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2001年5月読了  
★印は、おすすめ
5/31 サラの旅路 ウォルター・ディーン・マイヤーズ(小峰書店)
5/30 遠い約束 光原百合(創元推理文庫)
5/28 えんの松原 伊藤遊(福音館書店)
5/24 いくつもの週末 江國香織(集英社文庫)
5/24 チチンプイプイ 宮部みゆき 室井滋(文芸春秋)
5/18 隣人 重松清(講談社)
5/14 天地のはざま たつみや章(講談社文庫)

 5月31日(木)サラの旅路」 ウォルター・ディーン・マイヤーズ
              宮坂宏美・訳(小峰書店)

amazon2000.11月発行・159P・1400円

はじまりは、著書が古書店で見つけた一束の手紙だった。
そこからひも解かれ、浮かび上がってきた一人の少女の生涯。
サラ・フォーブス・ボネッタの物語…。ノンフィクションです。

19世紀。黒人のある部族の王女だった少女は、奴隷狩りで捕らえられ、
生け贄として殺されるところを、英国軍人に救われ、イギリスに渡ることに。
そして、聡明で優秀だったサラは、ヴィクトリア女王の厚意・保護により、
イギリスの上流階級の教育を受けるようになる。しかし、自分が命令ひとつ
で、いとも簡単に動かされてしまうという事実に深く傷ついていた…。

世界史に弱い私は、こんなことがあったんだ!と驚きながら、一気読み。
セピア色の文字、著者が調べ集めた資料、豊富な写真や絵画が、あの時代
へといざなってくれました。

この中で、彼女の生涯が、“全て”明らかになっているわけではありません。
なぜヴィクトリア女王は、サラをそれほどまで気に入ったのか?
サラは、自分だけ特権的な扱いを受けていたことをどう感じていたのか?
そして、アフリカ人としての自分をどう考えていたのか?
彼女自身は、自分の人生をどう思っていたのか?
それが、読み終わって本を閉じた時の謎と余韻として残ります。

一束の手紙からその人の人生の断片をつなぎ合わせていくという作業の
おもしさと難しさが感じられました。

見返しに使われているのは、当時、郵便料金が高く、便箋の枚数を減らす
ために、行をクロスさせて書いたというサラの筆跡です。


 5月30日(水) 「遠い約束」 光原百合(創元推理文庫)

amazon2001.3月発行・283P・560円

大好きだった「時計を忘れて森へいこう」の光原百合さん最新作。

浪速大学に入学した吉野桜子は、憧れのミステリー研究会・通称<なんだい
ミステリ研>の一員となる。そこには、黒田・清水・若尾と(ありふれてる
けど!)個性的な3人の先輩たちがいた…。

桜子の大叔父・沢村氏の残した遺言の謎に挑戦する、表題作“遠い約束”
三部作の間に、三つの短編が挿入された連作短編集。

しっくりこない表紙のイラスト、これは少女マンガか??と思うような軽〜い
ノリ…と、実を言うと、読み出しあまり好きじゃなかったのね。
(だいだい3人しかいないミステリ研の先輩3人とも格好いい!だなんて、そん
なことあるかいッ!!と、現実主義のオバちゃんは思ってしまうんだな)
だけど、だけど、読んでいくうちに、だんだんと心が洗われていくような、
そんな気持ちになっていくから不思議だ。そして、読み終わると、桜子と
先輩トリオに、また会いたくなるんだなぁ。

ミステリーとしては、日常の謎の域を出ず、“消えた指輪”や“無理な事件”
の章では、私でさえ、すぐにピンときちゃうくらいだから、物足りないことは
否めない。けれども、光原さんの作品は、その謎解きの先にみえてくるも
の…そこに込められた深いメッセージが、強く、優しい気持ちにさせて
くれるんだと思う。
先輩3人のキャラクターは、ありがちだけど、しっかりと持ち味と役割を
果たし、楽しく読める。


 5月28日(月) 「えんの松原」 伊藤遊(福音館書店)

amazon2001.5月発行・405P・1500円

伊藤遊さん、待望の二作目。うひゃ、うひゃ、ご本人のサイン入りだ〜い!
「鬼の橋」も好きだったけど、「えんの松原」は、もっと好き。
どうやら、伊藤遊さんとは、相性がいいらしい♪

さて、時は、藤原氏が揺るぎない地位を誇っていた平安朝。
無念は祟りという形で晴らされるようになり、都では怨霊の噂が絶えること
がなかった頃。都の真中には、真昼でも人けのない「えんの松原」と
呼ばれる、怨霊の住む森があった…。

ふとしたきっかけで、二人の少年が出会った。
一人は、わけあって宮中で女童の格好で暮らす音羽。
もう一人は、いずれ帝の位を継ぐと決められた皇子・憲平。
音羽は、両親の命を奪った怨霊をかたきと思い、憲平は夜な夜な彼に
とりついて離れようとしない怨霊におびえていた…。

憲平を祟っている怨霊の正体は、一体誰なのか??
その謎が物語をぐいぐいと読ませ、最後までテンションは下がりません。
すっと、その世界に入り込んでいける雰囲気作りは、さすが。
怨霊の正体をつきとめ、その魂を解き放すまでのストーリーは、
読みごたえたっぷり。
最初は近寄りがたかった最高齢の女官・伴内侍のきりりとした存在感が、
物語に安定感をもたらします。

音羽と憲平の友情。真実を知ることで、自分自身と出会い、すくっと自分の
足で立とうとする二人の少年に、拍手を送りたくなりました。

この作品で、伊藤遊さんが書き手としてのしっかりとした地位を確立したのは
間違いなし!でしょう。


 5月24日(木) 「いくつもの週末」 江國香織(集英社文庫) 

amazon2001.5月発行・171P・419円

自らの結婚生活をテーマにしたエッセイ集。
二人でいる幸せと、二人でいながらの孤独が入り混じった、甘くてビターな毎
日…。97年に世界文化社から刊行されたものの文庫化です。

江國さんの文章って、綺麗だよなぁと、しみじみ思う。
小説を読んで感じた空気と、エッセイでの印象は変わらない。
読んでる時間が、ゆったりと感じられます。

ス、スゴイぞ、江國さん、“尽す妻”してる…。
私は、夫に対して、そんなことしたことないゾと思いながら、
(自分でやれよ、大人なんだからと思ってしまうんだな)
どこかで、こんな感情を味わったことがある…そんな感覚が、読みながら
共感を呼ぶ。私の場合、それはふだん奥底にある恐い部分だったり
するんだけど。

“いまでは、推理小説がなければ、妻生活というものはやっていられない、と思う”
という記述にニヤリとし、
“私は、自分の存在の第一義がごはんであると言われたような気がしてかなしくなった”
という<ごはん>の章には、そうそう、そう思うことあるんだよなぁ…と
大きく頷いた。(書き抜いた部分はシビアですが、結構ノロケてます…
江國さん)

この「いくつもの週末」から4年…。その後の二人の結婚生活の物語も
読んでみたい気がします。


 5月24日(木) 「チチンプイプイ」 宮部みゆき+室井滋(文芸春秋)

amazon2000.4月発行・236P・1190円

ベストセラー作家・ミヤベさんと、女優・ムロイさんの対談集。

素直に、おもしろかった!
一緒におしゃべりの中に入り込んだように、スルスルと、あっという間に読め
ちゃった…。二人の飾らない素顔が気持ちいいよ!

女優さんだけど、ムロイさんのおもしろさは、「週刊文春」のエッセイで実証
済み。そして、あったかい環境で育ったんだろうなぁと思わせるミヤベさんの
健全さ(?)がよくわかる。

二人の思い入れたっぷりの地元話や故郷グルメ対決、ムロイさんのタクシー
小咄と旅話…。そして、なぜか二人が対談した際の、メニュー付き。
それが、ほんとおいしそうなものばかり。うらやましんだな、これが!
ちょっこちょこっと載ってるイラストも、お二人に似てるのよねー。

ミヤベさんが作品を書いていく上でのこだわり、スタンス…に触れているとこ
ろもあって、ファンとしては興味深いところです。


 5月18日(金) 「隣人」 重松清(講談社)

amazon2001.2月発行・256P・1600円

重松清氏、初のルポルタージュ…と銘打った、この作品。

池袋の通り魔殺人事件、新潟少女監禁事件、音羽幼稚園児殺人事件…。
取り上げられる12の事件や出来事は、いまだ記憶に残っているものばかり。

ただ、これは、その後の追跡調査というわけでも、知られざる真相を暴いてい
るものでもない。あくまでも「読み物作家」の立場にこだわり「読み物作家」
としての切り口から、物事を見つめ、推し量っていく…というもの。

“事件や状況に遅ればせながら<蛇足>をつけてみたかった”という重松氏は
タウンシューズを新調し、ウインドブレーカーを買い、自ら現場なり、その場
所に足を運び、実際に肌で感じた思いも綴っていく。

どれも苦い読後感を残すが、事件や出来事とのスタンスの取り方に好感が持て
たし、小説同様、今を見据える目の確かさは、高く評価できると思う。

個人的には、マスコミを大きく揺るがせた事件よりも、日産自動車工場の閉鎖
多摩ニュータウンの幻想、夢破れたIターンの果て…の章の中に、現代がみえ
たような気がした。


 5月14日(月) 「天地のはざま」 たつみや章・作
                      東逸子・絵(講談社)


amazon2001.3月発行・341P・1600円

月神の統べる森で」「地の掟 月のまなざし」に続く、
たつみや章、古代ファンタジー・シリーズ、第三弾。

ワカヒコ・ホムタ・ヤカタ・ユツの四人は、ヒメカの秘密を知ってしまった
がために、クニを追われ、アテルイのムラに身を寄せてから、一年…。

ムラ同士の交易が行われる晩冬。長であるアテルイ以下、ポイシュマや
ワカヒコも、塩のムラを訪れるため旅立った。そこで、耳にした「木の衣を
着たやつら」の不穏な噂。そして、交渉にヒメカのクニの考え方を持ちこも
うとしたホムタは、浴びせられた言葉に激怒し、二度とムラには戻らない
と、ポイシュマとヤカタを連れ、アヤのクニへと向かった。
しかし、それが戦いの始まりだった…。


このシリーズ、ずっと続くと思いきや、なんと!次の四作目で終わりとか…。

今回は、どちらかというと、ポイシュマよりもワカヒコの出番多し…かなぁ。
ヒメカのワカヒコ・ホムタ・ヤカタの3人を中心に据えて、ストーリーは、
進んでいきます。
アテイルと塩のムラの長・チュプモトの、深い信頼と対比させるように、
企み・裏切り・野心が渦巻く、ホムタとアヤの王の息子タヂシヒコの
かけひき。そんな二人を目の当たりにし、「ヒコを継ぐ者」としての自覚に
目覚めていくワカヒコ。

次巻・最終刊をにらんでか、急な展開−先を急いだ感もなきにしもあらず…。
ポイシュマがはじめて抱いた怒りと憎しみの感情が生み出したものとは?
捕らわれたワカヒコの運命は?
アヤに伝わる「星の子が二人そろうと凶」という、いい伝えの真意は??
今回は、とってつけたようなラストになっていたような気もしたけれど(笑)
さて、この続きは、いかに…。  


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