2003年4月・5月・6月読了
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
6/23 ナンシー関の記憶スケッチアカデミー ナンシー関(角川文庫)
6/23 ディア ノーバディ バーリー・ドハティ(新潮文庫)
6/2 蝉しぐれ 藤沢周平(文春文庫)
5/15 放浪の戦士−デルフィニア戦記 1 茅田砂胡(中央公論新社 C-NOVELS)
4/28 蛇行する川のほとり 2 恩田陸(中央公論新社)
4/11 永遠の出口 森絵都(集英社)

 6月23日(月)ナンシー関の記憶スケッチアカデミー
                        ナンシー関(角川文庫)

amazon2003.3月発行・190P・476円

掲載されているのは、「カエル」「ペコちゃん」「海老」「自転車」など、提
示されたお題を自分の記憶だけで描いたという絵の数々。これが、もうおもし
ろすぎ!!可笑しいんだか、不気味なんだかの絵は、投稿で集めたものらしい
です。

だけど、この本のおもしろさは、その妙〜な絵だけでは成立しません。やっぱ
り、それらひとつひとつの絵に対しての、ナンシー関さんの絶妙なコメントが
あってこそ!ただ、ただあっぱれです。


 6月23日(月)ディア ノーバディバーリー・ドハティ
                      中川千尋・訳(新潮文庫)

amazon1998.3月1日発行・294P・514円

恋人同士のクリスとヘレンは、18歳。秋には大学進学を控えている二人だった
が、その年の 2月、ヘレンは妊娠をしていることを知る…。

物語は、ヘレンが「ディア ノーバディ」と呼びかけ綴ってきた手紙と、クリ
スの回想によって構成され、 1月から11月までの時間の中で、次第にズレてい
く二人の気持ちの変化を丁寧に追っていく。

印象に残ったのは、予期せぬ出来事に驚き、流産さえ願ったヘレンが、命の存
在を受けとめ、自らの決意を固めた後から見せていく“強さ”と、彼なりに悩
みながらも、おなかの中にいる命については全く心が及ばないというクリスの
姿であった。

ヘレンは妊娠をきっかけにして、これまでタブーとされてきた家族の秘密に触
れることになる。やがて、ヘレンのおなかの中に宿った小さな命が、ヘレンと
母親、その母親と祖母との関係を修復していく。そこには、これまでのドハー
ティの作品同様、“繋がってきた命”というテーマを感じとることができた。

1992年度カーネギー賞受賞作品。文庫の解説は、河合隼雄氏。


 6月2日(月)蝉しぐれ藤沢周平(文春文庫)

amazon1991.7月10日発行・470P・590円

積読消化本第二弾。いまさらながら…の「蝉しぐれ」ですが、いいッ!!久々
に、マークを 2つつけたいほどの作品に出会う。どうしてもっと早く読まな
かったのか。これを読まずして、時代小説を語ったりして、ごめんなさいと謝
りたい気分…。

よく似た設定の宮本昌孝氏の「藩校早春賦」は、全編通しての明るさが持ち味
だった。それと比べて「蝉しぐれ」は悲哀を漂せるが、重苦しさはなく読み終
わった時には、爽やかな青春ものとしてとらえることができる。物語の深みと
しては、こちらの方があったかな。

主人公の牧文四郎は十五歳。私塾で学び、剣の修行に励む毎日を送っていた。
一つ年上の小和田逸平と、気弱だが学問に秀でた島崎与之助との友情を育み、
幼なじみのふくとは、互いに意識しあう年頃になっていた。しかし十六歳を迎
えた年、文四郎は父の唐突な死によって苦境に陥り、彼の身辺は激変する…。

理不尽だが、どうすることもできないことにぶつかった時、人はそれをどうと
らえて、どのような態度をとるのか…。

ある日突然のように、不遇の身の上となる文四郎だが、鬱々と耐え忍ぶという
より、自分に降りかかった運命を受け入れ、それでもなおかつしっかりと顔を
上げて生きていこうとする。そこがとてもいい。どうしようもないことにぶつ
かった時、文四郎がみせる心のあり方に学ぶべきところがあるように思えた。

逸平や与之助との心なごむ場面。道場や試合場でのはりつめた緊張感と迫力の
あるシーン。江戸に出たふくへの恋心。次第に明らかになる、父の死の背景に
あった真相。やがて、自らも藩の陰謀に巻き込まれていく終盤は、ハラハラド
キドキと目が離せなくなる…。

静から動へ、動から静へと場面が展開する中 470ページ余り、たっぷりと楽し
ませてもらった。若い人たちには、なかなか手が出づらい本だと思うけれど、
ぜひ読んで欲しいなと思わせた一冊。


 5月15日(木)放浪の戦士−デルフィニア戦記 1
                 茅田砂胡(中央公論新社 C-NOVELS)

amazon1993.10月25日発行・251P・857円

刺客に追われ、絶体絶命の窮地に立たされていたウィルは、助太刀を申し出た
一人の少女に、命を救われる。その少女・リィは、違う世界から落ちて来て、
行くあてもなく、帰る方法がわからないという。

ウィルは、濡れ衣を着せられて、国を追われた身。命を狙われていると知りな
がら、デルフィニア王国
の主都・コラールへ向かうという。リィは彼と同行す
ることになる…。


二年も積読してました。全18巻という、長い長い物語の第一巻目なので、まだ
まだ事情説明という段階ですね。会話文で説明しすぎるきらいがあるとか、深
みは、あまり感じないかなぁと思いながらも、おもしろいじゃないのさっ。

わかりやすいキャラクターたちの中で、リィの存在が光っている。人間離れし
た身体能力。口は悪いが、鋭いところをつく聡明さと美貌。やんちゃで、屈託
ないところが、物語全体を明るくする。彼女はいったいどこからきたのか、そ
して何者なのか。謎を秘め、得体の知れない妖しさに魅了されていく。ウィル
とリィの二人の絆も麗しく、いいコンビぶりをみせる。

吸引力がある物語ね。ついつい次へと手が伸びて、ずるずると引きこまれ、18
巻までの読まされてしまいそうな感じがある。

ティーンズ・ノベルズにおいてのイラストの持つ重要性はわかっているつもり
ではいるけれど、私はどうしても苦手ね。それは、もう年齢的なものでしょう
ね(笑)。私のような読者は、この 1月から順に刊行されている、中公文庫版
で読むほうがいいのかもしれません。


 4月28日(月)蛇行する川のほとり 2」恩田陸(中央公論新社)

amazon2003.4月10日発行・122P・476円

書き下ろしミステリー三部作の第二作目。一作目が、個人的にかなり好みだっ
たので、楽しみにしていたものです。

あの日、あそこで何が起きたのか…。語り手が芳野に代わって、彼らの関係や
秘密の輪郭が少しずつみえてきたかと思うと、また謎めいて…。ミステリアス
な展開が、たまりません〜。

もう、この手の本の感想は、続きが気になる〜〜!のひと言になっちゃうんだ
けど、ラストの一行の衝撃度は、一作目よりずっと大きかったね。三作目は、
こういう展開なのかなぁと考えていた予想が覆されて、思わず、エエッ!と叫
んでしまいそうになったほど。(決して最後のページを先に見ないように…)

最終刊が発売される、8月が待ち遠しい〜。


 4月11日(金)永遠の出口森絵都(集英社)

amazon2003.3月30日発行・313P・1400円

一人の女の子の、小学校四年生から高校三年生までの九年間を描いていく。初
恋、親への反抗、アルバイト、友達関係…。“この九つのストーリーのどこか
に、きっとあなたがいるはず”なんてフレーズがぴったりしそうな連作集だ。

時代背景は、1968年生まれの作者が、ちょうどその年頃を過ごしていた時期だ
と思われる。

いろんな年代のストーリーがあるけれど、私は、“高校生の恋”ってヤツに弱
いんだとあらためてわかったわ…。(他人には意味不明なところで、涙ぐんで
しまった私…)

自分では、ごくごく平凡に過ごした日々だったような気がしていたが、読みな
がら、そういえばあんなことがあった、こんなこともあったと、いいことも悪
いことも、思い出したりしたよ。その年代にしか体験できないことって、たく
さんあったなー。ほんとにささいな小さなことの積み重ねだったけれど、そう
いう日々を超えて(はるか昔だけど)、今の自分があるのかなぁと、しみじみ
思ったりもして。

森絵都さんが、“初めて大人に向けて書いた小説”ということで、ずいぶんク
ローズアップされているが、少女から大人へと成長していく時の女の子の気持
ちって、時代を超えた普遍性があるのではなかろうか。今の10代の子たちが読
んでも、きっと共感できるところがあると思う。そして、これまでの森絵都さ
んの作品同様、読み終わった後には、どこか励まされる…そんな作品になって
いる。


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