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2003年11月・12月読了
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
12/26 明治快女伝 森まゆみ(文春文庫)
12/20 盗神伝 T M・W・ターナー(あかね書房)
12/18 渚にて 久世光彦(集英社)
12/16 無人島に生きる十六人 須川邦彦(新潮文庫)
12/13 水の中のふたつの月 乃南アサ(文春文庫)
12/5 お話を運んだ馬 I.B.シンガー(岩波少年文庫)
11/27 狐笛のかなた 上橋菜穂子(理論社)

 12月26日(金)明治快女伝−わたしはわたしよ森まゆみ(文春文庫)

amazon2000.8月10日発行・387P・638円

明治生まれの52人の女性たちの列伝。

略伝ではあるが、ただの伝記ではなく、そこには森さん自身の視点でみた一人
一人の人物像が、無駄のない文章で的確にとらえられている。

清水紫琴/相馬黒光/羽生もと子/大塚楠緒子/佐藤輔子・佐藤冬子/
平塚らいてう/尾竹紅吉/伊藤野枝/神近市子/岩野清子/高村智恵子/
田村俊子/岸たまき・笠井彦乃・佐々木兼代/芳川鎌子/原阿佐緒/柳原白蓮
九條武子/波多野秋子/福田英子/管野すが/山川菊栄/山内みな/丹野セツ
梅津はぎ子/田沢稲舟/与謝野晶子/岡本かの子/宮本百合子/林芙美子/
矢田津世子/杉田久女/山室機恵子/渋谷黎子/丸岡秀子/矢島楫子/
上村松園/河崎なつ/荻野吟子/人見絹枝/高群逸枝/松井須磨子/三浦環/
水谷八重子/東山千栄子/松本英子/出口なお/安藤照子/阿部定/金子文子

明治は、まだまだ身分というものが生きていた時代だし、女性は生きづらかっ
た時代だろうと思うのだが、誰のものでもない、自分の人生を生きた女性たち
がここにいる…。その人生は十人十色である。もちろん、どんな生き方がよい
という答えはない。どんな風に生きても、人生は一度きりなんだなとしみじみ
思ったね…。

差別や圧力があった時代ではあったけれど、だからこそなのか、誰もが生きる
ことに貪欲で、向上心の強い時代、上昇のエネルギーに満ちた時代でもあった
ように感じる。自分の意志にまっすぐというか、ものすごいエネルギーを感じ
る。なんだか読んでいるうちに、一度きりの人生、自分らしく、自分の思うよ
うに生きなきゃ損!損!と思えてくる。

近代女性史の入門書として読むこともできる。もし、もっとこの人のことを知
りたい、この人の生き方に興味を持ったと思ったら、巻末にそれぞれの人物に
関わる読書ガイドがついているので参考になる。

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(付記)
なお、この作品の作者である森まゆみさんは、現在 NHK人間講座の講師を務め
ています。テーマは、来年度新5000円札になる樋口一葉の生涯。
 「こんにちは 一葉さん−明治・東京に生きた女性作家」(2003.12月〜2004.1月)
                    →講座内容・放送予定

ちなみに、新5000円札になる樋口一葉の肖像画ですが、若くして亡くなったた
め、顔にしわなどの特徴がなく、原版の作成が難航し、新紙幣の発行は、当初
予定の来年7月から秋頃にずれこむらしいです。
                    →関連記事(YOMIURI ON-LINE)


 12月20日(土)盗神伝 T−ハミアテスの約束M・W・ターナー・作
                     金原瑞人&宮坂宏美・訳(あかね書房)

amazon2003.3月25日発行・382P・2000円

語り手は、代々盗人の家系に生まれついたジェン。「おれに盗めないものはな
い」。町中で、そう豪語しているうちに捕まり、ソニウス国の牢獄に放り込ま
れていた。ある日、ソウニス国王に仕える助言者・メイガスがジェンの前に現
れる。その腕を見込まれ、牢獄から出してやる代わりに、盗んでほしいものが
あると言う。ジェンは何を盗みにどこに行くのか、その目的もわからないいま
ま、
翌日旅立つことになる。同行するのは、メイガスと、彼の二人の弟子・ア
ンビアデスとソフォス、そして兵士のポル。彼らの旅が始まった…。

口が達者で態度もでかい。盗みの腕は天下一品だが、馬に乗るのはちと苦手
ジェンは、同行した四人と、しょっちゅうぶつかりながら
旅を続ける。


ジェンが盗み出さなければならないのは、不死と国を治める権利が約束される
という伝説を持つ幻の
ハミアテスの石。この石を手にする者にはソウニス国
の隣・エディス国の正式な後継者になるといわれていた。
果たして、ジェンは
うまく盗み出すことができるのか??

隣接する三つの国の思惑が絡み合い、道具として利用されていたかに思えてい
たジェンだが、最後にはあっと思える逆転劇が待っていた。あっ〜、気がつか
なかったよぉ…。

生意気だけど憎めないジェンも魅力的だったけれど、個人的には、冷静で有能
ポル
がよかったなぁ。

おもしろかったけど、全体の構成のせいなのか、翻訳文のせいなのか、正直わ
かりにくいなぁと感じたところもありました。


1997年ニューベリー賞オナー(次点)ブック。


 12月16日(火)無人島に生きる十六人須川邦彦(新潮文庫)

amazon2003.7月1日発行・258P・533円

明治31年、漁業調査の目的で出帆した龍睡丸は太平洋上で座礁する。脱出した
16人を乗せたボートは、珊瑚礁の小さな島に漂着。彼らの無人
島生活が始まっ
た・・・。


これは作者である須川氏が、実習学生として練習帆船に乗り込んだ時に、実際
にこの漂流を体験した当時の船長・中川教官から体験談を聞いているという構
成になっている。
帯に「実録痛快冒険記」と書かれているように、実話である。

「明治の海の男たち」、誇り高き男たち、ここにあり!って感じでしょうか。
長以下、16人の乗組員は弱音を吐かず、あきらめず、もう、だだ、ただ立派で
す。(あまりに立派すぎて、物足りない感もなきにしもあらず・・・ですが)

おもしろかったのは、塩、水、食べ物、薬など生活に不可欠なものは、こうし
て生み出していくのかぁ…。希望を失わず、集団で無人島で暮らしていくため
の配慮や規則って、こんな風に構築していくんだ…と、そこには、船長ら年長
者の強さと優しさが感じられ
経験に裏打ちされた知恵、工夫、アイディアの
数々に感心しきり。トリビアさながら、“へぇ〜”の連発でした。


そして、なにより全編通して明るい!逆境にあったときの心のもちかたには、
教えられるものが多かった。


「椎名誠氏が選ぶ漂流記ベスト20で、堂々1位!!」(帯より)だそうです。

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 12月18日(木)渚にて久世光彦(集英社)

amazon2003.9月30日発行・321P・1800円

春休みを利用したクルージング・スクールには、中二から高一までの七十人が
参加していた。しかし、嵐に会い、船が座礁。七人の少年少女たちが、ゴムの
ライフラフトで無人島に流れ着いた…。無人島に漂着した七人の男女の生活が
16歳の冬馬の目を通して語られる。


うーむ。冒険物、青春物かと思って手にとったけれど、違った。いわゆる漂流
物だけど、ちょっと異色。視点としてはおもしろいと思う。

でも、現代を生きる高校生や中学生が、なんにもない無人島での生活をこんな
に簡単に作り上げていけるだろうか??思春期の彼らの間にはもちろん性の問
題も起きてくるのは想像つくけれど、高校生の女の子が会って間もない男の子
の前で、そんな行動とるかねぇ??と、細かいところにひっかってしまった。
ラストもなんだか納得できず。

「無人島に生きる十六人」のカラッとした明るさの方が好みだったかな。


 12月13日(土)水の中のふたつの月乃南アサ(文春文庫)

amazon2003.11月10日発行・390P・533円

いつもバックな中に何かしらの文庫本を入れてあるんだけど、ちょうど手持ち
の本を読み終わってしまい、JRに乗る前に何か本を〜〜思ったものの、時間が
なくてキオスクで選んだ本。

OLをしている亜理子のもとに、11年ぶりに、小学校時代の友人恵美から電話
が入る。梨紗も誘ってかつての仲良し三人組で会おうという。それは、亜理子
梨紗にとって、決して待ち望んだ再会ではなかった。スケジュール帳をいっ
ぱいにしないと落ち着かない亜理子。頻繁に手を洗いに立つ
梨紗。嘘ばかりつ
く恵美。
再会した三人の中で、封印したはずの過去が少しずつ掘り起こされて
いく・・・。


6年生の夏に何があったのか・・・。あの夏− 6年生の夏−の回想を織り交ぜなが
ら、ストーリーは進んでいく。彼女たちが共有している秘密と、どんどん印象
が変わっていく梨紗のキャラクターにひっぱられるようにして一気に読み終え
た。全部読み終わった後の感想は 5点満点とすると、★★★☆☆くらいかなと
思うんだけど、読んでる最中はすごく吸引力があって先が気になって気になっ
て、やめられなくなるパターンの本でした。何が怖いって、三人の気持ちが誰
も相手の方を向いていないことね。ベクトルは全部自分にしか向いていないの
よ。

小道具として、「留守番電話」は出てくるんだけど、「携帯電話」が出てこないの
で一体いつ書かれたものなんだろうと後ろをめくったら、初出は1992年(角川
書店)でした。その後、角川文庫で文庫化されて、今回文春文庫から出てるよ
うです。



 12月5日(金)お話を運んだ馬I.B.シンガー作 
                     工藤幸雄・訳(岩波少年文庫)

amazon2000.6月16日発行・218P・640円

八編の物語が収められた短編集。どれも作者であるシンガーが生まれ育った、
ポーランドを舞台及び背景とするものである。


一番最初に収録されている、「お話の名手ナフタリと愛馬スウスの物語」が秀
逸。小さい頃からお話を聞くのが大好きだった主人公のナフタリは、本の行商
人となり、
愛馬のスウスが引く馬車に本を積み込み、お話の本を売ったり、子
どもたちにお話を語り聞かせたりしながら、
町や村を旅して回る。そして、
つしか年老いたナフタリは、
旅から旅への暮らしを終え、
行く先々で書きとめ

ておいた原稿を本にまとめ、やがてスウスもナフタリも静かにその生涯を閉じ
ることになる…。


この本は以前子どもの本屋さんに行った時に、いいよ〜と紹介してもらったも
のなんだけど、その店長さんが薦める気持ちがよ〜くわかった気がした。“お
話の楽しさを届けたい”
というナフタリの思いは、作者であるシンガー自身の
思いであり、
それはこの本よかったよ〜とすすめてくれた子どもの本屋さんの
思いそのものなのかもしれない。

作者のシンガーはユダヤ系アメリカ人で、ノーベル文学賞受賞作家。1935年31
歳の時にニューヨークに渡るが、その後、彼の故郷であるポーランドでは、
トラーによるユダヤ人弾圧により多くの命が消えた。
この作品を含めシンガー
の著作はイディシ語で書かれているという。イディシ語は、戦前、東ヨーロッ
パに住んでいたユダヤ人が
話し、読み書きしていた言語で、数百万のユダヤ人
の命とともに滅びかけた言語である。


他に収録されているのは、ポーランドに伝わる民話風のお話、子ども時代の作
者と思われる自伝的な作品と、バラエティに富む。

残念ながら子どもたちが自分で手を伸ばしやすい本であるとはいいがたい(ユ
ダヤ社会の生活習慣など、日本の子どもたちにはちょっとわかりずらいところ
もあるし)んだけど、これ、寝る前のゆったりと静かな時間に読んであげると
いいなぁと思った本。温かくて、どこか切ない作品集となっている。



   5ヶ月ぶりの更新となりました。実は今年の4月から、大学の通信教育で図書館
   司書の勉強を始めまして、夏から秋にかけてはレポートと試験に追われる毎日で
   した。8月、9月、11月と3回3日間に渡って行なわれたスクーリングも無事終
   わり、レポート12本書き上げて、残る試験科目もあと少し…と、なんとかゴール
   が見えてきたところです。やっと少し余裕ができてきたので、サイトの方もぼち
   ぼちと再開していきたいと思っています…。


   (追記)年明け早々に行われた試験で、残り 3科目の試験も通り、図書館司書
    過程、無事に修了〜。10ヶ月間、大変だった分、達成感あり。(2004.1.27記)
     

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 11月27日(木)狐笛のかなた上橋菜穂子(理論社)

amazon2003.11月発行・342P・1500円

上橋菜穂子さんの待望の新刊!

人の住む世とカミガミの世との境目である<あわい>に生まれ、呪者によって
使い魔にされた霊狐・野火。人の思いを感じる<聞き耳>の力を持って生まれ
た小夜。12歳の秋、小夜がすすきの野で野火を懐にかばったこと。そして森影
屋敷に逃げ込み、そこに幽閉されている少年・小春丸にかくまわれたこと。そ
れが彼らの出会いだった。それから三年、彼らは隣り合う二つの国−春名ノ国
と湯来ノ国の過去の因縁と呪いの渦に巻き込まれていく…。


非常〜によかったぁ〜!上橋さんの作品を読む時は、いつもそうなんだけど読
みはじめるとすぐにふっとその世界に引きこまれて、とっぶりと浸りながら読
み終えた。情景や感情の描写が丹念に重ねられているので物語のイメージがき
ちんと浮かび上がってくる。少しずつ明らかになる小夜の亡き母の姿と、さま
ざまな思惑が複雑に絡み合ったスリリングな展開。読み出したらとまらない。

「守り人シリーズ」のチャグムやバルサもそうだったが、上橋さんの描く作品
の主人公たちは、いつも自分ではどうしようもない運命を背負わされている。
そして、誰もが自分だけを守ろうとする、自分の利益を考えたくなる中で、相
手を思い、その相手のために“自分ができること”を自分の頭で考え、乗り越
えていく。大切に思う相手に向けるまっすぐな心、一途な思いに打たれちゃっ
たねー。ラストは切なかったが、二人にとって最良の選択をしたようにも思え
る。

そしてもうひとつ、上橋さんの描く脇役の女性たちっていいよねー。綾野ばあ
さんや鈴姉さんの強さとあったかさ、敵役の霊狐・玉緒でさえ、粋で憎みきれ
ないもんなぁ。過酷な状況が続く中で、彼女たちが登場すると気持ちがほっこ
りとする。

ルビがふってあるので高学年くらいから大人の方までと幅広い層におすすめ。


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