2002年4月読了
★印は、おすすめ
4/30 発作的座談会 2 いろはかるたの真実(角川書店)
4/30 発作的座談会 椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・目黒孝二(角川文庫)
4/23 まちの図書館でしらべる (柏書房)
4/22 少年と少女のポルカ 藤野千夜(講談社文庫)
4/22 仕事場対談 和田誠と27人のイラストレーター(河出書房新社)
4/16 源内狂恋 諸田玲子(新潮社)
4/12 ローワンと伝説の水晶 エミリー・ロッダ(あすなろ書房)
4/9 青空のルーレット 辻内智貴(筑摩書房)

 4月30日(火) 

発作的座談会椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・目黒孝二(角川文庫)
amazon 1996.10月25日発行・375P・660円

発作的座談会 2 いろはかるたの真実(角川文庫)
amazon 2000.8月25日発行・356P・619円

“美しい昼寝とは何か”“茶わん蒸しはおつゆかおかずか”忘年会と新年会
はどちらがエライか
”“カニとエビはどちらが正しいか”…。

言ってしまえば、どーでもいいことを、真剣に語り合っている座談会。しかも
話はあっちにズレ、こっちに転がり、その行方は話してる本人たちにさえもわ
からない。それぞれの人間性が垣間見られ、互いを知り尽くした関係もうらや
ましく、バカバカしくも、非常に楽しい座談会がここに繰り広げられているの
であります。そう言いながらも、表題の“いろはかるたの真実”や、“正しい
ことわざ講座”、
“間違えやすい言葉”
など、えっ?そうだったのかとために
なるものもちゃんとあるのよ。
(正解よりも、独自の解釈の方がおもしろいけ
ど)
冷静になった目黒氏の注釈付き。

実を言うと、しばらく内臓の調子がすぐれず精密検査を…と言われ、ブルーに
なっていた。身体が弱ると、気持ちまで弱る。そんな弱っていた気持ちをぶっ
飛ばしたのが、パート 2の最後の“一番強いものは何か”。ベルトとうちわと
ローソクによる決勝トーナメント。家族みんなが寝静まった布団の中で読みな
がら、ひとり大爆笑。どこからそんな発想がどんどんわいてくるのか、沢野氏
の頭の中をのぞいてみたい気がする。
(ちなみに検査の結果は良好でした)

弱った時には、「発作的座談会」!!。効き目ありまっせー。
角川文庫さん、パート3も早く文庫化して下さい。


 4月23日(火) 「まちの図書館でしらべる(柏書房)

2002.1月25日発行・220P・2000円

生活の中で起こるさまざまな疑問…。そうだ、図書館に行ってしらべてみよう
と思いつくのだが、実際行ってみると、そのしらべ方というのが、意外によく
わからない。とっかかりがわからずに、膨大な本棚の前で右往左往し、自分の
しらべたいことが書名になっていないと、そんな本はないのかも、載っていな
いのかもと、あきらめることが多い。
<それは私だ〜。

そんな時のレファレンス・サービス…。この本では、まちの図書館でもこんな
ふうに、さまざまな疑問にこたえられるシステムをもっているんですよという
ことを、現役の図書館員が実例をあげてわかりやすく教えてくれる。さらに、
利用者自身が自分の力でしらべたい時のために、図書館員のテクニックが公開
される。


「ツタンカーメンのお墓に入っていた豆をさがしているんですけど」という小
学生の質問や、「“ユーロ 1”とはどんなものでしょう?」という商社マン風
の男性。「サミットのシンボルマークをできるだけ見たい」…などなど、利用
者からの15の質問具体例をあげて、図書館員は、その時どのように対応して、
どんな
資料から情報を探し、
答えを導き出していったのか。そのプロセスが示
されていく。


いやぁー、これが実におもしろいのだ!!あらためて、図書館員って、専門職
だったのねー、プロなのねーと思わせてくれた。


そして、恥ずかしながら、レファレンス・サービスとは、こういうものなのだ
とはじめて“きっちり”知ることができた。(私の場合、いちいち、えっー
そうだったのーと驚いてしまうことが多かった)


自分の館の資料を熟知していること。さらに経験がものをいうところもあるだ
ろうが、彼らの仕事ぶりには敬服せずにいられない。
こうやって、さまざまな
資料を活用しながら、
回答にたどり着いた時にゃ、質問者も図書館員もうれし
いだろうなぁ。


あぁ、こんなプロフェッショナルな図書館員が、近くの図書館にいてくれたら
なぁと、しみじみ思い、
図書館員の一層の人材充実を願わずにはいられない。
いや、でもここはひとまかせではなく、せっかく読んだんだからと活用してみ
たくなる。だってこの本を読んでいると本当に、“しらべものって、おもしろ
そう〜”と感じられるんだもの…。


 4月22日(月) 「少年と少女のポルカ藤野千夜(講談社文庫)

amazon2000.3月1日発行・215P・448円

表題作を含む、二編の中篇作。

芥川賞を受賞した藤野千夜さんのことは、雑誌などで見かけたことはあったが
本を読むのはこれが初めて。正直言って、身構えて読み始めたところもあった
のだが、そんな自分のクダラナイ先入観が一気に吹っ飛ぶほど、好きだった!

主人公は、男子高に通う二人の少年。自分がゲイだと気づいたトシヒコと、
分のことを間違った身体に生まれたと思っているヤマダアキヒコ(ヤマダは

毎日女の格好で通学している)。それぞれの胸のうちを、交互に語る形で物語
は進んでいきます。

現実はこんなふうにいかないことも多いのだろうし、二人にはこの先いろんな
ことがあるんだろうなぁと思わせるんだけど、これを読んでいて、一番気持ち
のいい
ところは、トシヒコもヤマダも、自分が自分であることをちゃんと肯定
できているのね。そこがなんといっても
いいのだ!!(その対極にあるのが、
トシヒコの地元の友達で、ある日突然電車に乗れなくなったミカコであるのだ
が…)

トシヒコは13歳のときに、自分がホモだということでは悩まないと決めた。

という一文があるように、自分が人と違うということでは悩まないと、根
本的なところからして、ふっきれているというか昇華されているから、全体が
軽快で突き抜けた感じがある。


トシヒコの恋の相手は、隣のクラスのリョウ。毎朝同じ電車で通学するリョウ
を、ただ見ているだけで幸せで、ドキドキと胸が高鳴る。その頃の恋する気持
ちとせつなさにも共感できた。

重くもなく、さりとて軽くもない。あっさりしてるんだけど、いろいろ考えさ
せられた作品でもある。

もう一作、予備校生ハルコを主人公にした、デビュー作で海燕新人文学賞を受
賞した「午後の時間割」
は、時折キラリと光る言葉に出会い、はっとさせられ
た。


 4月22日(月) 「仕事場対談 和田誠と27人のイラストレーター
                         
(河出書房新社)

amazon2001.12月30日発行・317P・2000円

この本は、“和田誠さんが、仕事上影響を受けてきたイラストレーターの仕事
場を訪ねて話を聞く”という主旨のもと、24人との対談+ 1つの座談会が収録
されている。
96年〜2000年まで、雑誌「イラストレーション」(玄光社)に連載
されたものをまとめたものなんだそうだ。


私は、絵心が全くなく、芸術的なことはよく分からない(だいだい、この本
を読むまで、デザインの仕事とイラストレーションの仕事をごっちゃに考えて
いたもんなぁ)


土橋としこ/沢野ひとし/安西水丸/南伸坊/田島征三/スズキコージ/
横尾忠則/飯野和好/ささめやゆき/大田垣晴子/たむらしげる/
蓬田やすひろ/山本容子/長新太/峰岸達/

と、疎い私が27人の中で名前を知っていた方たちだけでも、ちょっと心惹かれ
る人選でショ。

私は、雑誌のインタビューや対談番組が好きだ。根本的に人の話を聞くのが好
きなのもあるし、全く知らない分野や、いろんな違った考え方を知るおもしろ
さが感じられるからだ。そんな好奇心が、たっぶりと刺激された一冊。

和田誠さんは、人柄なのか、でしゃばることなく上手に話しを引き出し、いい
聞き手であった。

その中で一番印象に残ったのが、山本容子さん。ものすごく仕事のスタンスが
はっきりしていて、あふれる自信に圧倒された。


 4月16日(火) 「源内狂恋諸田玲子(新潮社)

amazon2002.1月20日発行・315P・1700円

諸田玲子さんの新作の主人公は、平賀源内。私の中で、源内といって思い浮か
ぶのは、日本史で覚えたエレキテルという言葉と、多才な発明おじさんという
イメージ…


さて物語は、才人・平賀源内が人を殺め、小伝馬牢に投獄されるところからは
じまります。なぜ、源内は門弟を殺めるという窮地に追い込まれたのか?自分
はどこで足を踏み外したのか…。


獄中での26日間。生い立ちから、その生涯の回想がはじまる。そして
源内は、
二十年近くも仕えていた下女・野乃の心の内を知るため、しいては自分の心の
奥深くをのぞいてみるため−野乃が源内の内なる声の代弁者と化し、
見栄も作
為もない、
二人の恋物語を綴りはじめる…。


いつかきっと世に出てやる。己の才を世に知らしめてやる。高松藩志度浦の蔵
番の家に生まれた源内は、野心を持ち、郷里を捨て、江戸に上る。才気はあっ
た。家はいつも居候や来客であふれていた。そしていつもそこに、虚勢を張っ
た源内がいた。

どうして自分が志したものを、そんなにも
あっさりとあきらめてしまうんだろ
う。
じっくり腰を据えるということができない男である。
学問を究め、身を立
てるという志があったのに、見栄と功を焦り、次々と新しいものにとびついて
行き詰まり、多大な負債を背負い込む。
それは、現代人にも通じるところが
あって虚しくなるんだけど…
うーむ、反省から学ばぬ男よ。

そして、どうしてそんなに見栄っぱりなんだろうーー!!
おだてられてちやほ
やされながら、自分には叶わぬ夢が同輩の手で実現になっていくのを見る悔し
さよ。
けれど、それを悟られまいと、ことさら陽気にふるまう。人に弱さを見
せられず、胸の中に焦りや苛立ちをためこんでゆく。読んでいて
なんとも息苦
しい思いになってくる。

物語は、一人の男の内面深く潜む、心のうちに踏み込んでいき、その姿を容赦
なく浮き彫りにしていく。

歴史の教科書に太字で書かれている人という、平面的なイメージでしかなかっ
た人物が、肉付けされ膨らみを持ち(たとえそれがイヤなやつでも)そこから
人間臭さが感じられるのが、非常におもしろかった。こういう風に歴史上の人
物のことをとらえられたら、もっと歴史がおもしろくなるのにね。


己を突き放し、女性の目を通して、自らの姿を浮き彫りにしていくという手法
がおもしろい。
牢獄で、やっと本当の自分をみつめ、心情を吐き出すことがで
きるなんて、なんて哀しいことよ。(逆にそれまで考えてこなかったというの
にびっくりだけど)
そんな源内が、あわれで滑稽でさえある。


ただ私は、ここで描かれる平賀源内に、人間としての魅力が感じることができ
ず、読み進むほどに気持ちが醒めていってしまった。下女だからと蔑むのも男
としてサイテーだ
し、どうもこういう形の恋愛って苦手なんだよね。
二人で勝
手にやってろーって感じ。
だんだんと、潔く見限った勢以さん、あなたは正解
だったよと言いたくなる始末。
源内は、本当はものすごく弱い人だったのかも
しれない。いい格好しいだったと思うし。そんな源内の心の内をわかっていた
野乃にさえ、見透かされ、馬鹿にされていると思い込む源内。あーあ、もう重
症だよー。

ラスト、引きずる余韻にひたりながら、いやいやそんなに偉そうなことは言え
ず、人間だれしも心の奥底似たような感情が渦巻きながら、自分を装って生
きている部分があるよなと、
しばし考え込んでしまうのでありました。


 4月12日(金) 「ローワンと伝説の水晶エミリー・ロッダ・作
             さくまゆみこ・訳 佐竹美保・絵
(あすなろ書房)

amazon2002.1月30日発行・247P・1400円

ローワンシリーズ第三弾。

このシリーズって、秘密の詞を解き明かす…という全て同じパターンで進んで
いくのね…。
三作目で気づく私もどうかしているが、またこの形なのか…と、
一瞬思ってしまいました。

ある日、リンの村にマリスからの使者がやってきた。遠いマリスの地で、<水
晶の司>が死を迎えようとしている。
水晶の力を引き継ぐため、先代の司が亡
くなる前に、新しい司を選ばなくてはいけないと…。

マリスの運命を握ってる選任役は、ローワンの母のジラーだった。ジラーがマ
リスへ行かなければならないこと。そして長子である自分もついていかなけれ
ばならないこと。
それがローワンには秘密にされていた家系に伝わる役目だっ

た。


水晶の守り手を選ぶため、水辺の民マリスの村へ向かったローワン。しかし、
選任役は危険な務めでもあった。三つの氏族に分かれているマリスの民は、

分の氏族の候補が勝つためなら、手段を選ばない。
ジラーに毒が盛られ、ロー
ワンにその役目がまわってきた…。

一作目では六人の勇敢な大人たちと、二作目ではジーンと共に、危機に立ち向
かってきたローワンだが、今回は、たった一人で判断し、決断しなければなら
ない状況に陥る。何を信頼していいのか、確かなことは何もない。信用できる
のは自分だけ。
一作目から考えると、ローワンは着実に成長をみせています。

ミステリーっぽいしかけは、大人の私には、先が読めてしまうところもあった
けれど、緊迫感をもって最後まで一気に読ませる力がありました。


 4月9日(火) 「青空のルーレット辻内智貴(筑摩書房)

amazon2001.5月20日発行・214P・1400円

表題作と、太宰治賞を受賞した「多輝子ちゃん」。二編の中篇作。

「青空のルーレット」が好きだったので、ここでは、そのことについて。

それは…音楽、芝居、マンガなど、それぞれの夢を持ちながら、ビルの窓拭き
の仕事をしている“俺たち”の物語。


空中に揺られ、地上の雑踏を見下ろしながら仕事をしている俺たち。窓を拭い
ているのは、メシを喰うため。家賃を払うため。そして、夢を見続けるため。
だからといって、手を抜くわけでも、自分たちを
卑下するわけでもない。
危険
が伴う仕事を通しての、仲間たちの絆と友情を描いていく…。

読み終わった後、なんとも晴れやかな気持ちになった。ちょっと背中を押して
くれるような、人生捨てたもんじゃないよという、生きる喜びが感じられる。
高校生とかに読んで欲しいなぁ。

人として“本当”に大事なことって、実はそんなにないんじゃないだろうか…
と思う。そして、その“本当”に大事なことを、心の真ん中でちゃんとわかっ
ている“俺た
ち”って、かっこいいんだよねー。

“夢を抱くこと”。それを気負うことなく、へんなセンチメンタリズムで書い
ていないところがいい。
決して
いやらしさは、感じさせないもんなぁ。

これは、著者にとっての第一作目。これからも、注目したい作家です。

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