2003年2月読了
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
2/26 夜のパパ マリア=グリーペ(偕成社)
2/20 星降り山荘の殺人 倉知淳(講談社文庫)
2/14 ホワイト・ピーク・ファーム バーリー・ドハーティ(あすなろ書房)
2/7 神の守り人(来訪編・帰還編)上橋菜穂子(偕成社)
2/7 空中庭園 角田光代(文藝春秋)

 2月26日(水)夜のパパマリア=グリーペ・作
                      大久保貞子・訳 (偕成社)

amazon1980.12月発行・214P・950円 (現在、絶版となっております)

あたし−ユリアは、未婚のママと二人暮らし。看護婦のママは、自分が夜勤に
出かけた後、小学生の娘を一人にしておくのは心配だと、あたしに内緒で、留
守番にきてくれる青年を雇ったの。そして、その青年…<夜のパパ>は、ふく
ろうのスムッゲルとともに、ユリアの家にやってくるようになったのです…。

聡明なユリアと、ズカズカと踏み込んでくることない自然体な<夜のパパ>。
二人が共有する静かな夜の時間。彼らの交流の様子を、それぞれの視点で交互
に描いていきます。

“子どもは、何を求めているのか…”。その答えが、ここにあるような気がし
ました。自分の言葉にちゃんと耳を傾けてくれる人が、そばにいるという安心
感。そして、自分を一人の人間として、理解してくれる人がいるんだという信
頼感…。大人と子どもの感じ方の違い。子どもが持つ敏感さ。読みながら、ユ
リアの言葉にハッとさせられたりするところもありました。

版画の挿絵が、とってもいいのね〜〜。作者であるマリア=グリーペの夫・ハ
ラルド=グリーペが担当しているんですが、物語が持つあったかい雰囲気に、
ぴったりと合っていて素敵です。(ちなみに、マリア=グリーペは、スウェー
デンの作家です)


 2月20日(木)星降り山荘の殺人倉知淳(講談社文庫)

amazon1999.8月15日発行・493P・752円

ミステリーが読みたくなって…。積読消化(長いこと積んでありました)。

杉下和夫は、後輩をかばって上司を殴った末に、カルチャークリエイティブ部
に配置換えとなる。彼の新しい仕事は、キザな二枚目・スターウォッチャーと
いう肩書きをもつ星園詩郎の付き人だ。

杉下は、イメージキャラクターの依頼を受けた星園と共に、山奥のオートキャ
ンプ場に出かけた。星園と杉下の他に招かれていたのは、 UFO研究家の嵯峨島
一輝、売れっ子の女流作家・草吹あかねと秘書の麻子、女子大生の美樹子とユ
ミ。それに開発会社の社長・岩岸と部下の財野と加えた九人は、その夜、雪の
中のコテージに泊まる。そして翌朝、死体が発見された…。

物語のところどころで、“重要な伏線が張られている お見落としなきよう”
など、作者からのメッセージが示されていきます…。


雪崩により交通は遮断され、外から不審者が侵入したとは思えない。じゃあ、
犯人は、この人たちの中の誰なのよ〜という一点に集中して、読む手が進む。

こういう展開だと、どいつもこいつも怪しいよねぇ〜と思うことが多いけど、
ちょっと違ったな。人物的には、それぞれ一癖あるけれど、状況的にも動機的
にも、だぁれも怪しくないと思われる中での犯人探しになっていくんですね。
(途中で犯人が読めてしまいました〜〜)

倉知さんの作品を読むのは、これが二冊目。二年くらい前に、「壷中の天国」を
読んだ時も、夢中になって読んでいたのに、最後、なんだよ〜〜と、拍子抜け
した思いがあるんだけど、読後感は今回も同じ。読んだ後、残るものはなかっ
たけれど、読んでいる間は楽しめました。(ほめてます)

全員を揃えた中で、アリバイが確認されたり、捜査会議のようなものをはじめ
たりする場面で、名探偵コナンのテレビアニメを思い出してしまったのは、私
だけでしょうか??


 2月14日(金)ホワイト・ピーク・ファームバーリー・ドハーティ
                      斉藤倫子・訳(あすなろ書房)

amazon2002.12月10日発行・183P・1300円

舞台はイギリス中部のダービーシャー。代々受け継がれてきた農場で暮らす、
家族の物語。思春期のジーニーの目を通して描かれる家族それぞれの人生と、
自分自身の巣立ち…。十篇から成る連作短篇の形になっています。

子どもたちの成長、老い、過渡期を迎えた夫婦関係。子どもの頃には、決して
変わらないと思っていた農場での暮らしに、変化の波が押し寄せます…。

物語は、表紙の画から感じられるのどかさとは全く逆の印象。薄いのに、ずっ
しりとした手応えがありました。

「祖母の旅立ち」と「キャスリーンの秘密」。二つの短篇のラストの部分に、
巧いなぁ、やられちゃったなぁと感じさせられました。その「祖母の旅立ち」
の短篇の中で、おばあちゃんがジーニーに約束させた、“自分の内なる声に、
しっかり耳をかたむけるんだよ”という言葉が、その後、物語全体を貫いてい
きます…。

自分の命は、はるか昔からつながってきたものと気づき、家族の絆を再認識し
て、新しい一歩を踏み出していく…。この形は、同じ作者の作品「シェフィー
ルドを発つ日
」にも共通したものがありましたね。

どの家族にも必ず変化は訪れる。当たり前のことなんだけど、やがてくる娘の
巣立ちの時期のことを考えたりして、なんだかとても身に染みました。

将来を見据えるようになる中学生くらいから、大人の方まで。


 2月7日(土)神の守り人(来訪編・帰還編)上橋菜穂子・作
                          ニ木真希子・絵(偕成社)

〔来訪編〕amazon2003.2月発行・290P・1500円
〔帰還編〕amazon2003.2月発行・318P・1500円

守り人シリーズ、待望の新作!!読み始めるとすぐに、ふっ〜と物語の中に吸
いこまれていく感じ。上下巻、一気に読んでしまいました。いいねぇ〜、やっ
ぱりいいねぇ〜。時代設定は、外伝といわれる「虚空の旅人」とリンクしてい
ました。

さて、今回の舞台は、ロタ王国。物語の始まり−シンタダン牢城では、おそろ
しく奇怪な出来事が起きていた…。

幼なじみのタンダと一緒に、<草市>に出かけたバルサは、宿屋でタルの民の
兄妹に出会う。二人は、人買いに売られそうになっているその幼い兄妹を、見
捨てることはできなかった。十二歳の妹・アスラには、災いをもたらすものと
しての追っ手が迫る。バルサは、アスラを連れて必死に逃げることに。一方、
ロタの国ではいくつもの思惑が絡み合い、大きなうねりが起き始めていた…。


アスラに幼い頃の自分を重ねるバルサ。バルサには、幾多のものを乗り越えて
きた幅のようなものが、備わってきているような気がしましたね。

今回、バルサやタンダにも幾度となく選択が突き付けられますが、おそろしい
力を身に宿すアスラが、兄の思い、バルサとの出会いを通して、自らの意思で
どのような決断を下すのか…その過程が読みどころ。ラストは納得ですが、非
常に切なかったなぁ。

過酷な状況が続く物語ではあるけれど、全編を通して、なにかあったかいもの
が感じられる。己のことだけではなく、他者をおもんばかる気持ちというのか
なぁ。懐の深さを感じさせる。バルサとタンダの信頼関係も深まりつつあるよ
うですし。ふふふ。

勢力を広げようとしている南のタルシュ帝国の気配など、今後の展開につなが
るところも少しずつ見せていましたね。期待を胸に、次の作品をゆっくりと待
ちましょう〜。


 2月2日(日)空中庭園角田光代(文藝春秋)

amazon2002.11月30日発行・298P・1600円

角田光代さんの作品を読むのは、これが初めて。この作品は、残念ながら、受
賞作品の出なかった、今回の直木賞候補作にもなっていましたね。

表題作を含む六篇から成る連作短篇集。

舞台は、近くに大きなディスカバリーセンターを抱える郊外のダンチ。登場す
るのは、京橋家の四人家族(父・貴史、母・絵里子、女子高生のマナ、中学生
の弟コウ)と、祖母にあたる絵里子の母、コウの家庭教師のミーナ。その六人
が、ひとりずつ語り手となり、一編ずつ主人公を変えながら、物語は進んでい
きます。

京橋家の家庭方針は、“何ごともつつみかくさず、タブーをつくらず、できる
だけすべてのことを分かち合おう”というもの。しかし“隠し事をしない”と
いうモットーの裏側で、それぞれが家族に言えない秘密を抱えていた…。


一見仲良さげにみえる家族が持っている、闇の部分を浮き彫りにしていく…。
そこで見てくるのは、滑稽なほど嘘っぽい家族。作者の少し引いたシニカルな
視点が光る。読んでいて可笑しいんだか、哀しいんだか、おそろしんだか…。
この六人の誰とも付き合いたくないし、こんな家族いやや〜と思うけれど、現
代ならきっとどこかにいるかもしれないと思えるところが、ちょっとコワイ。

自分ではわからないだろうと思っていることが、他の家族には見抜かれていた
り(子どもの方が冷静に親を見ているというのは絶対あるよね)、本人の思っ
ていることと外側から人が感じていることに微妙なズレあったりと、一編ずつ
視点を変えていくことで、みえてくるものがあるんだよね。

オープンな家族のように見えて、実はというか、当然といおうか…。それぞれ
が暴露するその裏側に惹きつけられて、最後までぐいぐいと読まされたという
感じでした。言葉は悪いけど、覗き見をしてる感覚かなぁ。

うーん、うまくいえないけど、おもしろく読んだくせに、なにかもやもやした
ものが残る。なんだかむなしくなっちゃって…。最近なんだか、そう感じてし
まうことが多いんだなぁ。今という時代を切り取ると、そうなってしまうのか
なぁ…。

なお、表紙の画は、荒井良二氏によるものです。


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