害者・的場直弘の刺されてから死ぬまでの三分間の
流れを追ったもの。“親友”真垣に刺され、血まみれになって倒れながらも、思
いも寄らぬ事態に、いったい何が起きたのか、納得できないでいる。薄れゆく意
識の中、一見豪放に見えるが小心で孤独だった、自分の人生を思い起こすことに
なる…。


「殺意」の方は、時間の配置がバラバラ、公判時の鑑定医の専門的な話の場面な
ど読みづらいところもあるのですが、淡々と語る恐いぐらいの冷静さが不気味さ
を増しています。私は真垣が最終的に自分で結論付けた動機というものに、どう
しても納得できなかったのね。そんなんで片付けられたら、みんな殺人者じゃ!

「鬼哭」の的場は、哀れで愚か。人間の弱さ、醜くさをモロ見せられちゃった感
じ。どちらもイヤなタイプの男性だったかな(笑)


 6月18日(日) 「ヤンネ、ぼくの友だち」 ペーテル・ポール
                         ただのただお訳 (徳間書店)


amazon1997.12月発行・374P・1700円

舞台は1954年、スウェーデン・ストックホルム。ヤンネは圧倒的な存在感を持っ
て、ある日突然ぼくたちの前に現れた!真っ赤な髪の毛、そばかすだらけのヤン
ネは、自転車の腕前も度胸も、ぼくたちの仲間の誰にもひけをとらなかった。主
人公クリッレにとって、ヤンネはかけがえのない親友になっていくけれど、ヤン
ネの素性は謎に包まれたまま。

そんなある日、街角でクリッレは、「きみたち、この自転車に見覚えあるかな」
と、ヤンネの自転車を持った警官に尋問されたのです…。


児童文学なんですが、ミステリー仕立て。

警官から尋問されたクリッレが、ヤンネとのやりとりを回想し、現在と過去を交
錯させながら、ヤンネの正体と事件の真相に迫っていくという構成。語られるの
は、全てクリッレから見た過去のヤンネ像。ラスト、あっっ!と言わせて、読み
終えた瞬間すぐまた前にさかのぼって、ページをめくってみたくなる。そんな作
品でした。

実は最初の方は、引っ掛かり引っ掛かり、なかなか先に読み進めなかったのです
が、ヤンネの不思議な魅力と、“ヤンネの身の上に何が起きたか?”“ヤンネの
正体は?”と、謎に引きずられるようにして、だんだんとページをめくる手もス
ピードアップ。途中読みながら感じた、冗長な下りも周りくどい印象も、全てラ
ストに向かって流れ込んでいたと思えば、納得!

両親に守られ何不自由なく育ったクリックとは、相反するようなヤンネ。強気と
同時に持ち合わせる脆さと弱さ。生まれだとか、環境だとかに、一切こだわるこ
となく、自分の目で知りうるヤンネの姿に引きつけられ、誰にも変え難い存在と
して認めていくクリッレ。そこには何の打算もありはしない。読んだ後、ずどん
と重くのしかかってくる悲しみと憤りが感じられました。


 6月16日(金) 「恋は決断力 明治生れの13人の女たち」 森まゆみ(講談社)
 
amazon1999.6月発行・207P・1700円

鈴木真砂女、北林谷栄、飯田深雪、吉行あぐり、丸木俊、櫛田ふき…。この本は
著者の森まゆみさんが、明治生まれの女性13人に、実際お会いしてお話を伺い、
聞き書きされたものです。

良かったです!とっても!人選も良かったし、森まゆみさんの、話を引き出す力
の大きさも感じることが出来ました。

山あり谷ありの波瀾の個人史です。震災や、大きな戦争をいくつか乗り越えてき
てるし、今よりはるかに女性が生きにくかった時代を過ごしてきたけれど、潔い
決断力で、その大変さや不幸さえエネルギーに変えています。そして、それぞれ
が打ち込むものを持ち、大切に貫いてきた…。

共通して感じられるのは、キラキラと輝く豊かな子ども時代を過ごしてきている
ことと、(金銭的って意味ではなくってね)人との出会いが、その方々の大きな
力になっているということ。

その人生にとことん向き合ってきたせいか、淡々とサッバリとユーモアを交えて
語る様子に、その場の雰囲気まで伝わってきそう。“生きたメッセージ”を、強
く受けとめられた思いです。

私は、小沢征爾さんの母・小沢さくらさんや、美容師・吉行あぐりさん、女優の
長岡輝子さんの、明るくたくましく、楽天的なものの考え方。
歌人・斉藤史さん、女優の北林谷栄さんの、自分に厳しく、すくっと背筋が伸び
た強さに憧れましたねー。

写真に収められている13人の女性のなんて素敵なこと!それぞれの人生を物語っ
ているように、本当にいいお顔をされています。

以前、群ようこさんの「あなたみたいな明治の女」を読んだことがありますが、
似たようなテーマでも、私はこちらの森まゆみさんの方が好きでした。

この本の題名は、鈴木真砂女さんが口にされた「恋は決断力」という言葉からつ
けられたようです。


 6月15日(木) 「ステップファザー・ステップ」 宮部みゆき(講談社文庫)

amazon1996.7月発行・360P・600円

「俺」(35歳)は、職業的な泥棒だ。腕はいい。かなり上等だ。しかし、ある日
中学生の双子の兄弟に弱みを握られてしまったことから、彼らの疑似父親という
役割を担うことになってしまうのだ…。

実は、この双子ちゃん。二人きりで一軒家に暮らしている。両親は二人とも、そ
れぞれの愛人と手に手をとって、駈け落ちしてしまったのだから。そして、はじ
まった疑似父親(ステップファザー)。見た目そっくりの利発な双子と「俺」が
遭遇する事件の数々。七篇から成る連作短篇集です。

これ考えてみたらすんごい設定なんですけど、「俺」と双子、それから「俺」の
情報屋兼元締めである「親父」とのやり取りが絶妙なんですねー。双子の兄弟の
キャラクターがいんだな。(なんだか、魔法使いサリーのよし子ちゃんの弟を思
い出しちゃって。あちらは、三つ子だけど)そしてさらに、だんだんと双子ちゃ
んが愛しくなってくるあたりの「俺」!いいすっね〜。

ミステリーとしては物足りなさも感じたけど物語として充分楽しめます。「俺」
が振り回されつつも、だんだんと父性にめざめて行く過程をユーモラスに、そし
て、もし両親が戻ってきたら、そこでこの関係は終わりだとわかっている故の苦
悩が繊細に…描かれていきます。

全体的に、ほのぼのとした優しい感じ。ずっしり重い作品、殺伐した作品に疲れ
たら、ぜひどうぞ。軽快に読めますよ。

余談ですが、この文庫の巻末、宮部さんのインタビューダイジェスト?で綴る、
<メイキング・オブ宮部みゆき>。ご本人が語る自作解説、作家宮部みゆきの歴
史がわかり、非常に興味深く読みました。ファンならずとも必見です。


 6月14日(水) 「天使の屍」 貫井徳郎(角川文庫)

amazon2000.5月発行・295P・571円

中学二年生の息子・優馬が自殺した。全くそんな素振りも見せず、動機が見出せ
なかった父親の青木は、本当の理由を突き止めようと、同級生たちに話を聞き始
める。しかし、それからも次々と続く不可解な連続飛び降り自殺。その裏には、
一体何が??


冒頭、コンビニに行くと出かけたきり、帰ってこない息子を心配しながら待ち、
捜しに行く時の不安と胸騒ぎの気持ちって、なんだかすごくわかるような気がし
て、布団の中で読みながら、思わず隣でグースカ眠る娘の手を握っちゃった…。

次々と人が死んでいくすんごい状況と、途中ハードボイルトしちゃってる父親の
姿に、しばし唖然としながらも、引き込まれていきました。描かれている中学生
像としては、リアルだったと思う。

だけど、ずっと渦の中にひきずりこまれるようにして読んでいたのに、真相がわ
かると、私の中ではいきなりシュルシュルと失速。あれ〜〜。いきなり気持ちが
冷めてしまった…。優等生で大人が思慮深いと思ってた中学生がやってたこと?
だいたい死ぬほどのこと??勇気がある?違うんじゃないの?と、なんだか腑に
落ちなかったですねー。「子どもの論理」…。もう私にはすっかり理解できない
年代になってしまったのかもね。

ふっと思ったんですけど、これって精神科医の香山リカさんが発行されている
メールマガジン「香山ココロ週報」に今週書かれていた、「人生の早じまい感」
という気分に似てるのかなぁとも思いました。

「自分はもう終わった」と早々に見切りをつけるという若者たち。(香山さんは
事件を起こした少年のひとりが「自分には将来がないと思った」と供述している
という報道から、この言葉を思い出したそうですが)。そう思って読むと96年に
出版されたこの本も、なんて今時代に合ってるの?と思ってしまうんですけど。
だからといって私はやっぱりこの中学生たちの気持ちは理解できないけどね…。


 6月13日(火) 「京都発 平成の若草ものがたり」 清水秩加(北大路書房)

amazon2000.5月発行・206P・1500円

この本は出版社の北大路書房さんから、メールをもらって送っていただいたもの
です。ありがとうございました。

さて、まずは表紙の絵からして、なにやら楽しげな予感…。題名の「平成の若草
ものがたり」からわかるように、作者の清水さんちは小学生二人、保育園組二人
の四姉妹。京都在住、六年生を筆頭に、四人の女の子のお母さんである清水さん
が、子どもたちとの日々を、エッセイと6コマのカラーマンガに綴ったもの。京
都新聞に一年間連載されたものをまとめたもの…なんだそうで、最初の方は多少
物足りなさを感じるところもあるのですが、読んでいくうちに、絵も文章もどん
どん良くなっていくんですねー。

四人姉妹…そりゃあ予想を上回るすごさ!そうだよねー、大変だよね。でも、清
水さんの“大変だけど、笑けちゃう方が多い”というのが好き!

長女のまーちゃんは、生後まもなく川崎病にかかり、右手に障害を残しながらも
お料理上手のしっかりもの。次女のみーちゃんは、小さい頃はきょうだいの狭間
で悩んだこともあったけど、今や面倒見のいい工作名人。三女のふーちゃんは、
いつもウルトラマンの服を着ている男の子になりたい女の子。そして四女のあー
ちゃんは、強情なところもあるけれど、みんなの愛情たっぷりの末っ子。

日々、子どもたちと接してみえてくること…。それは、それぞれ個性があって、
発達ペースもそれぞれ違うから“こそ”、おもしろいんだよということ。そこを
清水さんは、力説しています。子どもと一緒にいるとやっぱり楽しいし、子ども
から気づかされることも多いん
だよーって。

お母さんが頑張り“過ぎない”ところが、非常にいいのね!(根底には、長女の
病気の経験を通して、そこにいてくれるというあたりまえのことが大切なんだよ
という気持ちがあるんだと思われます)。けれども、大事なところは、しっかり
と見ているし、押さえている。

たとえばこんな場面があります。

仕事も持ってるし、家事は夫はもちろん、長女・次女が手伝える範囲は交代の当
番制。だけど、子どもたちも高学年になって忙しくなってくると、気持ちまで余
裕のない生活に。イライラしはじめる長女…。

 その時の原因は、多い宿題のことだった。
 テキトーに要領よくやっているニ女とは対照的な長女は、「やらなければならない」
 モノにかなり、プレッシャーを感じるタイプ。
 「モノや人にあたったらあかんやん。しんどかったら、しんどいってゆうてええ
 ねんで。そんなにがんばらんかってええって。」といいながら、長女をギューッと
 抱きしめた。すると、ボロボロ涙を流した長女。足の先まではりつめた神経が
 ほぐれていくのを、私は腕の中で感じた。

なにげない日々の積み重ねの中で、うちと同じだなー、そーゆーことあるある!
と共感を持って読むことができるかも。大きくなると手はかからなくなるけど、
精神面でのケアをしてあげる大切さをしっかりと心に刻んだりして。

内容的に目新しさ…というのは、そんなにないけれど、ひとつ、精神科の先生が
話されたという「何かに行きづまったときには、原点にもどればいい」という言
葉。子育てに限らず何ごとにもあてはまって、解決の糸口となりそうでしょ。
覚えておこっと!

ちょうど子育て真っ盛りで細切れの自分の時間しか持てない方にも、それぞれが
短い文章でわかりやすく(字も大きめよん)書かれているので読みやすいです。
そして、ふだんあまり本を読まない方にも、堅苦しさがなく気軽に手に取りやす
くなっていますよ。ふりがなつきですので、小学生にも読めます♪


 6月12日(月) 「夢の守り人」 上橋菜穂子・作 二木真希子・絵(偕成社)
 
amazon2000.6月発行・309P・1500円

この上橋菜穂子さんの新作を図書館で見つけた時、嬉しくて小躍りしたくなった
ほど!

精霊の守り人」「闇の守り人」に続く、シリーズ三作目。薬草師のタンダ、大
呪術師のトロガイ、皇太子チャグム、星読博士のシュガとオールスター揃い踏み
で、ファンとしては嬉しいばかり。

さて今回の舞台は、死者の魂をむかえる<あの世>の闇の手前。人の世界とは別
の世界…。そこには人の夢を糧にして生きる<花>があった。逆に言えば人の夢
をさそうという<花>。

<花>の罠にとらわれてしまったのは、自分を不幸だと思っている人たち。今の
生活に絶望し、のがれたいと思っている魂ばかり。心の魂を抜かれ、人間の世界
では目覚めなくなってしまい、何日も眠り続ける。そこに眠る人たちの魂は帰っ
てこられないのではなく、帰ってきたくないのだ。

姪のカヤの魂を<花>の夢から助けようとして、逆に魂を奪われ、人鬼と化すタ
ンダ。<花>の世界では、何かの歯車が狂い出していたのです。

三日後の半月の夜、あちらの世界とこちらの世界が近づいて、<花>を散らす風
が吹く前に、自分の世界に帰らなければ、<花>と共に死を迎えることに。その
<花>にとらわれている魂と、タンダを助けることはできるのか?トロガイ、バ
ルサ、チャグムたちは、全力を尽くして助けるすべを考えようとします…。


前作の「闇の守り人」で、それまで長い間感じていた養父ジグロに対する負い目
が払拭され、あれほど思いをかけてもらってた自分は幸せだったんだと認めるこ
とができるようになったバルサは、今回ふっきれた感じ。

バルサの格好良さは相変わらずですが、この「夢の守り人」では、どちらかとい
うと、トロガイとタンダがストーリーの中心となっています。(その分、今回は
タンダを想うバルサの女性としての心情が垣間見られたりして)トロガイの過去
が明らかになっていますよ。

嫁に行く年頃となり、自分の人生がだいだい見えてしまって、たまらない虚しさ
を感じてしまう農民の娘。いずれは望んでもいない帝になるチャグム。愛しい息
子を失うと共に、帝の母になるという輝かしい未来をも奪われてしまった一ノ妃
の悲しみと憎しみ。そして別れ道の後ろに捨ててきてしまったトロガイの人生。
もし王位継承の醜い争いにまきこまれていなかったら…のバルサの人生。

誰もが一度は思い描く、ここではない別の人生…。だけど、仮にその別の人生を
歩き出したとしても、そこでも、それなりの苦しみをかかえ、また同じ思いを抱
き、嘆いているかもしれない。また、トロガイやタンダのように、人とは、はず
れた生活をすることで感じる寂しさと喜び。そして、ふつうの暮らしを積み重ね
ていく人たちが持っている、あたりまえの日々を生きていける強さと、したたか
さ…。そんなさまざまな思いが交錯します。

今回のキーパーソン、流浪の歌い手のユグノ。彼の心情にイマイチ寄り添ってい
けなかったところが、ひとつ残念なところ。もっと掘り下げて欲しかったかな。

 「いろんなことがあったんだよ、(略)旅のあいだ、ずいぶん、ふしぎなこともあって、
  あんたがいたらなぁと思ったことが何度もあったよ」


と、半年ぶりにバルサとタンダが言葉を交わすところで、前作含めもいろんな心
情があふれて、もうダメ…ウルウル(涙)。巻末に「守り人三部作」となってい
たので、これでシリーズ最後でしょうか。寂しいね〜。

帯には、“どれから読んでもおもしろい”となっていますが、私はやっぱり「精
霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」の順番で読んで欲しいな。


 6月6日(火) 「DIVE!! 1−前宙返り3回半抱え込み」 森絵都(講談社)

amazon2000.4月発行・220P・950円

帯には、“森絵都、初の「スポ根」小説”の文字が。森絵都さんとスポ根って、
結びつかないような気がしながら読み始めたこの本。

舞台は存続の危機にあるダイビングクラブ…飛び込みだ。そこにやってきたひと
りのコーチ、麻木夏陽子。彼女はクラブのメンバーに「目標はオリンピック」と
言い渡す。特に目立った成績を残しているわけでもない中ニの知季も、彼女に才
能を見出され、とまどい悩みながらも飛び込み中心の生活になっていく…。

本当に典型的なスポ根です(笑)。かつての大映テレビのドラマを思い出してし
まいました。ここでチームメイトから不満が噴出するわけだー、おおっ!ここで
ライパル登場かーと、きっちりと型通りに進むのに、逆に喜んで読んだりして。
私は好きだったなー。ライバルの沖津飛沫(しぶき)なんて、名前からしていか
にも〜って感じでしょ。

どんなに大変でも、何か打ち込むものがある知季の生活…。魅力的に見えるもん
ね。大きな犠牲をはらっても、つかみとれる何か。凡人の私は憧れるわけだ。
(しかも何もせず、あぁ〜〜)

飛び込みのことには、一切口を出さず、追い込まず、見守る姿勢の知季の両親が
いい!そして、純粋な知季、クールな要一、頑なに自分のスタイルを守ろうとす
る飛沫…それぞれのキャラクター分けも、しっかりされています。

それにしても、このラストはズルイ。これでは先が気になってしかたがないじゃ
ないの〜。森絵都さんが、今なぜスポ根なのか??その答えは、まだ1巻では見
い出せなかったけれど、次巻にも好期待!


 6月6日(火) 「ビフォア・ラン」 重松清(幻冬舎文庫)

amazon1998.10月発行・334P・571円

重松清さんのデビュー作品。広島弁も読み慣れてきました(笑)

 1980年。ぼくは、田舎の高校三年生で、陸上部のさえない長距離走者で、
 
それ以上にさえない受験生だった。
 
ぼく…永沢優には、“みごとなくらい平凡な高校生”という、かねてからのコン
プレックスがあった。授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、友人
の洋介、誠一と共に、ノイローゼで退学した同級生まゆみが、自分たちのせいで
自殺したという、勝手なつくりもののトラウマを作っていた。

ところがある日、突然まゆみが帰ってきた。暗くほとんどしゃべらなかったまゆ
みが、別人のように明るくなって。優とつきあっていたなどと、微妙に歪んだ記
憶と共に…。まゆみの嘘(まゆみには嘘をついているという自覚はないのだが)
に、巻き込まれていく彼らと幼なじみの紀子…。

へっ?と思うようなちょっと変わった話なのですが、ぐっときてしまいました。
高校最後の一年間。
部活引退後、なんとなく教室に居場所がなく屋上でたむろする元運動部員など、
きっとどこでもそう違いのなかったあの頃の懐かしい場面が蘇ってきます。受験
で勉強はしなくてはならない、この時期が済むとみんな別々の道を進んでいくん
だと、いろんなことに敏感で、焦りとイライラ感。こみ上げる不安感に逃げ出し
たくなる自分…そんな微妙な時期がきちんと描かれていて、さすがデビュー作品
から、重松してますっ!

主人公たちは、私よりいくつか上かなと思いながら、RCサクセション、YMO
など、そんな懐かしい名前に、センチな気分に浸ったりして。

まゆみのラストはそうであって欲しくなかったよ〜と思ったけれど、彼女だって
自分の力で希望を見出そうとしてたもんね。
自分の力で一歩を踏み出そうとするところに希望が生まれていく(それがどんな
一歩になろうともね)。そんなところが、優にも仲間たちにも紀子にも、それぞ
れに見えてくるからこそ、読んだ後、清々しい気持ちになれたのです。

取るに足らないことで一喜一憂していた時期、そして後から考えると、どんなに
狭い世界だったかを思い知る。でもだからこそ、そんな高校生時代は輝いてみえ
るんだよ…という先日見た映画「25年のキス」からのメッセージを、思い出しま
した。


 6月3日(土) 「彼女が死んだ夜」 西澤保彦(角川文庫)

amazon2000.5月発行・331P・571円

門限六時という箱入り娘のハコちゃんは、やっとの思いで両親からアメリカ旅行
の許可を得た。ところが両親の留守をいいことに、その出発前夜、大学の仲間達
が開いてくれた壮行会から帰ってくると、自宅には見知らぬ女性の死体が!

電話で呼びつけた男性陣が駆けつけてみると、ハコちゃんは、喉にナイフを当て
て、こう叫んだ「この死体を捨てて来てくれなければ、私は死ぬゥ!」。困惑し
た彼らは、彼女のわがままを聞いて死体を公園に移動するはめに。しかし、いつ
までたっても被害者の身元さえわからない。成り行き上、自分たちで、犯人を見
つけようとタックたちは独自の捜査を始めることになります…。


なんて突飛な!んなばかな!と思いつつ…はまっていきました。弾んだ感じで軽
く読めるのかなぁと思っていると…。なんとなんと最後の最後の最後まで(しつ
こいね)目が離せなかった〜!ラストは、ちょっと苦かったかなぁ…。

わが道を行くボアン先輩、先輩とつるんでお酒ばり飲んでるタック、姐御肌のタ
カチと、キャラクターはみんな生き生きとしていて、いいです。

恥ずかしながら知らずにいたんですが、あと書きを読むと、この作品はタック、
タカチ、ボアン先輩、ウサコという四人の大学生を主人公とするシリーズものの
第一作目なんだそうです。二作目の「麦酒の家の冒険」は、6/15文庫化決定(講
談社文庫)。またボアン先輩とタカチに逢ってみよっと!


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