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2001年9月読了 
★印は、おすすめ
9/29 ぼんぼん−今江祥智の本 第5巻 今江祥智(理論社)
9/28 時の旅人 アリソン・アトリー(岩波少年文庫)
9/17 人質カノン 宮部みゆき(文春文庫)
9/12 この闇と光 服部まゆみ(角川文庫)
9/10 魔法使いハウルと火の悪魔 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(徳間書店)
9/4 燃えよ剣 (上・下) 司馬遼太郎(新潮文庫)

 9月29日(土) 「ぼんぼん−今江祥智の本 第5巻今江祥智(理論社) 

amazon1973年発行・422P・1800円  

訳あって、課題図書。
戦争文学かぁ…と、どんより重い気持ちになったのだが、そんな予測を覆し、
これが、なかなかよかったのよ〜。

幼い頃の作者自身ではないかと思わせる三男・洋の目を通してみた少年時代。
昭和の激動時代。ひとつひとつのエピソードが、丁寧に語られていく。

洋・小学校3年生。クラッシック好きなにいちゃんの洋次郎は、中学1年生。
裕福な恵まれた家庭で育つ“ぼんぼん”だ。

物語は、にいちゃんと二人で見たプラネタリウムの場面から始まる。解説と共に
映し出された十万年後の北斗七星は、ひしゃく形をなくし、北極星も別の星に、
その位置をゆずっていた。「そんなあほな」「ほんまかいな」と、唖然とする二
人。絶対に変わらないと思っていたことが、崩壊する…。

それは、洋の現実にも重なっていく。父と祖母の死(ひろばぁちゃん、好きだっ
たんだけどなー)、戦争の影が兄弟の関係をも微妙に変え、さらに戦火により
家までなくしてしまう…。

もちろん、それまでの生活も、少年の淡い恋心も、全てふみにじっていく戦争へ
の怒り、哀しみも感じさせるのだが、関西弁のもつ柔らかさが、作品の中に十二
分に発揮されている。なんともやんわりとしたあったかさがあるのだ。

そして、この物語の中でも、父親を亡くした兄弟にとっても、大きな存在を果た
しているのが、祖母の死後やってきた佐脇さん。元ヤクザの佐脇さんの落ちつき
はらった物腰、それでいて茶目っ気も感じさせ、優しさ、知恵、強さも併せもっ
た魅力ある人物なのだ。きちんと洋のことをみていて、その手の差し伸べ方が絶
妙で、惚れ惚れしてしまった。大好きだったなー、佐脇さん…。こういう大人が
そばにいて育った子ども時代って幸せだなぁと思わせる。

なお、この「ぼんぼん」は、「兄貴」「おれたちのおふくろ」と続く“ぼんぼん
シリーズ”四部作の第一作目となる。


 9月28日(金) 「時の旅人」 アリソン・アトリー作  
                   松野正子・訳(岩波少年文庫)

amazon2000.11月発行・452P・840円

イギリス・ダービシャー。ここは、作者であるアリソン・アトリーの生まれ育っ
た土地であり、16世紀イギリス史のある事件の舞台になったところでもある…。

主人公の少女・ペネロピーは、病弱なため、ロンドンからダービシャーの田舎・
サッカーズ農場に住む、ティッシーおばさんのところに転地することになる。

おばさんの住む家は、昔、バビントン一族の館だった石造りの建物。ペネロピー
の先祖は、そのバビントン家の人々に仕えて暮らしてきたという。タバナー家に
代々受け継がれてきた名前と透視力をもつペネロピーは、ある日 300年も前の時
代に入り込んでしまう。

16世紀のその時代は、エリザベス女王が権威をふるい、カトリック信徒たちが
謀を企てた騒がしい時期。この屋敷の持ち主だったバビントン家の若き領主アン
ソニーは、長い間、
幽閉されていたスコットランドのメアリー女王を救おうと、
ある計画を企てていた…。


現実での静かで平穏な田舎の暮らしと、不穏な足音が次第に大きくなる 300年前
のサッカーズ。二つの世界を幾度となく行き交い、過去の“時”に永久にとらわ
れて、戻れなくなるのではないかという不安感を持ちながらも、のめりこんでい
くペネロピー。

なんといっても彼女は、アンソニーとメアリー女王にその後、どんな運命が待ち
かまえているのかを、はじめから知っているのだ。過去の事実を変えることはで
きないというジレンマを抱えながら、そこから彼女自身が何を気づき、何を得て
どのように折り合いをつけて、ひとつ大人になっていくのか、たっぷりと読ませ
てくれる。

そして、この物語のもうひとつの大きな魅力は、細部に渡って丹念に書きこまれ
ているサッカーズでの暮らしぶりでしょう。も〜、すっかり憧れてしまった!

その美しい自然。働き者で愛情たっぷりのティッシーおばさんとシスリーおばさ
ん。ハーブの香りに満ちた生活…。

バーナバスおじさんと作る干草のにおい。掃き清められた床の上にまくハーブ。
チーズ貯蔵室やバター部屋のある、何百年も昔からの家の様子。おいしそうな料
理とお菓子の数々…。どれもこれも目に浮かび、且つ、物語の中から匂い立って
きそうで、うっとりとさせられた。

静かで美しいサッカーズで織り成される物語にどっぷりと浸り、しばし、その余
韻が離さないのである。


 9月17日(月) 「人質カノン」 宮部みゆき(文春文庫)

amazon2001.9月発行・317P・476円

宮部さんの本としては、印象が薄いかも。いや、いい話なんですけど…。

深夜に立ち寄ったコンビニで、強盗事件に巻き込まれてしまう、表題作を含め
七編から成る短編集。93年〜95年にかけて発表されたものをまとめたもので、
単行本として、96年に文藝春秋から刊行。今回文庫化される。

読み始め、こ、これは北村薫さんじゃないよね…と表紙を確かめたりして。
(+重松清さんの色合いも!?)

都会の片隅。孤独や怒りを抱えてる人たち。ほんの一瞬、行き会った人がもた
らすものは…。

ひしひしと伝わってくるせつなさの中にも、光が見えてくるというか、元気が出
てくるものも。個人的には、いじめの問題が絡んでいる「八月の雪」と「生者の
特権」が良かったなぁ。

それにしても…。文庫本のカバーの裏に書かれているあらすじ。あのー、これっ
て反則じゃないでしょうか??収録されている「十年計画」は、最後までシチュ
エーションを明らかにしないところがミソなのに、これじゃ、おもしろさ半減だ
よぉー。未読の方は裏を見ないで、読みましょう。


 9月12日(水) 「この闇と光」 服部まゆみ(角川文庫)

amazon2001.8月発行・292P・514円

よかったぁ…(ため息)。読み出したら、目が離せなくなり、ほぼ一気読み。
何かある…と思いながら、読んでいたにもかかわらず、エエッーと、二度も驚愕
することに!決して、解説を先に読むようなことや、気になるわ…と後ろを
パラパラと読むことはしませんように〜。

幽閉されている盲目の小さなレイア姫、失脚した優しい父王、恐ろしい待女の
ダフネ。ファンタジーの様相を見せながら、次第にミステリーへと姿を変えて
いく…。うーん、お見事だ!

最初の章で、大いに五感を刺激された色彩、衣擦れの音、沈丁花の香り、父か
らレイアにもたらされる音楽、物語、絵画…。美しさにうっとりしながらも、
その中に見え隠れする恐怖と不安感に、ゾクゾクとさせられた。

内容にはあまり触れない方がいいでしょう。この本を読む楽しみが減ってしま
うから。まずは読んでみて〜!


 9月10日(月) 「魔法使いハウルと火の悪魔 空中の城 1 
         ダイアナ・ウィン・ジョーンズ・作 西村醇子・訳(徳間書店)

amazon2001.10月発行・310P・1600円

魔法が本当に存在する国・インガリー。そこに暮らすソフィーは、三人姉妹の長
女。“長女にうまれたばかりに、何をやってもうまくいかない”と思い込んでる
ソフィは、ある日、<荒地の魔女>に呪いをかけられ、90歳の老婆に変えられて
しまう。家族をおどろかせたくないと家出したソフィーは、空中の城に住む、悪
名高き魔法使い・ハウルのもとに、掃除婦として住み込むことに…。

話は複雑。決して、わかりやすいとはいえない展開だけど(何度も、ん??と、
ページを逆戻りした)それを補って余りあるおもしろさッ!

こうなるのかもしれないという思いは、ことごとくはずれされ、ちっとも予測で
きなかったねー。わくわくしながら、ページをめくった。

印象に残ったのは、おばあさんになってから、俄然元気になるソフィ。ずうずう
しさと、めげないさと切り替えのよさを持ち合わせ、いきなり生き生きとしちゃ
うのね。ソフィーが変わるには老婆になることが必然だったのかも…なんて思わ
せる。“何もかも長女にうまれたせい”という彼女の思い込みを覆し、身も心も
自由になるには、老婆になって、今までとは違った目線でものごとを見てみるこ
とが必要だったのかもなぁ。

格好ばかり気にするハウル、弟子のマイケル、火の悪魔カルシファーと、それぞ
れのキャラクターもしっかりと立っている。ソフィと彼らの軽妙なやりとりも楽
しめた。

おとぎ話を読んでいるような、不思議な雰囲気に酔いしれる。見えてこなかった
いくつもの謎と、よめなかった展開…。ラストいろんなことが明らかにされて、
これとこれとがつながってと…、スコンスコンとはまっていくのが、実に爽快!

いろんな要素がぎゅっと詰まった一冊。児童書だけど、子どもより大人の方が楽
しめたりして!?

表紙カバーの画は佐竹美保さん。この本を原作に、宮崎駿氏脚本・監督で、スタ
ジオ・ジブリで映画化の予定。(2004年夏、公開予定)


 9月4日(火) 「燃えよ剣 (上・下)」 司馬遼太郎(新潮文庫)

〔上巻〕amazon1997月発行・495P・667円  
〔下巻〕amazon1997月発行・477P・629円

この夏休み、娘の自由研究に付き合って、函館五稜郭の歴史や城郭のしくみ
について調べた。今まで知らなかったことも多く、興味をもったついでだ〜と、
“新潮文庫の100冊”という黄色い小冊子の中にあった本書を読んでみる。
これが、幕末の歴史に疎い私でも、非常〜におもしろかったのだ!

新選組副長・土方歳三の生涯を描いた、この作品。まず、すっかり惚れてし
まったのが、沖田総司よ♪オッホッホ〜。

沖田総司といえば、剣の達人で美少年だが、ゴホゴホと咳をし、血を吐いて
いる…と、何も知らずに、悲壮感漂うイメージを持っていたら…。
なんの、なんの、司馬遼太郎氏が描く沖田総司は、天性の明るさを持ち、お
ちゃめで、どこか飄々とした風情のある青年だった。それでいて、利口で勘が
よく、一歩引いてものごとを見てるような柔らかい人物。…どうやら私は、男々
した土方よりも、こういうタイプに弱いらしい。そして、総司と土方のやりとり
は、ストーリーの中でも、ほっとなごませる要因になっているんだな。

さて、話は戻して、土方歳三。
バラガキ(不良少年)と呼ばれた歳三が、近藤勇・沖田総司と共に京に上り、
「新選組」を結成。近藤勇をトップに据え、ナンバー2でありながら、実質、新
選組の組織を作り上げたのは、彼だった。組織作りと戦術に長け、策略家と
しての力をみせていく。池田屋ノ変を経て、京の市中を戦慄させる集団に
成り上がっていくが、大政奉還後、時勢は大きく変化。動乱の時代を迎えて
いく…。

ここで描かれるのは、幕末の時代に、あくまでも士道に武士にと、こだわり、
確固とした自分の信念を貫き通した、一人の男の生涯である。もうここまで
くれば、見事としかいいようがない。

新選組を最強の組織にすることだけを考え、そのためには同士さえも斬る…。
最初は、土方の情け容赦のないやり方が、苦手だったのだが、お雪との恋
を境に、だんだんと人間味を増していく。そんな過程も、読みどころ!

“政治も思想もくそくらえー”と、あくまで自分を喧嘩師だと語る土方の、戦い
に明け暮れた生涯。(これがまた強いのよ〜)戦の中にだけ生きてきた彼に
は、新しい時代での身の置きどころはなかったのかもしれない…と思わせ
るところが、なんとも悲しかった。

ただひたすらに自分の信念を貫いていった土方に圧倒され、強烈な印象を
残す。読み終わった後には、言葉をなくし、大きな余韻に浸ってしまった。

土方歳三最期の地となった函館。五稜郭公園内にある博物館には、函館戦
争に関する資料が展示されている。土方の写真の前では、おばちゃんたちが
口々に「土方さん、会いにきたわよ〜〜」と盛り上がっていた…。
(私には、鬼の副長と恐れられていた土方像と、生涯でたった1枚残されて
いる土方の甘いマスクの写真の顔とが、なかなか重ならないのだが)

あー、しばらく新選組の熱は冷めそうにないかも。
ふだん時代小説を読まない女性にも、読みやすいので、ぜひ!


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