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2002年10月読了
★印は、おすすめ
10/30 黒い兄弟(上・下) リザ・テツナー(あすなろ書房)
10/29 シェフィールドを発つ日 バーリー・ドハーティ(福武書店)
10/24 ニュースの職人 鳥越俊太郎(PHP新書)
10/9 うつくしい子ども 石田衣良(文藝春秋)
10/8 おばあちゃんはハーレーにのって ニーナ・ボーデン(偕成社)
10/5 十八の夏 光原百合(双葉社)
10/2 誕生日の子どもたち トルーマン・カポーティ(文藝春秋)
【今月の気になった絵本】
10/10 のはらひめ なかがわちひろ(徳間書店) 
10/3 アフリカの音 沢田としき(講談社)
10/1 ウラパン・オコサ 谷川晃一(童心社)

 10月30日(水)黒い兄弟(上・下)リザ・テツナー
                       酒寄進一・訳(あすなろ書房)

(上巻)amazon2002.9月30日発行・359P・1800円
(下巻)amazon2002.9月30日発行・407P・1800円

シェフィールドを発つ日」と同様、福武書店(ベネッセ)の BEST CHOICEシ
リーズの中の一冊として、1988年に刊行→絶版となっていたが(福武書店で文
庫化もされていたよう)、この秋、あすなろ書房から復刊の運びとなった。

1838年、スイスの山奥ソノーニョ村。貧しい農家に生まれたジョルジョは、イ
タリア・ミラノの煙突掃除夫に売られることになる。それが、過酷な生活の始
まりだった…。


この作品がスイスで出版されたのは、1941年。フジテレビ系列の世界名作劇場
「ロミオの青い空」の原作なんだそうだが、アニメの方は全く見ていません。

読み始め、13歳の男の子にしては幼い気がしたし、そのいい子ぶりに物足りな
さも感じていた。が!途中で、はたと気がついた。これは、“世界名作劇場”
として読めばいいんだ!!そう思ったら、後半に向けて、どんどんおもしろく
なっていく。

親方のおかみと息子のアンゼルモから受ける、ひどい仕打ち。心の支えになっ
てくれる病弱な女の子・アンジェレッタの存在。同じ境遇の掃除夫仲間で結成
した秘密結社<黒い兄弟>。敵対する街の不良グループ。病に倒れた親友アル
フレドが抱えていた秘密と、彼との約束。手を差し伸べてくれる人物の登場。
何度も捕まりそうになりながらの逃避行。

辛い境遇にもくじけない強さと真っ直ぐな心。仲間たちの友情。現状を打破す
る勇気。あぁ、これこそ、まさに世界名作劇場の王道ではないですかぁ〜〜!
…ということで、子どもの時にこそ出会って欲しいなぁと思った本。どんなに
辛い目にあっても、最後に幸せになるという物語は、やっぱりいつの時代でも
子どもたちを励ますと思うし。

上下巻どちらもかなりのボリュームですが、比較的字も大きいし、ストーリー
展開も飽きさせないので、長さは苦にならないと思う(たぶん)。高学年くら
いから薦められるかな。

カバーイラストのみ、佐竹美保さん。(中の挿絵は違います)


 10月29日(火)シェフィールドを発つ日バーリー・ドハーティ・作
                          中川千尋・訳(福武書店)

amazon(現在在庫切れ)1990.6月15日発行・248P・1300円

ジェスが、一年間のフランス留学に出発する前夜。家族みんなが集まって、お
祝いのパーティが開かれた。そして、集まった家族たちは、いつしか、若き日
のことを語り出す。

カトリック教徒とプロテスタントだった祖父母の恋物語。娘時代は研磨工だっ
たおばあちゃんのロマンス。父の失恋…。やがて、新しい一歩を踏み出すこと
に不安を覚えていたジェスも、自らを顧みることになる。生まれつき病気を抱
えていた兄・ダニイの死、出発を前に喧嘩をした恋人スティーヴのこと…。

この本を読みながら、二つの映画を思い出した。一つは、同じイギリスの街、
シェフィールドを舞台にした「フル・モンティ」。シェフィールドは、かつて
鉄鋼業でにぎわっていたが、不況による失業率が高く、この作品の中でも、活
気を失った街の状況が、時代とともに住民たちに影を落としていく様子がみえ
てくる。

もう一つ、ストーリー的に思い出されたのが、「キルトに綴る愛」。こちらは
七人の老婦人たちが、結婚を控えた若い女性に、それぞれの若き日々の物語を
語り、その思い出をキルトに織り込んでいくという話だった(はず!?)。

そのせいか、とても映像的だなと思っていたら、カバーの著者紹介によると、
作者であるドハーティは、ドラマの脚本も手がけていて、この作品もラジオド
ラマとして世に出されたものらしい。

家族一同が集まった場で、胸に秘めていた若き日の思い出話をするっていうの
は、日本人だと照れが入ったりして(特に恋愛が絡むとね)、あまりないこと
かも。でも、じんわりと心に染みるいい話です。(これは、子どもより大人の
方が染み入る度合いが大きいような気がする)

どんな人生にも、ドラマがあるし、祖父母の命は、父母に、そしてジェフを含
める子どもたちにつながっていく…。格好悪くても、不器用でも、身近な人た
ちが話してくれた思い出や家族の歴史が、ジェスの力となり、やがて自ら“蛇
は皮を脱いだ”と自覚し、旅立っていく姿が清々しい。

余談ですが、図書館から借りてきたこの本の中から、はらりと落ちてきたのが
前に読んだ方が書いたと思われる、ブラドリイ家相関図のメモ書き。えーと、
父方のおばあちゃんの名前がドロシイで、あれっ?ブリディって、誰だったっ
け…などと、わかりにくいところがあったので、ずいぶん助かりました。あり
がたや、ありがたや…。メモは、このまま本に挿めて返します。

1988年のカーネギー賞受賞作品。
いまはなき福武書店(ベネッセ)のBEST CHOICEシリーズの中の一冊です。


 10月24日(木)ニュースの職人鳥越俊太郎(PHP新書)

amazon2001.10月29日発行・217P・660円

著者は、毎日新聞記者→サンデー毎日編集長を経て、現在、テレビキャスター
として、活躍されている鳥越俊太郎さん。

メディアを通して、情報を伝えるという作業の中での心構え。真実に忠実であ
ろうとする信念。自らが誤報に関わったことに気がついた時の対処の仕方…。
常に「ニュースとはなにか」という思いを抱き、現場に立つことにこだわり、
現場に向かい続ける日々をふりかえる…。

実を言うと、先月終了した、13年続いたという「ザ・スクープ」という番組も
現在出演中の朝のワイドショーも見たことがなく、具体的にどんな仕事をされ
てきたのか知らずにいたので、非常におもしろく読んだ。

鳥越氏のニュースに対する姿勢が、よーく見えてくる。ああ、こういう人がい
る限り、日本も捨てたもんじゃないなと思ったのだが、一番感じたのは、発信
者ばかりではなく、受け手側である私たちこそが、本当にそうなのかと、立ち
止まって考えなくてはいけないし、受け手側にこそ、きちんとものごとを見極
める力が、必要とされてる時代なんじゃないかと…。そこのところが、逆に痛
切に感じられたである。

  <鳥越氏が毎日の新聞から選んだ記事を解説している「あのくさ こればい!」>
               ほぼ日刊イトイ新聞で、連載中!


 10月9日(水)うつくしい子ども石田衣良(文藝春秋)

amazon1999.5月10日発行・272P・1524円

いまさらながら…だが、文庫化もされたことだし…と、図書館で借りてきた。
読み始めると、気になって、最後まで読まずには眠れない!結局 夜中3時まで
読んでしまい、ねむいっす。

ニュータウンで起きた女児殺人事件。その犯人は、ひとつ年下の弟だった…。
弟がなぜあんなことをやったのか?その理由を探すために、14歳の兄が動き始
めた…。


これは、どうしても神戸のあの事件を思い出してしまう。重い題材だけど、
池袋ウエストゲートパーク」で感じた、テンポのよさは健在。

物語は、“ジャガ”というあだなをもつ加害者の兄と 入社3年目の新聞記者の
二人の視点からみた事件の周辺を、交互に語る形で進んでいく。

ラスト、そ、それでいんですか??と思うところがあるし、ジャガが施設に面
会に行った時の、弟のことばが苦く残る。

激しい嫌がらせが続く中、常に前向きに行動するジャガ。自分だったら、受け
とめるだけでも精一杯だろう。現実にはかなり難しいことだと感じたが、何事
にもまっすぐ向き合おうとする兄の姿に、励まされる思いがあった。物語の中
でも、逃げているのは、大人ばかりじゃないかと…。

明確な答えのでないものだからこそ、ジャガとその仲間の同級生たちが、自ら
立ち向かっていく姿は、大きな救いになったような気がした。


 10月8日(火)おばあちゃんはハーレーにのってニーナ・ボーデン
                  こだまともこ・訳(偕成社)

amazon2002.6月発行・294P・1400円

主人公のキャットは、11歳。舞台俳優で、地方をまわることの多い両親とわか
れ、プタと呼んでいるおばあちゃんとふたり暮らしをしている。

ある日、両親がキャットをひきとって、また一緒に暮らしたいと言い出した。

しかし、キャットは、このままおばあゃんと暮らしたい。誕生日も忘れられて
いた。クリスマスに送ってきたセーターは、 2サイズも小さかった。両親の都
合のいい時にしか存在しない自分…。そんな両親とは暮らせない。

学校でのいじめ問題、プタが精神科医を引退した後も、家に患者がやってくる
という家庭環境も好ましくないと、全てが不利な状況にされそうだ。キャット
は、親友であるロージと、弁護士に相談に行くことにする…。


先日読んだ「誕生日の子どもたち」の中の一編、「あるクリスマス」の主人公
である“ぼく”と、オーバーラップしたね〜。その作者であるトルーマン・カ
ポーティの、“両親が彼を可愛がるのは、自分たちが可愛がりたいときだけに
限られていた”という少年時代と、リンクするような感じでした。

子どもも老人も、社会的にみれば、いわゆる弱者という立場。優れた精神医で
大学で講師をしているプタでさえ、年寄りに子どもの世話はできないと言われ
てしまう。

あたりまえなことなんだけど、子どもにだって、言い分はある。“自分が一緒
にいて幸せと感じる人と暮らしたい”。“おばあちゃんが、あたしのほんとう
の家族なんです”。

けれど、そんな子どもの意思は届かない。「実の親だから」と、両親と一緒に
暮らすことが一番の幸せと、決め付けられることに反発するキャット。

“本人にとって”なにが必要なのか…。ものごとの本質をみていない大人たち
に対しての怒りや、もどかしい思いがよく描かれていた。も〜、この子どもっ
ぽい母親はなんなのよーと、腹立たしい思いで読んだねー。(あっ、でも作品
全体のトーンは、明るいのよ)

そんな中で、キャットが、自ら突破口を開き、解決に結びつけていくという姿
が、子どもたちに先に進む力というものを与えてくれるのでは…と思ったな。


 10月5日(土)十八の夏光原百合(双葉社)

amazon2002.8月30日発行・269P・1600円

日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作である表題作を含めて、四作からなる
短編集。

最後の「イノセント・デイズ」をのぞいて、ミスリテー色は、かなり薄め。四
編とも花をモチーフにした連作となっていますが、物語自体に繋がりはなく、
それぞれ独立したものになっています。私は、花についての印象よりも、どれ
も広い意味で、ラブ・ストーリーであり、いろんな形の家族を描いたものとい
う共通点の方が、心に残りました。

どの物語にも、作者の温かい眼差しがを感じることができるし、どの物語も、
未来の可能性を開き、人生って捨てたもんじゃないよと、思わせてくれる。

個人的に、一番好きだったのが「ささやかな奇跡」。私は、光原さんが作り出
す、こういう包みこむような空気が好きなんだと、自分の中で再認識。まさに
光原ワールドの真髄!

そして、これまでとはちょっと違う、重い雰囲気の作品だった「イノセント・
デイズ」。これによって、またひとつ新境地が開けたのかなという印象を受け
ました。今後の光原作品からも、目が離せないぞ!


 10月2日(水)誕生日の子どもたちトルーマン・カポーティ
                    村上春樹・訳(文藝春秋)

amazon2002.5月15日発行・251P・1619円

この本は、村上春樹さんの翻訳…というところに、大きな意義があるように思
う…。


以前、山本容子さんの挿絵で出版された三篇(「クリスマスの思い出」、「
るクリスマス
」、「おじいさんの思い出」)を大幅に改稿し、十年前に雑誌に
発表した「無頭の鷹」に手を入れ、新しく訳した二編を加えた…という六編か
ら成る短編集。

個人的には、好き嫌いがあって、作者自身の少年時代が投影されているという
自伝的要素の強い作品(「感謝祭の客」、「クリスマスの思い出」、「あるク
リスマス」、「おじいさんの思い出」)の四編が好みだったので、その話だけ
ね。(作者のカポーティがどのような少年時代を送ったのかという話は、訳者
あとがきに詳しい)

読み終わった後、ため息がでるほどどれも切ない…。彼にとって幸せな日々が
大人たちによって、ある日突然、断ち切られてしまうという話が多いのだが、
その中でも、11月になると「フルーツケーキの季節が来たよ!」と、スックと
ともに、クリスマスに向けての準備を始める「クリスマスの思い出」がよかっ
たなぁ〜。たまらんよ。
スックとの互いの傷を舐め合うような親密度と、その
後の少年の喪失感、悲しみに触れて、胸が痛い…。祖母といってもいいくらい
年の離れたいとこ“ミス・スック”に対する思い入れが、強く伝わってきた。

小さなポートレート(カポーティ自身だと知って、びっくり。実は最初、写っ
ているのは女性だと思い込んでいた)を配した装丁も美しい。


 【今月の気になった絵本】

 10月10日(木)のはらひめ−おひめさま城のひみつ
                      なかがわちひろ(徳間書店)

amazon1995.5月31日発行・32P・1400円

翻訳者としても活躍されている中川千尋さん。彼女は、創作絵本を何冊か出版
されていますが、95年に出された、この「のはらひめ」が、初めての作品とな
るようです。

おひめさまになりたい、なりたい!と思っていた“まり”のところに、ある日
「おひめさま城」
から、おむかえの馬車がやってきます。さっそく、まりのお
ひめさま修行がはじまりますが、おひめさまになるのは、そんなに簡単なこと

ではありません。窮屈なマナーと、幅広い知識を身につけること。ものを見る
目も養
わなくちゃいけなくし、強さも備えてなくちゃいけない。大変なお勉強
を見事に修了
し、どんなおひめさまにもなれますよと言われた時、まりが選ん
だおひめさ
まとは??


ユーモラスで、かわいらしいお話。
なかがわさんの描く女の子は、愛嬌があっ
て好きなんだよね。
ラスト、まりが選んだひめが、愉快爽快!そしてなんとも
素敵なのだ〜!全て、ここにつきますね。
女の子にはたまらない一冊となりそ
う。


     


 10月3日(木)アフリカの音沢田としき(講談社)


amazon1996.3月10日発行・35P・1500円

先月紹介した「AはアフリカのA」と、ぜひ一緒に読みたい
のが、この絵本。これ、いいよ〜(今度は、アフリカづい
てるのか??)

かわいた風にのり どこからか タイコの音がきこえてくる

ここで描かれているのは、西アフリカのセネガル、ギニア、マリを中心とした
地域で演奏されている、ジンベ(ジャンベ)という太鼓。


アフリカの大地に響き渡る、タイコの音。

生活に密着に結びついているタイコのことばが伝えること。収穫の喜びと感謝
の日、
タイコのことばが、
もたらすエネルギー…。

ここでは直接描かれていないけれど、きっと悲しみの場面でも、ジンベの音は
人々と共にあるのだろうと感じられました。

ヤギは死んで 皮をのこし 音になって また生きる

さまざまな役割を果たしているジンベは、めぐりめぐる命の連なりのひとつで
もあります。

どこか
、生きることの原点を見せられた感じのする一冊です。



     


 10月1日(火)ウラパン・オコサ谷川晃一(童心社)

amazon1999.2月20日発行・32P・1300円

1は“ウラパン”、2は“オコサ”で数えていくという、かず遊びの絵本。数が
増えたら、オコサを先に数えて、残りはウラパンにするというルールがあるの
で、しまうまが3頭で、“オコサ・ウラパン”。ぞうが4頭だと、“オコサ・オ
コサ”と数えていくことになります…。

先月、読み聞かせに入った 4年生のクラスで、友人が読んだのを見てたのです
が、みんなのみこみ早い〜。(ワタシは、混乱したよ〜)みんなで声を出しな
がら、楽しく遊べます。

きっちりと全部のページを読まなくても、みんなが上手に言えるようだったら
途中を抜かして、数の多い場面を見せるとか、読み終わった後、「じゃあ、み
んなの手は?」。「じゃあ、赤い服を着てる人は?」と、身近にあるものを数
えてみたりもできますねー。おもしろかったよ〜。

この本は、2000年の課題図書に選ばれていたようですが、これを読んで、一体
どんな感想を書けというのでしょう??こういう本は、難しいこと考えずに、
みんなでワイワイと盛り上がれば、それでいいと思うんだけどなー。


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