| 1999年11月読了 | |||
| 11/30 | あなたみたいな明治の女 群ようこ(朝日新聞社) | ||
| 11/15 | ボーダーライン 真保裕一(集英社) | ||
| 11/10 | 新解さんの謎 赤瀬川原平(文春文庫)★ | ||
| 11/1 | みんないってしまう 山本文緒(角川文庫) | ||
| 11月30日(火) 「あなたみたいな明治の女」 群ようこ(朝日新聞社) 森鴎外の母・峰子にも嫁姑問題があった。女性史に関する多くの難解な本を書く傍 ら、かわいがった鶏の記録・愛鶏日記を残した高群逸枝。小説のヒロインを地でい くような波乱万丈の生涯を送った宮田文子……。 明治の時代を生きた8人の女性が、群ようこさんの目を通して紹介されています。 とかくこの手の本は、難しく書かれてしまうことが多いのですが読みやすいです。 ユーモラスに書かれているしね。読みやすいんですけど、ちょっと物足りなかった かな。もう少し突き放した目で書かれていてもよかったかなと思いました。(主観 が大きく入ることが群ようこさんの持ち味で、そこがウケているんだとは思います が) 私が、明治の女性に対して持っていたイメージは、夫に仕え、家に仕え、質素で、 きちんとしていて…という漠然としたもの。(あの頃の女性が、皆そんなんだった ら、逆に怖いけどね)でも、今よりずっと女性が生きづらかった時代を、がむしゃ らに突き進んで生きた人も、受け入れて生きてきた人も、行き当たりばったりで生 きてきた人も、どこか今現在に通じていて、今現在も、きっとどこかにいそうで、 身近に感じとることができます。 また、サラリーマン家庭の主婦が残した日記として紹介されている小林信子も、ど んなに平凡な人にも、大なり小なりドラマがあって、名を残さなくても、地に足を つけた暮らしを送っていた人たちがいたんだよと、取上げられていることに好感を 持ちました。 |
| 11月15日(月) 「ボーダーライン」 真保裕一(集英社) 舞台は、カリフォルニア。P・I ライセンスを持つ探偵、サム(といっても生粋の 日本人なんですけどね)は、総和信販ロサンゼルス支社で、調査員として働いてい た。仕事は、日本人観光客のトラブル処理ばかり。そこへ、家を出たまま行方不明 になっている、安田信吾捜索の依頼が舞い込んだ。調べていくうちに、彼の周りで は、なぜか殺人事件が多発。彼の姿を追う、サムの前に現れた安田信吾は、笑顔を 見せながら、銃を乱射。そして、時を置かずして、日本から信吾の父・安田英明が 渡米してきた…。 半ば近くまで読んで、やっと(この父親が登場してきたあたりから)高揚感−それ で続きは、どーなるわけっー!と、いう気持ちになりました。 主人公の気持ちはもとより、この父親のありようについて(父親と母親としての立 場の違いはあるでしょうが)私なら、どうするだろうか??と、ずいぶん考えなが ら読みました。後半の、父親とサムの長〜い議論は、それまで読んできた流れから すると、理屈っぽく映ってしまいましたが…。 父親が固めてきた重大な決意について、どのように考えるだろうか。彼ら両親の今 までの対処は、本当に良かったのか。自己弁護じゃないのだろうか。そして、根っ からの犯罪者なんて、本当にいるのだろうか?? 子どもを育てている母親としては、ある意味、どうしても性善説(人間は生まれつ き、誰でも善であるという考え)を持っているので、ラスト納得したようなしない ような…。あり得るかもと思いながらも、そういう人がいて欲しくないなというの が、本音かな。 場面、場面で、回想として登場してくる脇役たちの存在感が好きでした。 |
| 11月10日(水) 「新解さんの謎」 赤瀬川原平(文春文庫) おもしろかった! とにかく、ゲラゲラ笑いながら読みました。 新解さん…というのは、三省堂の新明解国語辞典のこと。持っていなくても、誰も が一度は、見かけたことがあるはず。 とにかく日本語を明解にするパワーにあふれてる。 ふつう辞書というのは説明をムダなく最小限におさえている。 ところがこの新明解国語辞典はムダなく最小限なんてケチなことはせずに、 どんどん説明してくれる。ミスを恐れるなんてびくついたところがあろうことか、 いくらでも説明サービスをしてくれるのだ。日本語をわからせようとする明解パワーである。 そんなパワーのある深〜い辞書の世界を、SM嬢(単なるイニシャルね)と一緒に 探検?していきます…。 私が辞書を引くのは、漢字が思い出せないとか、言いまわしは、これでよかったっ け?と、思う時に引くくらいで、じっくりと読んだことはないのね(みんな、そう よね!?) でも、この新解さんの言葉の説明や用例文が、こんなにおもしろいとは思わなかっ た!辞書特有の無味乾燥なものではなく、個性的。かなりポピュラーな辞書なのに 辞書でこんなのあり?こんなの載ってるの?って感じでした。最初に、こういうと ころに着目する人(本の中にも登場する出版社勤務のSM嬢が企画したらしいです が)好きだなー。 そして、そこで見えてくるのが、謎の人物・新解さんの姿。魚好きで、苦労人、出 版に対して厳しく、金欠。そして女性に厳しい…なんて、新解さんの輪郭が少しず つ明らかになってくるんだな。 私が読んだのは、文春文庫になったもの。紙や筆記用具にまつわるエッセイ「紙が みの消息」も併録されていますが、「新解さんの謎」だけの方がよかったなー。 赤瀬川原平さんは、「老人力」を書かれた作家です。読んでないけど。 |
| 11月1日(月) 「みんないってしまう」 山本文緒(角川文庫) オレンジの表紙に引き寄せられるようにして、手に取ってみる。初めて読んだ山本 文緒さんの作品。短編集です。 タイトル「みんないってしまう」にあらわされているように、この中の十二のストー リーのテーマは、「喪失」。それぞれがかなり短い物語なのに、心にズシンとくる。 だからといって暗くなるわけではなくて、ジーンと余韻の残る…そして、ひとすじ の光が見えてくるものが多いのですが。 誰もがどこかにいそうで、 どれもリアル。心の中をよーくのぞいてみると、自分 の中にもそんな気持ちがあるような気がして、ゾクッとしました。ちょっと突き放 したような、淡々した文章も良かったです。 −ひとつ失くすと、ひとつ貰える。そうやってまた毎日は回っていく− 表題作「みんないってしまう」より |