| 2003年4月・5月・6月読了 | |
| 6/23 | ナンシー関の記憶スケッチアカデミー ナンシー関(角川文庫)★ |
| 6/23 | ディア ノーバディ バーリー・ドハティ(新潮文庫) |
| 6/2 | 蝉しぐれ 藤沢周平(文春文庫)★ |
| 5/15 | 放浪の戦士−デルフィニア戦記 1 茅田砂胡(中央公論新社 C-NOVELS) |
| 4/28 | 蛇行する川のほとり 2 恩田陸(中央公論新社) |
| 4/11 | 永遠の出口 森絵都(集英社)★ |
| 6月23日(月)「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」 ナンシー関(角川文庫) 掲載されているのは、「カエル」「ペコちゃん」「海老」「自転車」など、提 示されたお題を自分の記憶だけで描いたという絵の数々。これが、もうおもし ろすぎ!!可笑しいんだか、不気味なんだかの絵は、投稿で集めたものらしい です。 だけど、この本のおもしろさは、その妙〜な絵だけでは成立しません。やっぱ り、それらひとつひとつの絵に対しての、ナンシー関さんの絶妙なコメントが あってこそ!ただ、ただあっぱれです。 |
| 6月23日(月)「ディア ノーバディ」バーリー・ドハティ 中川千尋・訳(新潮文庫) 恋人同士のクリスとヘレンは、18歳。秋には大学進学を控えている二人だった が、その年の 2月、ヘレンは妊娠をしていることを知る…。 物語は、ヘレンが「ディア ノーバディ」と呼びかけ綴ってきた手紙と、クリ スの回想によって構成され、 1月から11月までの時間の中で、次第にズレてい く二人の気持ちの変化を丁寧に追っていく。 印象に残ったのは、予期せぬ出来事に驚き、流産さえ願ったヘレンが、命の存 在を受けとめ、自らの決意を固めた後から見せていく“強さ”と、彼なりに悩 みながらも、おなかの中にいる命については全く心が及ばないというクリスの 姿であった。 ヘレンは妊娠をきっかけにして、これまでタブーとされてきた家族の秘密に触 れることになる。やがて、ヘレンのおなかの中に宿った小さな命が、ヘレンと 母親、その母親と祖母との関係を修復していく。そこには、これまでのドハー ティの作品同様、“繋がってきた命”というテーマを感じとることができた。 1992年度カーネギー賞受賞作品。文庫の解説は、河合隼雄氏。 |
| 6月2日(月)「蝉しぐれ」藤沢周平(文春文庫) 積読消化本第二弾。いまさらながら…の「蝉しぐれ」ですが、いいッ!!久々 に、★マークを 2つつけたいほどの作品に出会う。どうしてもっと早く読まな かったのか。これを読まずして、時代小説を語ったりして、ごめんなさいと謝 りたい気分…。 よく似た設定の宮本昌孝氏の「藩校早春賦」は、全編通しての明るさが持ち味 だった。それと比べて「蝉しぐれ」は悲哀を漂せるが、重苦しさはなく読み終 わった時には、爽やかな青春ものとしてとらえることができる。物語の深みと しては、こちらの方があったかな。 主人公の牧文四郎は十五歳。私塾で学び、剣の修行に励む毎日を送っていた。 一つ年上の小和田逸平と、気弱だが学問に秀でた島崎与之助との友情を育み、 幼なじみのふくとは、互いに意識しあう年頃になっていた。しかし十六歳を迎 えた年、文四郎は父の唐突な死によって苦境に陥り、彼の身辺は激変する…。 理不尽だが、どうすることもできないことにぶつかった時、人はそれをどうと らえて、どのような態度をとるのか…。 ある日突然のように、不遇の身の上となる文四郎だが、鬱々と耐え忍ぶという より、自分に降りかかった運命を受け入れ、それでもなおかつしっかりと顔を 上げて生きていこうとする。そこがとてもいい。どうしようもないことにぶつ かった時、文四郎がみせる心のあり方に学ぶべきところがあるように思えた。 逸平や与之助との心なごむ場面。道場や試合場でのはりつめた緊張感と迫力の あるシーン。江戸に出たふくへの恋心。次第に明らかになる、父の死の背景に あった真相。やがて、自らも藩の陰謀に巻き込まれていく終盤は、ハラハラド キドキと目が離せなくなる…。 静から動へ、動から静へと場面が展開する中 470ページ余り、たっぷりと楽し ませてもらった。若い人たちには、なかなか手が出づらい本だと思うけれど、 ぜひ読んで欲しいなと思わせた一冊。 |
| 5月15日(木)「放浪の戦士−デルフィニア戦記 1」 茅田砂胡(中央公論新社 C-NOVELS) 刺客に追われ、絶体絶命の窮地に立たされていたウィルは、助太刀を申し出た 一人の少女に、命を救われる。その少女・リィは、違う世界から落ちて来て、 行くあてもなく、帰る方法がわからないという。 ウィルは、濡れ衣を着せられて、国を追われた身。命を狙われていると知りな がら、デルフィニア王国の主都・コラールへ向かうという。リィは彼と同行す ることになる…。 二年も積読してました。全18巻という、長い長い物語の第一巻目なので、まだ まだ事情説明という段階ですね。会話文で説明しすぎるきらいがあるとか、深 みは、あまり感じないかなぁと思いながらも、おもしろいじゃないのさっ。 わかりやすいキャラクターたちの中で、リィの存在が光っている。人間離れし た身体能力。口は悪いが、鋭いところをつく聡明さと美貌。やんちゃで、屈託 ないところが、物語全体を明るくする。彼女はいったいどこからきたのか、そ して何者なのか。謎を秘め、得体の知れない妖しさに魅了されていく。ウィル とリィの二人の絆も麗しく、いいコンビぶりをみせる。 吸引力がある物語ね。ついつい次へと手が伸びて、ずるずると引きこまれ、18 巻までの読まされてしまいそうな感じがある。 ティーンズ・ノベルズにおいてのイラストの持つ重要性はわかっているつもり ではいるけれど、私はどうしても苦手ね。それは、もう年齢的なものでしょう ね(笑)。私のような読者は、この 1月から順に刊行されている、中公文庫版 で読むほうがいいのかもしれません。 |
| 4月28日(月)「蛇行する川のほとり 2」恩田陸(中央公論新社) 書き下ろしミステリー三部作の第二作目。一作目が、個人的にかなり好みだっ たので、楽しみにしていたものです。 あの日、あそこで何が起きたのか…。語り手が芳野に代わって、彼らの関係や 秘密の輪郭が少しずつみえてきたかと思うと、また謎めいて…。ミステリアス な展開が、たまりません〜。 もう、この手の本の感想は、続きが気になる〜〜!のひと言になっちゃうんだ けど、ラストの一行の衝撃度は、一作目よりずっと大きかったね。三作目は、 こういう展開なのかなぁと考えていた予想が覆されて、思わず、エエッ!と叫 んでしまいそうになったほど。(決して最後のページを先に見ないように…) 最終刊が発売される、8月が待ち遠しい〜。 |
| 4月11日(金)「永遠の出口」森絵都(集英社) 一人の女の子の、小学校四年生から高校三年生までの九年間を描いていく。初 恋、親への反抗、アルバイト、友達関係…。“この九つのストーリーのどこか に、きっとあなたがいるはず”なんてフレーズがぴったりしそうな連作集だ。 時代背景は、1968年生まれの作者が、ちょうどその年頃を過ごしていた時期だ と思われる。 いろんな年代のストーリーがあるけれど、私は、“高校生の恋”ってヤツに弱 いんだとあらためてわかったわ…。(他人には意味不明なところで、涙ぐんで しまった私…) 自分では、ごくごく平凡に過ごした日々だったような気がしていたが、読みな がら、そういえばあんなことがあった、こんなこともあったと、いいことも悪 いことも、思い出したりしたよ。その年代にしか体験できないことって、たく さんあったなー。ほんとにささいな小さなことの積み重ねだったけれど、そう いう日々を超えて(はるか昔だけど)、今の自分があるのかなぁと、しみじみ 思ったりもして。 森絵都さんが、“初めて大人に向けて書いた小説”ということで、ずいぶんク ローズアップされているが、少女から大人へと成長していく時の女の子の気持 ちって、時代を超えた普遍性があるのではなかろうか。今の10代の子たちが読 んでも、きっと共感できるところがあると思う。そして、これまでの森絵都さ んの作品同様、読み終わった後には、どこか励まされる…そんな作品になって いる。 |