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2004年12月読了 
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
12/28 2004年に読んだマイベスト10
12/28 秘密の道をぬけて ロニー・ショッター(あすなろ書房)
12/26 きもちは、言葉をさがしている 水野スウ&中西万依
12/17 七王国の王座(上・下) ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)
12/7 ダストビン・ベイビー ジャクリーン・ウィルソン(偕成社)
12/4 ぼくは悪党になりたい 笹生陽子(角川書店)
12/2 まんざら 中野翠(毎日新聞社)

 2004年に読んだマイベスト10

 今年読んだ本の中から、特に好きだったもの・おもしろかったものを10冊あげてみました。
 なお、今年“読んだ”本なので、出版年は2004年とは限りません。あしからず。

1.「夜のピクニック」恩田陸(新潮社) amazon
文句なしに、No.1はこの本。今年出版された恩田さんの作品の中では、「Q&A」もおすすめ。

2.「家守綺譚」梨木香歩(新潮社) amazon
梨木さんの作品の中で一番好き。

以下、3〜10までは、順不同。6は「風紋(上・下)」(双葉文庫)の続編。7、8は児童書です。

3.「千年の黙」森谷明子(東京創元社) amazon
4.「博士の愛した数式」小川洋子(新潮社) amazon
5.「蒼穹の昴(上・下)」浅田次郎(講談社) amazon
6.「晩鐘(上・下)」乃南アサ(双葉社) amazon

7.「駆けぬけて、テッサ!」K.M.ペイトン(徳間書店) amazon
8.「人形の旅立ち」長谷川摂子(福音館書店) amazon

9.「レイコ@チョート校」岡崎玲子(集英社新書) amazon
10.「文学賞メッタ斬り」大森望・豊崎由美(PARCO出版) amazon

(おまけ) 
コミック「のだめカンタービレ」二ノ宮戸知子(講談社) amazon


 12月28日(火)秘密の道をぬけてロニー・ショッター 
                      千葉茂樹・訳 (あすなろ書房)


amazon2004.11月30日発行・159P・1300円

南北戦争が始まる11年前−1850年のアメリカを舞台にした話です。

ある夜、物音で目覚めたアマンダは、両親が逃亡奴隷を逃がす手助けをしてい
たことを知る。アマンダの父親は、当時、実際に存在したという、逃亡奴隷を
逃がすための秘密組織、「地下鉄道」の「駅長」をしていたのだ。(「駅長」
は、逃亡中の奴隷を匿い休む場所を提供していた。次の「駅」まで送りとどけ
る役割は、「車掌」と呼ばれていた)。

奴隷制は自分には関係ない、どこか遠くで起こっていることと感じていたアマ
ンダだったが、逃亡中のアイザックさん一家の長女ハンナと仲良くなる。そし
て追っ手が迫る中、自分も手伝うことを申し出る…。

150ページ余りの 短い物語だが、ハンナたちがこれまでどんな扱いをされてき
たのか、助けているアマンダの両親はどんな危険な立場にいるのか、文字を獲
得するということはどんなことを意味するのかのが、きちんと伝わってくる。
(歴史的な背景については、「おしまいに」と「訳者あとがき」に書かれてい
るので、そちらを先に読んでから物語に入ってもいいでしょう)。

見つかってしまうのではないか、捕まってしまうのではないか…という緊迫感
の中で、温かくもてなすアマンダの両親と、アマンダとハンナが育む友情が、
読み手をほっとさせる。

中村悦子さんのさし絵が、物語の雰囲気とマッチしていて、とてもいい。


 12月26日(日)きもちは、言葉をさがしている−二〇年目の紅茶の時間
         水野スウ&中西万依(メイフラワー工房/編集 紅茶の時間/発行


2004.8月25日発行・366P・1500円

著者の水野スウさんは、週に一度、石川県津幡町の自宅を開放して、「紅茶の
時間」というオープンハウスを開いています。

「きもちは、言葉をさがしている」は、その「紅茶の時間」から生まれた三冊
目の本。(「紅茶の時間」の歩みは、「まわれ、かざぐるま」「出逢いのタペ
ストリイ
」という二冊の本になって刊行されてます)

マンションの一室で一人ぽっちで子育てしたくない、仲間と出逢いたい…と、
娘さんが11ヶ月の時に始めたという「紅茶の時間」は、昨年の秋に20年を迎え
たそうです。

この本の中では、長い年月をかけて、「紅茶」という場が、どのように育って
きたのか。また、訪れる人や水野スウさんにとって、「紅茶」がどんな場とし
て力をもたらしてきたのかが綴られていきます。

そして、スウさんは、中学三年の時から育ててもらった義姉との家族物語、大
学生になった娘さんの万依さんは、自分自身のことについて、じっくりと語っ
ていきます。

特に、スウさんの娘としてプレッシャーを感じてきたという万依さんの率直な
気持ちには、うちの娘もこんな気持ちを抱えているのかも…と思いあたること
もあって、思春期の子どもを持つ親としては、耳が痛いところも。

送っていただいた本と一緒に同封されていた「いのみら通信 No.78」の中で、
スウさんが、

これまでの「かざぐるま」「タペストリイ」と比べて、とても静かな本です。
これをした、あれをした、というdoの本ではなくて、beの本という感じがしま
す。


と書かれていましたが、前の二冊は読んだ後で自分も何かはじめたくなる本。
そして、この「きもちは、言葉をさがしている」は、読んだ後自分の心とじっ
くり向き合いたくなる本です。

三冊とも、本屋さんには置いていない産直本屋方式の本となっています。どれ
もおおすめ!本購入の申し込みは、こちらのサイトからどうぞ。


 12月17日(金)七王国の王座(上・下)ジョージ・R・R・マーティン
                         岡部宏之・訳(早川書房)


上巻amazon2002.11月発行・446P・2800円
下巻amazon2002.11月発行・446P・2800円

声を大にして言いたいと思いますが、おもしろいッッ!!

<氷と炎の歌シリーズ>、全六部完結予定の第一部にあたる。二段組で、上下
巻合わせて、およそ 830ページ。読み始めは、巻末付録の人物紹介(登場人物
がめちゃめちゃ多くて、それだけでも25ページ近くある)で、いちいち確認な
がら読んだので、なかなか進まなかったが、一通り名前と人間関係が把握でき
るようになると、俄然おもしろくなる。

物語の軸となるのは、“七つの王国”で起こる王権争い。その中に否応なく巻
き込まれていく八人が、語り手となる。

幼馴染みの王ロバート・バラシオンから“王の手(補佐役)”に任命されたエ
ダード・スターク、任務のため首都キングズランディングに赴く父親に同行し
た二人の娘・サンサとアリア、領地ウィンターフェルに残った妻・ケイトリン
と息子のロブとブラン、王国を北方勢力から守る夜警団(ナイツウオッチ)に
加入したスタークの私生児・ジョン、そしてスターク家と敵対するラニスター
家の一員・ティリオンと、王座奪還を狙う前王家ターガリエン家の末裔デーナ
リス。次々と語り手を換えながら、八人の視点を通して物語が語られていく。

どこまで書いていいかわからないが、えっ、おまえもか!!と思うほど、容赦
なくバッタバッタと人が死んでいく。それぞれの思惑や陰謀が入り乱れる中、
この先、彼らはどうなるのか。過酷な状況に投げ出された彼らが、どう考え、
そこからどう切り開いていくのか。たっぷりと読ませる。

誰に感情移入して読むかでおもしろさも変わっていくだろう。私は、私生児で
あること、小人であること、にそれぞれコンプレックスを持っているジョンと
ティリオン、王家の淑女の枠に収まりきらない男勝りなアリアが好きだった。

そして王国には、“壁”の向こうから不気味な気配が忍び寄り、南方の草原で
は“ある力”が蘇る…。明らかにされていないことも多く、作者が構築した世
界は広がりを見せる。これからいったいどうなるか、先が読めないおもしろさ
がある。まだまだ物語は始まったばかり。これからどんな風に展開していくの
か、目が離せない。

ローカス賞(アメリカの SF・ファンタジー情報誌「LOCUS」の読者の投票によ
り選ばれる)ファンタジイ長編部門受賞。

既に、第二部王狼たちの戦旗(上・下)が、刊行済み。


 12月7日(火)ダストビン・ベイビージャクリーン・ウィルソン
               小竹由美子・訳 ニック・シャラット・絵(偕成社)


amazon2004.8月発行・222P・1400円

“ダストビン・ベイビー”。エイプリルは、生まれてすぐ、ピザ屋の裏のごみ
箱に捨てられていたところを保護された。それから
里親や施設を転々とし、
今は養母のマリオンと暮らしている。


14歳の誕生日を迎えた朝、マリオンとケンカをしたエイプリルは、家を出たも
のの学校には向かわず、自分の生い立ちをたどりはじめる…。

決して愉快な話ではないが、それをカラリと、重く感じさせずに読ませてしま
のは、作者の手腕だろう。

物語の中では、14年間誰にもいえなかった彼女の心の内が、丁寧に描かれてい
く。
母親はどんな人なのか、なぜ自分を捨てたのか。わからないことは空想で
埋め、自分の気持ちを出さずに暮らしてきたエイプリル。
どんなことがつらく
て、どんなことを求めているのか、
彼女の思いが痛いほど心に響いてくる。

ミ箱に捨てられる…とまではいかなくても、虐待や育児放棄などいろんな社会
問題が起きている昨今、こんな思いを抱えている子どもたちが増えてきている
のではなかろうか。

それだけに、自分と関わったさまざまな人に会いに行く中で、エイプリル自身
が見つけ、気づいたことは大きい。
自分は“ダストビン・ベイビー”なんだと
思い出すため大嫌いだった誕生日が、とびきり素敵な出会いの日になったシー
ンは感動的だ。読み終わた時には、あったかい気持ちで本を閉じることができ
る。


作者のジャクリーン・ウィルソンは、今イギリスでもっとも人気のある児童作
家の一人なんだとか。邦訳もどんどん出ているようです。


 12月4日(土)ぼくは悪党になりたい笹生陽子(角川書店)

amazon2004.6月30日発行・185P・1300円

語り手は兎丸エイジ、17歳。どこにでもいそうなフツーの高校生だ。母親は、
父親の違う子どもを二人生んだシングルマザー。

エイジは、仕事で世界中を飛び回っている母親の代わりに、わがままな弟の面
倒を見、家事全般をこなしてる。親友の羊谷も、羊谷の元彼女のアヤも、エイ
ジの周りは、好きなように生きたいように生きてるヤツばかり。いつも周囲に
流されてばかりのエイジは、なんだか自分だけ損してるような気持ちになる。

薄いし、語り口がよくて、二時間ほどで、するするっと読んじゃいました。

表紙に描かれている、“I want to be Devil”のTシャルを着て立っている男
の子。そうそう、エイジって、こんな感じの男の子だよなあ〜と、イメージ通
りなのが嬉しい。

こんなヤツいるかよと思うほど、デフォルメされたキャラクターの中で、ワル
ぶってもワルにはなりきれない、不器用で、マジメな性分のエイジに妙に親近
感がわく。

最後まで、彼のその本質は変わらない。だけど、そのまんまの君がいいんだよ
と、肩をたたいてあげたくなる。そしてラスト、それまで奔放な行動ばかりが
目がついていた、母親ユリコの魅力に触れて、ぐっときた。

本文中、エイジが映画「ギルバート・グレイプ」の主人公と自分の心境を重ね
る場面がある。おすすめの映画を一本あげろと言われたら、迷わずこの映画を
あげるほど、大好きな映画。映画の主人公のギルバートの閉塞感の方が、ずっ
とシビアだけど、とってもいい映画なので、ぜひ見て欲しい。



    6月から半年間仕事をしていたため、更新をストップしていました。
    また、ぼちぼちと再開していきます…。


 12月2日(木)
まんざら中野翠(毎日新聞社)

amazon2003.12月25日発行・283P・1333円

中野さんのエッセイを読むのは「毎日一人はおもしろい人がいる」(講談社)
に続き、二冊目。

中野翠さんというと、「週刊文春」のシネマのページで、いつもおすぎさんと
正反対の評価をつけている人…というイメージを持っていたが(例えば、中野
さんが星5個ならおすぎさんが星2つ、おすぎさんが星5個なら中野さんが星
2つなどと。映画に関しては、私はおすぎさんの批評を参考にしていた)、文
章を読んでみるとおもしろかった。

「まんざら」は、「サンデー毎日」に連載されているエッセー「満月雑記帳」
の2002年11月〜2003年11月分を一冊にまとめたもの。知らなかったが、年末恒
例でその年1年分の連載をまとめたものが単行本として発売されていて、この
本で既に17冊目とか!

2003年に起きた事件など時事・世相(2003年は 3月にイラク戦争が始まってい
る)から、映画、本、テレビ番組、彼女が好きだという落語、身辺雑記までを
話題に、小気味よく斬って(?)いく。これ一冊で、その年がどんな一年だっ
たかを、振り返ることが出来、そこから時代というものがみえてくる。中野さ
んのものを見るときの軸がブレないのがいいね。読んでいて、気持ちがいい。
そして、「毎日一人は〜」を読んでいる時も感じたけど、中野さんの本を読む
と、落語に対する興味がむくむくと湧いてくる。

2004年分をまとめた新刊は「ここに幸あり」amazonとして発売中。

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