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2003年3月読了
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
3/30 メイン・ディッシュ 北森鴻(集英社)
3/26 蛍の行方 お鳥見女房 諸田玲子(新潮社)
3/22 蛇の石 秘密の谷 バーリー・ドハティ(新潮文庫)
3/16 狐罠 北森鴻(講談社)
3/6 かくしてバンドは鳴りやまず 井田真木子(リトル・モア)
3/2 ローワンとゼバックの黒い影 エミリー・ロッダ(あすなろ書房)

 3月30日(日)メイン・ディッシュ北森鴻(集英社)

amazon1999.3月30日発行・285P・1700円

物語の語り手は、劇団「紅神楽」の看板女優・紅林ユリエ、こと通称“ねこさ
。彼女は、ある雪の日に出会った三津池修(こちらは“ミケさん”)と、
一緒に暮らしている。長身で風変わりなミケさんには、二つの特技があった。
ひとつは、とびきりおいしい料理を作ること。もうひとつは、彼らの周辺に起
こる事件について、真実を言い当て、解決する能力があること…。


普通の連作短篇集かと思いきや、巧みな構成に驚かされる。

毛色の全く違う短篇が、ねこさんが語る短篇と交互になるように、挿入されて
いく。一見なんの関係もなさそうなそのストーリーが、次第次第に、大元のス
トーリーと絡んでいく。やがて二つの物語がつながった時、ミケさんは姿を消
した。彼は、一体何者だったのか…。

軽〜いタッチで読ませる感じ。不思議な温かさに満ちていて、読み終わった後
やさしい気持ちになるんだなぁ。先日読んだ「狐罠」と雰囲気は違うけれど、
こちらはこちらで楽しかった。ミケさんの作る料理は本当においしいそうだっ
たし…。

時々とんでもない方向に推理が進む座付き作家の小杉隆一。彼とねこさんの、
ポンポン飛び交う漫才のような会話が、物語全体を明るくする。そして、ミケ
さんのことを想う、ねこさんの恋心。なんだが、うらやましくなるくらいピュ
アだったなー。

ミステリアスで、ほろ苦く、あたったかくて、コミカルで。いろんな味が楽し
める、何重にもおいしい連作短篇です。

私は、図書館で借りた単行本で読みましたが、文庫化(集英社文庫)された時
に、特別にもう一篇付け加えられたようです。むむむ、読まねば!


 3月26日(水)蛍の行方 お鳥見女房諸田玲子(新潮社)

amazon2003.1月20日発行・268P・1500円

八話から成る連作短篇集。「お鳥見女房」の続編です。話は前作から続いてい
るので、未読の方は、まずはそちらから。

珠世は、鳥見役を務める矢島伴之助の妻。夫・伴之助が、お上の命により沼津
藩へ遠征。その後、消息を絶った。父の行方を捜すと言い置いて、次男の久之
助も家を出ていった。さらに、居候の源太夫までが、二人の後を追って、沼津
に向かった…。


ここまでが前作のお話。今回は、三人は無事なのか…というストーリーが軸に
なって、物語を引っ張っていく。

矢島家は、長男の久太郎と玉世の父の久右衛門、娘の君江、居候の多津、それ
に源太夫が預けていった五人の子どもたちが、留守を守っている。

夫の身を案じ、不安が胸をかすめる時もある。けれど、自分が案じ顔をみせれ
ば、皆が不安になる。そう思って笑顔を絶やさない珠世。留守宅は、珠世の人
柄そのままに、温かく愛情に満ちている…。

この作品の一番の魅力は、やはり珠世のキャラクターでしょう。日本人が、本
来大事にしてきたもの、今の時代に忘れているものを、珠世を通して、体現さ
せてもらったような気がする。ラストはわかっていても、グッときたねー。

もしかして、これでおわりなのっ!!と思いましたが、こちらで(小説新潮)
現在連載中なようでホッとする。まだまだ、このにぎやかな家族には会いたい
もんなぁ。


 3月22日(土)蛇の石 秘密の谷バーリー・ドハティ
                       中川千尋・訳(新潮文庫)

amazon2001.3月1日発行・219P・476円

主人公のジェームズは15歳。飛び込みの有望選手だ。彼は養子だったが、両親
はそのことを隠し立てすることもなく、幸せに育っていた。ところが、ある日
ふと感じた父親や友人とのズレ…。それをきっかけに、ジェームスは、
自分
を産んだ人のことを、猛烈に知りたくなる。


手がかりは、“サミーをおねがい”と書かれた紙切れとアンモナイト。彼は、
両親に内緒で、自分を産んだ母親を探す旅に出る…。

ジェームズの語りの中に、一人の少女の回想が断片的に挿入されていく。そし
て二人の物語は、ほんの一瞬、交錯する…。

ドハーティの作品は、どれを読んでもハズレがないッ!「ホワイト・ピーク・
ファーム
」もそうだったけれど、薄い本の中に、ぎゅっと凝縮された思いがあ
る。

思春期。いらつき、ふと感じた孤独が、彼を内面へと向かわせる。
 “ぼくは、望まれて生まれてきたんだろうか”。
 “ぼくが生まれた時、その人は喜んでくれたのだろうか”。
 “ぼくの母親は、どんな人だったのだろう”。
養子先でどんなに幸せに暮らしていても、それを知りたいという欲求は、必ず
あるだろうなと理解できる。欠落感は、自分のアイディンティに関わってくる
ものだから。どうしても、今、自分自身でそうしなければ前に進めないという
の切実な思いが伝わってくる。

旅の最後に、ジェームズが養父母に書いた手紙。それは彼が、自分の身を通し
て、体験したこと、感じとったこと…。短い文章の中に詰まったいろんな思い
が、胸に迫ってきて、泣けてしまった。

つながってきた命、自分の中に受け継がれてきたものを、自分の中で、しっか
りと受けとめられた時、また新しい一歩が踏み出せる。ドハーティの作品から
は、いつもそんな声が聞こえてくるような気がする。

なお、この文庫の題名は、単行本では「アンモナイトの谷」だったものが、改
題されている。


 3月16日(日)狐罠」北森鴻(講談社)

amazon1997.5月25日発行・408P・1900円

骨董業界を舞台にした長編ミステリー。

主人公の宇佐見陶子は、「旗師」と呼ばれる店舗を持たない骨董商。ある日、
銀座・橘薫堂の主人・橘から贋作を掴まされた陶子は、彼に対して、逆に目利
き殺しを仕掛けることを決意する。しかし、同じ頃、橘薫堂の女性社員が殺さ
れる事件が発生。陶子も巻き込まれることになる…。

おもしろかったー。まずは、なんとも興味深かったのが、初めて垣間見る骨董
業界の内幕。だまし、だまされぇ〜と、いやはや、なんともおそろしい恐ろし
い世界でありました。一般の常識や感覚では計れない、特殊な(?)世界だよ
ね。やられたからって、やり返すのかい??と、驚いた部分もあったけれど、
登場人物それぞれが持つ執念みたいなものに、引っ張られるようにして、一気
読み。(だからと言って、ドロドロジメジメしたものにはなっていないのよ)

そんな胡散臭い世界から、現実の感覚に引き戻してくれる役割を果していたの
が、ベテラン刑事・根岸と部下の四阿のコンビ。さえない風体で、なかなかの
手腕を見せるところも、非常によろしい〜。

ところで、作中に登場する、三軒茶屋のビア・バーの主人って、「花の下にて
春死なん
」のマスターだよね〜と、知ったキャラクターの登場に妙にうれしく
なったりして。

最後の最後、意外な展開に驚かされ、読者の私さえ騙された気分で 400ページ
余り、充分に楽しませてもらいました。

以後「狐闇」(講談社)、「緋友禅」(文藝春秋)と、シリーズものになって
いるようです。


 3月6日(木)かくしてバンドは鳴りやまず井田真木子(リトル・モア)

amazon2002.2月22日発行・222P・1800円

恥ずかしながら、私が、ノンフィクション作家・井田真木子さんの存在を知っ
たのは、昨年のこと。「週刊ブックレビュー」の番組の中で、この本が紹介さ
れた時が、初めてだったので、亡くなられた後…ということになりますね。
(井田さんは、2001年の3月、44歳の若さで亡くなられています)。

さて、絶筆となったこの本は、とても変わった(?)構成になっています。

冒頭に“本書の成立まで”と経過が説明されていますが、まず掲載されている
のが、井田さんから FAXで送られてきたという連載企画書。(古今東西の傑作
と言われるノンフィクション作品を取りあげて、作家論を展開して欲しいとい
う、「リトルモア」要請に答えたもの)


そして、十回の予定が、彼女の死によって三回になってしまった連載を収録。
  第一章 トールマン・カポーティとランディ・シルツ
  第ニ章 「さもなくば喪服を」と「きけわだつみのこえ」
  第三章 カール・バーンスタイン&ボブ・ウッドワード「大統領の陰謀」

それにプラスして、「十四歳」(講談社)刊行後、1999年に行なわれたと思わ
れる井田真木子インタビュー。

井田さんの死後に行なわれた、「プロレス少女伝説」(文春文庫)の取材対象
だった神取忍さんへのインタビュー。

巻末には、彼女の著作、署名記事、インタビューの一覧が載せられています。

七枚にわたって送られてきたという連載企画書を読んだだけでも、彼女の力量
のすごさがわかる。これだけでも、もう払った本代の元手はとったわと思った
くらい。どのような立場でもって対象を選んでいくのか。どのような距離や視
点で対象を見ていくのか。プロの作家って、こういう仕事の仕方をしていくん
だなと感嘆しました。

ただ、情けないことに、井田さんのインタビューを読んでいて、彼女の言わん
としていることを、ちゃんと理解してのみこめたとは言いがたく〜。とほほほ
ほ。

三回分の連載については、その迫力と、独特なスタイルに驚かされました。
対象とした人物に問いかけるように、彼らと対話をするような形で、“真実”
にぐいぐいと迫っていく。そして、全体的に死の匂いが漂っているような感じ
がしたのは気のせいでしょうか…。

彼女が残した作品をいくつか手にとってみたいと思っています。


 3月2日(日)ローワンとゼバックの黒い影エミリー・ロッダ
             さくまゆみこ・訳 佐竹美保・絵(あすなろ書房)

amazon2002.12月5日発行・262P・1400円

ローワンシリーズ第四作目。

リンの村では、ローワンの母・ジラーとストロング・ジョンの結婚式が、にぎ
やかに行なわれていた。その時、突然、巨大な翼を持つ動物が現われ、妹のア
ナドをさらい、飛び去っていく。

不吉な予感を感じながら、それを口にしなかったローワンは、自分のせいだと
自らを責める。後を追うことを決心したローワンは、仲間とともに海を越え、
ゼバックに向かっていった…。


謎めいた詞をひも解きながら…というパターンは、これまでと同じ。今回は、
“詞”に頼る比重が大きかった気もするし、詞の意味がずいぶん簡単にわかっ
ちゃうのねと思うところもあったかな。

パン屋のアラン、<旅の人>のジール、マリスの民のパーレン…と前作までに
登場してきたオールスター(?)が勢ぞろい。文中では、“半端者”という言
葉が使われているが、“周囲と違う”という思いを持っている者たちが、自分
の持ち味を生かし、それぞれの役目を果たしながら、険しい道を進んでいく。

ローワンには、これまで幾多の苦難を乗り越え、リンの村を救ってきたじゃな
いかぁ〜、もっと自分に自信をおもちよ〜と言ってあげたくなるところもある
が、そこがローワン“らしさ”なんだろうなぁ。最後に彼が果たす役割は、い
かにも彼らしいものになっているもんなぁ。

この四作目での新たな出会いが、今後、ローワンの暮らしに明るいものをもた
らしそう〜。そんな嬉しい予感を残して、次作にも期待だ。

 ※前作までの感想はこちらから
  →1.「ローワンと魔法の地図」2.「ローワンと黄金の谷の謎
   3.「ローワンと伝説の水晶


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