| 2003年1月読了 | ||
| 1/22 | 見習い物語(上・下) レオン・ガーフィールド(岩波少年文庫)★ | |
| 1/14 | 楽園のつくりかた 笹生陽子(講談社) | |
| 1/11 | 世界がステージ! 岩波書店編集部編(岩波ジュニア新書)★ | |
| 1/7 | 蛇行する川のほとり.1 恩田陸(中央公論新社) | |
| 【今月の気になった絵本】 | ||
| 1/28 | みしのたくかにと 松岡享子・作(こぐま社) | |
| 1月22日(水)「見習い物語(上・下)」レオン・ガーフィールド・作 斉藤健一・訳(岩波少年文庫) 〔上巻〕 〔下巻〕 福武書店の BEST CHOICEシリーズの中の一冊として、1992年に刊行→その後、 絶版となっていましたが、昨年秋に、岩波少年文庫として出版されました。 舞台は、18世紀半ばのロンドンの下町。さまざまな職業の見習いにつく若者た ちを主人公にした12の物語(連作短編集)。 一篇ごとに主人公(語り手)が変わり、点灯夫、産婆、質屋、葬儀屋、靴屋、 時計屋、印刷屋…と、見習いたちの職業も、物語の雰囲気もがらりと変わるの に、作品全体の統一感は、しっかりとある。そのどれもが味があるんだなぁ。 中学生くらいから読めると思うけど、年齢を重ねた大人の方が、その味わいが より深く感じられるかもしれません。 当時の徒弟制度は、親方のもとで見習いとして働く期間は七年と決まっていた そうです。住み込みで、こづかい程度の給料。無事七年が過ぎて職人になれて も、自分の店を持てるのはごくわずか…と、辛い目にあった見習いも多かった ようですし、怠けるし、盗みはするしと、見習いたちの評判も決してよいもの ではなかったようですが、この物語は、そこの部分をクローズアップしたもの ではありません。 むしろどの短篇も、見習いたちの日常の中に、ふと魔法の粉がふりかかったよ うな…そんなファンタジックな物語に仕上がっています。そしてまた、そのふ りかかるさじ加減が絶妙なんだなぁ。 それぞれの物語に、前に登場した人物や事件のことが、ちらりと姿を見せたり と、ちょっとずつリンクしているところも、読者心をくすぐられました。 ただひとつ残念だったのは、岩波少年文庫になったことで、挿絵が変わってし まったこと。できれば BEST CHOICEと同じ、中釜浩一郎氏の挿絵で読みたかっ たなぁ…。 |
| 1月14日(火)「楽園のつくりかた」笹生陽子(講談社) 語り手の“ぼく”…星野優は、おかあさんから、突然引越しすることを告げら れる。行き先は、おとうさんが生まれ育った故郷の家。私立中学二年生のぼく の希望は、エリートコースをまっしぐらにつき進むこと。中学受験突破組から 中高一貫教育をへて、一流名門大学へ進み、一部上場企業に就職。家庭の事情 ごときで、輝く未来を台なしにされちゃたまらない。 けれど、ぼくの意見は、もののみごとに無視されて、落ち着いた先は、住所に “字”がつく、すっげード田舎。村立でさらに分校の中学のクラスメート三人 は、超個性的。ぼくの唯一のなぐさめは、シンガポールに単身赴任をしている おとうさんとのメール交換だった…。 二時間あれば、読めるかなというくらいの薄さ。読み始めると最後まで一気に 読ませる力がありました。とても読みやすい文章で、テレビドラマっぽいとい うのか、映像的だね。作者の笹生陽子さんは、高校時代に、少女漫画家として デビューしかけて挫折したという経験を持っているとか…。 うまくいきすぎだよなぁと思うところもあるし、一人称だからしょうがないん だけど、おかあさんの心情など、もっと書きこんで欲しかったなというところ もありますが、この本の魅力は、なんといっても構成の上手さ!おっと、そう きたのかという意外な展開に、驚かされました。 かなりデフォルメされたキャラクターの同級生たちは、こんなやついないよ! と思うんだけど、主人公の優は、きっとこういう−やたらプライドが高くて、 へんなエリート意識をもっているような−子って、いるんだろうなぁと妙に、 リアリティがあったなぁ…。 第50回産経児童出版文化賞受賞作品。 |
| 1月11日(土)「世界がステージ!国を超えて仕事するということ」 岩波書店編集部編(岩波ジュニア新書) 映画「ヤンヤン 夏の思い出」のプロデューサーとして知られている附田斉子 さん。和太鼓独奏者の林英哲氏。主にスウェーデンの子どもの本の翻訳をされ ている菱木晃子さん。「地球生活記」の著者で、世界中の家を撮り続けている 小松義夫さん、などなど…。 さまざまな分野で活躍している13人が、その仕事についた経緯や、自分の仕事 の魅力、仕事を続きてきたことでみえてきたことなど、それぞれの思いを伝え ます。 …と書いちゃうと、ちょっとカタイ感じがするけれど、若い世代の人たちに語 るということを前提にしているから、わかりやすい言葉で、身近で話を聞いて いるような親しみを感じさせるところがいい。 海外に出て仕事をしている人ばかりではなく、日本にいても世界につながって いる仕事をしている人。言葉が通じなくても、言語とは違う方法で表現するこ とを仕事としている人。夢に向かって一直線ではなく、あちこち回り道をした という人。はじめから目指していたわけではないが、その時どきの小さな選択 を重ねていったことが、やがて国際的な舞台につながったという人…。多彩な 人選で、いろんな生き方がとりあげられているところもよかったな。共通して いるのは、やっぱりその誰もが、チャレンジ精神をもっていること! 本当に自分がやりたいことを見つけるのは難しい。いったい自分はなにをやり たいのか??そう思いながら、将来を考える時に、自分の周囲ばかりではなく もっと広い世界に向ける目をもって欲しい。いろんな仕事があって、いろんな 人生があるということの見聞を広げて欲しい。読みながら、親としても、そん な思いがよぎっていく。 「自分を知る」第一歩。まずは、自分が興味を惹かれることはどんなことだろ う…と考える時の手助けになるといいなぁ。中学や高校の学校図書室に置いて ほしいなぁと思わせた一冊。 |
| 1月7日(火)「蛇行する川のほとり」恩田陸(中央公論新社) 主人公の蓮見鞠子は、美術部に所属する高校一年生。野外音楽堂で行なわれる 演劇祭の舞台背景を描くことになっていた鞠子は、上級生の九瀬香澄と斎藤芳 野から、夏休みに自宅で一緒に絵を仕上げないかと声をかけられる。 憧れの上級生からの誘いに有頂天になる鞠子だったが、親友の真魚子には「何 か企んでるのよ」と言われ、鞠子の前に突然現われた少年からは、「九瀬に関 わるのはよせ。あいつの家に行くのはやめた方がいい」と警告される。そして 彼女たちのひと夏が静かに幕を開けた…。 読み始めてすぐに、あぁ〜、これよ、これ!!現実を舞台にした物語なのに、 どこか違う世界を見せられたような、このミステリアスな雰囲気。謎めいた登 場人物。不吉な予感…。私は、恩田さんの書くこういう世界が好きなのよ〜と どっぷりはまり込んでいく。 新書サイズで、123ページという薄さ。 あの「上と外」を髣髴とさせるような 書き下ろし三部作の第一弾!(ちなみに、二巻目は4月・三巻目は8月の刊行予 定)本当に三作で終わるのか?予定通り刊行されるのか??納得のいく結末は 得られるのか??いろんな意味で先が気になるところですが、とにかく続きが 待ち遠し〜い! |
| 【今月の気になった絵本】 1月28日(火)「みしのたくかにと」松岡享子・作 大社玲子・絵(こぐま社) ![]() 絵本から物語への橋渡しになるような一冊。 思わず、ん?なんだって??と読み返してしまう、 意味不明なタイトルですよね…。 ふとっちょおばさんが、台所のすみで見つけたひとつぶ の小さな種。何の種なのか、わかりません。さっそく、 庭にまいて、そのそばには「あさがおかもしれない、すいかかもしれない、 とにかくたのしみ」という立て札を立てました。 さて、場面が変わって登場するのは、その国の小さな王子さま。王子さまは、 「後継ぎとして王様になるからには、よくものを知っていなければならん」と いう王さまの考えで、大勢の先生が雇われ、勉強に追われていました。唯一の 楽しみは、馬車にのってお城の外をひとめぐりすることだけ。 ある日、そのふとっちょおばさんの家の前で、王子さまを乗せた馬車が立ち往 生します。辺りを見まわしていた王子さまは、庭の立て札に気がつきました。 そして、その立て札に書かれていた文字を、なぜか反対に読んでしまった王子 さまは、その言葉をおまじないのように、繰り返しつぶやいているうちに覚え てしまいました。 そんな折、王様とお妃さまがひと月、城を留守にすることになりました。大臣 や先生たちは、二人が帰ってきた時に、王子さまが以前より賢く、丈夫になっ ていなければ、クビだと言い渡されます。王子さまは、ますます勉強ばかりさ せられ、大嫌いなにんじんばかり食べさせられることに。すっかりくたびれ、 いやになった王子さまが、“いなれしもかおがさあ、いなれしもかかいす、み しのたくかにと しか食べたくない”と怒鳴ったことから、国中、大騒ぎに! やがて、立て札を立てたふとっちょおばさんが、王子さまに幸福をもたらすこ とになります…。 将来のためといって、子どもを追い込んでいく親と、我が身がかわいい大臣た ち。対して、王子さまの青白い顔を一目見ただけで、この子には何が必要なの か、すぐにわかったふとっちょおばさん。おばさんは、子どもが育っていく上 で大事なものを、しっかりと教えてくれます。 この本の面白さは、逆さ言葉のおもしろみと(読んであげる時、逆さ言葉を早 口で間違えずに言えるようにしておきたいものです)、おばさんの機転によっ て、王子さまが自由を獲得していく痛快さでしょうか。読んだ後、幸せな気分 になります。絵も、お話の雰囲気にぴったりのあったかいものになっています よ。 この本は、1972年に「みしのたくかにとをたべた王子さま」というタイトルで 出されていたものが、1998年に改訂発売されたもの。 17センチ四方の小さな本なので、書店や図書館の本棚の中で埋もれてしまいそ うなのですが、おもしろいので、ぜひぜひ子どもたちに手渡したい!と思った 本でした。低学年くらいから。 |