2000年9月読了
★印は、おすすめ
9/30 おふろのなかからモンスター  ディック・キング=スミス(講談社)
9/30 海の魔法使い パトリシア・マクラクラン作(あかね書房)
9/29 空へつづく神話 富安陽子(偕成社)
9/28 球形の季節 恩田陸(新潮文庫)
9/25 ローズガーデン 桐野夏生(講談社)
9/21 ハリー・ポッターと秘密の部屋 J.K.ローリング(静山社)
9/19 ヨムヨム王国 斎藤次郎+増田喜昭(晶文社出版)
9/18 ベルト ガリラ・ロンフェデル・アミット(さ・え・ら書房)
9/15 大誘拐 天藤真(創元推理文庫)
9/11 ビタミンF 重松清(新潮社)
9/7 あやし 宮部みゆき(角川書店)
9/6 依頼人は死んだ 若竹七海(文藝春秋)
9/4  ストロボ 真保裕一(新潮社)
9/1 どうぶつニュースの時間 あべ弘士 (理論社)

 9月30日(土) 「おふろのなかからモンスター」
  
ディック・キング=スミス作 はたこうしろう絵 金原瑞人・訳(講談社)

amazon2000.9月発行・149P・1400円         

大嵐の次の朝、カースティが海辺で見つけた不思議なたまご。
こっそり家へ持ち帰ったカースティは、その夜、弟のアンガスと共に湯船
に、そっと放してやります。朝、おふろ場に向かったカースティが耳にした
のは、ピシャッと水をはねる音と細い泣き声。なんとも不思議な姿をした
恐竜の誕生だ!

「海にかえしてきなさい」というお母さんとは対照的に、「これは、スコット
ランドの湖で生きているといわれる伝説の生き物・ケルピーだ!」と、
いつも不機嫌なガミーじいさんは、目を輝かせます。
家族以外の誰にもしゃべらないことを約束に、クルーソーと名づけたこの
恐竜は、家族の仲間入りをすることに。しかし、次から次へと困ったこと
が起きてきて…。


物語の展開自体はオーソドックスな印象ですが、軽快な文章と、息ぴった
りのユーモラスなはたこうしろうさんの挿絵で読ませます。
どんどん大きくなるクルーソーを「いったいどこで飼うのか?」「どうやって
人目につかず移動させようか?」家族みんなでどんな知恵を出し合って、
解決していくのかが読みどころ。
くいしんぼのアンガス、船乗りで留守がちだけど頼りになるお父さん…と、
この家族のキャラクターもいんだよね〜〜。

愛嬌があって、かわいいクルーソー。
恐竜育て?は、子育てと同じ!読んでる側にも、しっかりと情が移ってし
まいました。


 9月30日(土) 海の魔法使い」 パトリシア・マクラクラン作 
               中村悦子絵 金原瑞人・訳(あかね書房)


amazon2000.9月発行・60P・1000円

静かな凪の時に生まれた、赤ちゃん魔女。
海の魔法使いは、自分の名前を自分で決めなくてはなりません。
どの名前も好きで、これという名前を見つけられない赤ちゃん魔女に業を
煮やしたお母さんは、陸に上がって最初に耳にした名前を自分の名前に
して戻ってくることを命じます。
さて彼女は、自分自身のたったひとつの名前を見つけることが、できるの
でしょうか?


穏やかで、ゆったりと、かわいらしく…。
このかなり、ふんわりとした雰囲気が、私には苦手でした(^_^;
やっぱりどちらかというと「のっぽのサラ」のように、ほのぼのとしていても
リアリズムに裏打ちされたものの方がいいな。
お母さんも決めろ決めろと、そんなにせっつかなくてもいいじゃない…なん
て、ついつい現実的に考えてしまった私。
ただ、このオチ(…とは言わないよね)に、思わず、“アハハ、うまいっ!”
と膝を叩いてしまいました。
中村悦子さんの絵が、この物語の世界の雰囲気に、ぴったりとマッチして
いますよ。


 9月29日(金) 「空へつづく神話」 富安陽子・作 広瀬弦・絵 (偕成社)

amazon2000.6月発行・285P・1300円

主人公は、“神様なんて、いつも気まぐれで、不公平で、えこひいきばかりす
る”と思っている、小学6年生の理子。そんな彼女の前に現われたのは、記憶
をなくした白ヒゲの神様。

なぜここにいるのか、自分の名前さえも、思い出せない神様は、とりあえず、
白へびになって、理子の部屋で住むことに。一緒に落ちてきた「津雲の史蹟」
という古い本を手がかりに調べていくうちに、理子は自分の住んでいる
「津雲」の街の歴史をひも解くことになる…。


子どもの本屋さんから、“ヤングアダルトコース”の本として送られてきた、
この本。

謎解きの楽しさにあふれ、自力で調べていく過程の醍醐味も感じられる。
思わず、自分の住んでいる地名の由来や、土地の伝承・伝説などを探って
みたくなる気分に…。広瀬弦さんの絵とも、相性ピッタリ。

ただ、それなりにおもしろくは読ませるんだけど、私の中で勝手に思い描いて
いる“ヤングアダルト”のイメージとは合致せず、もの足りない…。
昔からある、由緒正しきファンタジーって感じかな(なんだそれ??)


 9月28日(木) 「球形の季節」 恩田陸(新潮文庫)

amazon1999.2月発行・341P・514円

何ヶ月も、積読のカゴの中で眠っていた、この本。早く読めば良かったァ…。

東北の小都市・谷津の高校生たちの間で、ささやかれる奇妙な噂。
「5月17日に、如月山にUFOが来て、エンドウさんという子が連れていかれる」
隣り合う四つの高校の“地歴研”のメンバーは、その出所を探り出そうと調査
を開始するが、やがて噂通り、遠藤という女子生徒が姿を消した。そして更な
る噂が発信される…。

冒頭から創り出される、何かが起こりそうなザワザワとした予感。
そして恩田さんが、ずっとこだわって描いているようにみえる、“地方都市に
住む高校生”。彼女が描き出す、独特の雰囲気が好きな私には、もうたまら
ない作品。

ただねー、これは、あれもこれもと、エピソード詰め込み過ぎ。
どうなったんだろう??という未消化な部分があるんだよなぁ。
今回は、全体的にあいまいな印象を残したまま、物語が終わってしまったと
いう感じ。

この「球形の季節」を真ん中にして、「六番目の小夜子」と「月の裏側」が、
少しずつ重なり合っているような印象。
「六番目の小夜子」は、学校に伝わる噂というか、学園伝説モノ?だったけど
こちらは都市伝説モノ。そして、この谷津の町の持っている雰囲気が、「月の
裏側」の箭納倉と、非常に近しいものと感じられた。


 9月25日(月) 「ローズガーデン」 桐野夏生(講談社)

amazon2000.6月発行・241P・1600円

女探偵“ミロシリーズ”初の短篇集ということですが、「顔に降りかかる雨」
を1年近くも積読にしたまま…このシリーズは読んでません(^_^;

表題作のみが書き下ろしで、こちらは元夫の目を通して、ミロの人物像を
浮き彫りにしていくという回想録。(これだけ、他の作品とは全然雰囲気が
違うのね)
この作品は、好きではないけれど、これが一番彼女らしいというか、桐野夏
生色が強いと思いました。例によって、結末は消化不良のところもね(笑)
実は、これを読んで自分の中で作り上げたミロのイメージと、他の三篇のミロ
のイメージが、全く重ならなくて、混乱してしまった私…。

他三篇は、新宿が舞台。ミロが請け負った仕事に絡んだ三つの短篇。
うまくまとまってはいるけれど、ミステリーとしては少々弱いかなぁ。
彼女が描く力強さや欠落感…そういった魅力が、今回見えなかったことが、
残念でした。


 9月21日(木) 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 J.K.ローリング作 
                  
松岡佑子訳(静山社)


amazon2000.9月発行・509P・1900円

ハリー・ポッターと賢者の石」に続く、シリーズ第ニ作目。

先日、“静山社の「ハリー・ポッターと賢者の石」、8月末現在で 81万部の爆
発的な売り上げ”という、新聞記事を目にする。この一作目について言うと、
他に、もっとおもしろいファンタジーが、たくさんあるのになぁ…。ハリー・
ポッターばかりが、注目されて売れるのは、どうにも譜に落ちないんだよなと
言う、ちょっと複雑な思いがあるのね…。

で、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」。結論から言うと、私は、このニ作目
の方がおもしろかった。

夏休みでダーズリー家に戻ったハリー。そこに現われた、屋敷しもべ妖精のド
ビーから、ハリーの身の上に危険なことが起こるから、ホグワーツ魔法魔術学
校に戻ってはならないと警告される。しかし相変わらず意地悪なダーズリー家
の中で、身の置き場がないハリーは、学校が始まるのを楽しみにしていた。

ハリーが、ホグワーツに戻ってまもなく…。壁に残された、「部屋は開かれた
り」という不可解なメッセージ。そして、猫や生徒たちが、次々と襲われ、石
になってしまうという事件が起こる。いつも、その現場に居合わせるハリーに
疑いがかかり、彼は邪悪な魔法使いスリザリンの継承者ではないかという噂ま
で立ってしまう。ハリーと、親友のロン、ハーマイオニーは、秘密の部屋の謎
に迫っていく…。


それぞれの巻で完結しているので、ニ作目から読んでも支障はナシ。一作目は
設定がゲド戦記に似てるかな??とも思ったけど、ゲドとは全く別モノでした
ネェ…。

ただ、このシリーズって、成長物語というよりは、謎解きのおもしろさと、軽
快なテンポで、最後まで盛り上げていくのねという印象がある。それでも、そ
うきたかッと言うドンデン返しもあるし、なんだかんだと言っても読み終わっ
た後、あー、おもしろかった〜と、本を閉じることができました。(まぁ、あ
とには、なにも残らないかもしれないが…)

作者の本当の意図は、七巻目を読み終わるまで、わからない構成になっている
とか!?(それって、ナルニア国物語を意識してるのー?)

「ミセスダウト」のクリス・コロンバス監督によって、2001年映画化決定。


 9月19日(火) 「ヨムヨム王国 −子どもの本のガイドブック
                
斎藤次郎+増田喜昭 (晶文社出版)


amazon2000.8月発行・189P・1400円

案内人は、青森の小学校に“留学”した経験を持つ教育評論家・斎藤次郎
さん“ジロちゃん”と、三重県四日市市・子どもの本の専門店「メリーゴー
ランド」の店主である増田喜昭さん“ヒゲのおっさん”の二人+五人の小学
生の仲間たち。

びっくり島、そんなバカな島、友達島、ふしぎの島…など、八つの島を冒険
するように、それぞれテーマに添った面白い本を紹介する、子どもの本の
ガイドブック。

 本をたくさん読む子はいい子みたいに言われてることあるみたいだけど、毎日、楽しいこと
 がいっぱいあって、おもしろい大人がいろんな話をしてくれたりしたら、本なんか読まなく
 たってすごくいい気分で生きていけると思うんだ。

 ただ、本を読むと、そう、不思議な物語なんかに出会うと、今まで自分が見ていた世界とは
 ちょっとちがった世界が見えてきて、ドキドキするんだ。そうすると、もっと読みたい
 なぁ…って思えてくるんだ。  (はじめにより)


本を読まなくったってが生きていけるけど、本の世界もけっこうイケテルよ…
というスタンスが、非常に好き。
大人の目から選んだもの…ばかりではなく、現役の小学生の“これが好き
なんだー、これおもしろいよ!”という声も聞けることも○。

ふだんあまり本を手にしない子も、この本読んでみようかな〜♪という気持ち
になっちゃいそうな…そんな声が、今にも聞こえてきそうな楽しい内容になっ
ています。

はたこうしろうさん、岡田淳さん、上橋菜穂子さん、飯野和好さんなどの、
インタビュー記事も読めるのも、何ともうれしいかぎり!

難しい言葉は一切使われていませんが、“行きて帰りし”のファンタジーや、
自分って何だろうというアイデンティティの概念が、小学生にもわかるように
説明されています。

娘が、この本読んでみよっと!とチェックした付箋で、いっぱいになってし
まった「ヨムヨム王国」。小学生向け(中学年くらいからかなぁ)に書かれて
いますが、大人が読んでも面白い本であふれてる!親子で楽しめる内容に
なっていますよ。


 9月18日(月) 「ベルト」 ガリラ・ロンフェデル・アミット作 
                 
母袋夏生訳 (さ・え・ら書房)

amazon2000.4月発行・191P・1400円

児童虐待を扱った作品。

主人公のエレズは13歳。クラスの人気者で、テニスのチャンピオンをめざし
ている。父は大蔵省勤務、傍目には申し分のない家庭に見えるが、その影
でエレズは、父から暴力を受け、時々食事も食べさせてもらえないまま学校
に来ている。母も姉も見て見ぬふり。友達にはワルぶってみせるが、実は嘘
で固めたごまかしばかり。

そんな折、産休代理でやってきたルティが、新しい担任に。彼女を前にする
と自分の心が見透かされたような気持ちになるエレズ…。


以前読んだ「ハッピーバースデー」は、子どもが愛せないという母親だった
が、こちらは、愛する方向が間違っているという父親が登場する。
自分の子どもの人格を認めていないんだから、愛しているとは言えないよな
とも思うのだが、とにかく全て自分が正しいと思い込み、押しつけがましい
イヤ〜〜な父親なわけよっ!

物語は、エレズの気持ちに丁寧に丁寧に寄り添うように、進んでいく。
虐待を受けている子は、こんなふうに追いつめられて、自分自身をも追いつ
めていって、逃げ場をなくしてしまうんだな…と、読んでいて、ひどく息苦し
い気持ちになるんだな…。

常にビクビクしながら過ごし、問題の本質に向き合おうともしない母親は、
訴えても「あなたのためを思ってのことだ」と、あたたかい言葉ひとつかけ
てくれない。もう読んでいて腹立たしいこと、この上ないのよっ!
特にエレズが勇気を振り絞って、父親の虐待を訴えても、社会的地位があり
周りにはいい人だと思われている故、なかなか信じてもらえない場面が本当
にツラくて、痛い…。

ベルトで折檻するという暴力の形をとらなくても、こうして精神的に追いつめ
ていく子どもたち−“期待通りにしなくちゃいけない”“もっともっとと、
要求される”そう感じる子どもも多いのかもしれないね…。やっぱり大人側の
問題だよね。

この物語は、そうした問題提起だけにとどまらず、決してあきらめず、解決の
糸口を求める大切さを伝えているのね。だけど子どもにだけ、それを求める
のは酷なような気がする。子どもにだって、プライドがあるもんね。
同時に、周りの大人が気がついてあげる必要性もやっぱりあるよね。

後半は、いそいだ印象。あっけなさに、あれっ?と残念なところもあるけれど
気持ちの晴れる結末に、ホッとします。ここにでてくる家族療法の方法は、
日本人にはなじまないかもしれないなとも感じたけれど。

お涙頂戴モノではなく、物語としても、きっちりと仕上がっている。
作者は、イスラエル生まれ。エルサレムに住み、実子のほかにも崩壊したり
問題のある家庭の子どもたちの里親になった経験を持つそうです。
エレズに対する作者の温かい眼差しに救われました。


 9月15日(金) 「大誘拐」 天藤真(創元推理文庫)

amazon2000.7月発行・456P・840円

岡本喜八監督映画で有名な「大誘拐」。映画は見たんだけど、本は読んでい
なかったので、今回東京創元社で装いも新たに文庫されたのをきっかけに、
手にとってみました。

これって、昭和53年に発表された作品だったのね〜。
とにかく、今読んでも全然古くないことに驚き!

刑務所の雑居房で出会った三人組に誘拐された、紀州の大富豪・柳川とし
自。しかし、彼女は落ち着いたもので全く動じない。そして身代金の話になる
と、こう言い放す。「端たは面倒やから、きりよく百億や…。ビタ一文負か
んで」。かくして、この誘拐事件の主導権は、逆に刀自が握り、警察やマスコ
ミも巻き込んだ前代未聞の誘拐事件へと発展していく…。


まさに痛快ユーモアミステリー!
一条ゆかりの「有閑倶楽部」の面々も真っ青な?スケールの大きさ。
斬新でスリリングな展開。主人公の柳川とし子刀自の人柄・アイディア、そし
てかわいらしさに惹かれて、なぜか犯人側の成功を祈っちゃうのよね。誘拐
事件なのに、刀自と三人組の交流も、ほのぼのとあったかいし。

そして楽しく読めるのに、実はいろんなことを考えさせるという奥深いものに
なっているね。ただふりまわされるだけではなくて、本当の敵?はお国??と
考えさせられたり、家族や三人組それぞれの、これからの道を見出すに至る
過程もいんだよねー。

ただ…この作品自体には、何の落ち度もないのだが、読み手の私自身が、
あらかじめほとんど知っているストーリーのミステリーを読むことは、
やっぱりワクワクドキドキ度が半減してしまったんだな…(涙)

天藤真氏の代表作。日本推理作家協会賞受賞作品。


 9月11日(月) 「ビタミンF」 重松清(新潮社)

amazon2000.8月発行・293P・1500円

マンションの玄関前にたむろする、悪ガキグループの前を通り過ぎるのが
気が重い「げんこつ」。妻の入院中、息子と二人っきりになってどう接して
いいのか戸惑う「はずれくじ」…。

Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…。
<F>から始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込ん
だという7つの短篇集。

いずれも主人公はお父さん。年齢30代後半から、40代半ば。
小学生や中学生の子どもを持つ家庭が舞台。
“家族とは?”“現代の父親の役割とは?”という問いと、中年(イヤな言葉
だけど〜)に足を突っ込んだ複雑な心境とが重なり合った物語が、綴られて
いきます…。

“おやじ狩り”“いじめ”“親の老い・離婚”など、現代の日常的な光景を
切り取った巧さは健在。誰もが決して特別な人たちではなく、いつ自分の身
の上にふりかかってもおかしくない出来事ばかり。
雰囲気としては、「日曜日の夕刊」「カカシの夏休み」の流れを汲んでいる
かな。

出てくる懐かしいテレビ番組など、重松さんとほぼ同世代としてはツボ。
女性(母親)の方が強いかもしれないなと思いつつ読んでいると、やっぱり
弱くて情けない自分がここにいて、だけど、少し顔を上げて前を向いて歩い
ていく自分もここにいる。現実は厳しいけど、こんな風になっていけたらい
いなと少しだけ背中を押された気分。この世代のお父さんたちに、ぜひ読ん
で欲しいな!


 9月7日(木) 「あやし 〜怪〜」 宮部みゆき(角川書店)

amazon2000.7月発行・281P・1300円

江戸時代を舞台にした、恐い−そしてふしぎな噺…9つからなる短篇集です。

もっと恐いお話なのかなと思って読み始めたので、怪談として読むと、もの足
りないところもありましたが、どれも人間の心の奥底にひそむ怨念や醜さ、
愚かさの存在がもたらす、ふしぎな噺の数々。
それが、なんとも宮部みゆきさんらしい人情味にあふれた味わいと相成って
い〜いのよね〜。
読み出すと、ふっと入り込んでいけて、どっぷりと浸りながら読めました。

特に好きだったのが、義母の世話をする嫁が語り手となっている「安達家の
鬼」。語り口と余韻がなんとも言えず、自分と同じような身の上の嫁に話す
姑の一言一言が心に染みました。

余談ですが、「時雨鬼」と「灰神楽」に登場してくる“政五郎”親分は、
「ぼんくら」に出てくる“政五郎”と同一人物なのかな??気になる…。


 9月6日(水) 「依頼人は死んだ」 若竹七海(文藝春秋)

amazon2000.5月発行・331P・1762円

女探偵・葉村晶29歳。現在、長谷川探偵調査所の契約探偵。
彼女が関わる事件の数々…。表題作を含む9篇の連作短篇集です。

うっ〜、これってシリーズ2作目だったのね。読み終わってから知ったよ〜。
別に前作の「プレゼント」を読んでいないからって困ることはないんだけど、
最後の章「都合のいい地獄」は、前作を読んでいるのと、読んでいないのとで
は、思い入れの違いが出てくるんじゃないかと思ったな。
(それでも、私は、この章が一番好きだったんだけど)
ただ、このままじゃすっきりしないのよ〜〜。謎を残したままのラスト1行!
これってきっと次作もあるわよね?ね?ねっ?

隠されたテーマ(隠してないか…)は、“自殺”。納得できないことがあれば
どこまでも食い下がっていく晶が掴んだ自殺の動機・背景…。あからさまに
なった心の闇が、ざわざわとした余韻を残しているところもあるんですが、
その毒っ気のある余韻が、なんとも、たまらなかったですねー。

強烈な個性を発揮するわけでもないのに、なぜか強い印象を残した女探偵・
葉村晶。きっとあるだろうと信じている次作に、好期待!


 9月4日(月) 「ストロボ」 真保裕一(新潮社)

amazon2000.4月発行・249P・1400円

真保さんの作品を読むのは、3冊目。それでも“あれっ?”と思うほど、
私が今まで持っていた印象とは違った雰囲気の、この作品。

派手さはない。ミステリー色もない。ストーリーには、取り立てて目新しさも
感じられない。それでも、私は好きでした…。
これが好きというのは、少しオッサン入ってる!?と思いながら(笑)

キャリアも積んだ。名声も得た。自分でスタジオを構え、7人ものスタッフを
抱える身になった。しかし、その間に忘れたもの、失ったものはないだろう
か…。

主人公・喜田川のカメラマン人生を綴った連作短篇集。
まるで時間のフィルムを巻き戻したかのように、50歳の現在から、42歳、
37歳、31歳、22歳と、だんだん時代を遡っていく…という構成がおもしろい。

カメラマンという仕事の内容も、喜田川をはじめ登場人物の人物描写も、
とにかく丁寧に丁寧に、きめ細かく描かれている。さりげなく、その時代の
出来事も盛り込んで…のストーリー展開は、計算されて書かれているなという
印象。地味だけど、じ〜んと心に染みた1冊。


 9月1日(土) 「どうぶつニュースの時間」 あべ弘士(理論社)

amazon2000.7月発行・62P・1000円

先月ファイルを整理した際に、絵本の分も、この“乱読日記”の中に入れる
ことにした。でも絵本の場合は、読んだ分を全部紹介するわけにはいかない
ので、読んでおもしろかったなーと思った本のみの紹介にする予定!

さて、あべ弘士さんの新作は、ハイジャック事件、ほっとする明るい話題、
海外からのニュース、スポーツ、特集テーマに天気予報…と、ニュースステー
ションも顔負け?の動物ニュース番組のはじまりです。
お送りするのは、アナウンサーの森野こりすさんと解説委員の黴原さん。
そこは動物園に勤務されていたあべさんならではの、番組プロデューサー
ぶり!?
“ネコジタンD”“くろ亀宅配便”“太平洋いるかフェリー”とパロティCM
にも遊び心がいっぱい!楽しんで作ったことが伝わってくるような1冊。


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