| 2005年1月読了 | |||
| 1/26 | 王狼たちの戦旗 ジョージ・R・R・マーティン(早川書房)★ | ||
| 1/18 | 対岸の彼女 角田光代(文藝春秋) | ||
| 1/14 | 火の粉 雫井脩介(幻冬舎文庫) | ||
| 1/12 | ぐるりのこと 梨木香歩(新潮社) | ||
| 1/7 | ウェルカム・ホーム! 鷺沢萌(新潮社)★ | ||
| 1月26日(水)「王狼たちの戦旗(上・下)」ジョージ・R・R・マーティン 岡部宏之・訳(早川書房) 上巻 下巻 <氷と炎の歌>シリーズの第二部。 第一部の『七王国の王座』から、二年経っての刊行らしい。先月、その『七王 国の王座』を読んだ時、こんなおもしろい本を今まで知らなかったなんて!! と嘆いたが、知らなかったからこそ、ストーリーも人物も忘れないうちに、4 冊続けて、たっぷりと楽しめたという一面もあった。一部に引き続き、二段組 900ページ余りと、かなりのボリューム(巻末付録の登場人物紹介は 40ページ にも及ぶ)だが、面白いよ〜〜!!! このシリーズは、次々と語り手を交代しながら、複数の人物の目を通して物語 が語られていく。 今回語り手となっているのは、散り散りになってしまったスターク家の5人( 母ケイトリンと子どもたち−長女サンサ、次女アリア、次男ブラン、私生児で 夜警団の一員ジョン)。そして、“王の手”の職についたティリオン、スタン ニスの廷臣ダヴォス、スタークの被後見人としてウィンターフェルで10年間を 過ごしたシオンと、ドラゴンを復活させたデーナリス、の合わせて9人だ。 さまざまな視点から語られることによって、ものごとも人格も多角的に見るこ とができ、物語に奥行きと広がりを感じさせる。また、それぞれの細やかな心 情も、きっちりと織り込まれているので、自分の贔屓の人物も見つけやすいだ ろう。私は今回、ティリオンとアリア、そしてに子どもたちを案じるケイトリ ンの気持ちに入れ込んで読んだ。 上巻では、ロバート王とスターク公の亡き後、王権をめぐって混沌とする七王 国の状況説明がなされるが、下巻に入ると物語は一気に戦乱時代に突入する。 予期せぬ展開に驚かされ、容赦のない仕打ちに何度衝撃を受けたことか。勢力 図がどんどん変化し、いつ何時形勢が逆転するかもわからない。北からしのび 寄る脅威、南で蘇ったドラゴンと、北と南の動向からも目が離せない。 これから先、一体どうなるのか。全く先が読めない、おもしろさ!第三部の出 版まで、あまりに月日がたつと話を忘れてしまいそう。早く続きを〜と、切に 願う。 |
| 1月18日(火)「対岸の彼女」角田光代(文藝春秋) この本は、13日の直木賞発表前に読み終えていたので、ニュースで受賞の一報 を聞いた時、あぁ〜やっぱりなぁと、納得…。 物語のテーマは、女同士の友情。 3歳になる娘を持つ小夜子は、公園デビューをしたもののなじめず、自分のた めにも、子どものためにも働きに出ようと決意する。そこで出会ったのが、就 職先の小さな会社の女社長・葵。共に35歳で同じ大学の出身。小夜子にとって 気さくでさばさばとした葵は、眩しい存在だった。 義母の嫌味と無理解な夫(「火の粉」の俊郎といい、この修二といい、どいつ もこいつも…と腹立たしい思いで読む)という大変な状況の中、娘を保育園に 預けて、奮闘する小夜子。そんな彼女の日常に、挿し込まれていくのが、葵の 高校時代のストーリーだ。物語は、小夜子の現在と葵の過去を、交互に描きな がら展開していく…。 この作品の中では、「小夜子と葵」「葵とナナコ」という二つの関係が描かれ る。私自身は、小夜子のストーリーよりも、葵の高校時代のストーリーの方に 引き込まれて読んでいった。 ストーリー自体は、とり立てて新しいものではないが、角田さんの巧さは、心 の奥底にある見せたくない、気付かれたくない感情を、リアルに描き出す力に ある。自分の心の中がさらされてしまったような、そんな思いにとらわれるの だ。 そして、二つの時間を並行に描いていくことで、「35歳の小夜子」と「高校生 の葵」が、“孤立することへの恐れ”という共通した思いを抱いていることが 浮き彫りにされていく。やがて読者には、「現在の葵」が、同級生だった「高 校生のナナコ」の姿と重なって見えてくる。 女同士の関係は、いつの時代も、いくつになっても複雑だ。けれど、それを励 まし支えになるいくつかの台詞が胸に残った。 |
| 1月14日(金)「火の粉」雫井脩介(幻冬舎文庫) 裁判長の梶間勲は、一家殺害事件の被告人として、死刑求刑を受けていた武内 真伍に、証拠不十分として無罪判決を言い渡す。梶間は、その裁判を最後に退 官。そして、二年後。梶間の家の隣に、武内が引っ越してくる。 戸惑いながらも無関心を決め込む勲をよそに、武内は、梶間の家族の中に、す るりと入り込んでくる。妻の尋恵と息子の俊郎は、親切で人当たりのいい武内 に好意を持つが、嫁の雪見だけは、彼に対して最初から得体の知れない薄気味 悪さを感じていた。その頃から、家族の周辺では不可解なことが起こり、家族 の間がきしみ始める…。 彼は本当に善人なのか?疑惑が次第に深まっていく中、先が気になって、やめ られないとまらないと、久々に夜中3時まで読みふけってしまった。 義母の介護で肉体的にも精神的にも疲れきった妻が、ふとその心の隙間に入り こまれ、取り込まれていく様子や、育児に追われ悩みを抱える母親の心理は、 リアルに読ませる。 ただ、梶間父子の魅力のないことったら、この上ない。そもそも、死刑判決を 自分の手で下したくないという理由で無罪にしたんじゃないの!?と、梶間勲 に対して、最初から読み手として不信感を持ってしまった私だが、家族の間で 起こっていることに対する無関心さ、傍観者ぶりは腹立しく、彼の苦悩がさっ ぱり見えてこないのが物足りない。そして、その息子の俊郎の横柄さとバカっ ぷり。こんな男が、これから司法に関わっていいのかよ!!と思ったのは、私 だけじゃないはず。 読みやすいし、ノンストップで読ませる力はあるのだが、読み終わってみたら あまり残るものがなかった。いや、読んでる間は、ひたひたと迫り来る恐ろし さにドキドキし、おもしろかったんだけど。ミステリーというより、ホラーを 読んだ感覚に近いかも。 |
| 1月12日(水)「ぐるりのこと」梨木香歩(新潮社) 雑誌『考える人』の2002年夏号〜2004年秋号に、掲載されていたものをまとめ たもの。 高千穂岳に近い山荘で、イギリスのセブンシスターズの断崖で、トルコを訪ね て感じたこと。そして連載当時に起こった長崎の幼児殺害事件や、イラクの日 本人人質事件の報道に触れて考えたこと。 自分の今いる場所から、一歩一歩確かめながら周囲のことを考えていきたい。 そう決めてつけたというタイトル通り、深く深く考えていったこと…。 心の深い部分にぐっーと入り込んでいくというか、深く問い掛け、そこから立 ち上がってきたものが綴られる。共感したり、正直難しいなぁと思うところも ありながら、ゆっくりゆっくりと読み進めた。 決してさらっと読み流しはできない、重みのある内容。静かに、しかし力強い エッセイ集となっている。 |
| 1月7日(金)「ウェルカム・ホーム!」鷺沢萌(新潮社) 「渡辺毅のウェルカム・ホーム」と「児島律子のウェルカム・ホーム」、中編 二編を収録したもの。 「渡辺毅のウェルカム・ホーム」 渡辺毅は、父親から受け継いだ店を潰して、離婚。その後、大学からの親友で 妻を亡くした英弘と彼の息子・憲弘の父子家庭と同居。仕事が多忙な英弘に代 わって、この家のシュフとして、家事と育児を任されている。家族のカタチと しては、一風変わっているが、三人の暮らしはうまくいっている。ある日、憲 弘の作文を読んだ毅は、世間の目を気にする自分に気づく…。 「児島律子のウェルカム・ホーム」 キャリアウーマン、児島律子。彼女の二度目の結婚生活は、金にルーズで浮気 を繰り返す夫と、孫に愛情のカケラもみせないその両親との間でぼろぼろだっ た。そんな中、夫の連れ子の聖奈とだけは本当の母子のように暮らしてきた。 子どものためにと、「家庭」だの「父親」だのにこだわってきたが結局離婚。 それから数年後、あることがきっかけで律子は聖奈と再会することになる…。 いいよ〜。すごくいい。あらすじを書いてみたら、なんだか重そうな話にきこ えちゃうけど、非常に軽やかに読ませる作品だ。 英弘と憲弘の父子家庭と渡辺毅、児島律子と聖奈。どちらも血はつながってい ないが、家族としてのつながりは、血のつながりに限らない。 当たり前のことなのに、ついついフツーという枠(何をもってフツーと言うの かも、あいまいだけどね)に囚われてしまったり、世間体を気にしてしまうこ とも多い中で、家族というのは何が大切で何が幸せなのかが、二人の主人公を 通して、きちんと伝わってくる。 ノリのいい文章で、さらりと読ませるけど、なんだか大事なことを教えられた ような、どこかなにかに縛られている自分の気持ちが、解き放たれたような気 持ちになる。温かさに満ちた感じが、とてもいい。 鷺沢さんの作品を読むのは、波乱の人生を綴った「私の話」(河出書房新社) に次いで、二冊目。そして、この作品が鷺沢萌さんの遺作となってしまった。 |