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2002年8月読了
★印は、おすすめ
8/29 エルフギフト(上・下) スーザン・プライス(ポプラ社)
8/26 池袋ウエストゲートパーク 石田衣良(文春文庫)
少年計数機 池袋ウエストゲートパーク 2 石田衣良(文春文庫)
8/22 京都、オトナの修学旅行 山下裕二×赤瀬川原平(淡交社)
8/19 DIVE!! 4-コンクリート・ドラゴン 森絵都(講談社)
8/11 絵本 夢の江戸歌舞伎 服部幸雄・文 一ノ関圭・絵(岩波書店)
シェイクスピアとグローブ座 アリキ(すえもりブックス)
8/10 宇宙のみなしご 森絵都(講談社)
8/7 屋根にのぼって オードリー・コルンビス(白水社)
8/3 転がる香港に苔は生えない 星野博美(情報センター出版局)

 8月29日(木) 「エルフギフト(上・下)スーザン・プライス
                        金原瑞人・訳(ポプラ社)


〔上巻・復讐のちかい〕amazon2002.7月発行・301P・1500円
〔下巻・裏切りの剣〕 amazon2002.7月発行・390P・1600円

はるか昔、南イングランドのサクソン人の国で、国王が死の時を迎えていた。
王は、自分とエルフとの間に生まれた息子・エルフギフトを後継ぎに…と言い
残して、息絶える。

それが波乱の幕開けだった。エルフギフトは、その存在さえ許せないと怒る異
母兄らに、命を狙われることになる…。


読みながら、日本人の感覚として、ここで情けかけちゃうよなぁとか、ここで
情にほだされるなぁと思いつつ…。驚くのが、その情け容赦のなさと、選択の
厳しさだ。なんて壮絶な物語…。宗教が絡んでくると、宗教をもたない自分の
理解を超えてしまうところがあるもんなぁ。


冷酷さに、恐れとある種の嫌悪を感じながら読み進む。残虐さにたじろぎ、一
方で揺さぶられていく。

超然としたエルフギフトは、正直言って自分の中で、つかみきれない存在でも
ありました。

血生臭いけれど、どこか乾いていて、ファンタジーというより、むしろ神話を
読んだような印象を残しました。


 8月26日(月)

 「
池袋ウエストゲートパーク石田衣良(文春文庫)
amazon2001.7月10日発行・367P・514円

 「少年計数機 池袋ウエストゲートパーク 2石田衣良(文春文庫)
amazon2002.5月発行・352P・514円

石田衣良のデビュー作にあたる「池袋ウエストゲートパーク」。図書館から借
りてきた本がふと尽きて、長いこと積読にしていたこの本に手を伸ばす。読み
始めて…あらやだ、おもしろいじゃないの〜!なんでもっと早く読まなかった
のか悔やんだわ!!(ちなみにドラマ化されたものは見てません)

舞台は、その題名通り、池袋西口公園。主人公は、家業の果物屋の手伝いをし
ながら、街で起きる揉め事を処理していく−トラブル・シューター、真島誠。

なんといっても、クールで頭のきれるマコトが、カッコいい!どこにも所属せ
ず、それでいて誰もが一目置くような存在感と信頼感を持っている。マコトな
りの収まりのつけ方というのもよかったな。

突き放すような短い文章と、パッパッと切り替わっていく場面展開で、軽快に
読ませていく。切なかったり、やりきれなさを残したりするのもあるんだけど
全体としては爽快な連作短編集に仕上がっています。

続編の「少年計数機」も、どちらもおすすめ。


 8月22日(木) 「京都、オトナの修学旅行山下裕二×赤瀬川原平(淡交社)

amazon2001.3月22日発行・223P・1600円

学生帽に、学生服。カメラをぶら下げて、ちょっと嬉しそうに立っているオッ
チャン二人(失礼!)。この表紙から漂う、おもしろそうな予感に誘われて、
手にとってみました…。

“京都の魅力はオトナになってこそわかる”。子どもの時の修学旅行は、ただ
お寺や仏像の前をぞろぞろ歩いていただけ(その通り!)京都修学旅行は、
ものに対する感覚的な経験を持つようになる、オトナになってからがおすすめ
である…。


…ということで、日本美術史を教える大学教授の山下裕二氏と赤瀬川さんが、
修学旅行の定番になっている京都の観光名所を歩いて、そのおもしろさをあら
ためて発見しよう!という主旨の本。金閣、二条城、清水寺、京都御所、桂離
宮、平等院、銀閣、嵐山…と、訪ね歩く二人の対談集です。これが、“そうな
んだ、なるほど”の連続で、美術に疎い私でも非常におもしろく読めました。
(未読ですが、「日本美術応援団/日経BP社」の第二弾に当たるそうです)

オトナの修学旅行のポイントは、経験と感性と知識。職業「知らないこと」の
赤瀬川さんと、「知ってること」が職業の山下さんのコンビぶりが絶妙!知識
をもって見ることとと、自分の感性で見ること。両方のバランスが非常にいい
二人から、“ものの見方”のコツを学んだような気がしました。

もちろん路上観察学会の赤瀬川さんですから、ヘンな(?)写真を撮るのも忘
れない。“正面の建物は「金閣」です。金閣寺ではありません”という大きな
看板の写真に、長い間、金閣寺・銀閣寺だと思い込んでいた自分の間違いに気
がつきました〜。

建築物が建てられた時代や、仏像や襖絵が描かれた背景…。山下氏のわかりや
すい解説を聞きながら、歴史を知ってものを見ると、ホントにおもしろいんだ
なとしみじみ思ったね。ふだんめったに入れないところも見せてもらっていた
りして、読んでるこちらも贅沢な気分になったなぁ。

京都旅行のお供にぜひ!…ということで、現在、この秋に修学旅行の引率で京
都に行く予定の夫が読んでます。


 8月19日(月) 「DIVE!!4-コンクリート・ドラゴン森絵都(講談社)

amazon2002.8月8日発行・234P・950円

待望の「DIVE!!」シリーズ、完結編。

いよいよ、オリンピックがかかった大事な試合が始まった…。オリンピック代
表の行方はいかに!?


爽快さと高揚した気持ちで、読み終えることができました〜。

これまでの巻は、知季、飛沫、要一と、主役が交代しましたが、今回は、三人
それぞれの心の内と、コーチの麻木夏陽子、予選を通過したレイジ、観客席で
応援しているサッチン、知季の弟・ヒロ、飛沫の恋人・恭子、ヘッドコーチで
要一の父親でもある敬介…と、共に代表選考会の場にいる人たちの気持ちをす
くいあげ、それぞれのドラマをも盛りこんでいきます。

刻々と変わる順位…。前作まで読んできて、知季、飛沫、要一の三人には思い
入れがあるし、誰が勝っても異論はないけれど、いったいどーなるのよ〜〜と
最後までドキドキでした〜。

三人とも行かせてあげたい!などと思っていた自分の甘い気持ちを、ひとつ超
えたところで、飛びこみに向き合っていた三人の姿が、一番印象に残った。読
みながら、誰も彼も愛しい気持ちになって何度も胸がいっぱいになりました。

このシリーズは、巻を重ねるごとに、おもしろくなっていきます。未読の方に
は、ぜひぜひオススメしたい!


 8月11日(日) 「絵本 夢の江戸歌舞伎服部幸雄・文 
                         一ノ関圭・絵(岩波書店)


amazon2001.4月24日発行・56P・2600円

素晴らし〜〜い!久々にマークふたつ付けたい!!という本に巡り合う…。

先月読んだ松井今朝子さんの「非道、行ずべからず」の舞台にもなっている、
江戸の中村座という芝居小屋が、絵本という形で見事に再現されています。

「非道、行ずべからず」の中でも、歌舞伎の舞台裏や裏方さんの様子が垣間み
られたけれど、それが緻密に描かれた絵として見ることができます。

この本が出来上がるまで、なんと 8年という歳月がかかっているとか!芝居小
屋の構造、大掛かりな仕掛け…。できるだけ史実に忠実であることを基本に置
いたようで、取材を重ね、文献や資料をあたり、綿密な考証のもとに、それだ
けの歳月をかけて作り上げたものなんだそうです。徹底して細部にこだわった
というのがよーくわかります。さまざまなアングルから、江戸の歌舞伎に迫っ
ていきます…。

「画面の中に、観客、役者、裏方あわせて千人描いて下さい」というのが、服
部氏から一ノ関さんへの最初の注文だったそうですが、とにかく画面を埋め尽
くす人、人、人…。その誰もが表情豊かで、着物の柄が一つとして同じものが
ないとか!本を開くたびに、新しい発見がありそう…。

そして、その熱気、華やかさたるや、すごいエネルギー!!ひとつの芝居を裏
方も、観客も一緒に共有しているという一体感。江戸時代、芝居がどんなに楽
しみにされていたか、どんなに愛されていたかが伝わってきます。江戸の芝居
小屋にタイムスリップして一緒に体験しているような、臨場感がありました。
客席の上に架かる橋。
宙乗りの立ち回り。もう、どの場面をとっても素晴らしいのよ!絶賛!!

案内役として設定してある見習の千松という少年が、“ウォーリーをさがせ”
のように、どの場面にも登場したり、わんさかいる観客の中に、当時の有名人
が描かれていたりして(…って、私は小林一茶しかわかんなかったけど)遊び
の要素もたっぷり。いろんな角度から楽しむことができると思います。

巻末に、服部氏による、それぞれの絵についての詳しい解説がされています。
一枚一枚の絵の細部についての丁寧な解説を読みながら、もう一度、じっくり
と見直すことができるという、二度楽しめる(いや、何度もでもだけど)作品
になっています。

2600円という価格も納得な大作でありました…。

KABUKI TODAY 著者に聞く(服部幸雄氏・一ノ関圭氏)へのインタビューは、こちらから

     

シェイクスピアを盗め!」や「影の王」に登場する、グローブ座という芝居
小屋が舞台になった絵本がこちら。

シェイクスピアとグローブ座アリキ・文と絵 小田島雄志・訳
                          (すえもりブックス)

amazon2000.7月25日発行・48P・2200円

16世紀に生きたシェイクスピアと、当時のイギリスの演劇事情…。その後、20
世紀になって、サム・ワナメイカーという人物が、力を尽くしたグローブ座の
再建…が、絵本という形の中で説明されていきます。


どのページにも小さくですが、芝居の中の台詞が書かれています。大道具、小
道具、さまざまな仕掛けで“見せる”江戸歌舞伎に対して、ジェイクスピアの
劇の中では、“言葉”というものが、どんなに大切な役割を果たしていたかと
いうことが、よくわかった気がしました。

400年前のロンドン橋−橋自体が、ひとつの都市だったということに驚き、 子
どもの頃、遊びの中で「ロンドン橋落ちた〜、落ちた〜♪」と歌っていたのが
ホントにあったことなんだと、この年になって初めて知ったよ。20世紀になっ
て、グローブ座再建のために、建設用地を掘っていたら、昔のローズ座の土台
がでてきたエピソードや、復元されたグローブ座の建築方法などを興味深く読
みました。

「シェイクスピアを盗め!」や「影の王」を読む前に、基礎知識として、この
絵本を読んでおくと、物語がより楽しめると思うよ!!


 8月10日(土) 「宇宙のみなしご森絵都(講談社)

amazon1994.11月10日発行・206P・1300円

“屋根にのぼる”で思い出すのが、森絵都さんのこの本。屋根という場所は、
日常とは違うなにかを象徴しているのかもしれないね…。

こちらの語り手は、14歳の陽子。ひとつ年下の弟・リンと、非常に仲がいい。
両親の仕事が忙しくて、ほとんどふたりきりで過ごす姉弟が考えついたのが、
真夜中、よその家の屋根に登るというスリリングな遊び…。


どこか醒めた目をもつ陽子と、はれやかな印象を残すリン。タイプは違うけれ
ど、それぞれの中に自分のものさしを持っている姉弟。その二人の側からみた
いじめを描いていく。仕事が忙しくて、ほとんど家にいない両親の存在は希薄
だが、彼らの周りには、母親の親友のさおりさんと、元担任のすみれちゃんと
いう魅力的な大人が存在する。

自分自身や他人と、どう折り合いをつけていいか戸惑う子どもたちに。

“頭と体の使い方しだいで、この世界はどんなに明るいものにもさみしいもの
にもなる”のだと。そして、一番しんどいことは自分で乗りきらなくてはいけ
ないけど、だからこそ時々手をつなぐ友だちが必要なんだ”と。

そう語られる言葉が、生き辛い思いを抱えている子どもたちの胸にストレート
に届いて、力づけてくれるのではないだろうか…。


 8月7日(水) 「屋根にのぼってオードリー・コルンビス
                          代田亜香子・訳(白水社)


amazon2001.7月20日発行・203P・1600円

ママのお姉さん・パティおばさんの家に預けられて三週間。もうパティおばさ
んには、うんざり。あたし…ウィラ・ジョーは、夜明け前にパティおばさんの
家の屋根に登った。“小さい妹”も一緒だ。近所の目。下から怒鳴るパティお
ばさん…。

物語は、語り手である12歳の少女・ウィラが、小さな妹と屋根の上にのぼった
きり、おりてこなくなる場面から始まります。自分でも、なぜ屋根にのぼって
きたか理由がわからない。だけど、どうしてもおりたくない。それまで何が起
きたのか?ウィラの回想が始まり、その胸のうちを語っていきます…。

主人公のウィラの語り口がいいねー。これが作品全体に明るい印象をもたらし
ている。

ベイビー(一番下の妹)が死んだ時から、ひとこともしゃべらなくなった小さ
い妹。おばさんへの反発…。勝ち気で正直で、冷静な目と聡明さを持ち、小さ
い妹を守ろうとするけなげさがある。そんなウィラの気持ちが丁寧に描かれて
いきます。

ラスト泣けてしょうがなかったよ…。初めはなじめなかったパティおばさんま
で、その誰もがいとおしく感じられてくる。読後感良し!

2000年度ニューベリー賞オナー受賞作品。


 8月3日(土) 「転がる香港に苔は生えない星野博美(情報センター出版局)

amazon2000.4月19日発行・582P・1900円

これ、いいっー!「銭湯の女神」が気に入って、注目した星野博美さん。読み
たいと思っていたこの本を図書館で見つけ、分厚さに一瞬ひるんだが、読みだ
すと、おもしろくて一気読み!「銭湯の女神」もよかったけれど、もっと好き
だったなぁ…。

 “香港では誰でも、一冊本が書けるくらい物語をもっている”

さまざまな背景を持つ人間が集まる場所・香港で、1997年7月1日の中国返還を
はさんだ 2年間を過ごした星野さんの長編ノンフィクション。

自分の足を使って、自分の目で見て、自分の耳で聞いたこと…。下町の古いア
パートに住み、星野さん自身の肌で感じた香港がここにある。そこに暮らす、
さまざまな人たちの生きざまを丁寧に綴っていくことによって、香港という街
が浮き彫りにされていく。それは、テレビや女性雑誌などで取り上げられる観
光地・香港とは、全く別な顔だ。

これを読んであらためて感じさせられたのが、香港って、植民地だったんだよ
な…という実感と、その街の文化や国民性は、その街がもつ歴史と深い関わり
をもつんだなということ。

香港のプラスの面とマイナスの面の両方を見据えた冷静な目。まるでドキュメ
ント番組をみているかのようだ。けれどその中に、彼女の香港に対する熱い思
いが、ぎっちりと詰まっている。

香港で生きるということは、決して楽なことではないようだが、そこで暮らす
人たちのエネルギーとバイタリティに圧倒される。とにかく密度の濃い暮らし
を送っている気がした。それと比べると、日本人は薄味って気がしたもんね。
常に変化していく香港というフィルターを通して、日本人としてのわが身をも
考えさせられていく。

こんな風に多様な生きざまを目の当たりして、人と人との距離感が近しい中で
暮らした 2年間の後の「銭湯の女神」なんだ…と、しみじみ…。

第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。

星野博美さん、橋口譲二さんのオフィシャルサイト(ミトローパ)


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