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2005年1月読了 
★印は、特におもしろかったもの・好きだったものです。
1/26 王狼たちの戦旗 ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)
1/18 対岸の彼女 角田光代(文藝春秋)
1/14 火の粉 雫井脩介(幻冬舎文庫)
1/12 ぐるりのこと 梨木香歩(新潮社)
1/7 ウェルカム・ホーム! 鷺沢萌(新潮社)

 1月26日(水)王狼たちの戦旗(上・下)ジョージ・R・R・マーティン
                         岡部宏之・訳(早川書房


上巻amazon2004.11月15日発行・485P・2800円
下巻amazon2004.11月15日発行・516P・2800円

<氷と炎の歌>シリーズの第二部。

第一部の『七王国の王座』から、二年経っての刊行らしい。先月、その『七王
国の王座』を読んだ時、こんなおもしろい本を今まで知らなかったなんて!!
と嘆いたが、知らなかったからこそ、ストーリーも人物も忘れないうちに、4
冊続けて、たっぷりと楽しめたという一面もあった。一部に引き続き、二段組
900ページ余りと、かなりのボリューム(巻末付録の登場人物紹介は 40ページ
にも及ぶ)だが、面白いよ〜〜!!!

このシリーズは、次々と語り手を交代しながら、複数の人物の目を通して物語
が語られていく。

今回語り手となっているのは、散り散りになってしまったスターク家の5人(
母ケイトリンと子どもたち−長女サンサ、次女アリア、次男ブラン、私生児で
夜警団の一員ジョン)。そして、“王の手”の職についたティリオン、スタン
ニスの廷臣ダヴォス、スタークの被後見人としてウィンターフェルで10年間を
過ごしたシオンと、ドラゴンを復活させたデーナリス、の合わせて9人だ。

さまざまな視点から語られることによって、ものごとも人格も多角的に見るこ
とができ、物語に奥行きと広がりを感じさせる。また、それぞれの細やかな心
情も、きっちりと織り込まれているので、自分の贔屓の人物も見つけやすいだ
ろう。私は今回、ティリオンとアリア、そしてに子どもたちを案じるケイトリ
ンの気持ちに入れ込んで読んだ。

上巻では、ロバート王とスターク公の亡き後、王権をめぐって混沌とする七王
国の状況説明がなされるが、下巻に入ると物語は一気に戦乱時代に突入する。

予期せぬ展開に驚かされ、容赦のない仕打ちに何度衝撃を受けたことか。勢力
図がどんどん変化し、いつ何時形勢が逆転するかもわからない。北からしのび
寄る脅威、南で蘇ったドラゴンと、北と南の動向からも目が離せない。

これから先、一体どうなるのか。全く先が読めない、おもしろさ!第三部の出
版まで、あまりに月日がたつと話を忘れてしまいそう。早く続きを〜と、切に
願う。


 1月18日(火)対岸の彼女角田光代(文藝春秋)

amazon2004.11月10日発行・288P・1600円

この本は、13日の直木賞発表前に読み終えていたので、ニュースで受賞の一報
を聞いた時、あぁ〜やっぱりなぁと、納得…。

物語のテーマは、女同士の友情。

3歳になる娘を持つ小夜子は、公園デビューをしたもののなじめず、自分のた
めにも、子どものためにも働きに出ようと決意する。そこで出会ったのが、就
職先の小さな会社の女社長・葵。共に35歳で同じ大学の出身。小夜子にとって
気さくでさばさばとした葵は、眩しい存在だった。

義母の嫌味と無理解な夫(「火の粉」の俊郎といい、この修二といい、どいつ
もこいつも…と腹立たしい思いで読む)という大変な状況の中、娘を保育園に
預けて、奮闘する小夜子。そんな彼女の日常に、挿し込まれていくのが、葵の
高校時代のストーリーだ。物語は、小夜子の現在と葵の過去を、交互に描きな
がら展開していく…。

この作品の中では、「小夜子と葵」「葵とナナコ」という二つの関係が描かれ
る。私自身は、小夜子のストーリーよりも、葵の高校時代のストーリーの方に
引き込まれて読んでいった。

ストーリー自体は、とり立てて新しいものではないが、角田さんの巧さは、心
の奥底にある見せたくない、気付かれたくない感情を、リアルに描き出す力に
ある。自分の心の中がさらされてしまったような、そんな思いにとらわれるの
だ。

そして、二つの時間を並行に描いていくことで、「35歳の小夜子」と「高校生
の葵」が、“孤立することへの恐れ”という共通した思いを抱いていることが
浮き彫りにされていく。やがて読者には、「現在の葵」が、同級生だった「高
校生のナナコ」の姿と重なって見えてくる。

女同士の関係は、いつの時代も、いくつになっても複雑だ。けれど、それを励
まし支えになるいくつかの台詞が胸に残った。


 1月14日(金)火の粉雫井脩介(幻冬舎文庫)

amazon2004.8月5日発行・577P・762円

裁判長の梶間勲は、一家殺害事件の被告人として、死刑求刑を受けていた武内
真伍に、証拠不十分として無罪判決を言い渡す。梶間は、その裁判を最後に退
官。そして、二年後。梶間の家の隣に、武内が引っ越してくる。

戸惑いながらも無関心を決め込む勲をよそに、武内は、梶間の家族の中に、す
るりと入り込んでくる。妻の尋恵と息子の俊郎は、親切で人当たりのいい武内
に好意を持つが、嫁の雪見だけは、彼に対して最初から得体の知れない薄気味
悪さを感じていた。その頃から、家族の周辺では不可解なことが起こり、家族
の間がきしみ始める…。

彼は本当に善人なのか?疑惑が次第に深まっていく中、先が気になって、やめ
られないとまらないと、久々に夜中3時まで読みふけってしまった。

義母の介護で肉体的にも精神的にも疲れきった妻が、ふとその心の隙間に入り
こまれ、取り込まれていく様子や、育児に追われ悩みを抱える母親の心理は、
リアルに読ませる。

ただ、梶間父子の魅力のないことったら、この上ない。そもそも、死刑判決を
自分の手で下したくないという理由で無罪にしたんじゃないの!?と、梶間勲
に対して、最初から読み手として不信感を持ってしまった私だが、家族の間で
起こっていることに対する無関心さ、傍観者ぶりは腹立しく、彼の苦悩がさっ
ぱり見えてこないのが物足りない。そして、その息子の俊郎の横柄さとバカっ
ぷり。こんな男が、これから司法に関わっていいのかよ!!と思ったのは、私
だけじゃないはず。

読みやすいし、ノンストップで読ませる力はあるのだが、読み終わってみたら
あまり残るものがなかった。いや、読んでる間は、ひたひたと迫り来る恐ろし
さにドキドキし、おもしろかったんだけど。ミステリーというより、ホラーを
読んだ感覚に近いかも。


 1月12日(水)ぐるりのこと梨木香歩(新潮社)

amazon2004.12月25日発行・170P・1300円

雑誌『考える人』の2002年夏号〜2004年秋号に、掲載されていたものをまとめ
たもの。

高千穂岳に近い山荘で、イギリスのセブンシスターズの断崖で、トルコを訪ね
て感じたこと。そして連載当時に起こった長崎の幼児殺害事件や、イラクの日
本人人質事件の報道に触れて考えたこと。

自分の今いる場所から、一歩一歩確かめながら周囲のことを考えていきたい。
そう決めてつけたというタイトル通り、深く深く考えていったこと…。


心の深い部分にぐっーと入り込んでいくというか、深く問い掛け、そこから立
ち上がってきたものが綴られる。共感したり、正直難しいなぁと思うところも
ありながら、ゆっくりゆっくりと読み進めた。

決してさらっと読み流しはできない、重みのある内容。静かに、しかし力強い
エッセイ集となっている。


 1月7日(金)ウェルカム・ホーム!鷺沢萌(新潮社)

amazon2004.3月20日発行・221P・1300円

「渡辺毅のウェルカム・ホーム」と「児島律子のウェルカム・ホーム」、中編
二編を収録したもの。

「渡辺毅のウェルカム・ホーム」
渡辺毅は、父親から受け継いだ店を潰して、離婚。その後、大学からの親友で
妻を亡くした英弘と彼の息子・憲弘の父子家庭と同居。仕事が多忙な英弘に代
わって、この家のシュフとして、家事と育児を任されている。家族のカタチと
しては、一風変わっているが、三人の暮らしはうまくいっている。ある日、憲
弘の作文を読んだ毅は、世間の目を気にする自分に気づく…。

「児島律子のウェルカム・ホーム」
キャリアウーマン、児島律子。彼女の二度目の結婚生活は、金にルーズで浮気
を繰り返す夫と、孫に愛情のカケラもみせないその両親との間でぼろぼろだっ
た。そんな中、夫の連れ子の聖奈とだけは本当の母子のように暮らしてきた。
子どものためにと、「家庭」だの「父親」だのにこだわってきたが結局離婚。
それから数年後、あることがきっかけで律子は聖奈と再会することになる…。

いいよ〜。すごくいい。あらすじを書いてみたら、なんだか重そうな話にきこ
えちゃうけど、非常に軽やかに読ませる作品だ。

英弘と憲弘の父子家庭と渡辺毅、児島律子と聖奈。どちらも血はつながってい
ないが、家族としてのつながりは、血のつながりに限らない。

当たり前のことなのに、ついついフツーという枠(何をもってフツーと言うの
かも、あいまいだけどね)に囚われてしまったり、世間体を気にしてしまうこ
とも多い中で、家族というのは何が大切で何が幸せなのかが、二人の主人公を
通して、きちんと伝わってくる。

ノリのいい文章で、さらりと読ませるけど、なんだか大事なことを教えられた
ような、どこかなにかに縛られている自分の気持ちが、解き放たれたような気
持ちになる。温かさに満ちた感じが、とてもいい。

鷺沢さんの作品を読むのは、波乱の人生を綴った「私の話」(河出書房新社)
に次いで、二冊目。そして、この作品が鷺沢萌さんの遺作となってしまった。

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