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2002年1月読了 
★印は、おすすめ
1/28  黒いうさぎ 若竹七海(文藝春秋)
1/28 装丁/南伸坊 南伸坊(フレーベル館)
1/26 フジ子・ヘミング 運命の力 フジ子・ヘミング(TBSブリタニカ
1/25 妖精王の月 O.R.メリング(講談社)
1/23 淑女の休日 柴田よしき(実業之日本社)
1/21 荒野のコーマス屋敷 シルヴィア・ウォー(講談社)
1/21 ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷 シルヴィア・ウォー(講談社)
1/19 風々院風々風々居士 山田風太郎に聞く 聞き手・森まゆみ(筑摩書房)
1/10 路地の匂い 町の音 森まゆみ(旬報社)
1/10 闇の底のシルキー デイヴィッド・アーモンド(東京創元社)
1/10 ドリームバスター 宮部みゆき(徳間書店)
1/10 黒と茶の幻想 恩田陸(講談社)

 1月28日(月) 「悪いうさぎ」 若竹七海(文藝春秋)

amazon2001.10月15日発行・413P・1810円

発売前から、図書館に予約を入れていたこの本。や〜〜っと手元に届く。

葉村晶シリーズ、第三作目にして、初めての長編。
(前二作「プレゼント」「依頼人は死んだ」は、連作短編集)

女探偵・葉村晶、31歳。数年前から、長谷川探偵調査所と契約している、フリーの
調査員。今回の依頼は、家出中の17歳の女子高生を家に連れ戻すというもの。
しかし、これを振り出しに、ある事件に巻き込まれた葉村は、やがて最悪の9日間
を過ごすことになる…。


結論から言うと、最後の最後に明らかになるその犯罪には、な、なんだ??それ…
と唖然としたし、読後は、なんだかやりきれず、たまらない気持ちになった。

だけど…。
やっぱり葉村晶、いいねぇ〜。先日読んだ柴田よしきさんの「淑女の休日」に登場
る女探偵・鮎村美生も似たタイプで好きだったんだけど、葉村晶の方が、もっと醒め
てる印象かな。

もう、とにかく目が離せない展開で、読み始めたら、とまらないとまらない。その勢
いは保証済み!結局、夜中3時過ぎまでかかっての、一気読みとなりました。
(読み終えるまで、眠れるかっ!!って感じよッ)

今回は、“葉村晶、踏んだりけったり、ボロボロの巻〜。
痛む足をひきづり、寝る暇もなく、真相をつきとめようと、どこまでも食い下がって
いく
晶が、大変な目に遭っちゃうわけね。あちこちに配されている、かわいいうさぎ
のイラストとは対照的に、内容はシビア。
時折、そのシニカルな会話の応酬に、クス
リとさせられた。

あっ、そうそう、登場してくると、ホッと心がなごんだ大家の光浦サンのキャラク
ター、よかったな〜。

若竹七海さんの、クールで抑えた筆は、健在。
またこのシリーズに出会えることを、楽しみにしています。


 1月28日(月) 「装丁/南伸坊」 南伸坊(フレーベル館)

amazon 2001.3月1日発行・231P・2300円

  本の装丁というのは、本当は、いろんな要請に応えなくちゃいけない。
 店頭で目立ち、本棚にいれてうるさくなく、内容をホーフツとさせ、フンイキを
 出す。

 でも、そういう立派なデザインをお望みの方は、きっと、しかるべき方に依頼さ
 れてる筈なので、コチラは好き放題に、やっててOKだと思っている。
  派手に目立つことはないけれど、「おや?」と、目をつけてもらえるようなデ
 ザイン。手にとってもらえたら、あとは、著者の先生や、編集者の方の領分なり
 と心得ている。 


とび職の職人さんの格好をして、うれしそ〜な笑顔の南伸坊氏…。
そんな装丁のこの本は、南伸坊氏が実際に手がけた装丁本を、その工夫とウラ話とと
もに語る作品集。カラー仕立て。大活字版(これって老眼対策!?)。

装丁って、センスとアイディアの勝負なんだろうなぁと思うんだけど、なんてったっ
て面白がって、楽しんで作っている様子が、読んでいて、とっても気持ちがいいの
だ。自分の好きな作家の装丁を担当できる嬉しさとかも、びんびん伝わってくる。
なんかいいね!こっちまで楽しくなってくる。本人が、「即物的アイディア」という
そのデザインも、好きだな〜。  

構成は、見開きニページに、まずその本の装丁が出来上がるまでのウラ話や技法の説
明があり、次の見開きを開くと、実際の装丁がカラー写真で掲載されている。どのよ
うな装丁になるのか、あれこれ想像しながら読んで、ぱっと次のページを開いてみ
る。次第に、これが楽しみになってくるんだよね〜。

そして、その軽やかな文章を読んでいると、なんだかおもしろそ〜と、絶対その本の
内容まで読んでみたくなるのよ!!ふだん手に取らないジャンルの本まで、ついつ
い、あれもこれもと、メモしちゃいました。

こういう本を読むと、いつもと違う観点でものごとを見たり、そこから世界が広がっ
ていく予感がして、非常に嬉しい気分になるんだなぁ…。


 1月26日(土) 「フジ子・ヘミング 運命の力」 フジ子・ヘミング
                                (TBSブリタニカ)


amazon2001.6月27日発行・127P・1800円

フジ子・ヘミングさんのことは、新聞や雑誌の記事を拾い読みした程度…と、断片
的にしか知らなかったのだが、ちょうどこの本を読もうとしていた時、民放で放送
していた彼女のコンサートに密着したドキュメント番組を見た。(たぶん再放送…)

人生の年輪を感じさせる、その野太い指先が奏でる、力強い音色。なんて!なんて
人の心をひきつける力があるのだろう…と思ったのだ。ひとつひとつの音が、直接
心に染み入っていく感じ。そして何度も聞きたくなる。そんなピアノに、私はすっか
り魅せられてしまったのだ。

小学生の頃から、天才少女と呼ばれ、ベルリン国立音楽学校に留学。その後、バーン
スタインから与えられたチャンス。しかし、ウィーンでのそのリサイタルの直前に、
風邪をこじらせて耳が全く聞こえなくなってしまう。(その後、左耳のみ完全な時の
40パーセントまで回復)

一流のピアニストになる夢は砕け散る。突然の失意のどん底。生活は厳しかった。
ドイツでピアノの教師をし、お金がなくて病院の掃除婦までしたことがあるという。
それでも夢は捨てず、あきらめたわけではなかった。そして、その努力は、怠らな
かった…。


猫を愛し、クリスチャンとして神に感謝を忘れず、心の中に母が生きつづける…そん
なフジ子・ヘミングの、ピアノのこと、歩んできた人生のこと、自分の好きな世界の
こと…についてのエッセイ。写真もふんだんに使われ、オールカラーの綺麗な本で
す。

いろんな苦難を乗り越えてきたはずなのに、ちっとも偉そうじゃないし、自然体なの
がいい。彼女の音楽への思い、人としての根本的なものの考えもいいなぁー、好きだ
なぁーと思う。若い時から、自分の中にものさしを持って、しっかりと自分の世界が
確立していたようだ。きっと、一見ちょっと“変わったおばあさん”なんだろうけど
まわり道したとしても、こんな風に年を重ねていけたらいいなぁと思ったりして。

彼女の生き方、これまでの人生が、その音に表われていたんだなぁと、再認識させら
れた。

手元に置いておきたくなる本だ。借りて読んだので、買っちゃおうかなぁ。
CD「憂愁のノクターン」も買いました。この本を見かけたら、手にとってみて欲しい
な。


 1月25日(金) 「妖精王の月」 O.R.メリング作 井辻朱美・訳(講談社)

amazon1995.2月20日発行・271P・1400円

ケルトの神話や伝説について、何も知らずに物語に入っていけるかしらと不安に
思っていたけれど、心配ご無用。これは、人間と妖精の愛の物語だったから〜。

ファンダファーと、カナダから遊びにきた、いとこのグウェンは、二人の<秘密の夢
とあこがれ>のため、別世界に通じる扉や通路を求めて、探索の旅に出た。
しかし、タラの丘の遺跡<人質の墳墓>の塚山の中で野営した夜、フィンダファー
は、妖精王によって連れ去られる。グウェンは、アイルランド中を移動し、フィンダ
ファーを救い出そうとするが…。

そこで、グウェンに迫られた選択とは?そして、愛を知ったフィンダファーの前に、
付きつけられた運命とは??

この冒険を通して、少女から大人に変わっていく主人公の二人だが、個人的には、
グウェンが出会う、妖精の存在を信じて、手助けしてくれる人たち−マティー、
ケイティー、ダーラ、ハートおばばの方に魅力を感じたりして。 

そして、なんと言っても、現代と重なり合って存在するフェアリーランド…その美し
い世界に酔いしれ、どっぷりとハマって読みました。も〜、冒頭の妖精王が登場す
る妖しげな場面からして、ぞくぞくとさせられたわッ。緊張感と、ある種の怖さも感
じさせながら、その幻想的な魅惑の世界に引き込まれていきました…。

近代国家の現実と、たえずその存在をほのめかしつづける、妖精の世界。
アイルランドでは、二つの世界が、いまだ共存しながら存在しつづけることを教えて
くれる。付記されている地図をたどりながら読んでいくうちに、すっかりアイルラン
ドに、魅せられました。


 1月23日(水) 「淑女の休日」 柴田よしき(実業之日本社)

amazon2001.5月25日発行・430P・1800円

舞台は、都内の一流シティホテル。
作中には、“シティリゾート”、“ホテル遊び”、“ホテル浴”という言葉が並ぶ。
小市民の私には、別世界、無縁の世界だが、レディスプラン…行ってみたいぞ、
自分の懐のお金でないならば(笑)でも、慣れないサービスをされると、デヘヘと
照れちゃったり、かえって恐縮したりするんだよね。

さて、この作品。
私立探偵の鮎村美生は、高校の同級生だったゆう子の勤め先でもある高級シティ
ホテルから、幽霊騒動の調査依頼を受ける。三つの具体的出来事による幽霊騒動
の噂。調査契約は、一週間。美生は、そのホテルに滞在し、調べることになった

が…。


一見なんの繋がりもなさそうなバラバラな出来事や人物が、複雑に絡み合い、いく
つもの
謎が解けていく

謎解きにおいては、“またまた、そんな都合よく”…と思うところもあるけれど、
まさに意外な展開の連続
で、全く目が離せず。ページをめくる勢いは、最後まで
とまりませんでした。

ホテルという空間は、なぜ都会に住む女性の心をそんなに惹き付けるのか?

明るく、カラッと始まった物語も、次第に、華やかな非日常の世界とは裏腹に、女性
たちの哀しみや孤独が透けて見えてきて、切なかった
…。

美生と研修中のキャリア組・沙藤刑事のコンビ、なかなかいいと思うんだけど、
また登場してくれないかなぁ。シンプルで美しい装丁も、好み。


 1月21日(月) 「荒野のコーマス屋敷 (メニム一家の物語 2)」 
        
シルヴィア・ウォー作 こだまともこ・訳 佐竹美保・絵(講談社)

amazon1996.4月20日発行・383P・1600円

<メニム一家の物語>第二作。

メニム一家の創造主・ケイト伯母さんが幽霊となって、甥のアルバート・ポンドの前
に現れた。“メニム一家に危険が迫ってるの。あなたの助けが必要なの”。そして、
メニム一家に、またまた手紙が舞い込んだ…。


ブロックルハースト・グローブを取り壊して、高速道路を通す計画が浮上。家がなく
なってしまうかもしれないという危機に見舞われたメニム一家は、この甥の持ち家・
コーマス屋敷に引っ越しを迫られることに…。

前作と比べて、メニム一家の人形たちは、より生き生きと動いている印象。

一家に降りかかる大きな出来事の影で、思春期であるスービー、アップルビー、ピル
ビームの
人形として生きることのアイデンティティの問題も見え隠れし、物語の奥
行きを感じさせる。

異端の悲しみ。ラストは、なんだか切なかったなぁ…。


 1月21日(月) 「ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷
                           (メニム一家の物語 1)
」 
        
シルヴィア・ウォー作 こだまともこ・訳 佐竹美保・絵(講談社)

amazon1995.10月31日発行・343P・1600円

全5巻から成る<メニム一家の物語>第一作。噂通り、おもしろいッ!

あなたが住むブロックルハースト・グローブの家を、伯父の死により相続したので、
一度お訪ねしたい…。オーストラリアから、突然舞い込んだ一通の手紙に、メニム
家は、恐々となる。

英国ブロックルハースト五番地。そこに住む家族は、人間ではなく、知恵のある等身
大の布の人形だった…。(この“等身大”というところで、私の頭の中で、びっくり
マークが三つ並んだね)


彼らをつくりあげたのは、たぐいまれな裁縫の才能を持ったケイト伯母さん。伯母さ
んが亡くなった後、不思議なことに命を授かり、メニム一家は、人知れず、40年以上
もこの屋敷に住んでいた。人間の“ふり”や“ごっこ”をしながら。しかし、その間
メニムたちは、成長もしなければ年もとらない。(40年も15歳をやってるなんて、い
やだよね〜)外の世界と接しなければならない時は、電話か郵便で事をすませ、街に
出かける時は、人形であることを見つからないように努力してきた。

そんな判で押したような暮らしを送っていたメニム一家に、大きな嵐が吹き荒れる。

スリルな展開のわりには、どことなくほのぼのとした雰囲気を漂わせ、この手紙も意
外な展開を見せる。

それにしても、三世代の大家族で暮らす個性豊かな人形たちは、人間くさく、なんと
も身近で親しみやすい存在だ。人物造形…いや人形造形がしっかりとしている。それ
ぞれの性格も描き分けられていて、こんなお父さん、いるいると、リアリティあり!

衝突も反発もあるけど、家族としての基本的なつながりが感じられた。

1994年、カーディアン児童文学賞受賞作品。


 1月19日(土)  「風々院風々風々居士 山田風太郎に聞く」 
                    
聞き手・森まゆみ(筑摩書房)

amazon2001.11月25日発行・200P・1400円

昨年7月に亡くなった山田風太郎さんの、1994年「彷書月刊」、1996年「東京人」、
1997年「山田風太郎明治小説全集」に掲載されたインタビューをまとめたもの。
聞き手は全て、森まゆみさん。

これはやっぱり、風太郎さんの本を読んでから手にとった方が、より楽しめるで
しょう。私のように、一冊も読んでいなくて、しかもモノを知らなくて…という不届
きものは、
この本のおもしろさの半分も味わえていないんだろうなぁと悔しく思う。

両親を早くに亡くした生い立ちから、自分の作品のこと、明治・大正・昭和の
…。
その語り口から、幅広い知識と時代をみる目、偉ぶらない人柄が感じられ
る。


最近、歴史がおもしろいと思い始めている私には、自分が知らなかった世界の扉を
少し開けたような、世界が広がっていくような気持ちよさが感じられて、とても
よかった。

それにしても、亡くなっちゃうと、その人がもっていた、たくさんの知識も知恵も
ピソードも
、大きな財産が一緒に消えてしまうんだね。なんてなんて惜しいことな
んだろう…。そういう意味での、この本の意義も見えてきた。

森まゆみさんの聞き手としての力量が、しっかりと感じられる一冊にもなっている。

自分の中で、山田風太郎氏の本を読んでの再読決定…。図書館で借りて読ん
で、
筑摩書房さん、文庫にして下さい〜。


 1月10日(木)  「路地の匂い 町の音」 森まゆみ(旬報社)

amazon2001.10月30日発行・251P・1900円

「谷根千」の地域雑誌を始めて十数年の間に、折にふれて、町について考えたこと
をまとめた、エッセイ集。


アラーキーが撮影した写真集「人町」に掲載されていた風景、町の人たちの顔を
思い浮かべながら読む。

実際に住んでいる地域のことも、町づくりも環境問題も、上からではなく、あくまで
そこに生活している人の目線で、ものを語るというスタンスが、とてもいい。

まずは、もっと自分の住む町への愛着を持とうよ、もっと町を楽しもうよ、という気
持ちにあふれてる。

町に根ざして暮らす職人さんや商人など、そこに暮らしている(または暮らしていた
足跡など)“人”を描いた文章が、生き生きとしていて、特に好き。


 1月10日(木)  「闇の底のシルキー」 デイヴィッド・アーモンド
                   山田順子・訳
(東京創元社)

amazon2001.10月30日発行・251P・1900円

肩甲骨は翼のなごり」で、カーネギー賞を受賞したデイヴィット・アーモンドの
二作目。原作は、前作同様、児童書です。

舞台は、かつて炭坑があったイギリスの小さな村・ストーニー・ゲイト。
祖父と一緒に暮らすために、多くの採鉱の穴が残るこの村に引っ越してきた、13歳
のキット。事故で閉じ込められた少年坑夫たちや、その幽霊・小さないたずらっ子
シルキーの話をしてくれる炭坑夫だったおじいちゃん。
洞窟の中で、<死>という名の奇妙なゲームをしているアスキュー。

作品の雰囲気は、「肩甲骨は翼のなごり」に似てるかな。
独特の空気感を持つ、なんとも言いがたい不思議で美しい物語。

決して明るい作品ではないのに、読後感は悪くない。
こちらの方が「肩甲骨〜」より、重く鬱々としている分、ラストには、生きる喜び、
命のいとおしさ…そんな手応えが大きく残った。

“死”や“闇”に対して、恐れとともに、魅入られ、引き寄せられていく。
家庭環境もタイプも全く違うのに、心の深い部分で共鳴するキットとアスキュー。
そんな思春期の心理が、非常によく描かれている。

どこまでが現実で、どこからが夢で…と、混沌とした世界。
闇をくぐり抜け、新しい命を帯びて、再生する…。その辺の描写の迫力ときたら!
さすが巧いなぁと思わせる。物語るということの不思議な力を感じさせた。

作者自身が、子どもの持つ力を信じている…そんな信頼感とエールが感じられる
力強い作品であった。


 1月10日(木)  「ドリームバスター」 宮部みゆき(徳間書店)

amazon2001.11月30日発行・364P・1600円

人の心の隙間に付けこんで、夢の中に忍び込み、心も体も乗っ取ろうとする。
そんな夢に巣くう悪しきものを退治しにきた、ドリームバスター!!


ファンタジーというよりは、SFだよね…これ。何の予備知識も持たず長編だと
思い込んでいたら、三篇から成る連作中篇でした。しかも“続く”だよ(^^;;
ある日突然、悪夢を見るようになった主婦と若者、そして少年シェン…と、
視点を変えて語られていきます。

どうしても状況解説、説明調になってしまうところが気になったんだけど、書き下ろ
しの三作目がおもしろくて、好感触〜♪
宮部作品では珍しく、アニメのような強烈な出で立ちと個性を持つ、マエストロと
少年シェン(なかなかいいコンビだよね〜)のキャラクター。コミカルな語り口で
読みやすいけれど、そこに広がる世界は深い。

個人的には、まず、登場人物それぞれの人生ドラマに魅せられ、そこから興味は、
この作り出された壮大な世界へと広がった。

物語は、始まったばかり。まだまだ広がりをみせていきそうな予感にもワクワク。
必ずあるはずの次作に期待が膨らみます。


 1月10日(木)  「黒と茶の幻想」 恩田陸(講談社)

amazon2001.12月10日発行・619P・2000円

とても好き。新年一発目(?)、この本に出会えたことを嬉しく思う。
「ドミノ」も確かにおもしろかったけれど、恩田さん“らしさ”が随所に漂う、
こちらの方が、私は好き。いや、恩田さんの作品の中で、一番好きかもしれない。
あー、この気配、この空気感がやっぱり好きなのよーと、どっぷりひたって読み
ました。

久しぶりに集まった、学生時代の友人の送別会の席で盛り上がった「Y島ツアー
計画」が実現した。旅のテーマは、非日常。サブテーマは、“安楽椅子探偵紀行”。
大自然の中で、精神を解放し、普段我々が忘れ去っている人生の謎を考えよう…。
仕事を持ち、結婚し、別れ、子育てを…と、それぞれの日常を過ごしてる四人の
男女が、森へと足を踏み入れる。美しき謎と過去への思索の旅が始まった…。

利枝子、彰彦、蒔生、節子の順に語り手を変え、描かれた四つの章で、明かされ
ていく過去。

Y島というのは、屋久島であることは明らかだが、この神秘的な深い深い森の中に
入っていく…というのが暗示しているように、四人は十数年前の時間と自分自身
をよび起こしていく。それまで、心の奥深くにしまいこんで意識していなかった
誰もが持っている見えない森へと…。

ぞわぞわ感がもう少しあったら、もっと嬉しかったかな。
ミステリーのような形をしてるけれど、ミステリーというよりは、「小説トリッパー
2001冬季号」(朝日新聞社)の中で、恩田さん自身が自作解説しているように、こ
れは恋愛物語なんだと思う。

歳月が巻き戻されたかのような、学生時代の友人関係の感覚を含め、自分とほぼ
同じような年齢の四人に、あちこち共感しながら読み進んだ。(おいおい、もうそん
なにかい!と、高校を卒業してから経つ年月の長さに、あらためてゾッとしたのも同
じだ)そして時折、自分の森を覗きこむような感覚に陥る…。

この時期だからこそ、必要だった旅。日々流れていく日常。突っ走ってきた人生の
折り返し地点で、一度立ち止まり振り返ってみる。しかし、それに向き合うことに
対しての畏れと不安。そこに交錯するさまざまな思いが、丁寧に綴られていく。

そして、取り戻した過去の苦さをも内包して、また前へと向かう力強い思いで締めく
くられるのも、とてもいい。

旅の終わりは寂しい。一緒に感傷的な気持ちになったりして。
自分も一緒に旅をしている気分で、四人が旅を終えるのが、600ページほどのこの
長編を読み終えるのが、本当に惜しい気分になった。

また一冊、恩田さんの大好きな本が増えました。


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