| 2005年2月・3月読了 | |||
| 3/31 | ケーブ・ベアの一族(上・下) ジーン・アウル(集英社)★ | ||
| 3/21 | 魔法使いのチョコレート・ケーキ マーガレット・マーヒー(福音館文庫)★ | ||
| 3/19 | 日暮らし(上・下) 宮部みゆき(講談社) | ||
| 3/5 | イルカの家 ローズマリー・サトクリフ(評論社)★ | ||
| 3/1 | ユージニア 恩田陸(角川書店)★ | ||
| 2/12 | NO.6 #3 あさのあつこ(講談社) | ||
| 2/12 | 読む力は生きる力 脇 明子(岩波書店)★ | ||
| 2/5 | おわりの雪 ユベール・マンガレリ(白水社) | ||
| 2/5 | 二つの旅の終わりに エイダン・チェンバーズ(徳間書店)★ | ||
| 3月31日(木)「ケーブ・ベアの一族(上・下)」ジーン・アウル・作 大久保寛・訳(ホーム社) 上巻 下巻 面白かった! 全六巻完結予定の「エイラ−地上の旅人」シリーズ、第一巻目。 もともと大人向けとして書かれた小説だったが、日本では抄訳され児童書とし て評論社から出版されていた。今回完訳版として新訳で刊行され、さらに物語 が完結する予定とか!(このシリーズ、長いこと完結していなかったらしい。 完結編となる第六巻目は、現在執筆中だとか)。 舞台は、今から3万5千年前の旧石器時代。5歳の少女・エイラは、地震で孤 児となり、瀕死の状態で倒れていたところを、ケーブ・ベアをトーテムとする ネアンデルタールの一族にひろわれる。金髪に青い目、真っ直ぐな脚。彼らと は全く異なった外見を持つエイラは、よそ者と見られながらも、しきたりを覚 え、養母のイーザから薬師としての教えを受けて、一族の一員として認められ ていく。しかし、クロマニオンの血をひくエイラが成長し、その特性を示し始 めるにつれて、族長ブルンのつれあいの息子ブラウドは、エイラに対する反感 と憎悪を膨らませていく…。 “3万5千年前って、人は、もう存在してたんだっけ?”と思うようなありさ まで、そこでどんな暮らしが営まれ、何を感じていたのか…。思い浮かぶのは 『はじめ人間ギャートルズ』(古いね〜)のような世界ばかりで、ピンとこな いし未知の世界だと思っていた。けれど、食べ物や宗教的儀式、薬草を採った り、狩の方法など、生活の細部が丁寧に描かれるので、読み進んでいくうちに はるか太古の時代に生きる彼らの存在が、身近にリアリティに感じられるよう になるのだ。 そしてクロマニオン人のエイラから見たネアンデルタール人。ネアンデルター ル人のクレブやブルンから見たクロマニオン人。異なる種族の違いが、互いの 目を通して浮き彫りにされていく。 体の作り、慣習、コミュニケーションの取り方…。そればかりではなく、現代 人の直接の祖先だと言われているクロマニオン人と滅びゆく運命にあるネアン デルタール人の決定的な違いは、問題を発見して処理する能力、新しいものを 受け入れ、アイデアを創出できる力にあったという。 種族の能力に限界があるといっても、彼らに魅力がないわけではない。エイラ とイーザ、クレブとの間に生まれる深い愛情と絆。心中ではエイラを認め、責 任としきたりの挟間で苦悩しながら、いくつもの決断を下してきた族長のブル ン。まじない師・クレブが悟った自分たちの運命とエイラに出会った理由…。 だんだんと、エイラが起こす行動自体より、それに対して一族がどのような反 応を見せどんな解決をするのか、そちらの方に目がいくようになった。 祖先の記憶に根ざした偏狭な伝統の支配。女は男に絶対従わなくてはならない という一族の男女関係のあり方など、読んでいてつらくなる場面も多かったが 虐げられ数々の苦難がふりかかるのにもかかわらず、エイラには、どこかあっ けらかんとした明るさが感じられる。それが、果敢に生きていく強さなのかも しれない…。 装画・挿画は宇野亜喜良さん(物語の雰囲気にぴったり)。訳者はプルマンの ライラシリーズの訳でおなじみの大久保寛さん。 現在、第二巻「野生馬の谷(上巻・下巻)」(佐々田雅子・訳)、第三巻「マ ンモス・ハンター(上巻・中巻)」(白石朗・訳)まで発売されている。(マ ンモス・ハンター下巻は、4月下旬に発売予定)。 巻ごとに訳者が変わるようなので、それまで読んできたイメージや雰囲気が変 わってしまうということがなければいいなぁと、余計な心配をする。 「エイラ−地上の旅人」公式ホームページは、こちらから |
| 3月19日(土)「日暮らし(上・下)」宮部みゆき(講談社) 上巻 下巻 いきなりなんですけど…。これ二冊に分冊したのはなぜなんだろう?二段組に して厚くすると売れないのかしら?それとも二冊にした方が利益が大きいから なのかしら??この薄さ(?)で上下巻3200円とは、高いよなぁ。図書館で借 りて読んだ人間が、文句をいう筋合いはないんですけど…。 『ぼんくら』の続編にあたります。登場人物もほぼ同じ。四編の短編+本編と なる長編+エピローグという構成も同じで、この四本の短編が本編に絡んでく るというのも同じ。そして、前作を読んでることを前提に書かれているような ところがあるのです…。 がッ、ワタクシ、前作の鉄瓶長屋の事件とやらがなんだったのか、きれい さっぱり忘れてました。(前作を読んでから5年近くもたってたら、忘れちゃ うよね〜と、言い訳、言い訳…)。文中に何度も、“鉄瓶長屋の事件”と出て くるたびに、ため息が出ました。 だからということはないんですが、正直言うと、本編より短編の方がよかった (特に現代でいうストーカーの話『子盗り鬼』は、すごくリアルで怖かった) 全体を通しても、私は『ぼんくら』の方が面白かったかな。(内容は忘れても 良かった、面白かったという読み終わった時の気持ちだけは残るのだ)。ミス テリーの部分も、途中で犯人が分かってしまい、物足りなかったし。 それでも、宮部さんの作品は読みやすいし、登場人物はそれぞれに味がある。 今作は、美少年・弓之助大活躍編!とでも申しましょうか…。出番は少なかっ たけど、定町廻り同心の佐伯錠之介のキャラクターが光ってました。 未読の方は、まずは『ぼんくら』から、そして私のように、読んだけど内容を すっかり忘れたわという方も再読してから、この『日暮らし』に取りかかるこ とを、おすすめします。 |
| 3月5日(土)「イルカの家」ローズマリー・サトクリフ 乾侑美子・訳(評論社) とっても良かった〜〜! 『第九軍団のワシ』が出される3年前、1951年に出版されたという作品。 舞台は、16世紀のイギリス。 おばあさんが亡くなり、孤児となった少女・タムシンは、港町ビディフォドを 離れ、ロンドンのギディアンおじさんの家−コーンター家で暮らすことになっ た。 鎧作りの親方・ギディアンおじさん、愛情あふれるデボラおばさんと、三人の 子どもたち。大家族の中でのにぎやかな毎日だったが、タムシンは、船乗りに なりたいという叶わない願いと、どんなにあたたかく接してもらっても、自分 は家族ではない、ひとりぼっちなんだという寂しさと抱いていた。 やがて、コーンター家の次男・ピアズが、同じく船に夢中で、同じ願いを持つ ことを知る。タムシンは、ピアズと秘密を共有することによって、自分の居場 所を見つけ、ロンドンの町が好きになっていく…。 これまでのサトクリフの作品が持つ、過酷な状況に追い込まれながら、その困 難に毅然と立ち向かっていくという、厳しさ、力強さ、崇高さというようなイ メージとは、ひと味違う。物語全体が、あったかい雰囲気に包まれている感じ かな。 ラストに思いがけないことが起きるけれど、物語自体に大きな展開があるわけ ではない。だけど、この作品の魅力は、日々の小さな出来事の中に見つける、 小さな喜びの積み重ねにある。 修道院の鐘の音が聞こえる、テームズ川に近い下町での暮らし。一階の工房か ら聞こえてくる音や、にぎやかなロンドンの町の様子。五月祭のモスリ踊りの 音楽。庭や野に咲く花々。おいしそうな料理。家族みんなで歌うクリスマス・ キャロル。四季折々の行事を織り込み、物語の中は、音や匂い、そして色彩に あふれていて、読みながらうっとりとする。 ハローウィンの夜、デボラおばさんが暖炉の前でする“若いタム・リンの話” が良かったなぁ。こういう話を集めた本はないかしら。(*1) 日本に置き換 えると、炉端で語る昔話になるのかな。妖精というものが、身近な存在で、日 常の生活の中にも入りこんでいたんだなぁと感じた。 当時のロンドンを見事に再現してくれたような、C・ウォルター・ホッジズの 挿画も、物語の雰囲気にぴったりと合っていて素敵だ。 読後、しあわせな気持ちになる作品だった。 (追記 2005.3.21)(*1) そうそう、こういうお話よー!と思ったのが、この本。 「魔法使いのチョコレート・ケーキ」マーガレット・マーヒー 石井桃子・訳 シャーリー・ヒューズ・画(福音館文庫) ニュージーランドの作家・マーガレット・マーヒーが書いた三冊のお話集の中 から、石井桃子さんの好きな、ふしぎなことの出てくるお話を選んで、翻訳・ 編集したもの。 短いお話が八編と、二つの詩を収録。それぞれ好みがあると思いますが、私が その中で、特に好きだったのが、表題作の『魔法使いのチョコレート』と『ミ ドリノハリ』。 『魔法使いのチョコレート』 魔法の腕は悪いが、料理の腕前は抜群。とびきりおいしいチョコレートケーキ を作ることができる魔法使いは、パーティを開こうと招待状を送りましたが、 誰もやってきません。魔法の腕が悪いため、周りも自分自身さえも悪い魔法使 いだと思い込んでいたからです。「だれかやってきて、わたしといっしょに朝 のお茶をのんでくれないかなあ」。そう思った魔法使いは、一本のりんごの木 を相手にお茶の時間をすごすようになります。一本だけでは寂しかろうと木を 植えていくうちに、やがてそこは森となり、魔法使いにとって嬉しいことが起 こるのです…。 『ミドリノハリ』 テディは、自由でいたいと女王の元から逃げてきた裁縫師・ミドリノハリをか くまい助けます。そのため、テディの家の中は、捜しに来た女王たちにめちゃ めちゃにされてしまいました。助けられ自由を手にしたミドリノハリは、その お礼にと、壁のわれめをかがり、じゅうたんを縫い合わせ、天井にはお日さま の光を糸に通し、見事に繕っていきます…。 どちらも20ページ足らずの短いお話ですが、日常の暮らしの中に、ちょっぴり 魔法をかけ、そこから生まれるささやかな喜びが、幸せなエンディングにつな がっていきます。 リンゴの木に話しかけながら、お茶の時間を過ごす魔法使いの姿。花々でいっ ぱいのじゅうたん、天井の太陽と星、壁の上の蝶や鳥と、ミドリノハリが刺繍 した、その美しさといったら…。読みながら、ぱぁっとその光景が広がってい くような、そんな感じでした。 なにより、子どもたちに対する作者の愛情が感じられるので、安心して読むこ とができます。自分で読むなら、小学校中学年くらいから。寝る前に、一編ず つ読み聞かせするのもおすすめです。 |
| 3月1日(火)「ユージニア」恩田陸(角川書店) 舞台は、金沢市と思われるK市。地元の名士だった青澤家の親子三代の誕生日 を祝う会で、毒殺事件が起こる。家族、親戚、居合わせた近所の住人も含め、 17人が死亡。 家族の中で唯一生き残った盲目の美少女。現場に残されていた奇妙な手紙。事 件は、遺書を残し自殺した男が犯人だとして、終結をみた。 それから、いくつもの年月を経て、あの事件が語られる・・・。 一つの出来事をたくさんの人の口から聞くと言う形式は、去年刊行された『Q &A』を彷彿とさせる。『Q&A』もおもしろかったけど、ミステリアスな雰 囲気が漂う、こちらの方が好みかな。恩田陸ワールドに、すっかりはまり込ん だという感じ。 視点を変え、手法を変えて、さまざまな角度から語られる事件の記憶。時系列 もバラバラ。時間を行きつ戻りつつ、誰が語り手となっているのか、そして、 誰に話しているのか、探りながら読んでいくのも、いつしか楽しみとなった。 やがて、ひとつの事件の真実が…いや、それぞれの記憶にある盲目の少女・青 澤緋紗子の姿が浮き彫りにされていく。恩田さんが描く“謎めいた美少女”っ て読んでいて、なんだかゾクゾクするんだよね。満面の笑みを浮かべて、空高 くブランコをこぐ少女の姿が脳裏に焼きつき、怖くてたまりませんでした〜。 “事実というのは、ある方向から見た主観に過ぎない”(p72) …と、本文の中で語らせているが、真実に迫りながら、するりとすり抜けてい くような、そんな感覚に陥った。結論は、読者にゆだねられているところも、 恩田さんらしいと思う。 |
| 2月12日(土)「NO.6 #3」あさのあつこ(講談社) 2013年の近未来。理想郷として創り上げられ、全てを管理される都市NO.6。 選び抜かれたエリート候補生として、一生の保障を与えられていた紫苑は、あ る嵐の夜、自分の部屋に逃げ込んできた少年・ネズミを匿い助けたことから、 全てを失い、全てが変わった。 そして4年後。今度はネズミに助けられた紫苑は西ブロックへと脱出した…。 『NO.6』も、もう3巻目。で、この3巻目が、一番よかったなぁ。 紫苑と出逢ったことで心の変化を見せるネズミと、ネズミと出逢ったことで理 想都市NO.6の表と裏を知る紫苑。大きくストーリーが動くわけではないのです が、紫苑とネズミのそれぞれの思いと、二人の絆がしっかりと描かれる。 少しずつ綻びが見えはじめてきた聖都市NO.6の内部(矯正施設で“男”としか 表記されない人物が登場する場面は、ちょっとアニメチックではありますが) と、いまだはっきりしないとしないネズミの正体。謎と、いよいよ矯正施設に 侵入かという不安と期待を残して、次巻に続く…。(#4ではイヌカシが死ん でしまいそうな気がするのは、私だけでしょうか) |
| 2月12日(土)「読む力は生きる力」脇 明子(岩波書店) -------------------------------------------------------- 子どもが本を読むことの大切さは誰もが口にするけれど、 では、子どもにはなぜ「本を読むこと」が必要なのか? -------------------------------------------------------- 脇明子さんというと、翻訳者というイメージが強かったのですが、現在、女子 大の教授として、将来幼稚園や小学校の教育にたずさわる学生を教える立場に あり、さらに「岡山子どもの本の会」の代表も務める中で、長年このテーマに 取り組んできたと言います。 学生と話し合い、子どもと関わる人たちと情報交換をし、考察を重ねてきた中 で、見えてきた答えは何だったのか?語り口がいいので、ずっと講演を聞いて いるような感覚で読んでいきました。 子どもの読書についての手引書は、数多くあるし、いろんな考え方があるけれ ど、 ・子どもたちの生活の変化と、それが意味するもの ・「ブックスタート」が果たす役割 ・「文字を読む」ことと「本を読む」ことの違い ・「本を読む」ことができない理由 ・絵本から物語への敷居を越えることの難しさ ・「読む力を育てる」ことが、どうしてそんなに必要なのか ・子どもにとって、いい本とは ・読書力とはどんな力なのか ・子どもたちが「本を読むこと」と幸せな出会いをするために、 大人は何をしなくてはならないのか と、赤ちゃん→幼児期→小学生→思春期と段階を踏んで、筋道を立てながら説 明していくので、説得力があり、納得しながら読めました。 図書館で借りて読みましたが、手元に置いて何度も読み返したいと思ったので そのあと即購入!子どもと子どもの本に関わる人たちの新しいバイブルとして おすすめします。 |
| 2月5日(土)「おわりの雪」ユベール・マンガレリ 田久保麻里・訳(白水社) 本文の中では、時代も、舞台となる場所も、語り手となる少年の年齢も明らか にされていない。 “ぼく”は、古道具屋の鳥篭に入れられたトビを、どうしても欲しいと思って いた。けれども、“ぼく”の家は、病気でふせっている父さんの年金と、養老 院で散歩の付き添いをする“ぼく”のわずかな稼ぎで生活していた。 “ぼく”と父さんの心情が詳しく語られることはないが、“ぼく”は父親の不 安や孤独、母親の秘密を敏感に感じとっていることが伝わってくる。 先日見た映画『ネバーランド』の中で、“現実社会を生きるためにこそ、空想 の世界が大切なのだ”というバリーの言葉があったが、この物語の中でも、き びしい現実を生きる“ぼく”と父さんにとって、ぼくが作り上げたトビ捕りの 物語を共有することが、二人の絆となる。 消えていくいのち、自分の手で消したいのち、新しく共にするいのち…。父と 少年の日々が回想という形で、抑えた筆で静かに語られる。日常の出来事なの に、どこか幻想的だ。 そして、とても映像的。一編の美しい短編映画を見たような印象だ。読みなが ら頭の中で映像が広がり、読み終わった後、いくつもの場面が映像として残っ た。 噛めば噛むほどではないけれど、読み返せば読み返すほどいいなぁ…と染み込 んでいくような作品だった。 |
| 2月5日(土)「二つの旅の終わりに」エイダン・チェンバーズ 原田勝・訳(徳間書店) 主人公のジェイコブは、17歳のイギリス人。祖父の名をとって同じジェイコブ と名づけられた。姉との折り合いが悪く、祖母のセアラと暮らす。愛読書『ア ンネの日記』のアンネに惹かれている。 戦時中、ジェイコブの祖父は、アルネムの戦いに参加して負傷、その後死亡し た。ジェイコブは、当時介抱してくれたオランダ人女性ヘールトラウから招待 を受け、ケガで行けなくなったセアラの代理として、オランダのアムステルダ ムに渡った…。 ジェイコブがアムステルダムに滞在した数日間(1995年の現代の物語)と、末 期癌に冒され、自らの意志で安楽死を迎えようとしているヘールトラウの手記 (1944年の過去の物語)が、交互に描かれる。 手記の中では、ドイツ軍の占領下にあったオランダに、イギリスの落下傘部隊 が舞い降りたアルネムの戦いから、「飢餓の冬」と呼ばれる解放前の最後の冬 までの出来事が告白される。やがて、二つの物語はつながりをみせ、50年前、 19歳だったヘールトラウの秘密が、徐々に明らかにされていく。 読み始め、現代を生きるジェイコブの物語が、とっつきにくいなと思ったが、 もうひとつの物語−ヘールトラウの手記の方に引き込まれていくうちに、おも しろくなっていった。 戦争、恋愛、安楽死、家族、同性愛…と、盛り込まれる問題は、てんこ盛りだ が、重すぎず、破綻することなく、読み応えたっぷり。 ヘールトラウ。彼女の娘テッセルと、孫の大学生ダーン。ひったくりにあった ジェイコブを助けてくれたアルマ。カフェで声をかけてきたゲイのトン。祖父 の墓の前で出会ったヒレ。 ジェイコブは、アムステルダムで出会った彼らと語り合い、議論し、(戦争体 験の有無、世代の違い、気質の違いなど、立場や経験が異なる彼らとの1対1で のおしゃべりとなる)いろんなことを、いろんな方向から考えていく。そして それは、すぐには答えが出なくても、彼のこれからの人生に、なんらかの形で 反映されていくんだろうなと思わせる。 そしてその問いは、読者にも投げかけられる。自分だったら、安楽死について どう考えるだろう、自分がもしジェイコブだったら、ヘールトラウの告白をセ アラに話すだろうか、話さずにおくだろうか…とわが身に置き換えて考えるこ とになるのである。 児童室にあった本だけど、大人の人が読んだほうが面白い気がする。アムステ ルダムの街が魅力的に描かれていて行きたくなった。 1999年カーネギー賞受賞作品。 |