| 1999年10月読了 | |||
| 10/23 | 催眠 松岡圭祐(小学館) | ||
| 10/19 | バッテリーU あさのあつこ(教育画劇) | ||
| 10/16 | 憧れのまほうつかい さくらももこ(新潮社) | ||
| 10/15 | 地球生活記−世界ぐるりと家めぐり 小松義夫(福音館書店)★ | ||
| 10/10 | 柔らかな頬 桐野夏生(講談社) | ||
| 10/3 | 白夜行 東野圭吾(集英社)★ | ||
| 10月23日(土) 「催眠」 松岡圭祐(小学館) 「催眠」…。またの題名を、勝手に「カウンセラー物語」と命名。 今年の春、稲垣吾郎・菅野美穂主演で、映画化されましたね。 映画は見ていませんが、CMスポットで流されていた長〜い髪の菅野美穂さんが おどろおどろして、ホラーのように恐いのかぁ??帯にもサイコ・サスペンス… と書かれているけれど??前半、そのような片鱗を見せるところが、多少ありま すが、私が感じたのは、やっぱり「カウンセラー物語」…。 読み始めて何ページかで、この女の人が持つ“病気”について、わかってしまっ たのですが、なぜ彼女が、そうならざるを得なかったのか?(それが解き明かさ れていく過程が、おもしろいよ!)ニセ催眠術師の実相寺が、どうなっていくの か?そこに重きをおいて、読んでいきました。 この作品は、ホラーやサイコとして、とり上げられがちですが、こういう病気や 催眠術に対しての、世間一般の、誤解や偏見に対して、「そうじゃないんだー! 事実を知って欲しい!」というのが、作者の意図したところじゃないかと、受け 取ったんですが…。 ラストまで、一気に読めます! |
| 10月19日(火) 「バッテリーU」 あさのあつこ(教育画劇) 野球少年・巧を中心に中学生になる直前の春休みの出来事を扱った「バッテリー」 の続編。新学期も始まり、舞台は家庭から学校へと変わっていきます。 四月、野球に対しての自分の力に絶対的な自信を持つ巧は、野球部の顧問や先輩 たちの反発をかっていきます…。 自分の頭で考え、自分の意志で動く。当たり前のことだ。 それができなくて、どうして自分のボールが投げられるだろう。 集団−特に学校という枠の中で、自分の意志を通していくということは、どんな に大変なことなのか…。おかしいと思うことを、おかしいと声をあげていくこと が、いけないことなのか。 巧からは、そうじゃなかったら自分という存在がなくなってしまう…そんな危機 感が伝わってきました。 今どき、こんな高圧的な学校や教師がいるのかねぇ…と思いつつ、言われるまま 自分の意見や考えをはさむことなく、はいはいと従っていくこと方が、どんなに 楽か…。(でも、別に意見がないわけじゃなくて、そうすることで自分を守って いることもあるんだと思うけど)しかし、それも過度になってくると、野球部の 先輩のように、どこかで大きな歪が生まれてくるんだよね…。 自分の主張ばかり通そうとするやり方が、ほんとにいいことなのか。つい、周り の気持ちも考えず、突っ走っていきそうになる巧に、相棒の豪が柔らかくホロー していく…。次第に巧の中にも、自分の姿や思いを、振り返ってみる気持ちが芽 生えてきまます…。 ここに登場してくる大人も含め、必要なのは、柔軟性とバランスかな!? 殺伐とした学校生活やストーリーの中で、巧の弟、青波が登場してくると、ふっ と柔らかい風が吹く…そんな感じがしました。 単独でも充分楽しめますが、前作を読んでから読むと、巧の成長ぶりが感じられ ます。男の子に読んで欲しいな。 その後の巧と豪が読みたい! また続きが出るといいなー。 日本児童文学者協会賞 受賞作です。 おすすめ度 ★★★★☆ |
| 10月16日(土) 「憧れのまほうつかい」 さくらももこ(新潮社) 今月の「月刊MOE」は、さくらももこさん特集。 その中の、緻密でゴージャスな絵がたくさん紹介されている“ル・カインの絵を 訪ねて”というページに心奪われて、この本を手にとってみたものの…。 高校生の時、この絵に出会い、それ以後さくらさんに大きな影響を与えた絵本作 家エロール・ル・カイン。できることなら、弟子になりたいと思うほど憧れてい たそうですが、月日は流れさくらさんが漫画家として活躍中のある日、ル・カイ ンの死を知ります。まだ47歳でした。 ル・カインのことを、もっと多くの人たちに知って欲しい、伝えたいと思ってい たさくらさんは大泉高原で原画が見られるチャンスと、イギリスでル・カインに 関わった方たち(と言っても、二人なんですが)と会って話を聞ける機会を得る のです…。 と言うことで、イギリスまで出かけるのですが、そこから、このエッセイはおも しろく…なくなるのでありました…。 大好きな作家と交流のあった人たちとせっかく会えたというのに、焦点がボケて 中途半端になってしまっているのね。聞いた話もこれだけ??と言う感じ…。 ウェッジウッドで、さくらさんが絵付けしたお皿はかわいかったよ。街角で見か けたエナメルボックスや人形も、確かにかわいかったろう。でもね、肝心のル・ カインのことよりも、延々とページをさいているというのは、どーも解せなかっ た。(それがさくらさんの持ち味と思ってもねぇ、それにしてもあんまりだ…。 しかも爆笑…って、帯には書いてあるのに全然笑えないんだもん〜) せっかくイギリスまで行けたのなら、もっとル・カインの足跡を訪ねる旅に絞っ た方がよかったのになと思いました。「月刊MOE」のル・カインの紹介のペー ジの、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。(いや、MOEの方が詳し かったかも…)う〜ん、残念! |
| 10月15日(金) 「地球生活記」 小松義夫(福音館書店) 副題は、“世界ぐるりと家めぐり”。 世界中のいろんな家を集めた写真集が、こんなにおもしろいとは思わなかった! ホント、ホント!写真集…というより、図鑑のような趣が強いのですが…。 家に対する固定観念が覆されるおもしろさ、自分の中に全くなかった発想の家の 楽しさ。入れ物だけではなく、その地域で生活している人たちの顔も暮らしぶり も垣間見ることができます。 自然環境、歴史、慣習など全部ひっくるめて、その土地にあるべくしてある家が 存在しているのだなという思いを強くしました。○○族の家など、だんだんと消 えいく家も、たくさん紹介されています。 「ニューシネマ・パラダイス」のトトが走り出てきそうなイタリアの白壁、弟を捜 す「フィオナの海」を彷彿とさせるアイルランドの草屋根など、映画で観た町並み と重なり、キノコのようなアフリカの穀物庫は、まるでムーミン谷で見かけたお 城!? ヨーロッパの町並みや壁絵にうっとりし、日本とは流れているものが全く違うア フリカ時間に身をゆだねる…。1700枚を越えるという写真と共に、世界を旅した 気分でした。 小松さんが長い間かけて世界中を周り、自分の足で撮ってきた傑作です。 オールカラー、333ページ。 実はこの本、広告を見て、是非見てみたいと、図書館やあちこちの大きな本屋さ んでも随分探して、やっと見つけた先は、子どもの本屋さん…。実際に見てみて やっぱり惚れて、でもネックは価格の5,250円。何度もウロウロして、もぉ〜、 どこからでも飛び降りる覚悟で、エイヤァ〜と買いました!私は、買って正解! 買って…とは言えませんが、この本見つけたら、見てみてね!子どもから大人ま で楽しめます。 おすすめ度★★★★★ |
| 10月10日(日) 「柔らかな頬」 桐野夏生(講談社) 北海道の支笏湖湖畔、小さな別荘地で起きた幼児失踪事件…。 犯人捜しをポイントに読もうとすると、肩透かしを食らいます。 えっ〜!だから、だから誰なのヨォ〜!と、絶叫したくなります(それは私〜) “ミステリー”ではなく、主人公カスミと、中盤以降同行することになる死期の 迫った元刑事・内海、二人の絶望と、かすかに見えてきた光…そんな心理状態を 読ませる“小説”なんだと思います。 忽然と姿を消してしまった娘を、4年も捜し続ける母親の姿に胸が締めつけられ る思いでした。幻想と現実が絡み合い、事件当時この別荘地にいた誰もが疑わし く、誰もがこの事件によって少なからず、その後の人生が変わっていく…。現実 を受け入れられず、少しの手がかりにすがりつき、実際にいる次女より、いなく なった長女を優先して、怪しげな宗教家のもとに足しげく通う…。客観的に見る と、う〜んと思うことも、そういう立場に立ってしまうと、母親としてそうなっ てしまう気持ちもわからないでもない…そんな現実味を感じました。 しかし、前作「OUT」を読んだ時も感じましたが、ヒロインが望む生きていく道っ て、何かを犠牲にして、さらに今まで生きてきた全てを失わないと進んでいけな いものなんだろうかと、考え込んでしまいました。それだけ、激しいヒロインを 描いていると言えば、そうなのですが…。 最期まで、息がぬけない勢いで、桐野夏生さんらしい力強い作品です。 直木賞受賞作品。 <おすすめ度 ★★★☆☆> |
| 10月3日(日) 「白夜行」 東野圭吾(集英社) 読んでいて、決して愉快な話ではありません。彼には常に犯罪の匂いがつきまと い、彼女と関わった人々は次々と不幸になっていく…。その欺き方、非情冷淡さ には、背筋がゾゾッ…。あぁ、恐ろしや〜。でもね、この女性に魅せられた人々 と同じように、読んでる私も引き込まれていくのよね〜。 前半、章ごとに登場人物が次々に出てきて、それがどんなふうに結びついていく のか…。これがあれと繋がって、あの出来事がこれと繋がってと、次第にそれぞ れの断片が、ひとつになって真相が見えてきます。 物語の発端は昭和40年代。廃ビルの中で、質屋の主人が殺されていた事件。容疑 者は浮かびあがったが、その容疑者も事故死。以後、迷宮入りとなってしまう。 当時共に小学生だった、被害者の息子と、近所で母と二人暮らしをしていた娘が この物語の主人公となる…。 なぜ彼らは、そんな生き方しかできなかったのか、何が彼らをそう追い込んでし まったのか…。悲劇の物語でもあります。もうひとつは19年に渡り、この事件を 追い続けてきた刑事の執念の物語。オイルショックとか、インベーターゲームな ど、私も覚えのある時代の出来事をからめながら、時を追って、二人の生きざま や、行ってきたことを淡々と描いていきます。 この物語は、主人公側からではなく、周りの人たちから見た“二人”を重ねてい くことによって、二人の姿を浮き上がらせていく…。そんな形になっています。 読み応えあります。おすすめ度★★★★☆1/2 |