199910月読了
★印は、おすすめ
10/23 催眠 松岡圭祐(小学館)
10/19 バッテリーU あさのあつこ(教育画劇)
10/16 憧れのまほうつかい さくらももこ(新潮社)
10/15 地球生活記−世界ぐるりと家めぐり 小松義夫(福音館書店)
10/10 柔らかな頬 桐野夏生(講談社)
10/3 白夜行 東野圭吾(集英社)

 10月23日(土) 「催眠」 松岡圭祐(小学館)

amazon1997.11月発行・430P・1900円

「催眠」…。またの題名を、勝手に「カウンセラー物語」と命名。

今年の春、稲垣吾郎・菅野美穂主演で、映画化されましたね。
映画は見ていませんが、CMスポットで流されていた長〜い髪の菅野美穂さんが
おどろおどろして、ホラーのように恐いのかぁ??帯にもサイコ・サスペンス…
と書かれているけれど??前半、そのような片鱗を見せるところが、多少ありま
すが、私が感じたのは、やっぱり「カウンセラー物語」…。

読み始めて何ページかで、この女の人が持つ“病気”について、わかってしまっ
たのですが、なぜ彼女が、そうならざるを得なかったのか?(それが解き明かさ
れていく過程が、おもしろいよ!)ニセ催眠術師の実相寺が、どうなっていくの
か?そこに重きをおいて、読んでいきました。

この作品は、ホラーやサイコとして、とり上げられがちですが、こういう病気や
催眠術に対しての、世間一般の、誤解や偏見に対して、「そうじゃないんだー!
事実を知って欲しい!」というのが、作者の意図したところじゃないかと、受け
取ったんですが…。

ラストまで、一気に読めます!


 10月19日(火) 「バッテリーU」 あさのあつこ(教育画劇)

amazon1998.4月発行・356P・1600円

野球少年・巧を中心に中学生になる直前の春休みの出来事を扱った「バッテリー
の続編。新学期も始まり、舞台は家庭から学校へと変わっていきます。

四月、野球に対しての自分の力に絶対的な自信を持つ巧は、野球部の顧問や先輩
たちの反発をかっていきます…。

 自分の頭で考え、自分の意志で動く。当たり前のことだ。
 それができなくて、どうして自分のボールが投げられるだろう。

集団−特に学校という枠の中で、自分の意志を通していくということは、どんな
に大変なことなのか…。おかしいと思うことを、おかしいと声をあげていくこと
が、いけないことなのか。

巧からは、そうじゃなかったら自分という存在がなくなってしまう…そんな危機
感が伝わってきました。

今どき、こんな高圧的な学校や教師がいるのかねぇ…と思いつつ、言われるまま
自分の意見や考えをはさむことなく、はいはいと従っていくこと方が、どんなに
楽か…。(でも、別に意見がないわけじゃなくて、そうすることで自分を守って
いることもあるんだと思うけど)しかし、それも過度になってくると、野球部の
先輩のように、どこかで大きな歪が生まれてくるんだよね…。

自分の主張ばかり通そうとするやり方が、ほんとにいいことなのか。つい、周り
の気持ちも考えず、突っ走っていきそうになる巧に、相棒の豪が柔らかくホロー
していく…。次第に巧の中にも、自分の姿や思いを、振り返ってみる気持ちが芽
生えてきまます…。

ここに登場してくる大人も含め、必要なのは、柔軟性とバランスかな!?

殺伐とした学校生活やストーリーの中で、巧の弟、青波が登場してくると、ふっ
と柔らかい風が吹く…そんな感じがしました。

単独でも充分楽しめますが、前作を読んでから読むと、巧の成長ぶりが感じられ
ます。男の子に読んで欲しいな。

その後の巧と豪が読みたい! また続きが出るといいなー。

日本児童文学者協会賞 受賞作です。

おすすめ度 ★★★★☆


 10月16日(土) 「憧れのまほうつかい」 さくらももこ(新潮社)

amazon1998.11月発行・111P・1300円

今月の「月刊MOE」は、さくらももこさん特集。
その中の、緻密でゴージャスな絵がたくさん紹介されている“ル・カインの絵を
訪ねて”というページに心奪われて、この本を手にとってみたものの…。

高校生の時、この絵に出会い、それ以後さくらさんに大きな影響を与えた絵本作
家エロール・ル・カイン。できることなら、弟子になりたいと思うほど憧れてい
たそうですが、月日は流れさくらさんが漫画家として活躍中のある日、ル・カイ
ンの死を知ります。まだ47歳でした。

ル・カインのことを、もっと多くの人たちに知って欲しい、伝えたいと思ってい
たさくらさんは大泉高原で原画が見られるチャンスと、イギリスでル・カインに
関わった方たち(と言っても、二人なんですが)と会って話を聞ける機会を得る
のです…。

と言うことで、イギリスまで出かけるのですが、そこから、このエッセイはおも
しろく…なくなるのでありました…。

大好きな作家と交流のあった人たちとせっかく会えたというのに、焦点がボケて
中途半端になってしまっているのね。聞いた話もこれだけ??と言う感じ…。
ウェッジウッドで、さくらさんが絵付けしたお皿はかわいかったよ。街角で見か
けたエナメルボックスや人形も、確かにかわいかったろう。でもね、肝心のル・
カインのことよりも、延々とページをさいているというのは、どーも解せなかっ
た。(それがさくらさんの持ち味と思ってもねぇ、それにしてもあんまりだ…。
しかも爆笑…って、帯には書いてあるのに全然笑えないんだもん〜)

せっかくイギリスまで行けたのなら、もっとル・カインの足跡を訪ねる旅に絞っ
た方がよかったのになと思いました。「月刊MOE」のル・カインの紹介のペー
ジの、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。(いや、MOEの方が詳し
かったかも…)う〜ん、残念!


 10月15日(金) 「地球生活記」 小松義夫(福音館書店)

amazon1999.6月発行・333P・5000円

副題は、“世界ぐるりと家めぐり”。
世界中のいろんな家を集めた写真集が、こんなにおもしろいとは思わなかった!
ホント、ホント!写真集…というより、図鑑のような趣が強いのですが…。

家に対する固定観念が覆されるおもしろさ、自分の中に全くなかった発想の家の
楽しさ。入れ物だけではなく、その地域で生活している人たちの顔も暮らしぶり
も垣間見ることができます。

自然環境、歴史、慣習など全部ひっくるめて、その土地にあるべくしてある家が
存在しているのだなという思いを強くしました。○○族の家など、だんだんと消
えいく家も、たくさん紹介されています。

「ニューシネマ・パラダイス」のトトが走り出てきそうなイタリアの白壁、弟を捜
す「フィオナの海」を彷彿とさせるアイルランドの草屋根など、映画で観た町並み
と重なり、キノコのようなアフリカの穀物庫は、まるでムーミン谷で見かけたお
城!?

ヨーロッパの町並みや壁絵にうっとりし、日本とは流れているものが全く違うア
フリカ時間に身をゆだねる…。1700枚を越えるという写真と共に、世界を旅した
気分でした。

小松さんが長い間かけて世界中を周り、自分の足で撮ってきた傑作です。
オールカラー、333ページ。

実はこの本、広告を見て、是非見てみたいと、図書館やあちこちの大きな本屋さ
んでも随分探して、やっと見つけた先は、子どもの本屋さん…。実際に見てみて
やっぱり惚れて、でもネックは価格の5,250円。何度もウロウロして、もぉ〜、
どこからでも飛び降りる覚悟で、エイヤァ〜と買いました!私は、買って正解!
買って…とは言えませんが、この本見つけたら、見てみてね!子どもから大人ま
で楽しめます。

おすすめ度★★★★★


 10月10日(日) 「柔らかな頬」 桐野夏生(講談社)

amazon1999.4月発行・365P・1800円

北海道の支笏湖湖畔、小さな別荘地で起きた幼児失踪事件…。

犯人捜しをポイントに読もうとすると、肩透かしを食らいます。
えっ〜!だから、だから誰なのヨォ〜!と、絶叫したくなります(それは私〜)
“ミステリー”ではなく、主人公カスミと、中盤以降同行することになる死期の
迫った元刑事・内海、二人の絶望と、かすかに見えてきた光…そんな心理状態を
読ませる“小説”なんだと思います。

忽然と姿を消してしまった娘を、4年も捜し続ける母親の姿に胸が締めつけられ
る思いでした。幻想と現実が絡み合い、事件当時この別荘地にいた誰もが疑わし
く、誰もがこの事件によって少なからず、その後の人生が変わっていく…。現実
を受け入れられず、少しの手がかりにすがりつき、実際にいる次女より、いなく
なった長女を優先して、怪しげな宗教家のもとに足しげく通う…。客観的に見る
と、う〜んと思うことも、そういう立場に立ってしまうと、母親としてそうなっ
てしまう気持ちもわからないでもない…そんな現実味を感じました。

しかし、前作「OUT」を読んだ時も感じましたが、ヒロインが望む生きていく道っ
て、何かを犠牲にして、さらに今まで生きてきた全てを失わないと進んでいけな
いものなんだろうかと、考え込んでしまいました。それだけ、激しいヒロインを
描いていると言えば、そうなのですが…。

最期まで、息がぬけない勢いで、桐野夏生さんらしい力強い作品です。
直木賞受賞作品。

  <おすすめ度 ★★★☆☆


 10月3日(日) 「白夜行」 東野圭吾(集英社)

amazon1999.8月発行・506P・1900円

読んでいて、決して愉快な話ではありません。彼には常に犯罪の匂いがつきまと
い、彼女と関わった人々は次々と不幸になっていく…。その欺き方、非情冷淡さ
には、背筋がゾゾッ…。あぁ、恐ろしや〜。でもね、この女性に魅せられた人々
と同じように、読んでる私も引き込まれていくのよね〜。

前半、章ごとに登場人物が次々に出てきて、それがどんなふうに結びついていく
のか…。これがあれと繋がって、あの出来事がこれと繋がってと、次第にそれぞ
れの断片が、ひとつになって真相が見えてきます。

物語の発端は昭和40年代。廃ビルの中で、質屋の主人が殺されていた事件。容疑
者は浮かびあがったが、その容疑者も事故死。以後、迷宮入りとなってしまう。
当時共に小学生だった、被害者の息子と、近所で母と二人暮らしをしていた娘が
この物語の主人公となる…。


なぜ彼らは、そんな生き方しかできなかったのか、何が彼らをそう追い込んでし
まったのか…。悲劇の物語でもあります。もうひとつは19年に渡り、この事件を
追い続けてきた刑事の執念の物語。オイルショックとか、インベーターゲームな
ど、私も覚えのある時代の出来事をからめながら、時を追って、二人の生きざま
や、行ってきたことを淡々と描いていきます。

この物語は、主人公側からではなく、周りの人たちから見た“二人”を重ねてい
くことによって、二人の姿を浮き上がらせていく…。そんな形になっています。

読み応えあります。おすすめ度★★★★☆1/2


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