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2002年3月読了
★印は、おすすめ
3/30 誘拐ラプソディー 荻原浩(双葉社)
3/28 図書室の海 恩田陸(新潮社)
3/27 花の下にて春死なむ 北森鴻(講談社)
3/26 都立水商! 室積光(小学館)
3/25 春になったら苺を摘みに 梨木香歩(新潮社)
3/19 ビリー・ジョーの大地 カレン・ヘス(理論社)
3/15 春風ぞ吹く 宇江佐真理(新潮社)
3/13 本の雑誌風雲録 目黒孝二(本の雑誌社)
3/11 あくじゃれ瓢六 諸田玲子(文芸春秋)
3/8 ごめん ひこ・田中(偕成社)
3/5 一八八 切り裂きジャック 服部まゆみ(東京創元社)

 3月30日(土) 「誘拐ラプソディー」 荻原浩(双葉社)

amazon2001.10月25日発行・408P・2000円

主人公の伊達秀吉は、前科持ちである自分の面倒をみてくれた工務店の親方を
殴り、金と業務用のバンを盗んで逃げてきた。家には、ヤミ金融の借金取りが
押しかけているだろう。もう戻れるところはない。死に場所を探して、ウロウ
ロしているところへ、金持ちのガキが転がり込んできた。伊達は、獄中でシゲ
さんから教えられた“完全なる誘拐の法則”を思い出していた…。


だはは。痛快、痛快!おもしろかった〜!
冒頭、若干もたついた感じがあったけど、そこを抜けると、ページをめくる勢
いは、もう止まらない〜。世界一運の悪い誘拐犯…に違いない、伊達の思いの
及ばぬ
ところで、どんどんどんどん、とんでもない事態になっていく。
そこを
するりするりと切り抜けていく展開が読ませる。捕まるなよーと、つい応援し
てしまったりして。最後まで、ハラハラドキドキさせられた。

登場人物も、みんなどこかずっこけてる。特に、誘拐犯なのに、なぜか憎めな
伊達と、誘拐された伝助とのやりとりが、絶妙。とぼけた味をだす伝助が、
妙に可愛いのよ。
二人の関係を忘れ、次第にほのぼのしみじみしてくるのだ。

これ、映像にしても、おもしろいかもね!?

荻原浩氏の本は、初めて読んだが、好感度大だったので、別の作品も読んでみ
よっと。


 3月28日(木) 「図書室の海」 恩田陸(新潮社)

amazon2002.2月20日発行・237P・1400円

関根夏を主人公にした「六番目の小夜子」の番外編となる表題作を含め、十編
から成る短編集。

うーん、イマイチだったり、よくわからなかったりするものもあったりして、
満足とは言いきれない…。
アンソロジーや雑誌に掲載されていたものを、寄せ
集めたような形なので、それもいたしかたないのかもしれません。
予告編や番
外編として書かれたものも多いので、まだ恩田さんの作品を読んだことのない
方は、最初にこの本から手にとるのは避けた方がいいかもしれません。


やっぱり気になるのが、長編予告として書かれた「イサオ・オサリヴァンを探
して」と、「ピクニックの準備」の続き!!短いプロローグを読んだだけでも
ワクワクしてくるよぉー。楽しみにしていましょう。


 3月27日(水) 「花の下にて春死なむ」 北森鴻(講談社)

amazon1998.11月15日発行・239P・1600円

三軒茶屋の細い路地の奥に、ひっそりと提灯を灯すビアバー「香菜里屋」。
ここのお店の魅力は、美味しい料理と、四種類のビール。そして、常連客が持
ち込んでくる様々な謎に静かに耳を傾ける、マスター工藤哲也の存在だった。

表題作を含め、六編から成る連作短編集。
時折、都合がよすぎるところもみえたけれど、この作品の持つ雰囲気は好き!
優しく包み込むような店の雰囲気と、謎解きの先にみえてくる真相の、なんと
も切ない、ほろ苦さ。そのへんのバランスが、とてもいい。

年齢不詳、経歴不詳として描かれている工藤は、一体何者〜??
工藤の人物像がイマイチ立ち上がってこなくって、最後まで、顔が見えてこな
かった。(それって、私の想像力不足?)サイドストーリーとして、連作の中
で、ポツポツとでも、彼の素性が透けてみえてくれると、もっと深みが増した
ような気もするのだが…。


 3月26日(火) 「都立水商!」 室積光(小学館)

amazon2001.11月10日発行・317P・1300円

文部省の官僚が酔ってぶち上げた、ひとつのアイディア。「商業や工業、農業
や水産などの職業高校があるならば、水商売を学ぶ高校があってもいいじゃな
いか!」。かくして、歌舞伎町に都立水商業高校、通称「水商」が設立され
た…。


目のつけどころ…というか、なんとも奇抜な設定のおもしろさが全てかなぁ。
カラリと明るく、軽〜く読める1冊ではあるが、不満も残った。

現在と回想のつながりというか、展開の持っていき方が、台本ぽくって、上手
くない。


そして、なにより、教師も生徒も素晴らしくて、何もかもうまくいって、全て
感動場面にしてしまうっていうのは、どうよ??ひとつひとつのエピソードが
あまりにもうまくいきすぎているのだ。学校という集団生活において、全く負
の部分が描かれず、
いいことばっかりだなんて、不自然だよー。薄っぺらい印
象はぬぐえない。最初はおもしろかったんだけどなぁ。次第に
興ざめしてしま
いました…。


 3月25日(月) 「春になったら苺を摘みに」 梨木香歩(新潮社)

amazon2002.2月25日発行・189P・1300円

梨木さんが師事していた、英国の児童文学者ベティ・モーガン・ボーエンこと
“ウェスト夫人”を中心に置いて語られる、書き下ろしエッセイ。


エッセイなんだけど、読み終わってみると、まるで一編の物語を読んだような
そんな感覚に陥った。
メルヘンチックな題名から受けるイメージとは違って、
硬質で真摯な感じ。静かだけど、確かなメッセージが伝わってきた。

 「理解できないが受け容れる」

ウェスト夫人が貫くこのスタンスは、世界的にも混沌としている今の時代、最
も必要とされることなのかもしれない。


エッセイ全体に漂っている雰囲気は、これまでの作品がもっていた印象と変わ
らない。梨木さんの描くものは、いつもひそやかで、明るさの中に寂しさが垣
間見られたり、少し哀しいけれど幸せなような
、そんな思いが残る。


 3月19日(火) 「ビリー・ジョーの大地」 カレン・ヘス・作
                        伊藤比呂美・訳(理論社)


amazon2001.3月発行・305P・1500円

1934年、大恐慌の最中の
オクラホマ。畑は干上がり、土嵐が襲う。ろくに収穫
もない…。そんな過酷な
活の中で、
あたしの心を潤してくれるのは、ピアノ
を弾くことと、かあさんと、もうすぐ生まれてくる赤ちゃんだ。しかし、大き
な不
幸が、彼女に降りかかる…。14歳の女の子・ビリー・ジョーの心情が、散
文詩形式で語られていく。


あとがきによると、伊藤比呂美さんの二人の娘さんが下訳をされたそうだが、
無骨で削ぎ落とされた言葉が、ダイレクトに真っ直ぐに心に迫ってくるのだ。
ビリー・ジョーの孤独も、ひりひりとした痛みも、それでも立ちあがり、少し
ずつ前を向いて生きていこうとする強さも、全てだ。これまで、詩に対して若
干苦手意識があったが、これにはしっかりと心を掴まれた感じ。そして、圧倒
されてしまった。

状況は、あまりにも過酷。けれど、淡々と綴られていくストーリーには暗さを
感じさせない。

なお、あとがきに描かれている“ふてぶてしい顔の少女がこっちをにらめつけ
ている”という、英語版の表紙はこちら。1998年ニューベリー賞受賞作品。


 3月15日(金) 「春風ぞ吹く」 宇江佐真理(新潮社)

amazon2000.12月20日発行・270P・1500円

時代小説。表題作を含め、五編から成る連作短編集。

この作品を読んで思ったのは、私は、時代小説が…というよりも、時代小説
のいわゆる“江戸の人情もの”が好きなんだなということ。市井に生きる人
たちのささやかな暮らしの中で育まれているものだとか、底に流れているあっ
たかさだとか、そういうのに惹かれるんだよね。この連作集は、どれも上手い
し、読ませるが、個人的には「千もの言葉より」が一番好きだった。

さて、物語の主人公・小普請組の五郎太は、先祖のしくじりのために、いまだ
無役のまま。小普請組は職禄がつかず、生活は苦しい。そのため、五郎太は西
両国広小路の水茶屋で代書屋の内職をしながら、御番入りを目指し、学問に
んでいた。そしてもうひとつ、彼にはどうしても御番入りを果たしたいわけ
あった…。


うーむ、いつの世もタイヘンそうだよ、受験勉強。
まじめだが、いまいち自信が持てないでいる五郎太が、学問所や代書屋の内職
を通して、視野も人間関係も広げ、成長していく姿を明るく描いていく。果た
して、うまく学問吟味を突破することができるのか?五郎太の恋の行方はいか
に??

あくじゃれ瓢六」のお袖さんや政江姉さんもそうだったけど、女性がみんな
強〜い。江戸の世から、女は強いわけか(笑)でも、その気風のよさが気持ち
いいんだよね。女性に限らず、登場人物は、だれもが魅力的だよ!

最後、書き急いだところが見えるのが惜しいところだが、読後は爽やか。
心が温まる一冊です。


 3月13日(水) 「本の雑誌風雲録」 目黒孝二(本の雑誌社)

 (現在品切れ)1985.5月20日発行・237P・1030円

先日読んだ椎名誠氏の本の雑誌血風録」がおもしろかったので、図書館で見
つけた、この本も手にとってみる。

同じように、「本の雑誌」の誕生を、目黒氏の視点から語ったものであるが、
こちらは、学生の助っ人と一緒にやってきた、配本部隊についてが主である。
現在は書店に直接本を納品することもなくなったようだが、当時、首都圏内
の書店には直販
体制をとっていたそうだ)

どおーんといこうよ!の椎名氏とは、対照的に、かなり冷静に振り返って描か
れている印象を持った。
だけど、一緒にやってきた学生に対する思いや、仕事
に対する姿勢など、心の内は熱い。仕事をしていく上で大事にしていきたいと
思っていることには、いちいち納得するものがあった。

飲んで、語って、時には喧嘩をし、一緒に「本の雑誌」をつくり、運んでき
た…。学生たちを通して教えられたこともたくさんあるという目黒氏自身も、
いい意味で少しずつ変わっていくところもみえてくる。ラスト胸が熱くなり、
泣けてしまったよ〜。ううっ、私も年かね…。

 

椎名氏の「本の雑誌血風録」と、目黒氏の「本の雑誌風雲録」。どらちも違っ
たおもしろさがあるので、未読の方はぜひ両方とも読んで欲しいな。


 3月11日(月) 「あくじゃれ瓢六」 諸田玲子(文芸春秋)

amazon2001.11月25日発行・299P・1619円

時代小説・連作集。

先月読んだ「お鳥見女房もよかったけど、こちらもおもしろかった!
諸田玲子さんの文章って、読みやすいよね…。

さて、捕り物の助っ人…推理をするのは、牢屋敷にいる囚人の瓢六。
相棒は、瓢六を大牢へ押し込めた男、北町奉行所の同心・弥左衛門。

瓢六に目を止めたのは、左衛門の上役、与力の菅野一之助。おどろくべ
脈、豊富な知識、加えて目利きの勘−“これは使える”。菅野のひと声で、

六は期限付きで牢を出され、事件を解決
する。味をしめた菅野は、手放すのは
惜しい、吟味を引き延ばせと、難事件が起こる
たびに瓢六を娑婆へ戻し、
衛門の助っ人を務めさせるようになる…。

口は達者で色男の瓢六と、真面目で堅物の弥左衛門対照的な二人のコンビ、
やりとりが、クスクスと笑える。はじめは反発し合っていた二人に、第に
情が芽生えていくあたりが読みどころ。

私はどうも、本筋の捕り物と同時に描かれる、
左衛門の恋に肩入れして読ん
でしまった。左衛門は、見合いをすっぽかした詫びにと、出向いた相手方の
父親と大喧嘩。ところが、偶然にも帰り道で当の相手と出会い、ひと目惚れ。
瓢六から恋の手ほどきをしてやると、約束はとりつけたものの、不器用で、
うにも間の悪い、
やもめ男の恋の行方はいかに?
左衛門って、わかりやすいキャラなんだけど、ほらほらしっかり!と、つい
言ってあげたくなるんだよね。
瓢六が唯一、頭の上がらないお袖さんも好き
だったな。


ものごとの真偽、本質を見極める目を持っている
瓢六が、なぜ小悪党に身を落
としたのか??瓢六がみせる謎めいた影の部分も、物語にふくらみをもたせて
いる。


続編もありそうな気がするんだけど…シリーズ化希望します!


 3月8日(金) 「ごめん」 ひこ・田中(偕成社)

amazon1996.1月発行・546P・1800円

小学校6年生のごく普通の男の子。七尾聖一(通称セイ)の、性の目覚めと、
…。

児童文学の中で、思春期にさしかかった男の子の性を、これほど正面から、
ストレートに描いたものがあっただろうか!?という印象。関西弁の語り口
も、カラリとした明るさを打ち出していてよい。

知人から、“男の子だと六年生くらいになると、だんだん
何を考えてるかわ
からなくなることがあるんだよね”という話を聞いたことがあるが、こりゃ
あ、
母親にはわからん部分はあるよなと感じる。やっぱり異性なんだなぁと
つくづく思ってしまったもの。

子どもと大人との狭間。世の中が少し見え、自分の限界もみえてくる時期。
自分の体の変化に戸惑い、ふりまわされているセイ…。そんな心と体がアン
バランスな頃の男の子を、等身大の少年の目線で、素直に描かれているこ
とに好感が持てた。
セイの戸惑いや悩みが、内にこもっていないところがい
んだよね。精神的にも大人になってきてるんだなという部分と、
まだまだか
わいいなぁという子どもの部分が、両方見えて、なんだかとっても愛しく感
じられたのだ。

セイに対して、対等な人間として接しているナオキさんや、祖父母もよかった
な。

作品の中のゲームなどの小道具は
多少古くなっているけれど、メンタルな部
分は、時代が移っても変わらないものだと思う。同じようなことで一人悩ん
でる少年たちへ、そして思春期の男の子を持つお母さんたちにも、ぜひ。
映画化もされるそうよ。


 3月5日(火) 「八 切り裂きジャック」 服部まゆみ(東京創元社)

amazon1996.5月31日発行・510P・3000円

1888年秋、ロンドンを震撼させた連続殺人事件。その残虐な手口から“切り裂
きジャック”と呼ばれた犯人の正体とは?世紀の未解決事件の謎に、服部まゆ
み氏が挑む
!!


物語の中にちりばめられた実在の人物や史実に、フィクションを読んでるよう
なおもしろさが感じられ、まずは掴みはOK〜。

深い霧の下にあるのは、華やかさと妖しさと貧困の混沌とした世界…。まるで
そこに迷い込んでしまったかのような感覚に陥るほど、
19世紀末の帝都ロンド
ンの雰囲気をたっぷりと堪能させてもらった。

前半は淡々と進んでいく印象。途中、これは切り裂きジャックではなく、エレ
ファントマンの話なのかい?と、だれてしまったところもあったかな。けれど
いつしか、語り手である日本人留学生・柏木薫の目と、自分の気持ちとが重な
り合っていく。
一緒になって、そのあまりにも無残な死に心がふさがり、周り
優秀な留学生たちと比較しては焦りを覚え、見えぬ犯人に翻弄されてしまっ
た。

自分にとっての“何か”を見つけられなかった柏木が、ディケンスの小説を読
み、本というものに魅力を感じていく様が好きだったなぁ。

最後に、柏木の友人で探偵役の鷹原惟光のキャラクターは、非常に麗しゅうご
ざいました〜。

  もうすぐ文庫化されます。
   3/23発売予定 角川文庫より 定価予定 1000円(税別) 


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