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2001年2月読了 
★印は、おすすめ
2/26 象のダンス 魚住直子(講談社)
2/22 リセット 北村薫(新潮社)
2/19 黒祠の島 小野不由美(祥伝社ノン・ノベル)
2/16 東の海神 西の滄海 小野不由美(講談社文庫)
2/14 象と耳鳴り 恩田陸(祥伝社)
2/12 上と外 4 恩田陸(幻冬舎文庫)
2/11 MAZE 恩田陸(双葉社)
2/9 ぐるぐる日記 田口ランディ(筑摩書房)
2/7 リビング 重松清(中央公論新社)
2/5 お父さんは時代小説が大好き 吉野朔実(本の雑誌社)
2/5 お母さんは「赤毛のアンが好き」が大好き 吉野朔実(本の雑誌社)
2/5 素子の読書あらかると 新井素子(中央公論新社)
2/2 ケルトの白馬 ローズマリー・サトクリフ(ほるぷ出版)
2/1 象牙色の眠り 柴田よしき(廣済堂出版)

 2月26日 「象のダンス」 魚住直子(講談社)

amazon2000.10月発行・204P・1400円

「非・バランス」「超・ハーモニー」に続く、魚住直子さん第三作目。

主人公は、お嬢様学校とよばれる私立中学三年生の深澄(ミスミ)。“マ
マは完璧主義の頭脳派で、パパは肉体派”という彼女の両親は、小さなコ
ンピューターソフト会社を経営している。仕事ばかりで、娘には全く無関
心。幼い頃から、自立を強いられてきた。学校でも、家でも、彼女の毎日
は希薄で、生活感もない。そんな中、深澄は、タイからやってきたという
少女・チュアンチャイと出会うことになる…。


立場上、どうしても、母親に注目して読んでしまったので、かなり一方的
な感想です(^^;

デフォルメされているとはいえ、こんな親っている??いるのか?いや、
今はいるのかも…?と、私の中では、あまりリアリティがなく、よくわか
らない。とにかく親であることを放棄しているというか。自立って、愛情
あってのものだと思うんだけど、ある意味、これって立派な!?虐待だよ
ねぇ…。深澄の気持ちに寄りおうとすると、もう“痛い”というより、心
がささくれ立ってしまった。

確かに中学生という微妙な時期の少女の気持ちはきっちり描けている。だ
けど、だけど、この本を読んで、ひとつ、非常〜〜〜に、気になったこと
なんだけど、この作品の中には、魅力的な大人が誰ひとりとして出てこな
いのね…。(別にそれは、親じゃなくても、第三者でもかまわないんだけ
ど…)

別に清く正しい物語を読みたいわけではない…。ただ、こういう“生きづ
らさ”は、森絵都さんや梨木香歩さんの作品の中にもみられるけど、ちゃ
んと誰かしら理解者や手を差し伸べる大人がいたりするのね。でも、ここ
にはそれが全くない…。周囲の大人が描けていないと、なんとも中途半端
な印象。

確かに“今”を描いているんだろうけど、なんだかなぁ…と哀しいような
さびしいような気持ちに陥ってしまった。

んで、結局、この母親は、自分の生き方や親としての姿勢を問い直してみ
たわけでもないし、深澄とちゃんと向き合ってみたわけでもないし…。何
の解決にも至っていない気がするのね。母親が涙ながらに示した態度も、
私には自己満足としか読み取れず、なんだか不快だった…。

それでも深澄は、そんな両親に見切りをつけ、自分の力で乗り越えていく
んだろうなと思わせる、ラストのかすかな光だけが希望かな…。

私にとっては、問題提示はされたけれど、手応えはあんまり感じさせない
物語でした。


 2月22日(木) 「リセット」 北村薫(新潮社)

amazon2001.1月発行・362P・1800円

待望の<時と人>シリーズ三部作(…といっても、それぞれつながりのな
いストーリー)の完結編のはずだった。北村薫さんは嫌いじゃない。この
「リセット」は、まぎれもなく、北村薫色…。うーん、だけど、だけど、
私にはイマイチだったなぁ…。
 
  “想いは、時を超える”

それぞれの時代背景も、主人公となる二人の想いも、丁寧に丁寧に、細や
かに綴られていくのですが、ストーリー自体は、かなり単調(^^;かっ
たるい印象はぬぐえませんでした。私自身が、スリルやスピード感に毒さ
れて、ゆったりとした時の流れに身をまかせることができなくなっている
のかもしれません。

第一部の語り口が 年に1度放送されていた向田邦子さんのドラマのナレー
ションに似てるような気がして、結構ツボ。裕福な家庭で育ち、平穏な毎
日を送る女学生・水原真澄の日々にも忍び寄る戦争の足音。その中で寄せ
る淡い想い…。向田ドラマにも通じるような、あの時代の女性の奥ゆかし
さが感じられて好きでしたね。

どうしても恩田陸さんの「ライオンハート」とオーバーラップしてしまい
あっという驚きがないまま終わってしまいました。比べる必要はないのに
私は「ライオンハート」の方に軍配を上げるな…と余計なことをしてしま
うのでした。


 2月19日(月) 「黒祠の島」 小野不由美(祥伝社ノン・ノベル)

amazon2001.2月発行・346P・886円

小野不由美さん初の本格推理と銘打った本作。

ノンフィクション作家・葛木志保は、仕事上のパートナーである式部剛に
「故郷に帰る。三日で戻る」と言い残し、自宅の鍵を託したまま、行方が
わからなくなった。式部は、過去を切り捨てたかように暮らしていた葛木
が九州北西部に位置する「夜叉島」の出身であることをつきとめ、上陸。
しかし、そこは、明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった。そ
して、嵐の夜、女性の惨殺死体が発見される…。

閉ざされた島。因習に満ち孤立したその島で、かたくなに守られている迷
信…。圧倒的な力をもつ島の権力者。よそ者には口を閉ざす人々。本家と
分家。あちこちで光る監視の目。10月だというのに家の軒先に下げられた
おびただしい数の風鈴と風車の物悲しい音色。封印された廃屋…。読みな
がら、まさに気分は、横溝正史の映画の世界。あまりにも、それっぽくて
もうワッハッハッって感じ。

“犯人はこの人か?いやこっちも怪しい”という思いこみは、次々と覆さ
れ、結局私には、最後までわかりませんでした(^^;そういう意味では
引き込まれて、最後まで、グイグイと読ませる力はもっているのですが、
「十二国記シリーズ」のイメージをもって読んでしまったためか、物足り
ない印象はぬぐえない…。

解決の場面で、えっー、ちょっと待っておくれ〜と、すんなりわかりずら
いところも、難かなぁ。(単に私がオバカなのか??)わかった段階で、
読み直してみたら、違った印象になるのかしら??


 2月16日(金) 「東の海神 西の滄海」 小野不由美(講談社文庫)

amazon2000.6月発行・313P・629円

〔十二国記シリーズ〕三作目。

主人公は、前二作にも登場していた、延王・尚隆と延麒・六太のコンビ。
ただ、時は、ずずずっ〜〜と遡り、荒廃していた雁国に、尚隆が新王と
して登極してから、まだ20年あまりの頃…。

国は少しずつ復興に向かいつつあったが、その新王・尚隆ののんきぶり
には、側近もあきれるばかり。そんな中、王の実権を奪取しようとする
不穏な動きがみられ、六太が行方不明になる…。

「風の万理 黎明の空」「図南の翼」と続けて読んだ後で、これを書いて
いるのですが、このシリーズの中で、「東の海神 西の滄海」だけ、
ちょっとテーマが異色だよね…。

他の作品は、主人公の内面の成長を扱っているものが多いけど、これは
王は何のために存在するのか?王は本当に必要なのか?と、国や王の
あり方を問うているよね。もちろん、王という存在を信じきれない六太は
自分の選択は正しかったのか?と、気持ちは揺れるわけだけど、そこに
重きを置いていないというか…。

でも、あぁ、こういう時期を乗り越えてきたからこそ、雁の国は、大きく
安定した国になっていったんだと、感慨深く思いましたね…。

六太と尚隆の出会い。六太と同じ時期に、一家が生き延びるためにと、
同じように山に捨てられた更夜との出会い。更夜と彼の主との出会い
と、いくつかエピソードを織り交ぜながら、二つの主従関係を対比させ
るように、ストーリーは展開していきます。

とにかく延王・延麒の、このコンビは、やっぱりいいよねー!
キャラクターとしては、一番好きかな。かけあいのような、軽妙なやりと
りが、非常に楽しいです。

考えてみたら、尚隆は、一貫して変わってないのよね。
いいかげんなようにみえるけど、器の大きさが違うというか、物事を
見通す眼があるというか、おおらかで温かい、懐に抱かれたような
大きな存在感が光ってました。

 <十二国記シリーズのこれまでの感想は、こちらから> 
  月の影 影の月(上・下) 風の海 迷宮の岸


 2月14日(水) 「象と耳鳴り」 恩田陸(祥伝社)

amazon1999.11月発行・290P・1700円

“恩田陸”続きで、もう1冊…。
主人公は、「六番目の小夜子」に登場した関根秋のお父さんで、引退した
元判事の関根多佳雄。

彼が遭遇する謎や事件を中心にした、12の連作短編集。
秋自身の出番はないが、「puzzle」の主人公でもある兄の関根春や、
姉の夏が登場してくるところも、ファンの心をくすぐるのだ。
(いつか関根ファミリーの物語…というのも読んでみたいな)

<本格推理>と銘打たれているけれど、謎解きと言う言葉だけでは括れ
ない、様々な色合いを持つ短編集になっている。

“それが真相であるかどうか”は別にして、確かに謎は解かれている。
けれど、きっちりと推理をしているいくつかの作品の中では、彼女“らし
さ”が消えてしまっているような気がするのだ。それはそれでおもしろい
んだけどね。関根春が活躍する「待合室の冒険」も好きだったし。だけど
それは恩田さんじゃなくたって…という気持ちになってしまったのだ。

逆に「廃園」「給水塔」「魔術師」の作品ような、謎解きだけでは終わら
ない…そこからなお一層深まる謎というか、あいまいな部分の中にこそ、
恩田色がより濃くみえてくるような気がした。

言葉の使い方を間違っているかもしれないが、正統派じゃないところに、
彼女の個性があるんじゃないのかなぁと、感じられた1冊。


 2月12日(月) 「上と外 4.神々と死者の迷宮(下)恩田陸
                          (幻冬舎文庫)

amazon2001.2月発行・155P・419円

いきなり余談…。この4巻目を読んで、ふっと感じたことなんですが、
恩田さんって、児童文学を書いてもきっとおもしろいんじゃないかなぁ。
それだけ、練と千華子のキャラが、きちんと立っているし、ちょこちょこ
と、はさまれる筋とは関係のないエピソードが、とてもいいのだ。
期待しちゃダメかしらねぇ??恩田さん…。

さてさて、物語は、いよいよ佳境にさしかかってきました。

謎の少年ニコと共に、巨大な地下都市に足を踏み入れた練と千華子。
千賀子を人質にとられ、思いもよらぬ事態に巻き込まれた練が、
追い詰められていく…。

手に汗握る展開に、ハラハラドキドキしながら読んじゃった。苦しい中で
も知恵を使って、冷静に対処していこうとする聡明な練。その姿には、ホ
レボレしちゃうよ〜。

このままのペースでいくと、あと150ページほどで、決着がつくというこ
とだよね…。本当に終わるのだろうか?

とにかく当初の予定では、全5巻で終わることになっているので、次巻が
いよいよ完結編!

ここまで読んで、こうなるのかも…と自分で勝手に考えてる結末と、
どう違ってくるのかも楽しみに、待っていることとしましょう。
(無理やり、かけ足の結末にはならないで欲しいな…。そして錬のじい
ちゃん再登場にも期待!)

話が完結していない状態で、これだけおすすめマークつけるのも、
なんだよね…と思ったので、あえてマークは、つけていませんが、
この4巻目、好きです!

 <上と下 1〜3巻までの感想は、こちらから> 
  1.素晴らしき休日 2.緑の底 3.神々と死者の迷宮(上)


 2月11日(日) 「MAZE(めいず)」 恩田陸(双葉社)

amazon2001.2月発行・244P・1500円

SFかな?と思いつつ読んでいくと、だんだんとホラーの様子を呈していき
ミステリーでもあって…という恩田陸さんの最新刊。

泡坂妻夫さんが作製したという、青い表紙の中に、“MAZE”と浮かび上が
る紋様が格好いい!題名の「MAZE」とは、迷路・迷宮という意味です。

アジアの西の果て…深い谷を越えると、突如広がる白い荒野。その丘の上
に立てられた得体の知れない建物…。そこは、「存在しない場所」「在り
得ぬ場所」と呼ばれ、長い間忌まわしい場所とされていた。なぜならこの
建物に足を踏み入れた人々が、この中で次々と消えていくことがあったか
らだ。

…そして、時は現代。時枝満は、同級生の神原恵弥に誘われるまま、何も
知らずに、この地までやってきた。彼に課せられたのは、7日間の間に そ
の建造物での「人間消失のルール」の謎を解き明かすこと。白人軍人のス
コットと現地人セリムを含めた4人の極秘ミッションが始動した…。

何もない風景の真ん中にポツンとそびえる白い壁−「豆腐」と名づけられ
たそれには、なぜかそそられる。こわいもの見たさのように、ひきつけら
れていくのだ。窓も天井もない。あるのは、白い壁だけ。内部は迷路のよ
うな作り。その周りを囲むように生えている灰色の植物…。

少しずつ小出しにされるネタに、好奇心のツボを押さえっぱなし。怖いと
いうより、ざわざわとした胸さわぎ、何かが起こりそうな気配に、目が離
せなくなった。やっぱりホラーの中に、恩田さんの真髄があるねーと、私
の中でかなり盛り上がっちゃった分、後半“明らかになったこと”にすっ
かり肩透かしをくらってしまって…。ありゃりゃ?と、ちょっと残念だっ
たかな。

最後までつかみどころがない人物だったけど、精悍な出で立ちと相反する
ような女言葉を使う恵弥の話しっぷりが、場の緊張感をなごませる。迫り
くる緊迫感とのギャップを楽しめました。

今回登場した満さんを主人公に、もう1本、小説書いてもらいたいなぁ。


 2月9日(金) 「ぐるぐる日記」 田口ランディ(筑摩書房)

amazon2001.1月発行・398P・1600円

今や大変な活躍ぶりの著者ですが、これはランディさんが、まだ「仕事
がない、暇だ〜」と嘆いていた1999年5月から、エッセイを出版し、初め
ての小説「コンセント」を執筆していた2000年6月までの日記(ネットで
連載)を、まとめたもの。

おもしろかったねー。
はまった…という言葉が、ぴったりする。読み出すととまらなくなった。
日記やエッセイを、こんなに夢中になって読んだのは、はじめてだ。

気取りも、繕うこともないストレートさ。
主婦して、母して、飲んで二日酔いになり、原稿に追われ、旅に出かけ
て…と、とにかく濃度の濃い毎日。
家族の問題をひとつ乗り越えたせいなのか、ふっきれたように肩の力が
抜けているし、且つ生きることに、とてもエネルギュッシュだ。
私が同じような生活をしようとしたら、1週間で体力尽きてダウンして
しまいそう(笑)

ネットで発信し続けたことが、どこかでつながり、めぐりめぐって、また
ひとつのテーマになって、ランディさんのところへかえってくる。
たくさんの人と出会い、その出会いが、新たな出会いを生んでいく。
まさに題名通りの「ぐるぐる日記」だ。

ランディさんの文章を読んでいると、小手先のテクニックで書いてる人と
伝えたいこと・発信したいことがあって書いてる人との、違いがはっきり
とわかる。だからなのか、言葉がまっすぐ心に響いてくるのだ。
ものを書くことに対しての真摯な態度、ものごとに対するスタンスも好き
だ。書くという作業が、ランディさんという人間の真ん中にあるんだとい
うことが、ひしひしと伝わってくる。

コンセント」以来、小説の方には、いまだ手が伸びない私だが、
エッセイは、今イチオシだ。

余談ですが、私も晶文社の本、好き。なんの根拠もなく晶文社の本だっ
たらおもしろいだろうと思って、買っちゃうことも。
晶文社は、とてつもなく古いビルにあるらしい(笑)でもあったかい編集
部であるらしい。ビルが傾いていようが、頑張れ〜、晶文社!
そして、筑摩書房さん、「ぐるぐる日記」の第二弾、ぜひ出してねー。
(シリーズ化望む…)


 2月7日(水) 「リビング」 重松清(中央公論新社)

amazon2000.12月発行・286P・1600円

「婦人公論」に連載された、12の小さな物語。
そのうち、「となりの花園」4篇が連作ものとして、ところどころに
挿入されているという構成が○(丸)です。

“30代半ば。どこかにいそうな家族。今を映し出す、ささやかな日常”
…と、重松さんがこだわりつづける題材は、そのまま。
(もうこうなりゃあ、逆にトコトンこだわって欲しいね、重松さん!!
どこまでもついていきまっせー!)

女性誌連載という影響があったのかなかったのか、重松作品を読んで
感じるチクチクと心に刺さる痛みは、今回かなり薄らいでいる。
作りすぎているところもないわけではない…。が、私は結構好きだった。
ものごとを違った視点で見ると、ふっと気持ちが軽くなる時が
あるでしょう。ちょっとだけ背中を押してくれるような…そんな気持ちに
似てるんだなぁ。

この中で一番好きだった「ミナナミナナヤミ」で、涙ぐんでしまった私。

ごくごく短い短編となっているので、子育て中で、細切れの時間しかと
れないの…という方にも、さらりと読める作品集になっています。


 2月5日(月)

「お父さんは時代小説が大好き」吉野朔美(本の雑誌社)

       
amazon1996.12月発行・83P・1165円

 「お母さんは「赤毛のアン」が大好き」吉野朔美(本の雑誌社)

amazon2000.1月発行・85P・1300円

現在も「本の雑誌」に連載中の、コミック読書エッセイとでもいいましょ
うか。この本も下記の「素子の〜」と同様に、書評ではなく、吉野朔実
さんの本にまつわる日常を描いたものです。

「お父さんは〜」の方は、91年〜96年連載分。
「お母さんは〜」は、96年〜99年の連載分。共に書き下ろしありです。

まだ読んでいない本や、いつか読みたい本を含め、こちらの紹介ジャン
ルも幅広い。取り上げられている本の内容にほとんど触れていないのも
あるのに、読んでみたい!と思わせるんだから、プロの筆力って、すご
いよね〜。

 今も昔もやらなきゃならない事がある時の読書は楽しい。

 もっと子どもの頃に読んでおけば良かった。そんなふうに思うことがあ
 る。そう言う本がある。子どもの頃に読んでいたらなんだか違う人間に

 なっていたような気がするんです。

その他、エピソードのひとつひとつに、“アハハ、わかる、わかる”と、
うなずいてしまうのよ〜。中でも一番好きだったのが、「お母さんは
「赤毛のアン」が大好き」の表題作。“子ども?キライよ。でも自分の
子供だけは別よ、決まってるじゃないの”と言いきるお母さんが、
大好きだー♪

シンプルな装丁も、吉野朔実さんの描く絵も好み。
図書館で借りて読んだけど、一冊手元においておきたいなと思った本。

取り上げている本は、万人向けの「素子の〜」に比べて、通好み!?
かな。本好きな方に、ぜひどうぞと差し出したい1冊です。


 2月5日(月) 「素子の読書あらかると」 新井素子(中央公論新社)

amazon2000.11月発行・228P・1300円

著者自身が冒頭で述べているように、これは「書評」ではなく、
「読書エッセイ」です。ゆえに、本の内容を直接評価しているのでなく
て、その本を通しての雑感や思いが綴られています。

 
“小説を書くのも好きだけど、本は何たって読むもんですぜ、寝っころ
 がって
本読んでいるだけで人生過ごせたら、すんげえ幸せだよなー” 
 
…という新井素子さんらしく、ミステリー、ホラーを中心に、
絵本、児童文学と、取り上げられるジャンルは、幅広い。

東野圭吾、天藤真、小野不由美、貴志祐介、西澤保彦…。
おおっ、好き好き!と思うような本がいっぱいとりあげられていて、
好感度○。同じような本を読んでるんだと思うだけで、なんだか嬉しい。
そして文体は、あくまでも新井素子♪ 好きなんだよねー、
その語り口!

5〜6年前の本が中心なので、文庫になったり、出版社が変わってしまっ
たものも多いようで、取り上げた本が、現在どうなっているか−それぞ
れの章の後に、補注がついています。

自分なりに、本を読んだり、つたない感想をアップしたりして、常日頃
感じていたことが、まさに、この本の“はじめに”の中で述べられてい
たので、ちょっと引用させてもらいますね…。

 私の“おすすめ”は決してみなさま全体への“おすすめ”でありませ
 ん。

 
 本と出会う時には、読書の方の年齢だの精神状態だの成熟だの色々な
 
ものがネックになります。どんなに素晴らしい本でも、読者にとって
 
“会うべき時じゃない”時に会ってしまった本は、駄作だし、あなた
 以外
の全員が「駄作」だっていう本だって、“会うべき時にあなたに
 会って
しまって、あなたを感動させた本”なら、それって、名作なん
 です。


そーそー!そうなんだよ!!と、うなずいてしまう人も多いでしょう。
この“はじめに”だけでも、充分に読む価値ありです!

本を読むことって、こんなにおもしろい!と、読書する幸せが、ギュッ
と詰まった1冊です。


 2月2日(金) 「ケルトの白馬」 ローズマリー・サトクリフ
                  
灰島かり訳(ほるぷ出版)

amazon2000.1月発行・293P・1600円

以前から気になる作家でありながら、サトクリフ=歴史文学と構えちゃっ
て、西欧史に疎い私にはとっつきにくいかも…と、なかなか手が出なかっ
た。で、彼女の作品を読むのは、今回初めて。

まずは、この表紙。なんの注意力もなく絵画だと思っていたら、“あっ、
写真なんだ”…と気がつき、驚いた。緑の丘に浮かび上がる力強い白馬。
迷いのない、美しい線!まさに生きている、確かに駆けてるよ…と、鳥肌
モノ。圧倒されながら、いざ物語へ…。

イギリス、パークシャー丘陵地帯。その緑の丘に真っ白な石灰岩地層を露
出させて描かれた巨大な馬の地上絵、“アフィントンの白馬”。紀元前一
世紀頃に描かれたというこの絵は、いまだ生命力を失うことはない。サト
クリフが、この絵に魅せられ、物語を紡ぎ出したという気持ちも、よ〜く
わかる。「ケルトの白馬」という物語自体も、丘の上の白馬同様、力強く
美しいのだ。

主人公ルブリンは、イケニの族長ティナガンの三番目の息子に生まれなが
ら、先住民の血をひいている。彼には、いつか親友のダラと共に、仲間を
率いて、北へ旅立とうという夢があった。しかし、婿選びの儀式によって
ダラが次代の族長になることが定められ、さらに、南のアトレバテース族
の侵攻によって、その夢は崩れ去る…。


気高ささえ漂う、この作品の空気に惚れました…。

運命に翻弄されながらも、受容し、大きな決断を下すルブリン。何かを成
し、何かを決断する者の、痛いほどの孤独が、胸に迫る。孤高の魂って、
切ないよね…。現代に生きる私には、彼の決断をすんなりと納得できずに
なぜ?どうして?そんなことしなくても(涙)との感情が渦巻く。けれど
もルブリンは、自分の運命を受け入れたからこそ、今、自分は何を成すべ
きかという使命を問い続けるのだ…。

読み終わって、再び表紙の白馬を見る…。それには確かに命が吹き込まれ
ている。まるで、ルブリンの生命が宿っているように…。

小ぶりで薄い本ですが、中身は壮大!ぎゅっと濃い。

この本を読んで、他の作品も俄然読んで見たくなったサトクリフ。「太陽
の戦士」あたりから、読んでみようかなぁ。


 2月1日(木) 「象牙色の眠り」 柴田よしき(廣済堂出版)

amazon2000.2月発行・293P・1600円

夫の借金返済のため、富豪の原邸で家政婦をしている工藤瑞恵。
そこには、未亡人で後妻の愛美とその連れ子で高校生の祥、
先妻の子・かおりと裕次が、互いに関心も持たず、怠惰に暮らしていた。

ある晩、かおりはひき逃げに遭い、意識不明の眠りの中。
つづいて裕次が自宅の庭で灯油をかぶって焼死。
さらに、瑞恵の身の上にも、事件がふりかかることに!

初めは、「家政婦は見た」の世界なのかなと思っていたけれど、
後半、突然の変調…。
どうして、そんな行動に出るんだろう。なぜそう思うのかなと、
納得できずに、ご都合主義に読めちゃって…。

それでも、限られた登場人物の中で、犯人は○○かも、いや××か、
△△もあやしいかもと、頭をフル回転させながら読んでいると、
小説の中でも逆転につぐ逆転が始まるのです…。

全てが明らかになってしまうと、“ハァー、なんだかなぁー”と、
思ってしまったのですが、それまでの過程が非常におもしろい。
先が気になって気になって、やめられなくなってしまいました。

だけど、最後まで、誰も好きになれなかったのよね…。ハァー。
登場人物に魅力が感じられなかったのが、難かなぁ。


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