| 2002年2月読了 | |||
| 2/26 | 藩校早春賦 宮本昌孝(集英社) | ||
| 2/26 | サラシナ 芝田勝茂(あかね書房) | ||
| 2/22 | 本の雑誌血風録 椎名誠(新潮文庫) | ||
| 2/22 | 本屋はサイコー! 安藤哲也(新潮OH!文庫) | ||
| 2/20 | 琥珀の望遠鏡 フィリップ・プルマン(新潮社) | ||
| 2/16 | 翼はいつまでも 川上健一(集英社) | ||
| 2/14 | 緋色の皇女アンナ トレーシー・バレット(徳間書店)★ | ||
| 2/8 | お鳥見女房 諸田玲子(新潮社)★ | ||
| 2/6 | 妖櫻忌 篠田節子(角川書店) | ||
| 2/6 | アジア四十雀 森まゆみ(平凡社) | ||
| 2月26日(火) 「藩校早春賦」 宮本昌孝(集英社) 遅まきながら、今、自分の中で、時代小説がおもしろくてしょうがない! 東海の三万石の小藩にも藩校ができることになった。その建設をめぐる騒動、反目 しあう道場同士の御前試合、吹き荒れる陰謀…。徒組の三男坊・新吾。色白で頼り ない仙之助。剣術には秀でているが、単純な太郎左。そろって学問嫌い、元服して 間もない15、16歳の彼ら三人組が活躍する青春時代小説。六編の短編と、中編一つ から成る連作ものです。 いいねー、いいねー。好奇心と正義感。若さと向こう見ず。それでいて、わきまえ るところは、きちんとわきまえている。主人公である、新吾の魅力そのままのよう に清々しい物語。まっすぐな心でぶつかっていく若者たちが眩しい。脇役の隅々ま で、きちんと目が行き届いていて、その誰もが生き生きと個性的に描かれている。 たとえどの話も、きちんと収まるところに収まるんだろうなぁという予測はついて も、おもしろかった。 分別くさいところがないし、かなり読みやすいし、中高生が読んでもおもしろいの ではないだろうかと思うのだが、どうだろう。 物語は、まだ続くような様相もみせているので、ぜひ続編を!! |
| 2月26日(火) 「サラシナ」 芝田勝茂・作 佐竹美保・絵(あかね書房) 中学生のサキは、大事に育てていたひょうたんの蔓を、うっかり切ってしまったこ とに落胆していたが、夢の中でひょうたんは、大きく大きく育ち、実を結ぶ。そし てそれがサキを千年の時を超えた地へといざない、不破麻呂と出会うことになる。 現実に戻ったサキは、不破麻呂に会いたいという気持ちが募り、再び時を越えた時 サキは第四王女・竹姫になっていた…。 荻原規子さんの作品に雰囲気が似ている気がしたが、それに比べると、物語の奥行 きというものが感じられなかったなぁ。 気になった点は、二点。これって、なんか全て簡単に進むのね(^^;;軽快とは 違うんだなぁ…簡単なんだよ…。そして、なにもかも説明してしまうのね。文面や しぐさや気持ちから、何かを読み取ったり、もしかして、こうなのかもと想像しな がら読むおもしろさが薄いんだよね。サキは、現実の中で生きにくさを感じている という設定なんだけど、サキ自身の言動からそのようなキャラクターも、いまいち 浮き彫りになってこないし。 竹姫の物語は、それなりに読ませる。だけど、なんだか“ゆきてかえりし”の物語 にしてしまったことで、竹姫とサキの関係性があいまいなところや、納得できない 部分が残ってしまった。まぁ、そうしないと、ファンタジーにならないのかもしれ ないけど…。どうしても付け足しの印象がぬぐいきれなかった。 |
| 2月22日(金) 「本の雑誌血風録」 椎名誠(新潮文庫) 始まりは、前発行人で現顧問、目黒孝二さんの「メグロ・ジャーナル」だった…。 「本の雑誌」の誕生と、同じ頃、専門誌の編集長をしながら、作家として歩み始め る作者自身の姿を描く、“実録”小説。 話は、しばし…いや、度々あっちに飛びこっちに逸れていくんだけど、読み口がい いのも手伝って、ずるずると椎名ワールドにはまってしまう。おもしろかったな。 自分たちが、思いもよらぬほどの流れと勢い。何かが立ち上がっていく時って、こ ういうものかもしれないなぁ…。でも、当時それぞれが抱えていた本業との板ばさ みに悩みながらも、奔走し生み出していくエネルギーって、やっぱりすごいよなぁ と眩しく思う。 基本的に、どおーんといこうよと熱いタイプの椎名さんと、一歩引いて冷静に見て いる目黒さん。「本の雑誌」で連載中の「笹塚日記」を読んで、これまで私が勝手 に持っていた目黒さんのイメージが、少し変わりました(笑)沢野さんのマイペー スなキャラも憎めない〜。好きな道をきっちりと貫き通して、今、ちゃんとそれぞ れの地位を掴んでいる男たち。いいです、みんな。 続編の「新宿熱風ドカドカ団」。「本の雑誌」誕生を目黒さん側の視点から書いた 「本の雑誌風雲録」。群ようこさんの「別人「群ようこ」のできるまで」も、読ん でみよっと。 |
| 2月22日(金) 「本屋はサイコー!」 安藤哲也(新潮OH!文庫) この題名って、やっぱり昔あった番組「今夜はサイコー!」から、思いついたのか なぁ(笑) オンライン書店 bk1店長・安藤哲也氏が、出版社勤務を経て、往来堂書店を立ち上 げ、bk1に移るまでを 綴ったもの。 往来堂時代のことが中心に語られているので、「だれが「本」を殺すのか」(プレ ジデント社)、「出版クラッシュ!?」(編書房)を読んでいた私にとって、内容的に 新鮮味はなかった。 何事もはっきり口にする分、きっと敵も味方もずいぶんいたことだろう…と、余計 なことを考えながらも、既成のもの、従来のシステムにとらわれずに、成功を収め たというところが、注目される所以なんだろう。 安藤さんは、本自体(読書)が好きというより、書店をプロデュースすることが好 きというか、おもしろいんだろうなぁと感じた。 しかし、ここに書かれているその心意気は、どんな立場の人にとっても、刺激にな り、やる気になるに違いない。 |
| 2月20日(水) 「琥珀の望遠鏡」 フィリップ・プルマン 大久保寛・訳(新潮社) ライラの冒険シリーズ、第三巻目。待望の完結編!!(厚いよ〜。思わず計ってみ たら、4センチもありました) 読み出してみたものの、細かいことをすっかり忘れていることに気がつき、前巻の 「神秘の短剣」を、少し読み直してから、取り掛かることに。 (内容についてどこまで書いていんだか…ネタバレしてるような気がして心配…) 「神秘の短剣」の終わりで、行方不明になったライラは、谷の近くの洞くつの中で 眠り続け、ウィルは、二人の天使と共にライラを探す旅に出る。そして、さまざま な思惑によって、ライラを必死にさがすものたち。壮絶な闘いが始まろうとしてい た…。 物理学者のメアリー・マローンが果たす役割とは?あらゆるものの運命がかかって いるという、ライラの重要な役割とは?ウィルの持つ短剣が、密かにもたらしてい たものは?そして、ライラの決意は?今、全てが明らかに!! 一度読んだだけでは、ちょっとわかりにくくて混乱し何度も読み返してしまった。 (ライラとウィルの場面はいんだけど、同時平行に描かれるいくつものの場面の詳 細が、なかなか掴みづらくて、つっかえながら読みました) 正直言うと、疑問が残ってしまったところも、これまでの流れから、なんかすごい 展開を期待してしまっていたのか、多少拍子抜けのところもありましたが、とにか く完結!この壮大な物語は、きっちり幕を閉じました。ハァー、終わってしまった よ〜(涙) 今回は、他の二作に比べて、メッセージ性が強くなっている。この三部作を通して プルマンが言いたかったことは、“生きている今、この時を、自分が生きている世 界を、大切にしようよ”というシンプルなことだったのねーと、受け取った。(キ リスト教の信仰を持つ方たちは、これを読んで、どう感じるのかわからないけど) 大好きだったイオレク・バーニソンの再登場にワクワクし、今回は小さなスバイた ちの存在が忘れがたかった。 長い冒険の中で、常に前へ前へと、立ち向かおうという姿勢を貫き通したライラと ウィルは、最後まで魅力的だった。拍手を送りたい。そして、プルマンにも感謝! なお、この作品は、英国ウィット・ブレッド賞の年間最優秀賞を受賞。同賞30年の 歴史の中で、児童書が選ばれたのは、初めてのことだそうです。 |
| 2月16日(土) 「翼はいつまでも」 川上健一(集英社) 時は、60年代。青森県十和田市に住む中学生−いまいちパッとしない神山君を主人 公にした、野球と友情と初恋の物語…。 も〜、青春ど真中って感じで、ちょっと気恥ずかしくなるほど、真っ直ぐな青春小 説。思いきり、直球で勝負してくる。 私の中では、理不尽な教師との対立を描く前半部分と、神山くんが、一人で十和田 湖畔にキャンプに出かける後半部分では、大きく印象が違った。 前半は、なんだかどこかにズレを感じてしまい、いまいちのれず、ひきながら読ん でしまった(^^; うーん、この本と出会う時期が違ったのか、このまま終わってしまうのかと思いき や、恋が絡んでくる後半部分からは、なかなか読ませるのだ。グッときたぁ。 ちょっと勇気を出して、一歩前にでてみることで、自分自身が、変わることもある よというメッセージが、きっちりと伝わってくる。そして、大切な人との出会いと 別れを通して、短い期間に、飛躍的な成長をみせる少年像が、鮮やかに描き出され るのだ。 ストーリーは、型通りっちゃ、型通り。ものごとって、こんなに簡単には、うまく いかないんだよねと、すっかり汚れちまった(?)自分の醒めた心を見つめながら も、10代のきらめきと、ときめきと、ほろ苦さは、十分堪能できた。 |
| 2月14日(木) 「緋色の皇女アンナ」 トレーシー・バレット 作 山内智恵子・訳(徳間書店) 時は、十一世紀。山奥の修道院での単調で退屈な幽閉生活…。なぜ私はこんなとこ ろにいるんだろう。今ごろ自分は、ビザンチン帝国の首都コンスタンティノープル の宮殿で、玉座に座っているはずだったのに。なぜなら私は、世界一強大な帝国の 緋色の産室で誕生した、生まれながらの皇女なのだから。そして、女帝たるべく育 てられてきた。しかし、策略家の祖母と弟によって、その地位を奪われてしまう。 アンナの回想が始まった…。 これ、おもしろかったぁー。史実は多少変えているらしいが、父親の生涯を綴った 「アレクシオス一世伝」(この本は、当時のビザンチン帝国を知るための重要な資 料になっているという)を執筆した実在の人物、アンナ・コムネナの半生を描く歴 史ドラマ。世界史に疎く、歴史的背景についてよく知らなかった私でも、充分に楽 しめた。 生まれのせいか、おばあさまアンナ・ダラセナの血のせいなのか、気位が高く勝ち 気で高慢なアンナの態度も、ここまで徹底してれば、いやみな感じは受けず、逆に 魅力にさえなっている。その心情もリアルに伝わってきて、一緒になって、メラメ ラと怒りがこみあげてきたり、ハラハラしたりと、最後までダレことなく一気に読 ませた。 聡明なアンナは、大人になっていくにつれて、次第に周りの状況が読めていく。厳 格なおばあさまと、美しくやさしいおかあさまとの確執。母親に操られている皇帝 であるおとうさま。大人たちの間の構図、空気…。 社会的に決して恵まれていなかっただろうと推測される中世の女性の地位。そんな 時代の中でのおばあさまの立場や権力志向、資質のあるものが後を継ぐという考え 方も興味深く読めた。それにしても、このおばあさま、強烈なのよー。あぁ、恐ろ しき権力争い。地位を手に入れるためなら、陥れることだって、なんだってありな のよ、おおっ、コワッ!! ガラガラと音を立てるように、その地位から落とされていった後のアンナのプライ ド。違う立場で、自分をみつめることによって、初めて気がついたこと。そして、 それによって開けていく道。なにもかも弟のせいと憎み、全てに対して頑なだった アンナの心が解けていく様子に、胸が熱くなった。 したたかでぬけめない弟ヨハネスによるラストの逆転劇も、痛快だったなぁ!作品 の中では、悪役だった弟だけど、あとがきによると、歴史上では、帝国屈指の名君 で、民に対して善政を敷いたため、“うるわしのヨハネス”と呼ばれたとか。うー ん、やっぱり歴史は、ひとつの視点からではわからないよねー。だから、おもしろ いんだろうけど。 これをもっと膨らませて一般書としても、読んでみたいなぁと思わせた。 |
| 2月8日(金) 「お鳥見女房」 諸田玲子(新潮社) 時代小説初心者(?)の私でも、非常に読みやすかった。連作短編集。 舞台は、江戸城の西北、雑司ケ谷。物語の主人公である珠世は、代々、御鳥見役を 務めている矢島家に生まれ育ち、婿を迎え、二十三を頭に、四人の子持ちである。 ある日、矢島家では、ひょんなことから、七人もの居候を抱えることになった。狭 い家を占領され、やりくりに頭を痛めても、明るくしっかりものの珠世が切り盛り していく、大家族の暮らし…。 しかし、そのなんともほのぼのとした、にぎやかな暮らしにも暗い影が…。三代に 亘る男たちを見てきた珠世は、御鳥見役には、御鷹場を巡邏するという公の役目と は別に、裏の任務があることに気がついていた。新たな任務により他国に出かけた 夫・伴之助もおそらく…。だれもが心ひそかに、婿であり、夫であり、父である伴 之助の身を案じていた…。 薄っすらミステリーの味付けがされた人情話(?)。いいね〜、しみるね〜。こう いうのに弱いんだよね〜。疲れたときに帰る場所のような、包み込むようなあった かさに溢れてる。ここには、損得抜きの繋がりと、それでいて、ほどよい距離感が 保たれている。 丸顔にえくぼ。まさに肝っ玉母さんというような、面倒見がよく、気のつくおかみ さんの珠世。矢島家の隠居・久右衛門と、十五年前に一度酒を酌み交わしたという それだけの繋がりを頼って、転がり込んできた浪人・源太夫と五人の子どもたち。 そして、父の敵と、その源太夫を追って江戸に来た娘・多津…と、登場してくる、 その誰もが魅力的。 互いに気遣いながらも、生き生きと暮らしている市井の人々の、ささやかな幸せに 心がほっこりとしてくるのだ。ほのぼのとした中に入り込んでくる影もストーリー をきりりとひきしめる。矢島家の住人たちがしっかりと心の中に棲みついてしまっ て、読み終えるのがなごり惜しかったなぁ。 ページ数も残り少なくなったところで、ええっー??完結しないの!?と驚いたが どうやらシリーズ化らしいです。よかった、よかった。次作が楽しみです。 |
| 2月6日(水) 「妖櫻忌」 篠田節子(角川書店) この「妖櫻忌」は、七年前に「小説王」(角川書店刊)に掲載された作品を、加筆改 稿したものなんだそうだ。 高名な女流作家・大原鳳月の死後、彼女の秘書であった若桑律子が、担当編集者の 堀口のもとに原稿を持ち込んできた。しかし、その原稿をめぐって、次々と湧き上 がってくる疑問…。盗作か?錯覚か?妄想なのか?判断がつかないまま、堀口は律 子の周辺を探り始める…。 途中から、ホラーの様子を呈してくるのだが…。うーん、でも、それがあまり怖く なかったんだな、これが。心理的にも、身体的にも、それほど、怖さが伝わってこ なかった。 艶っぽかった老女・大原鳳月とは、対称的なキャラクターの律子。つかみはOKで、 最初、物語の中に、ぐぐっと引き寄せられたので、それからもっとゾクゾクとした 展開があるのかと期待したんだけど、予想の範疇を超えないと言うか…うーん、普 通でした。 物語としても、読み終わった後、うーん、だから?という言葉が浮かんできた。 そして、編集者の堀口って、すっごくヤな奴なのよ〜〜!(まぁ、それが作者の狙 いなんでしょうけど)男としての感覚も、仕事人としての姿勢も嫌いで、読みなが ら、イライラした。この作品では、確かに、女の情念、憎悪が生々しく描かれてい る。でも、私の中では、女の情念より、男の嫌らしさの方が、印象に残ってしまっ た。あっ、あと、出版界のいやらしさも露骨です(笑) |
| 2月6日(水) 「アジア四十雀」 森まゆみ(平凡社) 子育てが一段落し、気がつけば、四十代になった…。 (あとがきより) 1997年の春、20年ぶりにパスポートを取得したという森さん。それから三年間の間 に出かけた、インド、タイ、バリ島、韓国、ベトナム、モンゴル…などの旅を、メ モを元にまとめた紀行文。 後から振り返った旅…という構成のせいなのか、写真や地図・イラストなどビジュ アルの点で、編集上もう一工夫欲しかったなと思うところも、なきにしもあらず。 四十代の旅の利点は、ひとつは、バックパッカーもやれるし、ペニンシュラ・ホテ ルのラウンジで艶然と(?)微笑したりもできるということだ。もう一つ、十数年 あるひとつの町で暮らし、そこを見つづけてきたおかげで、町を見る物差しという か、立脚点が自然にできていた…。 個人的には、私も行ってみたい!と、ソソられるというよりも、ふむふむと興味深 く読んだという印象が強い。 地域に深く根ざしている森さんらしく、“名所旧跡に行くよりは、町を歩き、さま ざまな人の表情を見た方が楽しい。そして、そこに住む人たちと関わりたい”とい ススタンスが、いいなぁと思う。こういうのが、旅の本当のおもしろさなんだよね と、しみじみ感じた一冊だった。 |