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2000年8月読了
★印は、おすすめ
8/28 聖の青春 大崎善生(講談社)
8/28 透きとおった糸をのばして 草野たき(講談社)
8/25 のら犬ローヴァー町を行く マイクル・Z・リューイン(早川書房)
8/24 空の遠くに つれづれノート 9 銀色夏生(角川文庫)
8/21 三月は深き紅の淵を 恩田陸(講談社)
8/19 上と外 1.素晴らしき休日 恩田陸(幻冬舎文庫)
8/18 GO 金城一紀 (講談社)
8/17 薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木 江國香織(集英社)
8/16 麦の海に沈む果実 恩田陸 (講談社)
8/7 時間だよ、アンドルー メアリー・ダウニング・ハーン作(徳間書店)
8/4 リミット 野沢尚(講談社)

 8月28日(月) 「聖の青春」大崎善生(講談社)

amazon2000.2月発行・333P・1700円

最初に断っておくと、将棋のことは全然わからない。ルールも知らないし、
若手棋士の中で知っているのは羽生さんと谷川さんだけ。この本の主人公・
村山棋士のことも、亡くなった後で「おどろきもものき20世紀」という番組
で取り上げられていて、初めて知ったのだ…。

「東に天才羽生がいれば、西には怪童村山がいる」と言われた故・村山聖の
生涯を描いたノンフィクション。

5歳からネフローゼに苦しみ、療養所のベットの上で将棋を覚えた。13歳で
プロを目指し、プロになったその後も、ネフローゼは影のようにつきまとい
幾度となく入退院を繰り返す。病院を抜け出して、対局場に向かうことも
しばしば。“自分には時間がない”と、勝負に対するすさまじい執念で、名
人位に届くA級八段に駆け上がりながら、膀胱癌で平成10年8月に亡くなった
村上聖。まだ29歳であった…。


最初から最後まで圧倒された。
痛いほど純粋に命をかけて将棋を指す姿が、圧倒的な力を持って迫ってくる
のだ。そして彼の個性に、ものすごい存在感に、会うべきして会ったような
森信雄との師弟愛に、数千冊に及ぶ蔵書に囲まれたゴミの山のような彼の部
屋にも…。

  森のいた雀荘にふらりと現われて、森の後ろにそっと座って言った。
  「僕、今日20歳になったんです。20歳になれて嬉しいんです。
  20歳になるなんて思っていませんでしたから」


こういう本には泣かされるんだよなぁと思いつつ、やっぱり泣いてしまいま
した。常に死が近くにある不安とその強さに、少年時代の大半を病院で過ご
したことで培われた優しさに、そして、飄々とした愛すべきキャラクターに
も。

人生には、“もしも”ということはないのだが、もしも彼が健康な体だった
ら…と、読みながら何度も考えてしまった。もしそうだとすると、将棋とは
出会っていなかったかもしれないし、普通の人と同じく自分の残り時間を知
らずに過ごせたら、全く別の人生、別の人格になっていたかもしれない。彼
の抱えてしまった病気が、彼の生きざまを決めてしまったのは間違いないの
だ。

彼の名前は聖(さとし)と読むのですが、私にはどうしても聖を(ひじり)
と読めてしまう。きっと“ひじり”としての運命を背負って生まれてきたの
かもしれない…とも思ってしまうすごさが、彼にはあるんだなぁ。

表紙の写真の鋭い眼差しからは、“あんたは自分の道を精一杯生きているの
かい”と言われているようで、ギクリとしたりして。

「将棋世界」という雑誌の編集長であるという著者は、村山棋士や森の身近
にいたというだけに、ひとつひとつのエピソードにも彼らに対する大きな愛
情が感じられる。

私のように、将棋を知らない方にも、ぜひッ!
将棋を知らなくても、村山棋士のことは絶対忘れないと思う…。


 8月28日(月) 「透きとおった糸をのばして」草野たき(講談社)

amazon2000.7月発行・210P・1400円

図書館の児童書新刊のところに、ポツンと置いてあったこの作品。
当たりッ!すっごく好きでした♪

私−中学ニ年生の香緒の両親は、転勤でロンドンへ。その間、親戚の
大学院生・知里と二人で、穏やかに暮らしている。
実は今、あんなに仲が良かった親友ちなみとの関係がうまくいかなくなって
ひたすら修復を願っているところ。そんなところに、知里の友人のるう子が
ふられた恋人を追って上京。三人の同居生活が始まることに…。


実は、これを読んで泣いてしまったのだ…。
自分の持っているものと、近い感覚で書かれたものだったのかもしれない。
きっと私の中には、香緒の部分も、るう子の部分もいまだにあったんだな。
(別れた恋人を追いかけまわすようなことはしないけどさー)
それがきっと、押しやっていた何かに触れたんだと思う。
児童書を読んでいると、たまにそういうことがあるよね…。

他人のことは冷静に分析できるんだけど、自分のことはまだよく見えて
いないという香緒の、この年頃独特の心の揺れも、よく描かれています。

第40回講談社児童文学新人賞受賞作。
同じ賞を受賞している「非・バランス」「超・ハーモニー」の魚住直子さん
の雰囲気に似ているかな。

思春期の女の子たちに、そして思春期を越えてきた女性たちにも、ぜひ!


 8月25日(金) 「のら犬ローヴァー町を行く」マイクル・Z・リューイン
                     
田口俊樹・訳(早川書房)

amazon2000.6月発行・295P・1900円

 猫はきらいだ。家は持たない。群れることもない。女性にはやさしい。
  若者には時にはきびしい。人間には頼らない。
  そして、困っているものは絶対に見過ごせない…。

この物語の主人公は野良犬。その名もローヴァー。流れ者という意味だ。
自立して生きる犬のローヴァーが遭遇する、都会の片隅の出来事を
綴った38作の掌編集。
(それぞれ5〜9ページほどの短めのストーリなので、読みやすいよ〜)

ハードボイルドしてる、とにかく渋〜い犬が主人公。
(私の頭の中では、その犬の言葉が、森山周一郎さんの声で聞こえて
しまうのだった…)


ある時は浮浪者殺しを追い、ある時は火災の中から犬猫を救い出す。
またある時は、ギャングのボスと渡り合い、激しいケンカに巻き込まれた
り。時には、
素敵な恋に出会い、子犬の死に立ち会うという悲しみも…。

伝説のカウンセラー、天才発明家、女優などと、ローヴァが町で出会う犬の
キャラクターも多彩で、飽きさせないのね。

犬たちからは、人間の言葉は理解できないことになっているけど、その
人間観察は鋭く、犬の世界として語られる老いや死、社会問題なども、
人間社会のそれとリンクする


“猫”のことはケチョンケチョンに書かれているので、どちらかと言えば、
犬派の方、向きかな(笑)ヤングアダルトの層にも読んで欲しい一冊。


 8月24日(木) 「空の遠くに つれづれノート 9銀色夏生(角川文庫)

amazon2000.7月発行・349P・590円

イラスト入り日記「つれづれノート」シリーズ第9弾。
実は出かけた書店の文庫売れ行き第1位になっていたので、そんなに??
と思って、初めて手にとってみたのだ。

ただの日記なのに、ついつい読みふけちゃう、この魅力ってなんだろう…。

あっ、このドラマ見てたんだ…とか、なにげない日常に人様の生活を覗いて
いるような気分にもさせられるし、時折書かれている−カッコつけること
なく率直で、自分の信じた道をひたすら真っ直ぐ進んで行こうとする−
心のありように魅せられるところがあるからかなぁ。
(これって簡単そうで、実は大変なことだと思うしね)

うんうんそうだよね…と共感できるところもあるし、う〜ん、まぁそういう
考えもあるのかなぁと思うところもあるんですけど(特に子育てに関して
は)

読み終わった後、全部読んでみたくなっちゃって、「つれづれノート1〜8」
までBOOK OFFで買ってきちゃった(^_^;)

「つれづれノート 1」「つれづれノート 2」まで読みましたが、彼女の印象
は全く変わらない。文章は初期の頃に比べて、余分なものが削ぎ落とされ
ていい感じ。彼女の中の“譲れないこと”が明確にあって、それはずっと
変わらないのね。そりゃまたすごいなと思った一つでありました。

  <関連サイト>  「小窓からこんにちは」銀色夏生さんのサイトはこちらから


 8月21日(月) 「三月は深き紅の淵を」恩田陸(講談社)

amazon1997.7月発行・353P・1800円

なんとも不思議な印象を残す作品集。

“その本は、たった一人にだけ、たった一晩だけしか貸してはならない”
幻の本といわれる作中作「三月は深き紅の淵を」という作者未詳の謎の小説
をめぐる四つの物語…。


それぞれが独立したストーリーとなっています。(実は繋がりのある物語だ
と思っていたので、最初とまどってしまった。まぁ、薄〜くつながりがある
とも言えなくはないんですけど。そこらへんが“不思議”ともいえる所以)
三章目までは、ミステリー仕立てと言ってもいいかなぁ。私は、二人の女性
編集者が幻の作者を追って出雲に旅する「出雲夜想曲」が一番好きでした。

四章目の「回転木馬」だけは、他のとは雰囲気が違い、中途半端な印象を
残して終わっているのね。(実は最後まで、どう読みとっていんだかよく
わからなかった(^_^;) あれっ?と肩透かしくらったまま終わってしまっ
た気がする…)
その中の挿入物語が「麦の海に沈む果実」となって長編化されたのですが
結末が違うので、未読の方は読み比べてみるのもいいかもしれません。


 8月19日(土) 「上と外 1.素晴らしき休日恩田陸(幻冬舎文庫)

amazon2000.8月発行・154P・419円

隔月連続刊行、全5巻完結予定、全て書き下ろし…という作品の第1巻目。
150ページほどの薄〜い文庫本です。

中学生の練は、両親の離婚後、祖父母と暮らしている。元家族が、年に一度
集うという恒例の夏休み。今年は考古学者である父の赴任先・中央アメリカ
に行くことになり、義母・千鶴子、妹の千華子と共に出かけることに。軍事
政権の国・マヤの遺跡の残るそのまちで、彼らが巻き込まれたこととは?


まだまだ物語は始まったばかり。助走って感じです。 この1巻目は、主に登
場人物の紹介。彼らの今の状況と、投げられた石によって起こる波紋…それ
ぞれが抱えた問題や思いについて語られます。(余談ですが、ここに出てく
る職人のじいちゃん、いいんだよねー)

これからの家族の微妙な関係は?そして彼らの身の上に起こることは?今後
どんな風に展開していくのか、楽しみッ!もうお約束って感じで、それから
どうなるの〜〜!という
非常に気になる終わり方をしています。続きに好期
待!


 8月18日(金) 「GO」金城一紀(講談社)

amazon2000.3月発行・241P・1400円

先月の直木賞、受賞作品。
これは、いいよっ〜〜! 印を2つつけたいほど大好き!

元・在日朝鮮人、諸々の事情で、今は在日韓国人。
中学までは民族学校、高校は日本の私立校に通う<僕>の青春物語。

全篇を貫いている軽快さ、活きの良さ。
冒頭2ページで、すでに虜になっちゃったもんね。

肝が据わった主人公をはじめ、個性豊かで、魅力的なキャラクター。
みんなカッコイイんだよねー。
(僕が在日だと告白した後の彼女(桜井)は、あれっ??こんな女の子
だったっけ?と戸惑うところもあったけど)
特にお父さんの一言一言には、惚れたねっ。

「在日」である現実は重いし、「在日」であることが、彼の生き方に様々な
形で影響を及ぼしているのね。
それはどんな差別にあって、どんな苦労をして…と、とうとうと語られるよ
り、よっぽど心に響いた。

心に染みて、それでいて爽快感あり。
軽やかなんだけど、しっかりと心に残ったオススメの1冊です。


 8月17日(木) 「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」江國香織(集英社)

amazon2000.4月発行・356P・1600円

ため息が出そうなほど美しい装丁の表紙を開けると、9人の女性の恋愛・
結婚物語の幕が開く…。

結婚・離婚・恋愛・不倫・妊娠…。
微妙に繋がりのある彼女たちそれぞれの視点から、入れ替わり立ち替
わり語られていく日常。(うーん、そしてそのおしゃれな都会の日常は、
私とは無縁なものであった…ハッハッハ)

淡々と描かれていきます。それも静かに。
ハタから見るとなんの問題もなく幸せそうに見えるのに、誰もが抱えて
いる欠落感。それが時にうすら寒いし、なぜか怖いのだ。
結婚という現実を生きていると、そこのところはわかる気がするし、うまい
なぁと思うのだが、読んでる私はあくまでも傍観者でしかなかった。

なんともはっきりしない男性陣とは対照的に、女性たちは自分の意志で
自分の行き先・行動を決めているのが救い。

それぞれの人物像もきっちりしてるし、さらりと美しい世界だとは思う。
でも引き込まれて読んだはずなのに、読んだ後何も残らなかったのよ・・・。
私はこういう小説が苦手なのかもしれない…と思っちゃったケド。


 8月16日(水) 「麦の海に沈む果実」恩田陸(講談社)

amazon2000.7月発行・416P・1800円

先日読んだ「ネバーランド」が、恩田陸さんの作品の中で一番好き!と書
いたばかりなんですが、その舌の根の乾かぬうちに(笑)、さらに上いく!
と思ったこの作品。とってもとっても好きでした♪

“三月以外にやってくる転入生は、学園を破滅に導くだろう”
そんな伝説がある、湿原に囲まれた全寮制の学園に、ニ月の終わりの日転入
してきた理瀬。様々なしきたりや奇妙な風習が存在し、外部との連絡が認め
られないという閉ざされた学園の中で、謎の失踪を遂げる生徒たち…。


何かが起こりそうな気配、何か大きな秘密を抱えている予感…。
恩田さんが描くそんなざわざわする気配が、たまらなく好きなんですが、
この作品では、それが充分に堪能できます。

閉鎖的な世界で起こる不可解な事件への不安感、自分が何ものかもわからな
い怯え。そして、そんな状況の中でも感じられる幸福感…。
主人公の理瀬と共に、どっぷりと謎めいた世界に浸って、酔わされたって感
じで、読み終わってからもしばらく余韻が残りました。

ただひとつ残念だったのは、ラスト。書き急いだかのように、丁寧に書き連
ねてきたものが、急にガラリと雰囲気が変わってしまうんですねー。
そこがちょっと残念だったかな…。

「三月は深き紅の淵を」の第四章に収録されていた物語を、ひとつの大きな
作品としたものですが、独立した物語になっていますので、これだけで読ん
でも全然大丈夫ですよー。


 8月7日(月) 「時間だよ、アンドルー」メアリー・ダウニング・ハーン作
                      
田中薫子訳(徳間書店)

amazon2000.4月発行・246P・1400円

両親が仕事でフランスに行くため、この夏休みは、ブライズ叔母さんの古い
屋敷で過ごすことになった12歳のドルー。

叔母さんに案内されて屋根裏部屋に上がったドルーは、そこで自分とうりふ
たつの少年がうつる1枚の古い写真と、彼の持ち物だったとみられる皮袋に
入ったビー玉を見つける。叔母さんの話によると、その子は親戚のアンド
レーで、子どもの頃に死んだらしい…。

その夜、ビー玉を取り戻しに来たというアンドレーが、ドルーの前に現われ
る。屋根裏部屋がタイムマシンの役割を果たし、1910年からやって来たとい
う彼は、実はジフテリアで瀕死の状態。アンドレーを救うため、二人は入れ
替わることになり、ドルーは1910年にタイムスリップし、アンドリーになり
すますことに…。


何の予備知識もないまま、タイムスリップしてしまったドルーだったが、
アンドレーは臆病で泣き虫な自分とは、全く正反対の性格だった!
彼を演じていても、僕は僕でいたいという気持ちと、そのまま過去に帰した
ら、アンドレーは死んでしまうかもしれないという不安と葛藤。ひとりっ子
のアンドレーが、きょうだいのいる楽しさを知り、アンドレーの姉・ハンナ
に抱く淡い恋心…。

次第に、この1910年の世界から去りがたい気持ちになっていくドルーが、
元の世界に戻ってくることが出来るのか?そして、アンドレーの命は??
そのへんが読みどころでしょう。

細かいところは??と思うところがあるし、内容的にはあまり新鮮味が感じ
られなかったのですが、ちょっと切なくあったかい気持ちになる作品です。


 8月4日(金) 「リミット」野沢尚(講談社)

amazon1998.6月発行・420P・1800円

少女誘拐事件を担当していた、警視庁特殊犯捜査係・有働公子の息子が、同
一犯人に連れ去られた。自分の身近に犯人側と通じるものがいると思われた
めに、公子は誰にも事情を打ち明けることが出来ない。

身代金の運び屋として、犯人側と接触できる時が、唯一のチャンスだと考え
た彼女は、警察組織を離れていくことを決意した。そしてわが子を救うため
たった一人の闘いが始まった…。


脚本家だけあって、かなり映像を意識して描かれているような気がしまし
た。流れも、スピード感もいい!最後の最後まで、目が離せません。一人で
闘い続ける母親の姿は鬼気迫るものがありましたねー。(途中、これって
ハードボイルド??って思っちゃった…)でも、気持ちはわかるよね…。

誘拐の目的、「母親の心情」を利用しての脅迫に、母親として人間として
ものすごい嫌悪感を持ちました。(あまりの残虐さに吐き気がするくらい
だったわ)作品の雰囲気としては、「OUT」にも似た荒涼感が吹き荒れて
います。

身代金の受け渡しの場面では、東京・神奈川の道路事情に詳しいと、もっと
興奮して読めただろうな…なんて、ふと思いました。


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